DeNA、起業のために退職した社員の再挑戦を支援する「ファウンダーズ・カムバック・プログラム」開始 社外で得た貴重な経験を新規事業創出に生かす

木村英彦 編集長
/

ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、10月14日、起業のために退職した社員が同社に復帰し、新たな事業立ち上げに再挑戦できる制度「ファウンダーズ・カムバック・プログラム」を発表した。挑戦者を支援する「DeNA Startup Loop」の第3弾として、11月1日から開始する。

本制度では、「DeNA Startup Loop」のプログラムを活用して起業した人材を対象に、所定の条件を満たせば原則としてDeNAに復帰できる仕組みを設ける。復帰後は、原則として新規事業創出を担う専門子会社のBAKERUで、新たなプロダクトや事業の立ち上げに取り組む機会を提供する。

 

■起業の成否だけでなく、挑戦で得た経験を評価

対象となるのは、「ファーストチェック・プログラム」など「DeNA Startup Loop」のプログラムを活用してスタートアップを起業した人材。DeNA退職後、自ら設立した会社に常勤で従事し、株式による資金調達後の期間を含めて通算18カ月以上取り組んでいることなどが条件となる。

また、DeNA退職後5年以内、かつ起業した会社を離れてから3カ月以内に申し出た場合、原則として復帰できる。なお、ファーストチェック・プログラムを利用した起業時の出資は、条件となる資金調達には含まれない。

DeNAは、スタートアップが事業を軌道に乗せることは容易ではないとした上で、志を持ってリスクを取り、起業に挑戦したこと自体を評価する考えを示している。事業がうまくいかなかった場合も含め、挑戦を通じて得られた経験を次の新規事業に生かしてもらう狙いだ。

 

■起業の失敗も、企業にとって貴重な経験になり得る

今回の制度で注目したいのは、起業の成否だけで人材を評価するのではなく、社外での挑戦によって得られた経験を自社の事業創出に生かそうとしている点だ。

起業では、事業計画の策定やプロダクトの開発だけでなく、資金調達、顧客の獲得、採用、組織運営など、事業を継続するためのさまざまな判断が求められる。限られた資金や人員の中で事業を成長させる経験は、企業内で新規事業を担当するだけでは得にくいものもある。

事業が期待どおりに成長しなかった場合でも、当初の仮説と市場の反応がどこで食い違ったのか、資金や人材をどのように配分すべきだったのかなど、実践を通じて得られる知見は少なくない。もちろん、事業の失敗が自動的に有益な学びにつながるわけではないが、その経験を検証し、次の事業に生かすことができれば、企業にとっても価値ある経営資源となる。

一方、企業によっては、起業のために退職した社員が事業に失敗して戻ってきた場合、社内にとどまってキャリアを積んだ人材よりも低く評価してしまう可能性もある。しかし、事業が失敗したという結果と、本人が持つ能力や経験の価値は、必ずしも同じではない。

起業の結果だけで人材を評価してしまえば、社外で得られた経験を自社の事業に生かす機会を失うことにもなる。そう考えると、挑戦の結果だけでなく、そこに至る過程で得られた知見を評価し、再び事業を生み出す機会につなげることには合理性がある。

今回の制度は、こうした経験を個人のキャリアの中だけにとどめず、企業の新規事業創出に還流させる仕組みといえる。

 

■再挑戦の場としてBAKERUを用意

復帰後の受け皿となるBAKERUは、小さな仮説を迅速に検証し、DeNAの資本・人材・技術などを活用して大きな事業へと育てるスタートアップスタジオだ。

単に退職者を再雇用するだけでなく、新たな事業を立ち上げる場を用意していることも特徴となる。起業を通じて得た経験を、既存事業の運営にとどまらず、再び事業創出に生かせる環境を整える狙いがある。

また、復帰後も「DeNA Startup Loop」の各プログラムを活用し、再び起業などの挑戦に取り組むことができる。

通常のアルムナイ採用では、求人ポストの有無や個別の選考が復帰の前提となる。これに対し、本制度では所定の条件を満たせば原則として復帰できる道を、退職前から用意する。起業に踏み出す際のキャリア上の不安を一定程度軽減し、社外への挑戦を後押しする役割も担う。

 

■社内と社外を循環する起業家人材のエコシステム

「ファウンダーズ・カムバック・プログラム」は、DeNAが9月に始動した「DeNA Startup Loop」の第3弾にあたる。

第1弾 の「コーポレート・スタートアップ・プログラム」は、社内で新規事業の創出・育成に貢献したチームに報いる仕組みだ。第2弾の「ファーストチェック・プログラム」は、起業のために退職する社員が設立する会社に対し、デライト・ベンチャーズ・ビルダーファンドが500万円を出資するもので、社外への挑戦を後押しする。
今回の第3弾では、社外で起業した人材が再びDeNAに戻り、新たな事業に挑戦できるようにする。社内での挑戦、社外での起業、そして復帰後の再挑戦までを一連の循環としてつなぐ構想だ。

企業にとって、優秀な社員の退職は人材流出と受け止められがちだ。しかし、社外に出て起業することで得られる経験まで含めて考えれば、退職が必ずしも一方的な損失になるとは限らない。社外で経験を積んだ人材が戻り、新たな事業を生み出せれば、企業内だけでは得られなかった知見を活用できる。

さらに、起業のために退職しても再挑戦できる道があることは、これから起業を目指す社員にとっても安心材料となる。人材を社内に囲い込むのではなく、社外への挑戦も含めて成長の機会と捉え、その経験を将来的に自社へ還流させる考え方だ。

もっとも、制度を設けるだけで人材と経験の循環が実現するわけではない。復帰した人材が社内でどのように評価され、どの程度の裁量を持って新規事業に取り組めるかも重要になる。

それでも、起業の成功だけでなく、挑戦の過程で得られた経験を評価し、次の事業創出につなげようとする姿勢は、人材戦略と事業戦略を結びつける取り組みとして注目される。DeNAが目指す「Delight創造エコシステム」においても、社内外を問わず起業家人材が集い、何度でも挑戦できる環境を整えることが、継続的なイノベーション創出の基盤となりそうだ。

 

【PR】「エンタメ業界で働きたい」を応援!業界未経験から挑戦できる求人情報あります

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1477億円、営業利益186億9400万円、税引前利益257億6400万円、最終利益190億4800万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る