スマートフォンのソーシャルゲームやソーシャルアプリなどでは、「招待インセンティブ」を活用することがバイラルを生み出す有力なマーケティング手法のひとつとしてすっかり定着した。だが、最近、「App Store」のアプリレビューに関して、ちょっとした問題が起きているようだ。
ご存じの方も多いだろうが、招待インセンティブとは、ゲームで遊んでいない友人などに「招待コード」を送信し、招待を受けた友人がゲーム開始時に招待コードを入力すると、自分や誘われた友人にゲーム内で使えるアイテムなど特典が付与される。最近ではアプリのレビュー覧に「☆5」の評価とともに、招待コードが書き込まれるケースが増えている。ゲームで遊んでいるユーザーにとっては、高い評価を書き込むインセンティブになっており、うまく活用することがアプリをヒットさせる秘訣の一つとなっている。
こうしたプロモーション手法は、どのアプリディベロッパーが始めたのかはよくわからない。レビュー欄は、当初、ゲーム内の友人探しの場として使われていたケースが多かったと記憶しているのだが、いつの間にかインバイト機能と結びついた、という印象を持っている。アドウェイズの「カイブツクロニクル」も初期は同盟員の募集がメインだったし、海外でもStorm 8の「iMobster」や「World War」などでもアプリ内の友人探しのために、自分のIDをレビュー欄に書き込むケースが多かったと記憶している。
レビュー欄は、アプリに対する利用者の評価がわかるもので、アプリのインストールを検討している人にとっては重要な口コミ情報だ。アプリが楽しいのかどうか、役立つのかどうかがなどの貴重な情報が得られる。招待コードのレビュー欄への記入に関しては、色々と批判はあったのだが、それでもユーザーが楽しく遊んでいる状況を示す側面もあったと理解している。
さて、最近起こっているちょっとした問題とは、アプリのレビュー覧に他のアプリの招待コードが書き込まれるケースが増えていることだ。例えば、Aというアプリのレビュー欄に、「Bというアプリで遊びましょう。○○を入力すると特典がもらえます」といった書き込みがなされている。ひどい場合には、Aというアプリに関する言及はほとんどないだけでなく、ランキング上位のアプリの集中的に投稿されているケースが見受けられた。
他のアプリの招待コードを書く行為は、レビューの存在意義を失わせかねないもので、ほとんどスパム行為といって良い。まだ一部アプリで行われている程度だが、この状況がひどくなると、そのアプリの評判が悪くなるだけでなく、招待インセンティブに関して問題になると感じている。可能性としてはすぐには考えづらいが、アプリ内に招待インセンティブを盛り込むことが禁止されることもありうるのではないか。
個人的には、アプリのディベロッパーは、アプリレビューの健全性を保つため、自社のアプリの招待コードを、他のディベロッパーのアプリのレビュー欄に書くことを禁止することを明示し、見つけた場合には何らかの形で処罰対象にすることも思いついたが、法的問題を中心に検討すべき問題があるため、すぐにできるのは、せいぜいユーザーにお願いすることくらいだろうか。
GREEやMobageのソーシャルゲームも課題が多いのだが、iPhoneアプリに関しても、利用者の増加とともに様々な問題が表面化しつつあるように思われる。招待インセンティブは、ソーシャルゲームを中心の多数のAndroidアプリに盛り込まれているが、「Google Play」にも飛び火するかどうかも注目される。
※App Storeのレビューではないのだが、「拡散性ミリオンアーサー」の招待IDが「4gamer.net」のレビュー欄に書かれている(関連)。これは別に問題ではないのだが、同サイトは、損得抜きにゲームを批評するコアゲーマーが多いと認識していたので、「4gamer.net」でもこういうことが書かれる時代になったのかと感慨深くなった。
追記 4gamerでも対応をとった模様で、レビュー本文は招待IDが書かれているものの、見出しに招待IDの書かれたレビューは削除されたようである。
会社情報
- 会社名
- 株式会社スクウェア・エニックス
- 設立
- 2008年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 桐生 隆司
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)