【インタビュー】「目先の売上でなく新しさと楽しさを追求したい」 『ドラゴンネスト』開発者Chris Lee氏が設立したCARBON EYEDの戦略に迫る



CARBON EYEDというと、日本ではまだ馴染みが少ないが、大ヒットアクションRPG『ドラゴンネスト』を開発したEyedentity Games創業者のChris Eunsang Lee氏がNHN Entertainmentの代表取締役社長を務めた後、2014年4月に設立したゲーム開発会社だ。

その後、長らく沈黙を守っていたが、先日、新作発表会「OPEN EYED」が行われた。当サイトでも報じたように、韓国ソウルで行われた新作発表会は、『Knights Fall』をはじめとする開発中の3タイトルがお披露目となった。

今回、創業者でCEOのChris Eunsang Lee氏と、かつてNHN Entertainmentで『LINE POP』シリーズの開発を主導し、開発部門を統括するHyuk Jung氏にインタビューを行い、CARBON EYEDと開発中のゲームの紹介をしてもらうとともに、韓国でのリリース時期、そして気になる日本展開についても話を聞いた。

 
▲CEO Chris Eunsang Lee氏(写真左)、PD Hyuk Jung氏(写真右)


 
■CARBON EYEDは「楽しみ」を重視したゲーム開発会社

――:本日はよろしくお願い致します。まず、日本ではまだ知らない人も多いかと思いますので、CARBON EYEDのご紹介をお願い致します。

Lee氏:会社を立ち上げた経緯ですが、前職での悩みが基盤となりました。本当にやりたかった仕事は、ユーザーに提供する楽しみや面白さを追求することだったのですが、実際の業務の中で使える時間は5%くらいでした。残りの95%は、株主への対応や管理といったところに使っていました。会社を立ち上げたのは、そんな理由からです。

また、当社は、ユーザーにゲームの楽しさや面白さを提供することを重視していますが、作る側としての楽しみもとても重要視しています。いま50人の開発スタッフが在籍していますが、50人が実際に作りながら楽しんでいると思います。「楽しむこと」が会社としての哲学であり、目標であり、信念なのです。



――:CARBON EYEDという会社名の由来を教えて下さい。

Lee氏:CARBON EYEDという社名をご覧になると、反抗的なイメージを持たれるかもしれません。私たち人間の生活では「酸素」が一番重要です。そして、次に重要なのがカーボン、つまり炭素です。ゲームというのは、炭素のような存在であると捉えています。そして、会社名は、酸素を作る目ではなく、カーボンを作れる目を持った集団でありたい、という意味を込めました。新しい素材を創りだす、という企業倫理を持っています。


――:なるほど。CARBON EYEDのモバイルゲーム業界における強みはどういった点にあると考えていますか?

Lee氏:スマートフォンのゲームアプリは、手軽にインストールして遊ぶことができ、そして、ユーザー同士も容易に交流できます。また作り手目線では、新しいモノやアイディアが出せるプラットフォームであると考えています。いままでのPCゲームや家庭用ゲームソフトは特定の場所で遊ぶものでしたが、スマートフォン市場では、今いる場所がゲームで遊べる環境です。そういう環境に最適なゲームを開発して提供できるメンバーが揃っているところが当社の強みだと考えています。特に開発プロデューサーは、スマートフォン市場が始まった時からスマートフォンゲームの開発に携わっており、まさにスマートフォンの市場を考えて作ることができます。


 
■『Knights Fall』と『Tiny Fall』はいままでにないジャンルのゲーム

――:「OPEN EYED」と銘打って記者発表を行いましたが、その内容を簡単に教えていただけますか。

Lee氏:記者発表は、CARBON EYEDとして韓国で初めての公開での発表の場となり、3つのタイトルを公開しました。メディアからの関心も高く、記者発表会には実に50社の記者に来ていただきました。ゲームを披露すると、最初は不思議な空気が流れましたね。そこから面白さを理解していただき、記者の皆さんにゲームのジャンルについても決めていただきました。

 

――:本日発表した3タイトルを拝見しました。どれも非常に作りこまれていて、いままでにないモバイルゲームになっていると思いました。あらためて3タイトルの特徴を教えてください。

Jung氏:まず『Knights Fall』は、戦場と戦闘、そして、そこで行われる大規模な戦場をいままでとは違う方法で、スマートフォンゲームとして再現したいと思いました。鉄と鉄がぶつかるときの火花や、殺されたときの血の飛び方、100対100で戦うスケール、兵士が動くスピードの4つの要素を除いては、全て切り捨てようと考えました。

ゲームの内容は、指で兵士を飛ばして、兵士たちが戦うシンプルなものです。シンプルなゲームなのですが、レベルデザインは"圧縮"されており、ちょっとした要素が足りないだけで、クリアできない、といったこともあります。また、非同期 PvP で領土を略奪し合う「征服者モード」と、主人公「キアラ」と「アルノ」のストーリーが進行する「シナリオモード」があります。シナリオモードでは、本棚から本を開くとステージが5~6個登場します。

 


――:続いて『Tiny Fall』はいかがでしょうか。

Jung氏:『Tiny Fall』は、基本的なゲームシステムは『Knights Fall』と同じです。『Knights Fall』を社内テストした際、反応も良かったんですが、女性社員たちから、シンプルで爽快感のあるゲームだし、もっとカジュアルに作ったら多くの人にアプローチできるのでは、という意見がありました。そういった意見をきっかけに作り始めました。背景や世界観、キャラクターだけでなく、ゲーム内容もカジュアルに向けて修正しています。
 


――:最後に『Gigant Shock』はいかがでしょうか。日本のユーザーはこちらに一番反応したように見えます。

Jung氏:『Gigant Shock』は、巨大なボスを倒すゲームをスマートフォンで実現したいと考えて開発したアクションRPGです。様々な職種から4名のキャラクターを選んで戦います。こちらも片手で遊べるゲームで、押してパワーをためて攻撃を行います。目標としては簡単な操作で打撃の爽快感を得られるとともに、戦略を練って遊べるようにすることでした。例えば、戦略面では、魔術師が相手を凍らせて爆弾兵が爆弾を設置して爆破するといった戦い方です。協力プレイが重要で、全ステージと全ボスでリアルタイムで最大3人による協力プレイも楽しめます。自動戦闘を採用していないところもポイントです。
 


――:記者会見ではどういった質問があったのでしょうか?

Lee氏:先に紹介した2タイトルについては、どういうジャンルなのかという質問をされましたね。そして、ゲームに関するご意見としては、「とてもシンプルなゲーム。だからこそ、深みにたどり着ける」といわれました。記者の方の反応を見る限り、最終的には楽しいゲームと思ってもらえたようです。韓国では自動プレイのRPGが多いのですが、発表したゲームはどれも新しい挑戦と良い印象を持っていただけたと感じました。

Jung氏:あとは、お金をどうやって稼ぐのかと聞かれました。シンプルな中にもちゃんとした課金モデルをおさえています。実際にステージに入るときに持っていくアイテムや、手詰まりになった時に使えるアイテムなどを考えています。少なくとも、お金を使わないとゲームが進まない、強くなれない、といった課金モデルにはしたくありません。



 
■第1弾の韓国リリースは秋 日本展開は十分準備してから

――:今後の展開を教えて下さい。『Knights Fall』が最初のタイトルになるかと思いますが。

Lee氏:『Knights Fall』は、ほぼ完成している状態です。4月からソフトローンチを行い、完成度を高めながら秋ごろに韓国でリリースしたいと考えています。日本展開についてですが、韓国にとっての日本は、隣国でありますが、『ドラゴンネスト』などの思い出もあって、特別な意味があります。このため、日本市場に熟知している、経験の豊富なパートナーを組み、日本のユーザーの意見や嗜好を反映させるなど、しっかりと準備したうえで展開したいと考えています。
 
▲記者発表会「OPEN EYED」でプレゼンテーションを行うLee社長。


――:日本にないタイプのゲームにみえますので、待っているユーザーも多いと思います。

Lee氏:ありがとうございます。見た目やゲームプレイはもちろんですし、ガチャがない点について違和感を持たれるのではないかと心配しています。ただ、ゲームの面白さへの感覚は、国ごとに大きな差はないだろうと思います。新しい体験を毎日提供するようにしていきたいです。


――:韓国のスマートフォンゲームの市場についてどうご覧になっていますか? またそのなかでどういう存在を目指していますか?
 
Lee氏:韓国の市場は、すごく巨大な会社とインディーズの会社に二極化しています。大きい会社も小さい会社も資金面や売上に関する悩みが大きく、市場としては停滞しているように感じます。そのなかで、我々は目先の売上というよりも、ユーザーに楽しみを提供することに集中してゲームを作っていく、数少ない会社のひとつになりたいと考えています。

韓国市場は、資金力があれば制圧できるようなマーケットです。そういう経緯もあって、同じようなゲームがどんどん出ています。体力のあるところが有利な状況ですが、新しさや楽しさを追求する姿勢でもヒットさせることができることを示したいですね。アメリカの友人にゲームを見せた時、初めて見たゲームと言われました。そして、韓国の会社がつくったことに驚かれました。いいことなのかどうかわかりませんが、とりあえず気分は良かったです(笑)



――:最後にCARBON EYEDが日本のスマホゲーム市場をどう見ていますか。

Lee氏:日本はゲーム産業の歴史がありますし、市場規模も非常に大きく、世界でもメジャーな市場のひとつと考えています。そして、それに連れて、ユーザーも成熟しています。同じようなゲームよりも、新しいシステムや挑戦が好まれる市場だと思っています。当社は、新しい挑戦をしている会社だと思っています。その意味で、日本のユーザーと当社の考えが一致できるように頑張りたいです。大きい市場だから、隣の国だから、というよりも、ユーザーが求めるものを満たせるように当社も取り組んでいきたいですね。


――:リリースを楽しみにしています。ありがとうございました。


 
■関連サイト
 

企業サイト




Copyright ⓒ Carbon Eyed Inc. All Rights Reserved.