「世界に、“一番のワクワク”を届ける」をミッションとし、スマートフォン向けゲームの企画・開発・運営を行っているゲーム会社、f4samurai。
秋葉原に拠点を構える同社は、世界観の構築に強みを持ち、『オルタンシア・サーガ -蒼の騎士団-』(『オルサガ』)をはじめ、『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(『マギレコ』)、『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』などを手掛け、いずれもヒット作として覚えている人も多いだろう。
そんなf4samuraiのゲーム開発はどのようにして行われているか。今回、gamebizでは、そんなf4samuraiの開発環境を、同社マスコットであるエフフォーくんと探る「f4samuraiマガジン」を特集掲載していく。同社がヒット作を輩出するその秘密について探ってみた。

皆さん、こんにちは! f4samurai・エフフォーくんです。
f4samuraiは2025年1月に会社設立15年を迎えました。
2019年の10周年スペシャルトークに引き続き、役員3名が座談会を行いました。
前回の鼎談から15周年までを振り返り、大型タイトルのリリース直後コロナ禍となったこと、新卒採用が始まったこと、マネジメント層への権限移譲などについてトークが繰り広げられました。そこから、設立当初から変わらないf4samuraiらしさ、f4samuraiが目指す未来について話が広がります。どうぞお楽しみください。
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【目次】
15周年を迎えて
(左より田口・松野・金)
ーー:会社設立15周年、おめでとうございます。15周年パーティーの最後に流れた映像がとても素敵でしたね。
松野
15周年パーティー、すごく良かったよね。参加したみんなが楽しそうで。
金
立派な会場だったけど、著名な方やゲストを一人も呼ばず(笑)それが、かえってうちの会社らしいというか、温かい雰囲気で、すごく楽しい時間だったよね。
松野
田口は最後に流れたムービーを家でも見てるんでしょ?
田口
家でお酒飲みながら何回も見返した(笑)。
金
ムービーを作るとき、会社を退職した懐かしい顔ぶれも映像にいれたんだけど、短い間でも一緒に働いた人たちのことも大切だという気持ちを込めました。テーマは「感謝」ということで。
大型タイトルのリリース直後、コロナ禍へ
ーー:では、15周年、ということで、10周年のインタビューからのアップデートをお話しいただきたいと思います。大きな出来事としては何がありましたか?
松野
やっぱり一番はコロナですかね。2020年3月末からフルリモートにしたので、会社としては割と素早く対応できたんじゃないでしょうか。最初はコミュニケーションが取りづらくなって、ちょっとぎこちない雰囲気もあったけど。
金
コミュニケーションが減ったというのはあったけど、全社一律でリモートワークに突入したので、社内で温度差がある状況ではなかった気がするな。
松野
会社全体でリモートワークにできた、というのは大きいよね。ただ、昔から会社にいる人たちはそれまでの関係性があったからいいけど、コロナ禍に入社した人は関係性も何もない状態からのスタートで、大変だったと思う。
金
僕は「もうコロナ禍というのはしょうがない」と受け入れたあとは、そんなにもがいてどうにかしようとは思っていなくて、粛々と過ごしていた感じ。
ただ既存のタイトルは運用し続けていたので、社員のみんなには頑張ってもらってありがたかった。
経営面では、人がオフィスに来ないのに家賃が毎月かかってもったいないなとか思っちゃったけどね。
田口
業績の面で言うと、売上自体はコロナ禍の影響をあまり受けなかったね。ただ、大型のIP(版権)タイトルを3月にリリースして、3週間後に緊急事態宣言。あのタイミングでリリースができたのは本当に運が良かったと思う。
そのタイトルがヒットしたこともあって、コロナ禍でも社内が暗い雰囲気にならずに済んだ、というのは会社にとって大きかったね。
松野
あの頃、世の中は「オフィスをなくしていこう」という動きもあったけど、うちは一切考えなかったよね。みんながオフィスで働く日は絶対戻ってくるからって。
対面で打ち合わせするほうが効率いいところがあって、それは空気感で伝わる情報量が多いということ。リモートでは空気感が伝わらなくていろいろ欠落していく情報があるから、そこで少し非効率になったりはしたかも。テキストコミュニケーションに慣れている組織ではなかったし……。
金
軽い話題はオフィスで話すのが楽なんだよね。「今いいですか」って言って。
リモートだと、ちょっと聞きたいだけのことでもニュアンスを伝えるのが難しいからチャットで聞くのが億劫になって、つい後回しにしちゃったり。
田口
逆にリモートになって、個人の作業に集中できるという良さもあったよね。子どもがいる人は、学級閉鎖になったから子供が家にいるとか、保育園の迎えがあるから早めにあがりますとかで柔軟に対応できたり。
そんな日々を過ごす中で、業務時間中だけど子供とちょっと遊ぶ時間があるっていいじゃん、と思ったなあ。とにかく、生活と仕事が混ざり合った時期だったよね。
金
そこから2023年の5月に週3オフィス勤務になって、リアルの社内イベントも復活していったことで、会社の雰囲気も良くなったんじゃないかな。
松野
顔見知りが増えて、仕事の相談がしやすくなったという人もいたよ。
コロナ禍でできていなかった職種ごとのランチ会とか、プロジェクトごとの懇親会とか、部活動とかがまた開催されるようになったのも良かったよね。
田口
週2日はリモートだから、リモートの良さも残っているしね。
新卒採用開始からこれまでのあゆみ
ーー:初めての新入社員が2020年に入社したということで、コロナ禍で新卒入社の方はもちろん、受け入れ側もきっと大変でしたよね。
松野
本当にてんやわんやでした(笑)。入社式もできなかったし、初めての新卒研修もオンラインでした。
次の4月に入社する新卒社員が6期目になるけど、どんな人がf4samuraiに入ると双方にとって幸せになるのか、少しずつ分かってきたんじゃないでしょうか。
田口
最近は採用の仕方が変わってきたよね。飾らないありのままのf4samuraiを伝え、たくさんのメンバーに会ってもらい、雰囲気を感じてもらうこと。それを良いと感じてくれる方に来てもらえるようにする、というのは意識しているかな。
でもコロナ禍だと会社の雰囲気の良さって半減するし、採用活動も新卒の受け入れも難しかったのかも。フルリモート勤務に振り切った会社なら、もっと組織が整備されていて、ルールも明確で、自分のやるべきことがはっきりしていた方が新卒のメンバーにとっては動きやすいんだと思うけど。
うちはその時々の状況によってルールを変えたり柔軟な対応をしようと思っていたけど、結果として少し混沌としていたのかも。他にも理由はあると思うけど、コロナ禍の採用活動や定着は良いとは言えなかったね。
でも、悲観的になることはなくて、f4samuraiの雰囲気が合わないなら、それはそれで仕方がないことだし。やっぱり合う環境で働けるのが幸せだろうなとも思う。
金
うちに残った新卒メンバーは、いま活躍している人が多いしね。
松野
新卒採用も最初は「いい人そう」「会社に合いそう」とか基準が漠然としていたけど、徐々に「どういう人が活躍できそうか」というイメージの精度が上がってきて。「優秀でも会社の文化に合わないかもしれない」「人柄はいいけどスキルが足りなくて苦労しそう」とかは、見極められるようになってきた気がする。
金
僕ら3人も必ずどこかの面接には参加するから、だんだんと採用の感覚も合ってきたように思う。
やっぱり新卒採用の目的は、同じ船、同じバスに乗れる仲間探し。新しい風を入れたい気持ちもあるけど、そのバランスは調整が必要で……。あまりにも会社の文化に合わない人は、うまく馴染めない可能性があるからさ。
松野
新卒の受け入れも、毎年少しずつ見直しています。
研修が終わった後の配属先プロジェクトや、インストラクター・メンターを誰に担当してもらうか、また新卒にどのくらいの仕事を任せるかなど、人事と現場のメンバーが話しあって決めているので、受け入れ体制も良くなっているんじゃないかな。
マネジメント層が厚くなり権限委譲が進んだ
金
部長やマネージャーなどの役職を作ったから、新卒育成だけでなくいろんな課題や問題に対してみんなでフォローできるようになってきたよね。チームとして成長していってる実感があって、それが嬉しい。
ーー:の組織マネジメント体制になったのはいつからですか。
松野
正式な制度としてできたのは2024年から。だけど、もっと前からマネジメント自体は移譲してきてます。
人数が少なかった頃は、部長やマネージャーという役職はなくて、職種の取りまとめ役として職種リーダーがなんとなく決まっていました。今は人数も増えてきたので、部長やセクションマネージャー、サブマネージャーといった役職を作りました。実態に合わせて役割を明確にしたという感じですね。
金
組織として自然な流れで、入社年次や役割、それぞれの力量に応じて任せるようになっていった、という感じかな。
10年以上、役員3人が中心となって組織のマネジメントをしてきたけど、それだけではスケールしないんですよね。人が増えてくると、僕たちの目が届く範囲に限界がくるから。今はマネジメントと評価は直属のマネージャーに任せていて、それを信頼している。
任せることで、必要なコミュニケーションが増えるから問題は起きるんだけど、成長痛のようなものだと思ってる。
松野
マネージャーの評価はかなり参考にしているよね。最終的には全社でバランスとるために、職種に関係なく社員全員の評価を横並びにして、役員と部長陣で評価を調整しているけど。例えば、あるマネージャーは評価が甘くて、別のマネージャーは厳しくてというような場合は調整が必要。でも逆に言うと、それくらいかな。
金
評価の基準について同じ感覚を持っている人が多い組織は強いと思う。僕たちの感覚と同じような感覚で、直属のマネージャーが「今回はあなたの評価は厳しくなったけど、こういう理由だから、次は頑張ろう」と言えるなら、組織として前を向いて成長できるってことじゃない?
「ここを頑張ってほしい」という思いがあるからこその評価なので、伝え方やなぜそういう評価になったのかという納得感を双方向でやりとりできるといいよね。
松野
マネジメントや評価だけじゃなく、業務についても権限委譲が進んできて、いい傾向だなと思ってる。例えば人事関係の業務も、僕担当だったものを人事マネージャーに任せたり。
田口
ゲーム事業もある程度移譲ができるようになってきたとは思うけど……。ただ、ヒット作を生み出すのは簡単ではないから課題もあるかな。
ただ最近は、外部から優秀なディレクター人材が中途入社してくれるようになってきたよね。
松野
ディレクター人材の層が厚くなって、組織としても成長してきたね。
田口
今は一人のディレクターだけで面白いゲームが作れる時代ではなくて、特に大型タイトルはチーム全体で作り上げていく時代。とても一人では支えきれない。だから、それぞれ得意分野の違うディレクター経験のある人たちが、支え合ってゲームを作っていける体制になったのは大きいかな。
トップディレクターがいて、その下にも複数のディレクターがいて、各職種にエース級の人材がいて、みんなで協力して作っていくのが理想だね。
ただ、ディレクターは個性が強いことが多いから、組織論や論理だけでまとめるのは難しい。
例えば絵が上手い芸術家って、必ずしも協調性があるわけではないじゃん。でもある程度はそれでいい、絵が上手ければ(笑)。協調性を過度に求めると窮屈になってしまうんだけど、良いものを作ろうという思いを伝えていると、ピュアな気持ちで自然と協力してくれる。そういう雰囲気で進めていきたい。
単にチームワークを強調するというより、個性を活かせるように会社の懐は深くないといけないなと思う。
松野
「あのタイトルの成功は、ディレクターだけでなく、優秀なメンバーがいたから」ということも多いよね。もちろんディレクターの存在は重要なんだけど、ディレクター以外の層の厚みを増やすことも大事だね。
f4samuraiのゲーム開発と組織の未来
ーー:現時点で開発に取り組んでいるタイトルのお話をお願いいたします。
田口
今、運用しているタイトルが、2020年にリリースされた大型IPタイトルと、2022年リリースの『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』。
開発中のタイトルでいうと、2024年にサービス終了したマギアレコードのキャラクターやシナリオを3Dで楽しめる『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』(f4samuraiはシナリオ制作、Live2D制作、作品監修を担当)が2025年3月にリリースされます。あと2本、新規タイトルの開発が進行中です。
松野
どちらもIPもので、一つは2D、もう一つは3Dだね。
金
スマホゲーム業界も、年々ゲームに対する要求レベルが高くなってきたよね。3Dも当たり前に使われるし。
そのクオリティや最先端の技術にどうやってついていこうか、頭を悩ませているけど(笑)。
田口
僕たちはヒット作を出し続けるしかないので、常にそこに向き合っている感じだよね。目の前のゲームを面白くすることに集中するというか。
なので僕は新作のゲーム開発に専念してるんだけども……。その先の希望をいうなら、世界で1000万人規模のゲームを作れたらいいな。あと、オリジナルのタイトルを作ってヒットさせたい。
あと、金がやってる新規事業が成功してほしい(笑)。
金
新規事業は頑張って進めていくよ(笑)。
うちの会社はゲーム一筋だったけど、ゲーム以外の可能性も追求したいと思っていて、そこで成果を出したい。
あと社内については細かな課題はもちろんあるけれども、良い雰囲気が保たれていて、f4samuraiらしさを活かしながらモノづくりができていると感じるかな。最近はマネージャー層も厚くなって、問題解決もしやすくなってきたしね。
松野
最近、社員のインタビー記事を読むと、意識の方向性が揃ってきているなと感じてて。
みんなが「会社の空気感」とか「モノづくりに対する真摯な姿勢」といった、似たような価値観を持つようになってきて、それは良い傾向だと思うんだよね。その記事を読んで、僕たちの会社にマッチする人が入社してくれるようになったのはとても嬉しい。
ただ、まだまだ権限の委譲ができていないところもあるし、プロジェクトがもう少し独立して動けたほうがいいんだろうなと思うこともあって。今まで明確になっていなかったプロジェクトマネージャーという職種を定義して採用もして、体制の改善を進めている真っ最中。
これからも僕たちなりのバランスで、より良い仕組みを作っていけたらいいね。
感謝のコメント
ーー:これまでf4samuraiに関わってきた方々へのメッセージをお願いいたします。
松野
今いる社員だけではなく、例えば経営がピンチだったときにセガさんに助けていただいたり、いろんな人のおかげで今の立ち位置や成長があるなと思っています。あとはすでに退職された人についても、当時一緒に頑張っていただいたから今があるのだと思うので、ただただ感謝しています。
田口
昔、飲み会で「今こうして良いお店で食事ができるのは、いままでにいた人たちが頑張ってくれたからだ」と話してくれたメンバーがいてさ。
その言葉の通り、過去の積み重ねがあって今があるよね。過去への感謝を胸に、これからの5年、現在いる200人でどう面白いものを作れるか、どう幸せになれるかを一緒に考えていきたいと思います。
金
やりたいことが明確にあって、みんなで前に進めていける状況にはあるんだよね。10周年のときにも言ったんだけど、10年以上生き残れるベンチャー企業はわずかしかないんだよ。生き残れて本当に幸せだと思ってる。
f4samuraiには人との縁を大切にする社員が自然と集まっているよね。関わってきた方々とは何かしらの縁で繋がっていて、その縁に感謝してるし、今後も大切にしていくつもりです。
ーー:20周年を迎えた時、どういう話をしたいですか?
金
今回はそういう話はしなかったけれど、20周年のときは「僕たちはすごいことをやってきた、できたんだ」と、胸を張って言えるようになっていたい。
これからの5年間で、新しい可能性を追求して、ワクワクしながら取り組んでいきたいです。
他にも、f4samuraiではnoteおいても開発環境について発信している。気になる人は以下のnoteでチェックしてみよう。
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