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【CEDEC 2019】開発・ローカライズの視点から『アナデン』海外版のリリースを振り返る 国内コンテンツ開発チームに影響を与えないための工夫とは

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コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2019」(CEDEC 2019)を開催した。
 
本稿では、9月6日に実施された講演「アナザーエデン / 日本でコンテンツ開発を継続しつつ、海外でリリースするためにしてきたこと」についてのレポートをお届けしていく。
 
本セッションには、グリー・Wright Flyer事業本部 Technical Directionチーム テクニカルディレクターの西田綾佑氏と、グリー・Wright Flyer事業本部 Game Publishing部 マネージャーの長谷川彦氏が登壇。2017年に国内にリリースした『アナザーエデン 時空を超える猫』(以下、『アナザーエデン』)において、国内での開発体制に影響を与えず、2019年に北米、アジア、ヨーロッパなど、42の国と地域にリリースするためにしてきた工夫・知見について、開発・ローカライズの視点から紹介した。
 

▲グリー・Wright Flyer事業本部 Technical Directionチーム テクニカルディレクターの西田綾佑氏。国内版『アナザーエデン』の開発に携わった後、海外版『アナザーエデン』ではキックオフ時から設計を担当した。
 

▲グリー・Wright Flyer事業本部 Game Publishing部 マネージャーの長谷川彦氏。入社以降QAやCSを担当してきたが、現在はローカライズを任されており、海外版『アナザーエデン』ではPMも務めている。
 

■国内のコンテンツ開発を継続しつつ、海外でリリースするためにしてきたこととは

 
冒頭でも紹介した通り、『アナザーエデン』は現在42の国と地域で配信されている。
 

▲海外版は、英語、繁体字、フランス語、ドイツ語、韓国語などに翻訳されている。ボイスは日本語と英語を収録。
 
まず西田氏は、『アナザーエデン』の国内開発チームは海外版を意識することなく、今まで通りコンテンツ開発を進めていると述べる。ここに至るまでに「システム面の対応」と「ローカライズ対応」をどのように行ってきたか、両軸から紹介していくと改めて本講演のテーマを紹介した。
 
話は遡り、国内版『アナザーエデン』が配信されたのは2017年4月。シングルプレイ専用のスマートフォンRPGでコンソールライクなゲームとして、オートセーブや大規模なイベントスクリプトを導入してリリースされた。当時は前例のない枠組みでホーム画面も存在せず、開発チームはリリースギリギリまでクオリティアップを図っていたのだとか。リリースするまではユーザーの反応が分からない状態だったため、そもそも当初は海外のリリースなどを見据えた設計にはなっていなかったという。
 


▲まずは国内にリリースしてから、という考えであったためソースコードにも日本語が混じっている。
 

▲国内版リリース時の状況。ここから、海外版をリリースしつつ、国内版の開発も変わらずに続けるということが可能なのだろうか……?
 
海外版を出すからには、然るべき設計が必要になると西田氏は話す。そこで、いくつか決めなければならないことがあったと下記の項目を挙げた。
 
・単純に言語を追加して、リリース国を拡大する?
・新たな海外プレイヤーは国内の最新コンテンツまでプレイできる?
・レギュレーションが違う気がする
⇒物語をカットする、キャラクターの絵は差し替える?
・現状の国内のコンテンツ開発では、できたらすぐ出す
⇒複数言語に翻訳して同時にリリースできるのか?
 
次に西田氏は、海外版リリースキックオフ時の国内コンテンツ開発チームの状況を下記のように紹介した。
 

▲複数のバージョンのコンテンツを並行して開発しており、既に全力疾走で稼働していたため、ここに翻訳ありきの入稿環境の変化やスクリプト形式の変更、ドラステッィクな設計辺境は影響が大きすぎるという状況が見えてくる。
 
そこで、海外版リリースキックオフ時には「新たにグローバル版アプリを出す形」で設計。海外のプレイヤーの進捗状況に合わせてコンテンツを解放する仕組みにし、国内とは同時運営をしない方針に。しかし、翻訳できた順にリリースを進めていこうと考えた。そして何より、国内のコンテンツ開発チームには影響を与えない工夫を考えることを第一に開発が進められた。
 

▲国内開発チームが「いつの間にか海外版ができていた」と思える地点がゴールであると西田氏は話す。
 
ここからは、実際にこれを実現するために行ったシステム面の対応をいくつか紹介した。
 
・イベントスクリプト
まずはイベントスクリプトの対応について。『アナザーエデン』では、イベントスクリプトはLuaで記載されている。ストーリーはもちろん、バトルの特殊な演出やフィールドのギミック、Cloudのフィールドの特殊効果なども全てイベントスクリプトに集約している。コンソールの作り方に習って、イベントスクリプトに最大限の自由度を持たせてコンテンツ開発をしていると西田氏は説明した。
 


▲ほぼ全てのランタイム機能はLuaから触れるようになっており、リリース時は約60万行だったイベントスクリプトの行数は今や240万行を越えるまで膨らんでしまった。
 
また、よくある多言語対応のケースとしては、下記のようにメッセージキーに置き換えてしまうのがベターだが、イベントスクリプトの作業中にキャラの発話部分の内容が分からなくなってしまうため『アナザーエデン』では異なる対応を取ったという。
 


▲特に、メインシナリオライターである加藤正人氏はスクリプトを書きながらリアルタイムに発話内容を考えているため、ここでメッセージキーに置き換えるのは良くないと判断したとのこと。
 
そこで、『アナザーエデン』では日本語をキーとしてランタイムで置換するという手法を導入していると紹介した。
 



▲これにより、スクリプターは今まで通り日本でコンテンツ開発が行える。フィールドの状況や発話内容も把握できるというメリットがあるので、こちらの手法を採用したとのこと。
 
・数、複数形対応
こちらは、どのようなプロジェクトのローカライズでも確実に話が挙がるトピックだと西田氏は言う。例として、実際にあるイベントの中から「~の数は○枚だ」と変数に置き換えて説明した。
 

▲ここで問題となるのは、単数形と複数形の変化、そして順番の変化である。言語によってはアイテム名と数が逆になることもあるため、インデックスを貼ることで対応した。翻訳者は{1}、{2}の変数を活かした状態で翻訳テーブルを埋め込んでいる。
 

▲最終的にスクリプターはこのような形をLuaで記載している。
 
そのほか、英語の数値表記をドイツ語・フランス語に対応したり、韓国語の男性名詞・女性名詞、繁体字における文脈上のYes、Noの違いなどにも対応した。
 

 
・UI言語切り替え、UIテクスチャ切り替え
続いてはUI関連について。
 

▲ソースコードに埋め込まれている日本語については粛々と手作業で対応するしかないようだ。
 
テクスチャについては、各言語のアトラスを作成することがよくある対応ではあるが、それでは各言語の画像・言語が埋め込まれていない画像を変更するために各言語のアトラスを作成する必要が出てしまう。スマホゲームにおいては、全員が常にWi-Fiに繋いでいるわけではないため、各言語のアトラスを作成して全員にダウンロードさせるのは良い選択肢ではないと西田氏は述べた。
 
そこで、まずUIにテキストが埋め込まれているテクスチャがどれくらいあるかを調査。その結果、数は50個ほど、サイズは約30MBで多くはなかったため、海外版にもUIのアトラスは日本語のものを使用することとなった。そのうえで、テキストが埋め込まれているものはアプリにバンドルして表示時に各言語を上から貼り付けるという対応を行った。
 

▲日本語のUIのアトラスを読み込み、ランタイムで差分のテクスチャを上貼りしている。最もシンプルで愚直な方法だが、今回の『アナザーエデン』においてはこれが最適だと考えて実装したとのこと。
 
・マスターデータ
マスターデータは、アイテム名、キャラクター名、フィールド名などゲーム内のあらゆる固定データは全てエクセルで入稿している。現在は37ファイルに256枚のシートが存在しているという。また、これらは全て日本語で定義されており、翻訳データは埋め込まれていない状態である。
 

 
最もシンプルな対応としては翻訳カラムを追加していくことだが、それでは国内開発チームが使用しているエクセルファイルが巨大化して見づらくなってしまう。翻訳者がマスターデータに触れてしまうという危険もあるため、既存の構造は変えずに対応していくこととなった。具体的には、下記の手法で国内のコンテンツ開発チームに影響を与えることなく翻訳を行うこととした。
 

▲現状は大まかなセクションごとにファイルを分けており、シートごとにテーブルを作成している。そこで、新たに各言語のディレクトリを作成し、翻訳対象のレコードのみ新たなエクセルで再定義する形とした。これにより、グローバルIDとシート名があれば任意のカラムのデータを再定義できるようになっている。
 

▲エクセルには制約がないため、例として次回のコンテンツリリースに必要なものをエクセルにまとめておいて、差分を追加していくということもできる。
 
・コンテンツ解放制御
冒頭でも説明があった通り、『アナザーエデン』のコンテンツ開発はできたらすぐに出すという形を取っており、ネタを寝かせるということがあまりなかった。そのため、翻訳時間を考えると国内版と足並みを揃えることは難しい。そこで、海外版は翻訳ができた順にコンテンツ解放していくことになり、そのための手段が必要となった。
 
そこで行ったのが、海外版ではゲーム起動時にbootstrap.luaを読み込むようにするということ。こちらで指定のメインストーリーを非解放にしてゲームの進行を止めたり、指定のクエストのフラグを立たないようにすることができる。
 


▲bootstrap.luaの中身はこのようになっていると紹介した。
 
・インフラ構成
最後はインフラ構成について。『アナザーエデン』では、ほとんどのデータがクライアント主導で作成されており、サーバーのAPIは効果がないという。サーバーリクエストのほとんどはバックグラウンドのAPIコール(オートセーブ)で、レイテンシがさほど問題にならないと説明した。
 


▲こういった非同期オートセーブを採用しているため、通信状態に関わらずゲームプレイが続けられるようになっている。
 
通常はできるだけプレイヤーがいる国に近いサーバーを用意するものだが、『アナザーエデン』は先ほども紹介した通りレイテンシの要求が低いので細かく接続先を分けているわけではないと西田氏は述べた。そのため、海外はシンガポールとオレゴンの2本に絞った構成となっている。
 


▲極端な話ではあるが、南極からシンガポールのサーバーに繋いで遊んでいる人もいるのだとか。
 
ここからは長谷川氏が登壇し、ローカライズの視点からどのような対応を行ってきたかを説明した。まず長谷川氏は『アナザーエデン』の対応を見る前に、組織体制について、既に海外版をリリースしている、または準備をしているプロダクトが複数あったため、社内には翻訳者が点在していたと話した。そこで、まずは翻訳者を1つのチームに集めることから始めたという。
 

 
翻訳者の主な作業は以下の通り。先ほど西田氏からも説明があった通り、Excel上で渡された日本語の原文を基に翻訳を埋め込んでいる。
 
・主にExcelに原文である日本語を取り込み各言語に翻訳している
・フランス語、ドイツ語は当初英語から翻訳していたが、現在は日本語から直接翻訳
・入稿はエンジニアとフローを決めて実施している
 
さて、『アナザーエデン』の翻訳においては、シナリオ班より作中の時代設定に合わせた翻訳を行って欲しいという指示があったと話す長谷川氏。そこで、翻訳時は各言語で下記のようなバリエーションを持たせた。
 

▲「未来」に関しては、スラングや流行語を意識したものの、やりすぎるとゲームの世界観から外れてしまうためバランスに苦労したと語った。
 
続いては校正に関して。これは、基本的に各言語のネイティブ翻訳者を1.5名ほど配置している。流れとしては、「翻訳ベンダが下訳」→「GREEに納入」→「『アナザーエデン』の担当翻訳者(Native)が納入チェック」→「他のプロダクト担当翻訳(Native)がReview」という形で行われているという。下訳に関しては文字数が多いため外部に依頼したり、細かなミスや些細なニュアンスの違いなどをチェックするために他のプロダクト担当翻訳がレビューしたりしている点が特徴となっている。
 
また、単純な誤字・脱字や句読点の位置に関しては外製ツールを利用している。翻訳データ上に問題がなくても、実装すると長くて文字がはみ出してしまうといったことがあるため、実装後に実機で確認して同様の意味になるよう短く修正することもあるという。
 


▲翻訳元のデータは、メインストーリーに関してはストーリー順になっているため翻訳しやすいが、イベントスクリプトのデータなどはどのタイミングで発話されるものか分からない。ここは、ゲームのやり込みや原文の読み込みなど、翻訳者の知見を活かしつつ進められたという。
 
次に長谷川氏は、上記の流れの中で問題となったトピックをいくつか取り上げた。
 

▲翻訳を行う中で、気付かぬうちに国内版の日本語が変更されていたケース。これを防ぐため、日本語側に変更があった場合は、毎日テキスト一覧として出力を行うように対応した。
 

▲上記スライドでは日本語を縦読みするケースを紹介。こういったネタ的な要素が各所に散りばめられているため、各言語でどのように表現するかが難しいところだという。
 
・カルチャライズ
ここからはより踏み込んだ内容として、リリース先国の文化や習慣に合わせた翻訳「カルチャライズ」についてもどのように行っているかを紹介した。ここでは、第一に各国の法律を調査して守りつつも、現地の文化に合わせてどのようにゲームの楽しさを融合させていくかということを考えたという。その際、保守的になりすぎてしまっては『アナザーエデン』の面白い世界観が伝わらない可能性があるため、場合によっては冒険をした部分もあると長谷川氏は話した。


▲緑は北米でドラッグや怪物の血液を想起させる色となるため、海外版では青に変更している。
 

▲キャラの露出が激しいために調整を行ったケース。国によってはスカルの表現も良くないとされることがあるが、リリース先が限定的だったこともあり冒険をしてみたとのこと。今後、リリース先を追加する際には変更が入ることも考えられる。
 
以下はテキスト上の変更について。
 

▲苦みを強調させる要素としてタバコの代わりにコーヒーで一服といったニュアンスにしたり、ドラッグのような効果があるものは「エナジードリンク」と表記するなどして対応している。
 
また、オリジナルである国内版『アナザーエデン』の面白さを世界に広めるという目的もあり、キャラ絵やSDキャラデザインは居住国ごとにカルチャライズはせずにグローバルで統一しているという。サウンドに関しても、日本語・英語の両方を選択できる形にしている。
 

▲2019年8月時点でAPは7割近く、EUでも約半数のユーザーが日本語でプレイしているという結果が出ている。
 
・法律
最後は法律について。規約対応は、リリース先国の法律に合わせつつ、なるべく包括的となるような規約を作成。『アナザーエデン』チームが規約作成で培ったノウハウを他のプロダクトでも使えるよう汎用的な内容に落とし込んでいるという。また、現在は6言語で作成しているが、調査費や作業コストを抑えるためにも言語×リリース先国というマトリクスをいかに小さい値に収めるか、法務部と刷り合わせを行いながら規約作成を行ったと述べた。
 
欧州圏にリリースする際のGDPR対応は以下の通り。
 

▲例えば、スペインだけはスペイン語で製品情報を記載してスペインにリリースしなければならないという法律があるという。
 
最後に、改めてローカライズと開発の視点から、本講演の内容を以下のスライドにまとめた。
 

▲翻訳者には、1週間~10日間ほどゲームをプレイするだけの時間を取り、ゲームへの理解を深めてもらっている。その際、テキストは一切飛ばさずに読むことを推奨している。
 

 
こうして、『アナザーエデン』は国内版のコンテンツ開発に影響を与えず、海外版をリリースすることに成功した。チーム内では「もう出来てるじゃん!」といった反応も見られたため、一連の施策は成功と言えるのではないかとまとめた。

 
(取材・文 編集部:山岡広樹)


■『アナザーエデン 時空を超える猫』

 

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企業情報(株式会社WFS)

会社名 株式会社WFS
URL https://www.wfs.games/
設立 2014年2月
代表者 荒木英士
決算期
直近業績
上場区分
証券コード

企業情報(グリー株式会社)

会社名 グリー株式会社
URL http://www.gree.co.jp/
設立 2004年12月
代表者 田中良和
決算期 6月
直近業績 売上高779億円、営業利益94億円、経常利益103億円、最終利益47億円(2018年6月期)
上場区分 東証一部
証券コード 3632

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