【インタビュー】新しさを追及するものづくりが面白さを生む…新作『ローリングスフィア』に詰め込んだHappy ElementsグループMiniascapeの挑戦

Happy ElementsグループのMiniascapeが、2020年2月20日にリリースを予定している第一弾タイトル『ローリングスフィア』。本作は、スマートフォンやタブレットを傾けて天体が擬人化した球体を操作し、オンラインマルチプレイで遊ぶアクションゲーム。
 
最大8人で最速を競うレース、最大16人で生き残りを争うバトルロイヤル、3人vs3人で得点の多寡を競うボールバウトといった様々なゲームモードや遊び方が用意されている。
 
本作は2度のオープンβテストや延期が行われたが、新しいゲーム体験の追求の為だと言う。多種多様なゲームが入り混じる昨今スマートフォンゲームにてオリジナルタイトル『ローリングスフィア』で目指しているものとは何か。
 
今回、Miniascape代表である岡田一郎氏にインタビューを行い、リリース目前となった『ローリングスフィア』を開発することになった経緯やゲームの構想、本作への想いについて語ってもらった。
 
 

■体制構築を経て満を持してスタートした『ローリングスフィア』制作

 
 
──まずは、Miniascapeを立ち上げるまでの岡田氏の経緯をお聞かせていただけますか?
 
私は元々、東京のゲーム会社でプロジェクトマネージャーをしていたのですが、ちょっとした縁もあり、京都に拠点があるHappy Elementsにお世話になることになりました。そこで、ゲームプランナーとして『メルクストーリア』の開発と運営に携わり、幸いにも多くのユーザーさんからご好評いただきました。
 
──そこからMiniascape立ち上げはどういった経緯だったのでしょうか。
 
『メルクストーリア』があれだけ反響をいただけたのはとてもありがたいことなんですが、4年も経つとどうしても私自身の思考の限界というか、岡田という人間が出せるアイデアもマンネリというか画一化しちゃってきてるよな、という葛藤は抱えていました。タイトルへの愛着は尽きませんでしたが、『メルクストーリア』がより広く長く愛される存在となるためにも、そろそろ後任に託したほうがいいか、とも考えるようになりました。
 
──ものづくりにおける新陳代謝が必要だと感じるようになったんですね。
 
そうですね。それと、私自身も新しい場所で新しいゲーム作りに自分の経験を生かしたい、と考えるようになりました。色々なことを経験させてもらったのは本当に恵まれたことだし、ぜひ、この経験を次に活かしたいな、と。
 
それをHappy Elementsの代表である新井に相談してみたところ、それなら会社の独立支援制度を利用して、新しい会社を作ってみてはどうかと提案されました。辞める覚悟もありましたし、その制度を知らなかったので(笑)、その提案は予想外でしたが、面白そうだったので、2017年10月に子会社としてMiniascapeを設立しました。
 
──『ローリングスフィア』では、いつ頃から本格的に開発を始められたんですか?
 
Happy Elementsからは私一人だけ、設立メンバー全員でも数人という立ち上がりだったので、しばらくは企画策定と体制構築に時間を使いました。2018年初頭から人集めを開始して、ひととおり人員が揃って、本格的に開発を開始したのは2019年春先ぐらいですかね。
 
──そして、2020年にいよいよリリースを迎えることになったわけですね。
 

■”新しい体験”を追求するための操作や世界観へのこだわり

 
 
──リリース目前ということで、改めて『ローリングスフィア』がどんなゲームなのか教えていただけますか?
 
スマホを傾けて球を転がして、ギミックが仕掛けられたクエストを進めたり、オンラインマルチプレイで全国のプレイヤーと争ったりという、なんというか、ちょっと突拍子もないゲームです(笑)。
 
元々の構想は、Synoptical Studiosからリリースされている『Aerox』という玉転がしのゲームからインスピレーションを受けたものです。スマホを傾けて玉を転がすのって、体験として新しいうえに直感的でしたし、コンシューマーゲームと正面衝突しないスマホゲームの強みも感じましたし、何より、めっちゃムキになるな、と(笑)。

そこで、玉転がしをベースにキャラクター育成や、没頭できるような世界観といった、ゲームサイクルとしてのデザインを乗せていくことで、面白いスマホゲームを提供できるのではないかな、と考えました。
 
個人的な意見としては、"新しさ"と"面白さ"は”≒の関係”にあると思っています。やはり見飽きたものは面白さも薄くなっていくと思います。また、勝算的な意味でも、尖った部分や目新しさで勝負したほうが、完成度勝負よりよっぽど楽かな、と(笑)。そういった意味で、スマホを傾けて玉を転がして遊ぼう、という突拍子もなさが丁度よかった感覚はあります。
 
──ゲームの世界観として天体を選んだのはなぜですか?
 
 
 
魅力ある世界観を作っていくために、ゲームと相性のいい球体が何かを考えたときに、やはり天体が一番だろう、という結論に至りました。星座や神話は人類の歴史そのものといっていいぐらいなコンテンツの宝庫ですし、魅力的なキャラクターを作っていくうえでも、様々なインスピレーションが得られるだろうな、と。
 
──操作をジャイロのみにするというのもかなり挑戦的だと思いますが、開発にあたって苦労されたことはありますか?
 
やはり、スマホを傾けながら遊ぶというスタイルに対して、外で遊びづらいという意見はあがりました。それはその通りではあるのですが、それでジャイロ操作をやめてしまうと本質を殺してしまうことになり、ありふれたものにしかなりません。オプションで十字キーを付けようという意見もありましたが、それをやったら、単なる3Dアクションゲームとしての調整も加味しなくてはならなくなり、ジャイロ操作の意味がない。
 
そこを変えるぐらいなら企画からやり直したほうがマシなので、ジャイロ操作だけは変えずに開発を続けました。最初に作ったテスト版は、玉乗りしているキャラを転がして細い道を進むだけのものでしたが、その段階でも面白さのポテンシャルは感じられました。
 
──ジャイロ操作の新しさが面白さを生んだということですが、他にもジャイロを採用してみてよかったことはありますか?
 
 
大きなメリットとしては、画面の見やすさがありますね。移動ボタンがないので、指を画面にかぶせなくても移動できますから、画面全体を認識しながらプレイできるんです。なので、情報量が多くなったとしても把握しやすい。玉転がしの演出やゲームデザインを作りこんだことで、思った以上に情報量が多くなってしまったのですが、その情報量の多さもフォローしてくれていると思います。
 
──イラストや3Dモデルといったクリエイティブについての反応はいかがですか?
 
 
 
こだわって作っている部分でもあって、かなりご好評いただいています。イラストをよく見ていただくと、ところどころに神話のモチーフがあったりしますし、3Dモデルのモーションも個別に作っていて、かなりこだわっている部分です。イケメンの気持ちや少女の気持ちを憑依させながらモーションを考えている、と担当が言っていたので、ぜひ、凝視してみていただけると(笑)。
 
声優さんも著名な方々に参加していただいています。ひとりの声優さんにキャラクター2体を兼ね役でお願いしているので、普段とはかなり毛色の違うキャラクターもご担当いただいています。兼ね役ということで、アサインも苦労するだろうな、と思っていたのですが、ほぼほぼ断られることもなく、声優さんからも色々なキャラクターを演じられて楽しかったと言っていただけました。

正直、スケジュールやら予算やらの兼ね合いもあっての兼ね役だったのですが、ユーザーさんからも、好きな声優さんを2
キャラ分も聞けて嬉しい、贅沢、といったポジティブな意見が多くて、嬉しい誤算でした。
 

■「ガチャキャラ育成納得してしんでほしい」…長く遊んでもらえるゲームシステムに

 
 
 
──その他にこだわって作られた部分はありますか?
 
個人的な挑戦として、ガチャも楽しんでほしいという想いもあります。最近はサブスクリプションなど、様々な課金手法も出てきていますが、ガチャだって基本的には悪者ではないはずなんです。繰り返されるインフレや複雑怪奇なルールのせいで、「ガチャ=悪い文化」なのは、ちょっと悲しいな、と。
 
『ローリングスフィア』では、私自身がプレイヤーとして回したいと思えるような内容のガチャであることを意識しています。
 
本作は、すべてのアストローク(天体を擬人化したプレイアブルキャラ)が最大レアリティまで進化できるので、レアリティによる当たりはずれがありません。★5同士で比較した時も、単に強い弱いではなく適材適所になるように心がけています。開発陣の中でも、それぞれが最強だと思うアストロークがバラバラになっています。
 
──すべてのキャラクターに使い道があるんですね。
 
完全にフラットにするのは難しいですが、それに近い状態にはなっていると思います。結局、プレイヤースキル依存が高いゲームなので、キャラが強いからといって、必ずしも勝てないですし(笑)。
 
また、アストロークを進化させる素材としてアストロークを当てているので、使わないアストロークも希少な進化素材として、使いたいアストロークを強化させるための素材となるので、ガチャしたけど何も残らなかった、ということは起こりにくいかな、と。
 
 
──無駄にならないようなシステムもあるんですね。
 
やはり、ゲームを作っていくうえで、自分がやりたいと思うもの、課金したいと思えるものを作るべきであって、自分なら課金するか悩むな…、と思いながら作ったところで、受け入れてもらえるはずがありません。『メルクストーリア』も、キャラの価値を否定するようなインフレだけは起こさないように意識していましたし、その文化はいまも受け継がれています。
 

■プレイカロリーを超える魅力があれば、どんなゲームも受け入れられる

 
 
 
▲本作は多彩なモードが搭載されており、クエスト(左上)・レース(右上)・バトル(左下)・ボールバウト(右下)が用意されている。
 
──本作ではクエスト、レース、バトル、ボールバウトとたくさんモードがありますね。それぞれの遊び方を詳しく聞かせていただけますか?
 
クエストでは、ステージをクリアしていくことで、アストロークに装備させる"イデア"と呼ばれるアイテムが手に入ります。また、各クエストの最高難易度では、月間開催のクリアタイムランキングも開催されます。上位に入ると「ルミナス(課金石)」が貰えるので、腕に自信がある方は、それなりのルミナスを入手できるのではないかな、と。まずは、このモードを遊びながら操作に慣れつつ、アストロークを強化していってほしいです。
 
レースは、単純に順位を競うモードです。いかに早くゴールにたどり着けるかですね。バトルロイヤルは、最大16人でのサバイバルをしてもらいます。この3つのモードに関しては、最初から搭載を決めていたモードです。
 
──ボールバウトはあとから決まったモードなんですか?
 
他のモードが個人戦なので、チームバトルができるモードも欲しいというのは最初からあったのですが、なかなかピンとくるものがなかったんです。
 
そんな時に、Psyonixからリリースされている『ロケットリーグ』というゲームにハマっている社員がいて、それって『ローリングスフィア』の操作性でやっても面白そうじゃない?という流れから、ボールバウトが生まれました。
 
──『ロケットリーグ』は車を操作してサッカーをするゲームですよね?
 
そうですね。ボールにぶつかっていって、相手のゴールにボールを入れれば得点が入り、時間内に多く得点したほうが勝ちます。このモードを導入してみようという話になったときも、「ジャイロ操作では難しすぎない?」という声もありましたが、結局、みんなが同じ条件でやるのであればフェアだし、フェアであれば問題ないと思っていたので、とにかくテスト版を作ってみよう、と。
 
出来たものを皆でテストプレイしてみたところ、思っていた以上に面白かったんです。確かに難しくはありますが、だからこそプレイヤースキルの差も見えてきますし、上手くできたときの達成感があります。
 
──本当に盛りだくさんの内容になりそうですね。
 
自分達が面白いと思えるものを作らないと意味がないし、周りと同じことをやってもしんどいだけ、という想いから開発をスタートしていますが、カロリーが高すぎてプレイヤーの負担が大きすぎないかという懸念はありました。ですが、バトルロイヤルの『荒野行動』がヒットした動きを見ていると、スマホゲームでもカロリーの高さを過度に問題視する必要はないのかな、とも思うんです。
 
FPS・TPS系のゲームはどれもカロリーが高く、家庭用向けでしょ、と言われてた時期もありましたが、今ではすっかり受け入れられています。『荒野行動』はスマホを傾けるわけじゃないですが、両手を使って熱心に遊ぶという視点でみれば、プレイカロリーは本作もそう変わらないと思います。
 
──私も、『荒野行動』がここまでヒットしたことによって、色々な遊びが受け入れられる土台ができたようにも思います。
 
友達とボイスチャットするためのコミュニケーションツールとして使っている人も多いらしいですね。そこがソーシャルゲームらしいポイントかもしれません。ゲームを通してソーシャルを構築していくということを、『荒野行動』も大事にされているのかと思います。

もっとも、『ローリングスフィア』の交流手段はカジュアルにコミュニケーションがとれるスタンプで止めているので、ここは大きな違いかもしれません。

 

難易度調整と操作感の追求…ユーザーとの感覚のずれを突き付けられたベータテスト

 
──オープンベータテストを2回開催されていますが、当時の反響はいかがですか?
 
1回目のテストでは、難しすぎるという声が圧倒的に多かったです。これはゲーム開発でよくある話ですが、私たちは開発していく中で何度もプレイしているので、どんどん習熟していってしまいます。その感覚のままステージを作ってしまい、初めて触る人にとっては難しすぎるものになってしまいました。
 
『ローリングスフィア』は、どうやってもプレイカロリーが高いゲームです。それを埋めるためには、プレイカロリーを下げるという方向でなく、見合うだけの面白さや達成感を感じてもらえるようにするしかない、という発想だったのですが、少し難しくしすぎてしまいました。
 
──2回目のベータテストは、主に難易度を修正してから開催されたんですか?
 
一番大きなところでは、操作を段階的に覚えてもらえるようにステージを設計し直しました。
 
あと、難易度だけでなく操作性も改善しています。自然な動きを意識しすぎて操作がシビアになっていたのですが、立ち上がりはスムーズに球が動かせるように調整したことで、操作感も大きく変わったとご好評いただきました。それと、対人マッチングしなかった際にNPCが出現するようにした辺りが大きな変更点ですね。
 
──かなりブラッシュアップを繰り返されているんですね。
 
アストロークのパラメータも調整を重ねていますが、操作の手触りやレベルデザインも正解がなく、どこかを変えるだけでも巡り巡って全般の調整が必要になるので、その繰り返しですね。とはいえ、段々と正解らしきものには近づいていっていると思います。 
 

■すぐに慣れ親しんでもらえるゲームに昇華した『ローリングスフィア』

 

 

──ユーザーさんには、『ローリングスフィア』をどういう風に楽しんでもらいたいですか?
 
色々な遊び方をしてもらえると嬉しいですね。遊び方は運営が決めるものではなく、ユーザーさんのプレイスタイルで決めるものでしょうから。時間もノウハウも詰め込んで遊ぶ方もいれば、世界観を楽しみたい、気軽に暇つぶしをしたい、など、ユーザーさんの望む形で遊んで貰えたら理想的です。
 
それと、その場にいるみんなと盛り上がれるパーティゲーム的な側面もあると思っているので、ファミレスに集まって皆で遊ぶような遊び方をして貰えたらうれしいですね。レースやバトルロイヤルといったモードには、ゲームの進行度を無効化し、全員がフラットな条件でプレイできる機能もありますので、純粋にテクニックで勝負できるようにもしてあります。
 
──いよいよリリースが迫っていますが、最後に意気込みを聞かせてください。
 
今回『ローリングスフィア』を開発するにあたって、参考にさせていただいたタイトルはいくつもありますし、完全な0⇒1ではないのですが、「新しい体験とそれによる面白さ」を目指して取り組んできました。開発の最初期はどんなものができるのかわからないという不安もありましたが、今の『ローリングスフィア』は、私やチームメンバーのやりたかったことが実現できていると思います。
 
スマホを傾けて操作とか、大抵の方には馴染みのない遊びだと思うので、最初は戸惑われるかと思いますが、10分も遊べば、ある程度は思ったように動かせるようになっていると思いますし、「面白いかはわからんけど、新しいっちゃ新しいか」と思っていただけたら、気軽に触ってみていただけると嬉しいです。
 
──Miniascape社の現状はいかがですか?
 
現状は20名で会社を運用していますが、企画とマーケとバックヤードは私一人で回しているような状況なので、もし、『ローリングスフィア』が順調に立ち上がれば、各部門で募集をかけたいと思っています。総務やプロジェクトマネージャー、エンジニアやプランナーといった辺りはすぐにでも募集をかけると思います(笑)。
 
ですので、もし、弊社に興味をお持ちいただけた方がいましたら、是非、ホームページを継続的にチェックしていただけるとありがたいです。
 
──『ローリングスフィア』以外のタイトル開発も進めていくのでしょうか?
 
個人的には会社を大きくしたいという気持ちはないものの、3ラインぐらいは抱えられると会社として安定すると思いますし、『ローリングスフィア』が軌道に乗れば、次回作も考え始めたいですね。ただ、会社が大きくなると、ゲーム制作以外のタスクが増えていきますし、会社は目的ではなく手段なので、大きくすることへの拘りはないですね。
 
Miniascapeは『ローリングスフィア』次第でどうとでもなる会社なので、まずは、『ローリングスフィア』を少しでも多くの方に楽しんでいただけるよう、そのことに注力していきたいと思います。
 
──ありがとうございました。



 
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