日韓でネイティブソーシャルアプリを当てたバンク・オブ・イノベーション。今後の海外展開、新規事業、成長戦略に迫る!

「征戦!エクスカリバー」が、海をまたいでマーケットを席巻している。Google Playの売上ランキングでトップ10入りを果たし、韓国Google Playでも14位にランクイン。UI・UXの技術力やビジュアルデザインは、群雄割拠のマーケットの中でも異彩を放ち、業界内でも評価が高い。現在、100名規模にまで発展し、平均年齢が20代中盤という、若き集団が巻き起こすイノベーションの舞台裏を探るべく、代表取締役社長を務める樋口氏に話を伺った。

 

■ハイレベルなアバター技術を活用

───:御社の実績を見ると、ネイティブアプリに特化されています。そこにはどういった理由があるのでしょう?

当社がソーシャルゲーム事業を本格化させた頃は、ブラウザゲームが主流でした。当時、ネイティブアプリのゲームをつくっている開発会社はほとんどなかったと思います。私が知っている限りでは、5社くらいでしょうか。では、なぜネイティブに特化したかと言うと、フィーチャーフォンにプラットフォームの遷移があったように、スマートフォンに関してもそういった動きが生まれることを予想していたから。ブラウザからネイティブへとマーケットの主流が移行していくことを読んだ上で、前々から入念な準備を行っていました。

 

 

───:そこから生まれたのが、「征戦!エクスカリバー」。まさに狙いが的中した形となりましたが、ここまでヒットした理由はどういったところにあるとお考えですか?

まずは、サクサク感でしょうね。キャラクターの動き1つにしても、画面の遷移にしても、とにかく滑らか。UIやUXに関しては、かなり時間をかけてつくり込みました。ゲームの内容を工夫することはもちろんですが、遊びやすさもとことんまで追求しているのが、ユーザーに評価をいただいている理由の1つだと思います。

───:サクサク感というのは、具体的にどの部分をつくり込むのでしょう?

主にはコーディング側ですね。当社はフロントエンドを担当するメンバーが圧倒的に多いんです。サーバサイドと比べると、8:2くらいの割合でしょうか。

 

 

───:8割ですか! それは多いですね。

技術に関しても、Adobe AIRを積極的に活用していきました。その頃はAdobeさんも試行錯誤している段階で、正直、うまく機能するのかは不安でした。何せ、前例がないわけですから。でもUnityを使うのではなく、敢えてこちらの技術を取り込んでいきました。

───:御社のタイトルを語る上では、アバターも欠かせないポイントです。

これまでにPCゲームを何作もつくってきた中で、アバターに関する技術は着実に蓄積してきました。このナレッジがあるからこそ、モーションをはじめとした高いテクニカルレベルが求められる部分をクリアできているのだと思います。また、顔だけで8つのパーツを選べたり、武器や防具を身に付けられたりと、カスタマイズの幅が広いのも特徴ですね。

 

 

───:日本でヒットした後、海外への展開も早かったですね。

韓国のソーシャルゲーム市場は、日本と同じくらいの規模で、人気を集めているゲームの内容もそこまでは変わりません。加えて日本は、課金システムやゲームシステムが優れているので、参入すればある程度は成功できるだろうという見込みはありました。あとは、ネイティブアプリであったのもヒットした要因だと思います。ブラウザゲームと違って、通信環境に影響を受けることなく遊べますから。

───:今後もさらに海外展開を行っていくのでしょうか?

台湾や香港、中国などの東アジア圏は視野に入れています。すでに日本のサブカルチャーが浸透し、参入していくための地盤ができていますので、その優位性は活かしていきたいですね。

 

 

 

■プラットフォームを制作中

───:今後のリリース予定について教えてください。

現在、全部で5本のラインが走っています。全てネイティブアプリで、そのうちの1つはプラットフォーム。これはアバターを用いたコミュニケーション空間で、アバターを使いながらいろいろな人たちと関わり合っていくというサービスです。

 

 

───:プラットフォームをつくるのには、どのような意図があるのですか?

ユーザープールを多く抱えたサービスを持ちたいんですよ。もちろん、ゲームタイトルをつくることにも価値はありますが、それを続けていくだけだと、いずれ限界が来る。そこにプラットフォームがあれば、さらなる広がりが生まれていくと見ています。

事業戦略としては、新作ゲームの開発や既存ネイティブアプリの横展開、「征戦!エクスカリバー」の海外展開、新規事業(コミュニケーションプラットフォーム)の展開、この三軸で事業を拡大させていきます。

 

 

───:今後の展開として、他にも何か考えられていることはありますか?

遠い未来のことを言うと、ハードウェアも手がけてみたい。まだ具体的な構想は練っていませんが、たとえば通信デバイスのようなものをイメージしています。iPhoneが世界を変えたように、世の中を根本的に変える力をもっていますから。

 

■入社即、コアなミッションを任されることも

───:「征戦!エクスカリバー」のカバーイラストは入社1年目の方が描いているとお聞きしましたが、本当ですか?

はい。このタイトルをつくったメンバーの平均年齢は23歳。要所はキャリアのあるメンバーで固めておいて、後の部分は若手に任せています。

 

 

───:それがいい方向に作用しているのには、何か理由があるのでしょうか?

若いメンバーを多く配置すれば、お互いに切磋琢磨し合うんです。キャリアのある人たちに囲まれると、「先輩だから仕方ない」と思うかもしれませんが、同期や同年代がまわりにいれば、「負けられない」という気持ちが湧き出てくる。モニターには各自が制作しているデザイン画が表示されているので、自分の席からまわりを見渡すだけでも刺激があるというか。クリエイターは誰しも、いいものをつくりたいという情熱を必ず持っているので、それを自然な形で引き出せればと思っています。

───:採用の際に重視されているのは、どういったポイントでしょう? デザイナーであれば、過去の作品で判断すると思うのですが。

デッサンや形状などのテクニカルなところはもちろん、「ユーザーがよろこぶものをつくれるか」というポイントには重きを置いていますね。自己完結ではなく、誰かのもとに届くものであるかどうか。売れるものかどうか、と言い換えてもいいかもしれません。

 

 

───:実力主義なのですね。

経歴だけでは判断しません。たとえば、1年前はアルバイトとして働いていた某エンジニアは、今ではメインを担当していますから。

───:キャリア採用に関してはいかがでしょう? 経験があれば、いきなり責任あるポジションを任されることも可能ですか?

一概に「有利だ」とは言えませんが、可能性は高いですね。配属の際には、ビジネスセンスやロジカルシンキングなども考慮した上で役割をお任せしていきますので、これまでのキャリアがプラスに働くケースも充分にあり得ますよ。過去にも、デザイナーであれば入社後半年でコアな部分に関わってもらったり、ディレクターであれば入社直後から30名のメンバーを取りまとめてもらったりしたこともあります。

 

 

───:力さえあれば、本当に誰にでもチャンスがあると。

私のもとに「これ、見てください」と作品を持ってくるメンバーも少なくありません。それが良ければ取り入れることもありますし、もし少しかなと思ったときには、具体的なアドバイスを添えて返しています。

───:現場と触れ合う機会も多いんですね。

各部門の責任者とは、1日2回ペースで話すようにしています。進捗確認のためではなく、同じベクトルを目指せているかどうかのすり合わせです。相互理解を深めるためには、コミュニケーションの場は多ければ多いほどいいと思っていますから。全ては、コンテンツをしっかりとつくり込むため。もちろん納期は設定していますし、締め切りを守ることを前提にしていますが、クオリティを最優先して納期を伸ばすこともあります。ここで働く以上は、自分が納得できるまでクオリティを追求し続けてほしいですね。

 

 

───:こだわりのあるクリエイターにとっては、理想的な環境だと思います。本日はありがとうございました!

株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
http://www.boi.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
設立
2006年1月
代表者
代表取締役社長 樋口 智裕
決算期
9月
直近業績
売上高136億1500万円、営業利益13億2900万円、経常利益13億6200万円、最終利益8億9500万円(2024年9月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
4393
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