【IVS特集】グリー青柳氏「全世界のマーケットで『ブレフロ』から上位ランクを奪取したい」...今後のグローバルモバイル市場をChartboost、Facebook、Pocket Gemsのメンバーと語る
自国から世界へ。
それは、経営やサービス・モノづくりに携わる者なら、誰もが夢みるひとつの目標だろう。
今までに数々の企業が自国から世界へ飛び出し、大きなリスクをとり続け、勝負の舞台を世界へひろげ、挑戦し続けている。
今回IVSの「Session6-A グローバルモバイル市場の今後の展望」では、
スピーカーには
- グリー株式会社 取締役 執行役員常務 青柳 直樹 氏
- Chartboost CEO
- Facebook Inc. VP Business Development, Mobile and Product Partnerships John Lagerling 氏、
- Pocket Gems CEO Ben Liu 氏、
モデレーターには
- WiL, LLC CEO 伊佐山 元 氏
を迎え、日本から世界、海外から世界へ挑戦し続ける5者が、世界へ挑み続ける理由とグローバル展開の軌跡など熱い議論を語った。
○ グリー 青柳氏「全世界のマーケットで『ブレフロ』から上位ランクを奪取したい」
時は2011年にさかのぼる。日本国内で『ドリランド』、『釣りスタ』、『クリノッペ』など数々のヒットタイトルを生み出し、「ソーシャルゲーム」の一大ムーブメントの渦の当事者であったグリー。
その中で、2011年第3四半期に国内で「ソーシャルゲーム」の渦の中心にいたグリーが「日本から世界へ」と大海原へ大きな舵を切った。
青柳氏は、海外事業の皮切りとなった米国スタジオ設立当時を、「とにかくシリコンバレーに行って、数々のイノベーションが起きている現地で何が起きているのかを自分の目で確かめたかった」、そして、「新しいトレンドの一部、最先端になりたい。イノベーションを起こしたい」と考えていたと当時を振り返り、FacebookやTwitterなど数ある革新的なサービスを生んだシリコンバレーに新しいチャレンジを求めていたことを語った。
しかし、日本での大きな成功を引き下げて挑んだ海外事業であったが、日本とは異なる環境での挑戦は、多くの苦難が待ち受けていた。これについて、「3年前の設立当初は、スタートアップも同じような経験をすると思うが、悔しいこともたくさんあり、非常に大変だった」(青柳氏)と語った。
グリーの海外事業といえば、米国スタジオを中心に、OpenFeint買収、Funzioの買収や各企業との提携や海外拠点で海外向けのゲーム開発を進め、日本とは異なる新しい環境で、今までにはない大きな市場へ挑戦し続けた。
また、2013年6月期第4四半期には米国スタジオが2013年5月に単月で黒字化を達成、その一方で、「選択と集中」戦略の推進による海外事業全体で拠点の見直しなどもあり、海外事業には光と陰の2つの顔が見え隠れしていた。
それでもなお、グリーは地道に・着実に海外事業での「仕込み」を推し進め、遂に2013年第4四半期『Knights & Dragons』(iOS版、Android版)を中心に売上を伸ばし、2013年5月には単月黒字化を達成。
そして、2014年6月期第3四半期で海外事業の四半期ベースでの黒字化を達成した。(関連記事)
▲ 青柳氏のプレゼン資料より。「モバイルゲーム事業の収益内訳」について。
ここに至までには数々の課題と苦難があったというが、”素晴らしいチーム”、”まわりの人に助けを求める”、”まわりの人たちから学習する”ことで乗り越えられたという。
青柳氏は、“素晴らしいチーム”について、「米国スタジオともにはじめた” 素晴らしいチームメンバー”のおかげで、コミットメントが難しい時もチームが助けてくれた」と述べた。
また、”まわりの人たちから学習する”について、「競合他社やビジネスパートナーではなく”友だち”で、リスクを取って成功した人が多く、”素晴らしいコミュニティの一員”」であったことで、「まわりの人たちから学習する」ことができ、「友だちとして刺激を求めることで、モチベーションにもつながった」と語った。
そして、”周りの人に助けを求める”について、「米国スタジオ設立当初はシリコンバレーのことを何も知らなかったので、必ず失敗するだろうと思われていたが、助けてくれる寛大な方がいた」と語り、「人間なので自分たちは強くなく弱いが、素晴らしいコミュニティの一員となって助け合う」ことで乗り越えられると述べた。
今後の展望については、
- 米国市場で大きな市場の”Facebook”と”ビデオ”のチャネルに多くのマーケティング費用を投下して
- スマートフォン・タブレット市場、そしてGoogle Glassなど今後登場する新しいスマートフォンデバイス市場
- そして、グローバル市場、特にヨーロッパ市場
でサービス提供に注力していくと述べ、「全世界のマーケットで『ブレイブフロンティア』から上位ランクを奪取したい」(青柳氏)と熱い意気込みを語った。
▲ 青柳氏のプレゼン資料より。堂々と熱く書かれた「全世界のマーケットでBRAVE FRONTIER上位ランク奪取!!」の文字。会場からは拍手も聴こえた。
○ ChartBoost 「ゲーム業界をみることで、モバイル業界の成功をみることができる」
次に、Chartboostの共同創業者でCEOがChartboostの現状、そして今後展望について語った。
女性起業家というと、日本でも海外でも全体の%程度でまだ少ないが、なおさらゲームアプリ業界における女性起業家の割合は一段と低くなる。それでも、なぜはモバイルゲーム業界での起業の道を選んだのだろうか。それは、彼女のバックグラウンドに大きく関係がある、という。
2009年から『Tap Tap』シリーズの音ゲーで有名な米国のゲーム開発会社Tapulousに勤務し、ビジネス・レベニュー・アソシエイトとして『Tap Tap Revenge』のゲームプロジェクトに携わっていたが、2010年、Tapulous はDisneyによって買収された。当時のことを「小さなディベロッパーから大きな会社の一員になって規則もルールも大きく変わった。」と振り返った。その後、彼女は、Disneyメンバーの一員となり、Tapulous Labs Studioのトップとして、2アプリのコンセプト作りからローンチまでを担当した。
2011年、ミシガンでエンジニアといっしょにスマートフォン向けゲーム広告プラットフォーム会社Chartboostを立ち上げた。起業について、「スペイン・バルセロナ生まれで、育ちながら、いつか会社を興したいと思っていた」という。
▲ Chartboostのロゴ。
しかし、進学先のスペイン国内の大学で、教授に、「10年間仕事をして経験をつまないと会社を興せない」といわれたが、渡米した際に、「夢を実現するのは”今”だと言われ、実際にスタンフォードのアントレなーシップの授業を受けた際に同年代の起業家がシリコンバレーでは会社を興していた」ことを知ったという。それが契機となり、彼女は起業の道を歩んだという。
Chartboostは、主に
- 「クロスプロモーション」
- 「ダイレクトディール」
- 「ゲームネットワーク」
の3サービスを中核に据え、モバイルゲームにおける新規ユーザーを発見からゲームの最大収益化をサポートしている。
▲ プレゼン資料より。「クロスプロモーション」、「ダイレクトディール」、「ネットワーク」の3つを組み合わせることで、より最大収益化・最適化を図れるという。
このようなタイプの配信プラットフォームは他にも多数あるが、Chartboostは、「透明性」、「コントロール」、「ユーザーエクスペリエンス」の高さで、他社との差別化を図っているという。Chartboostでは、パブリッシャー・開発者が、ユーザーの全トラフィック源を知れる他に、ターゲティング、デザイン、データを解析するための活用方法の提供、ゲーム内で各ゲームアプリに最適な広告配信をすることで、より高度な最適化をすることで、高いエンゲージメントを実現できるという。
また、「パブリッシャーとしては、”自分たちの好きなゲーム”をユーザーに好きになってほしい」と考えているが、ChartboostでKPIや各数値データを可視化することで、「パブリッシャー自身が”自分たちの行動”をコントロールできるようになる」。
Chartboostでのサービス提供を通じて、「ゲームはイノベーティブでセンセーショナルなもの。」と述べた。また、「ゲーム業界をみることで、モバイル業界の成功をみることができる」と語った。
さらに、「ゲームから学んだことの中では、インタラクション頻度が高いと、エンゲージメントが高くなることを学べたことが最も価値が高い。」と述べ、「コンソールからスマートフォンにシフトして、ユーザーは彼らの手の中で1日中ゲームをプレイできる環境にある。だからこそ、ユーザーに最適化されたゲームサイクルをつくることが重要だ」と語った。
▲ プレゼン資料より。「時間」:それぞれ異なる”オポチュニティー”を異なる長さの時間で提供。「動機付け」:ユーザーがアプリを再起動するために”おもしろい要素”を追加。
▲ プレゼン資料より。「フリーミアムモデル」:トラッキング・データ運営の徹底化。ここには、マネタイズ・エンゲージメンションなどに影響を与える”ファクター”がある。
○ Facebook John氏「自分に対して常にチャレンジしたい」
IVS開催直前の5月19日付けのRe/codeは、John氏がビジネス開発部門のヴァイス・プレジデントに新任することを報道した。
John氏といえば、Googleに8年間努めて、Androidのグローバルパートナーシップのディレクターとして活躍し、Nexus端末プログラムの全ビジネス開発責任者を担当していた。
順風満帆にみえたキャリアの中で、なぜ、Androidの世界進出の立役者でもキーマンが今のタイミングでFacebookへ移籍を決めたのか。
これに対して、John氏は、「自分に対して常にチャレンジしたいと考えているからだ。人間として、人間が様々なことを経験することや人間の経験に対して上位レイヤーでどのようなインタラクションなものを提供できるのか、ということを考えている。」と述べ、人の感情とテクノロジーを繋げることに興味があり、Facebookには多くの人間の経験や感情が共有されていることから、今回Facebookで新たなチャレンジに挑むことを決めた、という。
また、John氏は、今後注目している市場について、「個人的にウェアラブルなものを身につけることが好き。ウェアラブルなものは、ゲーム以外の様々なモノにも適応ができるので、今後注目していきたい」と述べた。
なお、ウェアラブル市場規模を世界のインターネット業界調査会社Statistaによれば、ウェアラブルデバイス市場規模は、
- 2014年には51億6600万ドル(13年比2.05倍)
- 2015年には71億4000万ドル(14年比1.38倍)
- 2016年には88億6200万ドル(15年比1.24倍)
- 2017年には109億2000万ドル(16年比1.23倍)
- 2018年には126億4200万ドル(17年比1.16倍)
と予想される。
一方、世界のOS市場規模でAndroidの市場規模をみると、
- 2014年には11億7100万ドル(13年比1.33倍)
- 2015年には13億5800万ドル(14年比1.16倍)
と予想される。
これより、ウェアラブル市場は2017年以降、Android市場は2015年以降成長が鈍化されていくといえるだろう。したがって、Androidの立役者であったJohn氏の興味がAndroidよりもウェアラブルなものに変わったことは、今後の市場の変化を考慮すると、常に成長と新しい挑戦を臨む同氏にとっては当然の選択肢であると考えられるだろう。
○ Pocket Gems Ben氏「アーリーステージなスタートアップとしては、堅実な経営スタイルを採用」
再び時はさかのぼり、2008年。日本国内で初めてソフトバンクからiPhoneが発売された。それから1年後、2009年に、スマートフォン・タブレットの大きな波を捉え、モバイルファーストでゲームアプリを開発し、全世界で多くのプレイヤに喜びやエンターテイメントを提供し続けている会社がある。それが、Pocket Gemsだ。
同社は、シミュレーションゲームの開発を得意としており、今までに『Epic Empire: A Hero's Quest』、『Campus Life』など複数のタイトルをリリースしている。
▲ Pocket Gemsのゲームタイトルのキャラクター。
同社の2013年の売上高は、前年比32%増の8200万ドル。2009年の設立以来黒字経営を続けており、スタートアップにしてはめずらしい会社だ。Ben氏によれば、「Sequoia Capitalから資金調達をしているが、設立以来、売上高は黒字で、アーリーステージなスタートアップとしては、堅実な経営スタイルを採用している」という。
▲ Ben氏のプレゼン資料より。Pocket Gems社の概要について。
また、Ben氏は、今後2年間のモバイルゲームの動向として
- モバイルに新しいネイティブアプリの形式が誕生
- モバイル技術の大きな発展
- ゲーム市場のグローバル化
を3つのインタラクティブな動向を紹介した。
▲ Ben氏のプレゼン資料より。「今後2年間のモバイルゲームの動向」について。
その上で、Ben氏によれば、Pocket Gemsは、
- 次世代のネイティブアプリをモバイルで提供すべく、インタラクティブソーシャルプラットフォーム『Episode』
- モバイル技術の進展に向けて、3Dゲームエンジン、リアルマルチプレイヤネットワークへの投資・開発
- グローバルにおけるモバイルゲーム市場の成長に伴い、新しいパートナーシップの関係構築
に注力していくという。
▲ Ben氏のプレゼン資料より。『Episode』について。短文の会話で構成されるため、トランザクションが大きい。今までに1億5000チャプターがつくられた。
▲ Ben氏のプレゼン資料より。3Dゲームエンジンは2014年末に公開予定だという。また、リアルマルチプレイヤネットワークは、「ユーザー同士の繋がりを重視したもので、リアルタイムでシンクロするインタラクションになる」という。さらに、同氏は、リアルマルチプレイヤネットワークについて、「他のプレイヤたちといっしょに、リアルタイムかつサーチナルで、ゲームをプレイすることは、ユーザーの本質的な欲求のひとつ」とコメント。
▲ Ben氏のプレゼン資料より。世界のモバイルゲーム市場の中でも、日本、米国、韓国、中国市場の成長が著しく、市場としても大きくなるという。
● セッションをおえて…
グローバルな市場へ大きな一歩を踏み出すためには、当然リスクを伴うが、各国におけるモバイルゲーム市場の成長を考慮すると、事業規模を大きくしていくためには、避けては通れない道になることも確かだ。
もちろん、ドメスティックな市場で挑戦し続けることもひとつの選択肢ではある。しかし、変化の激しいモバイルゲーム業界だからこそ、先陣を切って、大きな一歩を踏み出し、インターネットを駆使して、大海原を超えて、世界中のユーザーにサービスを提供することで、革新的なイノベーションを生み出し、新たな成功モデルを誕生させる可能性を秘めている。そのためには、想いを共にする仲間、そして、勇気と情熱をもつことが重要になるといえよう。
今後の市場の変化に向けて、各社が挑む新たな挑戦・戦略がどのような結果をもたらすか、市場の動向とともにみていきたい。
会社情報
- 会社名
- グリー株式会社
- 設立
- 2004年12月
- 代表者
- 代表取締役会長兼社長 田中 良和
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3632
会社情報
- 会社名
- Meta(Facebook)