【KLab決算説明会】「筋肉質な企業体質にできた」14年12月期は黒字転換に成功 『スクフェス』好調で"みんなで叶える物語"を体現 新作は『AOE』と『glee』に期待

KLab<3656>は、2月12日、14年12月期と第4四半期(14年10~12月期、4Q)の決算発表を行うとともに、東京都内で決算説明会を開催した。発表された14年12月通期の業績は、売上高213億7400万円(前の期比35.8%増)、営業利益21億6300万円(前の期9億1700万円の赤字)、経常利益25億6400万円(同7億0600万円の赤字)、最終利益17億9300万円(同19億2200万円の赤字)となり、大幅な黒字転換に成功した(※)

(※)前の期は16カ月決算のため、比較となる数字は12カ月換算となっている。このため、決算短信に記載された数字と差異があるので注意してほしい。

 


『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル(以下、スクフェス)』を中心に『テイルズオブアスタリア』と『天空のクラフトフリート』などスマートフォンアプリの収益が寄与した。こうした売上の増加に加え、従業員数の削減や関係会社・拠点の整理、外注費の削減、その他全ての費用の見直しなど、徹底したコスト削減を行ったことも収益性の改善に寄与した。

 


決算説明会に臨んだ真田哲弥社長(右上写真)は、14年12月期の決算について、「創業以来の過去最高の売上を記録した。売上の増加に加え、コスト削減が寄与し、営業利益も前年の赤字から大きく回復した。固定費を大幅に削減し、筋肉質な企業体質に改善できた」と振り返った(「」内は真田社長の発言)。『スクフェス』の動向が注目された前期だったが、今期は、国内だけでなく、海外向けのIPタイトルにも注力し、さらなる成長を図っていく考えだ。



■10~12月期は『スクフェス』が減収減益

4Qの業績だが、売上高54億3400万円(前四半期比14.5%減)、営業利益2億7200万円(同77.2%減)、経常利益5億6400万円(同56.6%減)、最終利益5億0200万円(同32.9%減)と、4四半期ぶりの減収減益となった。『スクフェス』の売上減のほか、年末年始に実施したテレビCMをはじめとする先行投資が収益を圧迫した。経常利益と最終利益の減益率は営業利益よりも低いが、これは保有する外貨建債権債務に関して、期末時点の為替相場で評価替を行ったことで営業外収益に為替差益が計上されたことによる。

 


売上高は前四半期比で2ケタの減収となった。ただ、第1四半期や第2四半期の売り上げを上回っており、第3四半期が良すぎたとみるのが妥当かもしれない。『スクフェス』の売上が減少すると想定し、もともと減収減益となる予想だったが、予想数字よりも下振れる結果となった。

 


KLabでは、『スクフェス』の運営方針について、「お客様に長く楽しんでもらえるよう、年間を通じてずっとプッシュし続けるより、運営に緩急をつけて、一定の波がある形を目指した」という。前期は、ラブライブ!TVアニメ2期が放送された14年4~6月期、そして、7~9月期はテレビCMと夏休み効果でさらに盛り上げ、秋がピークになるよう目指したという。谷間となる10~12月期は、いわゆる課金施策も弱めにしたため、当初の想定よりも売上が落ち込んだ。

 


また、プラットフォーム別の売上構成は、App StoreとGoogle Play経由の比率が85%を超えた。13年第1四半期は13.4%だったことを考えると、「ネイティブシフト」が完了したといえる。同社では、これまでブラウザゲームからネイティブアプリへの移行を掲げ、その目標の進捗状況を示すために公開していたが、85%を超えたことで目標が達成したと判断し、今回をもって開示を終了するとのこと。

 


KLabが今後の成長をけん引する収益ドライバーとして期待しているのが海外からの売上だ。14年1Qから海外からの売上比率を開示しはじめたが、4Qでは12%に到達した。14年1Qの海外売上比率はわずか3%だったことを考えると、海外からの売上が大きく伸びたことが伺える。同社では、この数字を伸ばしていくことを目標にしている。『Glee Forever!』や『Age of Empires: World Domination(AOE)』がけん引役として期待される。

 



■広告宣伝費が収益圧迫も広告効果は良好

続いて費用を見ていくと、売上に連動するプラットフォーム手数料や使用料が減少した一方、年末のテレビテレビCMによる広告宣伝費が前四半期に比べて約4億円増えた。それ以外のほとんどの費用項目に大きな変動はなかった。

 



では、テレビCMの効果はどうだったのか。結論は、全体としては良好な結果だったようだ。新規ユーザーとテレビCMで再開したユーザー、定着しているユニークユーザーを「ユーザー数」として定義し、その推移をまとめたのが下のスライドとなる。テレビCM開始前を100としその推移を見たところ、『スクフェス』はテレビCM効果で25%増伸びたほか、『天空のクラフトフリート』にいたっては約50%も伸びた。その一方、『クリスタルファンタジア』は下がってしまい、テレビCMを予定よりも早く打ち切ったという。

 


このほか、特別損失の説明も行われた。これは『AOE』の一部と、先日サービス終了した『ワールドフットボール ファンタジックイレブン』に係るソフトウェア資産の減損等で、6億7000万円の特別損失を計上したという。『AOE』は、ゲームシステムの見直しに伴い、使用しないソフトウェアが発生したため、その分の減損を行った。真田社長は「重要なパートを作り直している。現在、いくつかのプロトタイプを作り、プレイしながら検証している。どのパターンでいくのか、決まり次第、リリース時期を発表したい」と述べた。

 


なお、会場からはアクションRPG『クリスタルファンタジア』の問題点についての質問があった。真田社長は、プレイヤースキルに依存するアクションゲームと、アイテム課金とのバランスの調整が十分でなかったことをあげた。そして、2つ目は、ゲームがソロプレイで楽しめる一方、協力プレイや対戦プレイなどの要素が少なかったことをあげた。「今後の新作ではクローズドβテストを行うことも検討している」と得た教訓を今後の新作に活かしていく考えを示した。



■『AOE』のプロトタイプがお披露目に

『AOE』のプロトタイプのうちの一つがお披露目された。プロトタイプであるうえ、違うバージョンがリリースされる可能性もあるため、写真撮影はできなかったのだが、地形や索敵、砦の活用、地形の利用で結果が大きく変わる戦略性の高いゲームになっていると感じた。ここで派手なエフェクトやゲームのスピード感が加われば、より面白くなるのではないか。そして現在スマートフォンゲームで流行のストラテジーゲームの”文法”を踏襲せず、スマホ版『AOE』を目指している姿勢が伺えた。また、リアルタイム対戦だけでなく、通信環境の悪い国・地域でも楽しめるよう、非同期型の対戦も用意するなどグローバル展開も意識しているという。

お披露目の後、真田社長は、「延期発表後、リリース時期も発表できていないため、一部ではアプリを出せないのではないか、頓挫したのではないか、という憶測も出ているようだ。プロトタイプであえてお披露目したのは、現在もきちんと作っていること、そして世界一面白いストラテジーゲームを目指したいという思いがあることをお知らせしたかった」と語った。



■第1四半期は営業益157%増を計画 CM効果良好も保守的に

続く第1四半期(1~3月期、1Q)は、売上高56億円(前四半期比3.1%増)、営業利益7億円(同157.4%増)、経常利益6億円(同6.4%増)、最終利益2億5900万円(同48.4%減)を見込む。年末年始の広告宣伝効果で足元の売上は好調だが、2月は売上増が難しい時期であるため、第4四半期との比較では微増になるとの想定だ。また営業利益については、大型プロモーションの計画が特にないため、大きく増加する見込み。

 


主力タイトルである『スクフェス』については、前期と同様、「波」を想定した運営を行う予定。同社では、15年6月13日に上映開始となる完全新作劇場版『ラブライブ! The School Idol Movie』の公開に合わせ盛り上げていく計画。前期の4Qとともに、1Qは、一時的な谷間であると想定し、6月に向けて徐々にアクセルを踏み始める。

新作については、IPタイトルが4本、NONIPタイトルが5本で、合計9本を開発していることが明らかにされた。ただ、この中には本開発に入ったタイトルだけでなく、プロトタイプも含んでいるため、全てをリリースするわけではないので注意してほしい。「プロトタイプでゲームが面白ければ開発するし、逆に面白くなければ開発を中止する可能性もある。リリースタイトル数をコミットするものではない」。

 


IPタイトルについては、『Glee Forever!』や『AOE』、『BLEACH Brave Souls』のほか、未発表のマンガIPタイトルを開発しているという。また、ノンIPのオリジナルタイトルについてはまだ公開されていないが、「タイトル数を絞り込み、練りに練って自信のあるタイトルだけをリリースしたい」と自信と意気込みを示した。ただ、新作については、業績予想の数字には加味していないとのこと。

15年12月通期の業績予想は発表されなかったが、増収増益を目指す考えはあるのかとの質問があった。これに対し、真田社長は「増収増益を目指している。『スクフェス』が堅調に推移することが前提だが、新作がどれか1本ヒットするだけで達成できるとみている。IPタイトルだけでなく、オリジナルタイトルにも自信を持っている。1本もヒットしないということは考えづらい。コストは、引き締めており、売上が伸びれば利益も伸ばせるだろう。ただ、精度の高い売上予測が非常に難しいため、予想値を発表していない」と回答した。
 
(編集部 木村英彦)

 
■関連サイト
 

決算説明会資料

KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
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