【インタビュー】提案・開発・配信の全行程に多くのドラマが…『モンスターストライク』×「Lobi」導入秘話。両社の『モンスト』愛で実現に

ミクシィ<2121>とカヤック<3904>は、去る2014年10月29日に、『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)とゲームコミュニティ「Lobi -チャット&ゲームコミュニティ-」(以下、「Lobi」)とのサービス連携を実施した。
 
この連携に伴い、ゲーム実況録画SDK「Lobi REC SDK」も導入され、ユーザーは簡単操作で『モンスト』の実況配信が可能となった。録画されたプレイ動画は、YouTube、Twitter、LINE、Facebook、ニコニコ動画などのSNS・動画サービスへ簡単にシェアでき、Lobi上にも「人気のプレイ動画」として掲載される。

導入当時は、カヤックとしては国内屈指の人気タイトルと連携したことでの利用者拡大、ミクシィにとってはプレイ実況録画が手軽に配信できることで、ユーザーのゲームプレイ頻度もさらに高まるなど、両社の相乗効果が期待されていた。

本稿では、両社のキーマンにインタビューを実施し、導入までの経緯や現況、動画コンテンツの可能性といった多岐にわたる内容で話を聞いてきた。

 

■『モンスト』(ミクシィ)が「Lobi REC SDK」を選んだ5つの理由



株式会社カヤック 執行役員
「Lobi」ディレクター
片岡 巧 氏 (写真左)

株式会社カヤック
「Lobi」ディレクター
遠山 薫 氏 (写真中央)

株式会社ミクシィ
モンストスタジオ 企画・運用部
国内パブリッシュグループ/企画チーム
三島 圭介 氏 (写真右)


――:本日はよろしくお願いします。これまで遠山さんには、過去2回「Lobi REC SDKの制作背景」(関連記事)、「動画コンテスト – ブレイブ キャスト チャンピオンシップ」(関連記事)でお話を伺いましたが、まずは改めてみなさんのご担当を教えてください。
 
遠山薫氏(以下、遠山):私は「Lobi」のディレクターです。
 
片岡巧氏(以下、片岡):遠山と同じく「Lobi」のディレクター兼プロデューサーです。
 
三島圭介氏(以下、三島):『モンスト』企画チームのディレクターです。おもにキャラクターやステージの制作、新機能実装など開発周りを見ています。


――:ありがとうございます。それでは、『モンスト』における「Lobi」導入の経緯についてお伺いしたいと思います。導入は2014年10月29日でしたね。

片岡:ええ。そもそも初めてミクシィさんにお伺いしたのは、2014年5 月頃だったと思います。まだ当時は、ゲーム実況録画SDK「Lobi REC SDK」のAndroid版の提供が開始(iOS版は2014年1月)されたばかりでした。社内でも動画・録画機能と相性が良いゲームアプリを調べるなかで、やはり『モンスト』は絶対に導入したいタイトルのひとつだったこともあり、そこからプロデューサーの木村さん(ミクシィ 執行役員 モンストスタジオ プロデューサー木村弘毅氏)に連絡したのが始まりです。


――:なるほど。木村さんとは当時からお知り合いだったのですか。

片岡:じつは木村さんには、別のプロジェクトで、一度コミュニティ機能を提案させていただいたことがあるんです。そのときは実現しなかったのですが、その後『モンスト』がリリースされてから、2014年6月頃に再度ご提案しに行ったという形ですね。

いま思い返せば、提案・開発・リリースにいたる全てにおいて、もうドラマだらけでした(笑)。

一同:(笑)


――:みなさん笑っていらっしゃいますが、さぞご苦労があったかと思います(笑)。ミクシィさん側としても、動画・録画機能の導入は当時から検討していたのでしょうか。

三島:そうですね。『モンスト』は2014年春頃からYouTubeやニコニコ動画に多くの攻略動画が投稿されはじめました。ゲーム上でもユーザーさんからの要望として、「録画機能を入れて欲しい」という声が多く寄せられていたこともあり、我々としても導入することを考えていました。


――:そこでタイミング良くカヤックさんが提案しに行ったということですね。

遠山:はい。これまでも何度か三島さんたちと打ち合わせしてきました。弊社としても「次の打ち合わせで決めるぞ」と思ったある日のこと、いつも通りに挨拶して、いざプレゼンのため椅子に座ろうとしたとき、ミクシィさんから「すみません。もう別のSDKで決めているところがあるんですよ」と言われてしまったのです(笑)


――:え、まさかの提案する前から“何言ってもダメ…”な状態でプレゼンが始まったのですか。

片岡:そうなんです。 今でもこのネタで木村さんにいじられますね(笑)。

遠山:ただ、スタートラインからもう負けているので、ここから負けることは無いじゃないですか。そのため、逆にバットは振りやすかったですね。


――:一度ほぼ決まっていたものが覆るのは、なかなか無いことだと思います。これほどまでにミクシィさんを動かしたのは、やはりカヤックさん側の名プレゼンの賜物だと思います。ちなみにミクシィさん側としては、どこが決め手となったのですか。

三島:じつは5つあります。まずは『モンスト』に対する情熱とカヤックさん側の組織としての柔軟性、このふたつが挙げられます。3つ目は、すでに実績があり、かつ保守管理もきちんとしていたこと。4つ目は、Android端末の低スペックの機種でも広く対応できていたこと。そして、何よりも『モンスト』のユーザー目線で企画・提案していただけたのが、我々としてもすごく嬉しかったですね。


――:なるほど。そこから本格的に導入に至るまでの開発がはじまっていくのですね。

片岡:そうです。思い返せば、ミクシィさんには本当にご協力いただきました。それこそ「Lobi REC SDK」の品質そのものをミクシィさんに育てていただいた、といっても過言ではありません。現状、こうして「Lobi REC SDK」が多くのデベロッパーさんにご支持いただいている経緯も、ミクシィさんからのフィードバックがあってこそだと思います。


――:導入までのフローも結構活発に行われたのですね。

三島:はい。もともと木村が「やるのであれば、ただSDKを導入するだけではなくて、きちんとユーザーさんに意味のあるコンテンツにしよう」という意向でしたので、カヤックさん側からは7、8人ほど、弊社側からもエンジニアとプランナーの何人かで、積極的に意見交換を行いました。「Lobi」にこういう機能があったら面白い、こうすると録画から投稿までのフローが円滑になるなど、様々なアイデアを持ち寄り、最終的にカヤックさん側がまとめて本格的に開発がスタートしました。


――:もうほとんど共同開発といってもいいですね。

片岡:我々としては恐縮です(笑)。

遠山:その活発な意見交換をもとに生まれた機能が、ゲームオーバー時に表示される「該当ステージの動画を見る」というものです。そのほか、キャラクター名などで動画を探せるソート機能といった、ユーザーさんの利便性を考えた企画がいくつも生まれましたね。
 

▲ゲームオーバー時のプレイ動画導線


▲検索機能



▲タグ機能

 
――:開発が本格的にスタートした後もご苦労があったのでしょう。

片岡:そうですね。技術的にクリアしなければならない事がたくさんありました。我々としては、ミクシィさんが求める水準まで行かなければならないため、LobiチームのSDKエンジニアたちが必死食らいついていきました。

三島:弊社のエンジニアに「今回の取り組みで何が良かった?」と聞いたところ、“ひとつのチームとして一緒に開発できたこと”と言っていました。それこそモンストチームの一員のように、カヤックさんに来ていただいて、弊社の会議室で両社のエンジニア同士で直接話し合って開発できたことは大きかったですね。何よりスピード感がありますし、かつ困ったことはその場ですぐに解決できるように動けるのですから。


――:先ほどミクシィさんが求める水準とおっしゃいましたが、具体的にはどういった内容が求められましたか。

片岡:色々ありますが、やはり品質のテストですね。ミクシィさんには惚れ惚れするテストチームの方々がいらっしゃるのですが、端末・アプリのどこを触れば落ちそうなのかが鋭いんですよ

たとえば、イヤホンを何回も抜き挿ししたりして、とにかくアプリを落とそうとするんです。しかも弊社エンジニアの横で…。 もう気が気じゃないですよ(笑)。もちろん、これは事例のひとつで、そのほかさまざまな負荷・耐久テストは行うのですが、テストエンジニアの方々には色々検証してもらいました。

三島:でもユーザーさんに『モンスト』を心地良く楽しんでいただくために譲れません。弊社にはそういう人がいっぱいいます(笑)。

一同:(笑)


――:やはりテストは厳しいのですね(笑)。

遠山:ものすごく厳しかったです。とはいえ、我々としても“SDKを導入してからモンストが落ちるようになった…”なんてことになったら、もうアウトじゃないですか。それこそ勢いのある大注目の『モンスト』に導入させていただきながらも、これで迷惑をかけてしまったら「Lobi」自体の生命線にも関わりますし。だからこそ、徹底的にチェックしていただいたことは、本当に我々としても助かりました。


――:何かほかにもテストはあったのでしょうか。

遠山:ミクシィさんの会議室で、72時間ずっとアプリを起動し続けるというテストがありました(笑)。実際に見に行ったりもして、1日(24時間)経って見に行くと「まだ動いている…よし!」、2日目(48時間)にまた見に行くと「あ、まだ動いている…よし!」といったように、もう72時間は本当に落ち着かなかったですね。万が一落ちてしまったら、そこでお終いなので……いやぁ、あれは怖かった。

片岡:そして、72時間後に「動いてました!合格です!」というメールが来るんですが、「Lobi」チーム全員でもう大盛り上りでしたよ(笑)。いやぁ、本当に最後の最後に試練が来たという感じでした……。まあ、それが最後じゃなかったんですけどね(笑)。

一同:(笑)
 


――:それはたしかに心休まらないですね(笑)。

三島:弊社はチェック項目がすごい量です。恐らくほかのゲーム会社と比べても、品質管理の基準は高いです。実際に「そんなことまでしないだろう」…ということまで全部チェックして、気付かないバグを見つけるぐらいの気持ちで洗い出していきます。それらをすべて都度潰していくのですが、カヤックさんは最後まで柔軟に対応してくれました。やはり、そのスピード感はすごいですね。


――:ちなみに、実際のリリース後、何か問題は起こったのでしょうか。

三島:一度だけサーバーが一杯になり、一時的に「Lobi」に投稿できなかったことがあります。ただ、ものの数分で直りしましたし、その後は全くないです。


――:そういう意味では、先ほどみなさんもおっしゃっていたように、ミクシィさんの徹底的なチェックがあったからこそ、「Lobi」の品質が研ぎ澄まされたのですね。

片岡:おかげさまで相当自信がつきました。正直、これほど品質チェックされているSDKは他に無いと思いますよ(笑)。本当に大変なことばかりでしたが、ミクシィさんと一緒に開発しているときは、それ以上に楽しかったですね。


 

■動画を軸に新規ユーザーの取り込みも考える


――:『モンスト』に「Lobi」が導入されてから、かれこれ数ヵ月経っていますが、ユーザーさんからの反響はいかがですか。

三島:大きかったです。『モンスト』のユーザー数を鑑みて、ある程度の動画投稿数を事前に予想していたのですが、当初の想定よりも十数倍もの規模になり、サーバーも急遽増強しました


――:一日平均の投稿数はどのぐらいでしょうか。

遠山:詳細な数字はお伝えできないのですが、数万規模で投稿があります。様々な動画投稿サイトがあるなかで、恐らく『モンスト』の動画が投稿されているのは「Lobi」が圧倒的に多いと思います。


――:そういえば録画ボタンは常設せずに、オプション画面で「ON/OFF」を切り替える形となっていますよね。

三島:やはり全員が全員、プレイ画面を録画して投稿するものではないかなと思っていますので、興味がある人は切り替えて録画してもらうようにしました。

片岡:そうですね。あくまでも我々が提供している機能は、ゲームの主役となるものではないので、導入タイミングや動画の録画・投稿・閲覧に関しては、よく話し合って決めました。


――:とはいえ、それでも実際ものすごい投稿数となったのですよね。
 

三島:おかげさまで投稿数は多いです。やはり『モンスト』関連の動画が増えたのは、マックスむらいさんやHIKAKINさんをはじめとするYouTuberの方たちが動画を投稿し始めて、それで『モンスト』も一緒に成長できたのかなと思います。

遠山:ユーザー層の関係もありますが、『モンスト』の動画を投稿する方には、小学生など若年層が多いですよね。もう音声からはチャイムが聞こえたり、教室でワイワイしていたりと、生活音が聞こえてくるのです(笑)。こうした傾向は、なかなかほかのアプリでは見られないですね。

■「練習動画…7歳、14歳兄弟プレイ!下手すぎる」



――:投稿される動画ジャンルはどういうものが多いですか。

三島:基本的に攻略動画が一番多いですが、面白おかしくする動画も流行っていますね。たとえば、絶対に連れて行かないメンバーでデッキを組み、全然勝てないですが「とりあえず挑んでみた…」といった、閲覧する側としても面白い内容のいわゆる“魅せプレイ動画”が多く投稿されます。

①実況あり「タスの巣窟・パワタスキング!で負けました!」


②実況なし「ツクヨミ超絶パワキンで突っ込んだったwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」



――:つい先日は公式動画ポータルサイト「モンスト超絶CAST」も始まりました。
 
三島:はい。やはり今後『モンスト』としても動画は力を入れていく分野ですので、きちんとユーザーさんたちが楽しく動画を投稿できる立て付けを整えたり、モンストに関する動画を見つけやすくするためにオープンしました。クエストの攻略方法や新キャラクター紹介などの公式動画のほか、『モンスト』関連のタグで該当動画を簡単に探せるなど、利便性の高いサイトになっています。こうした動画を軸に、新しいユーザーさんを取り込むことも考えています。
  ――:ちなみに、2014年11月には『モンスト』が11月のApp Store売上ランキングの首位獲得日数でトップとなりました(関連記事)。「Lobi」導入が2014年10月29日ということもあり、少なからず貢献度はあるのでしょうか(笑)。
 
三島:検証まではしていませんが、少なからずあるのではないでしょうか(笑)。
 
 
――:分かりました。突っ込んだところまでお聞きして、失礼しました。それでは、最後に両社における今後の展望を教えてください。
 
片岡:我々としては、今後『モンスト』上で新しいイベントが次々と出てくるなかで、それにジャストフィットするような形でプレイ動画を使って、『モンスト』がさらに楽しくなるような機能や企画を提供させていただきたいと思っています。まだまだ録画機能を使用したことのない方もたくさんいらっしゃいますので、動画体験に触れていない方も含め巻き込んでいきたいです。
 
遠山:そうですね。たしかに、まだまだユーザーさんに訴求することはあると思っています。現在は、なんとなく「こういうふうに使うんだ…」というのが見えてきたところですので、これから動画を録画・投稿してもらえるモチベーションを増やしたり、よりゲーム性と連動させたような施策を展開するなど、様々な仕掛けを考えていきます。
 
三島:まずは動画を投稿してもらえるようなワクワク感といった、録画してもらえるような動機付けは用意しなければならないと思っています。そのほか閲覧者に対しては、何の動画を探しているのかなど、それらを我々がうまく提供できるような仕組みも作っていきます。


――:本日はありがとうございました。
 
(取材・文:編集部 原孝則)


■「Lobi」
 


■『モンスターストライク』
 

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© mixi, Inc.
株式会社MIXI
https://mixi.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社MIXI
設立
1997年11月
代表者
代表取締役社長 木村 弘毅
決算期
3月
直近業績
売上高1468億6800万円、営業利益:191億7700万円、経常利益156億6900万円、最終利益70億8200万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2121
企業データを見る
株式会社カヤック
http://www.kayac.com/

会社情報

会社名
株式会社カヤック
設立
2005年1月
代表者
代表取締役CEO 柳澤 大輔/代表取締役CTO 貝畑 政徳/代表取締役CBO 久場 智喜
決算期
12月
直近業績
売上高174億6700万円、営業利益10億2100万円、経常利益10億3800万円、最終利益5億1100万円(2023年12月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3904
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