【サイバーエージェント決算説明会】第2四半期は"増収増益" ゲームとネット広告が過去最高 運用型広告と『グランブルーファンタジー』がけん引、『リトルノア』は改修後にフルアクセル


サイバーエージェント<4751>は、4月23日、15年9月期の第2四半期(14年10月~15年3月期)の決算発表を行うとともに、東京都内でアナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した15年1~3月期の決算は、売上高605億円(前四半期比[QonQ]で4.6%減)、営業利益81億円(同34.6%減)、経常利益82億円(同34.4%減)、最終利益35億円(同44.9%減)だった。
 
QonQで減収減益だったが、これは前四半期(2014年10~12月期)に投資育成事業でDaum Kakao Corporationsなどの株式売却を行ったことによるもの。いわば一時的な収益がこの四半期ではなくなったにすぎない。投資育成事業を除いた"本業"の収益は、売上高577億円(同4.1%増)、営業利益76億円(同6.1%増)となり、QonQでは増収増益となる。ネット広告事業とゲーム事業が過去最高業績を更新するなど好調だったことが主な要因だ。

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決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は、「投資時育成事業を除く売上高と営業利益はそれぞれ過去最高を更新し、全体的には順調に推移した」と総括した(以下、「」内は藤田社長の発言)。「755」などの先行費用をこなしながらの実質増益であり、好調な内容であったといえよう。主力のインターネット広告事業は広告需要を取り込み、ゲーム事業は『グランブルーファンタジー』がけん引し、いずれの事業も過去最高の業績を更新した。Ameba事業は、ゲームの端境期にあったため伸び悩んだという。
 



■投資育成事業を除くと過去最高の売上高・営業利益に

まず、四半期別の売上高の推移を見ると、売上高がQonQで4.6%減の605億円だった。前の四半期に投資育成事業でDaum Kakao Corporationsなどの株式売却益が計上されたことによる。一見すると減収となっているが、投資育成事業を除いた売上高は601億円となり、QonQでは4.1%の増収となる。
 

続いて、営業利益の推移をみると、QonQで34.6%減の81億円だった。大幅な減益となるが、これも売上高と同じく前四半期に投資育成事業で計上されたキャピタルゲインがこの四半期では計上されなかったためだ。投資育成事業を除いた営業利益は81億円となり、QonQでは6.6%増となる。四半期ベースでは過去最高となる。
 

また従業員数は、直近4四半期は3200名前後で安定している。新卒社員が入る4月(第3四半期)に従業員が一気に増え、その後、中途採用や退職者などの増減などがあるもの、翌期の第3四半期までは安定して推移する傾向にあるという。今年は264名の新入社員が入る予定。
 



■上ブレの可能性は高いが、15年9月期予想は据え置き

通期予想に対する第2四半期累計(14年10月~15年3月)の進捗率は、売上高が52%、営業利益が74%、経常利益75%、最終利益が71%となる。進捗率を考えると、利益の上振れは必至のように思える。なぜ予想を据え置いたのか。

これに対し、藤田氏は「売上高は通期計画に対してオンスケジュールだが、営業利益、経常利益、純利益は予想を上回る可能性は高い」と上ぶれとなる可能性は高いと認めた。しかし、「決算賞与を検討しなくてはならないし、(取引所の定める)開示基準を超えるかどうかは現段階ではわからない」ため、通期予想を据え置いたとのことだった。
 


以下、セグメント別の状況を見ていこう。


■ゲーム事業…『グランブルーファンタジー』がけん引 『リトルノア』は6月まで改修しアクセルを踏む

ゲーム事業は、売上高155億円(QonQ8.4%増)、営業利益36億円(同3.4%増)となり、売上高・営業利益ともに過去最高を更新した。売り上げに関しては、ネイティブ・ブラウザ双方で伸びているが、Cygamesの提供する『グランブルーファンタジー』が好調だったことが主な要因だった。
 


『グランブルーファンタジー』以外にも、『戦国炎舞-KIZNA-』や『アイドルマスターシンデレラガールズ』、『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』など複数の有力タイトルを持っている。新作では4タイトルをリリースし、その中でも『リトルノア』は4月13日に100万ダウンロードを突破した。
 


なお、『リトルノア』については、現在、ゲームの改修をかけているとのこと。藤田氏は「初動がとても良かったが、せっかくクオリティの高いものを作ったのだから、完璧な状態になるまではアクセルを踏まない。6月いっぱいは改修して、7月以降、広告宣伝費を投入し、再度アクセルを踏みたい」とコメントした。



■Ameba事業…ゲームの端境期で伸び悩む、メディアはAmebaブランドに統一

Ameba事業は、売上高88億円(QonQ7.4%減)、営業利益16億円(同19.6%減)だった。ネット広告とゲーム事業に比べると伸び悩みがみられる。第2四半期での広告需要を取り込めなかったことに加え、ブラウザゲームの課金収益が落ちてきたとのこと。さらに大規模な障害を起こした日が数日あり、損失を出したこともあったという。
 


藤田氏は、「15年9月通期で80億円の利益を出す計画で、四半期ベースで20億円の利益を出さないといけないのだが、下回って着地した。広告はスマホが伸びているが、PCが苦戦した」と述べた。またゲームの課金収益に関しても、一種の端境期にあるため、「なんとか頑張って耐えている状況」にあるという。

ゲームに関しては、15年1~3月期以降にリリースしたタイトルがけん引役になることが期待される。『ロイヤルフラッシュヒーローズ』はAndroid版のみだが、月商2、3億円の規模になる状況で、今後、iOS版のリリースで5億円規模を狙う。『ピグブレイブ』と『プリンセスコネクト』も1億円の月商が見込めるそうだ。さらに『ガールフレンド(♪)』も7月頃に配信開始となる見通し。
 
 
Ameba Owndなど新サービスを続々と立ち上げ

このほか、Ameba事業でブランドロゴを一新し、新規事業を続々と立ち上げている。その主軸は、「Ameba Ownd」だ。デザイナーやプログラマーがいなくても自分のHPが作れるサービスで、現在、1万5000のサイトを突破するなど好調に推移しているという。

かつてのフリーホームページのようなサービスだが、自分でカスタマイズして作れるだけでなく、デザイン性の高さが特徴。個人事業だけでなく、会社のプロジェクト、部活、店舗などの小規模な集団でサイトを作って情報発信しているそうだ。藤田氏個人のHPだけでなく、自身の所属する麻雀部のHPも「Ameba Ownd」で作られている。またスターバックスでは店舗ごとのサイトが開設されており、情報発信に利用されているという。

気になるのはマネタイズだろう。会場からの質問に対して、藤田氏は「利用者はサイト更新時にマイページを見ることになるので、そこに掲載する広告が考えられる」との考えを示した。また楽天市場のように利用者のサイトに誘導する広告を販売する可能性も問われると、「実はマネタイズについてはほとんど考えていなかった。スモールビジネスの利用が多いので、アクセスを増やすための広告もありだなと思う」とコメントした。まずしっかりとしたサービスを提供し、利用者が増えてからマネタイズを考えるというスタンスに変わりはない。
 


このほか、キュレーションサービスでは、「Spotlight」と「by.S」が伸びている。それぞれ1660万MAUと、750万MAUと急成長を見せている。今後、Amebaキュレーションと再定義して伸ばしていく考え。
 

これに関連して、「あした会議」で、サイバーエージェントで行うメディア事業、別会社や別ブランド事業でやっている事業を「Ameba」に統一することを決定したそうだ。あわせてメディア統括本部をAmeba事業本部に名称を変更し、Amebaブランドの強化に取り組む。それにあたって、ブログやピグをカンパニー化し、それ以外はAmebaゲームス、Amebaキュレーションなどの別ブランドとしてサービス展開を行う予定。今後精査し、内容が固まり次第、改めて開示する予定。



■ネット広告…運用型広告が伸びる、アドテクは黒字転換

ネット広告事業は、売上高349億円(QonQ5.4%増),営業利益37億円(同31.2%増)と大幅な増益となった。営業利益率も10%を超えた。第2四半期は、純広告の需要期のために伸びやすい傾向にあるが、アドネットワークとリスティング広告などの「運用型広告」が伸びたという。四半期に変動の大きい純広告に比べて、年間を通じて安定した収益が出るようになっているとのこと。
 


特に、アドテクについては、先行投資で赤字だったものが、この四半期では黒字になったという。「当社は、総合広告代理店よりも運用型の広告に強いが、運用型はここ数年、急激と言っていいほど売り上げを伸ばしている。広告市場の拡大も運用型にけん引されており、当社の展開は市場のトレンドに沿ったものだ」と述べた。引き続き運用型の広告を伸ばしていく方針。

さらに、ソーシャルメディアや動画広告、ネイティブアドの広告も急成長しており、さらに伸びるとの見方を示した。この3分野の収益規模に関して質問があり、藤田氏は「それぞれの広告の売り上げは開示できないが、トータルは42億円となる。このうち、ソーシャル広告がかなり多い。それ以外はまだ生まれたばかりで話題先行だ。どこまで伸びるかわからないが期待している」と回答した。
 



■メディアその他事業

メディアその他事業では、トークアプリ「755」に注力しており、現在、500万ダウンロードを突破した。TwitterやLINEのような生活密着型サービスを狙っているという。「いわゆるティッピングポイントが500万ダウンロードなのか、1000万ダウンロードなのかわからないが、周りの人が使っていたら自分も使うという状況を目指す」。
 

アクティブユーザー数やマネタイズの方法について聞かれ、「DAUも非開示だが、ざっくりと10分の1くらいと思ってほしい。かなり多いほうだ。また、マネタイズの時期は考えていない。広告を入れる場所は結構あるので、しかるべき時期にやろうと思っている。ティッピングポイントを超えた時に広告を入れるとマネタイズできそうだが、これについては焦る必要はない」と述べた。

このほか、エイゲックス・デジタルとの共同出資による合弁会社AWAの実施する音楽配信サービス「AWA」は、第3四半期中(5月下旬)にも一般公開となる予定だ。当初予定していた2月もしくは3月よりも遅れたが、著作権などの関係で楽曲を揃えるのに手間取ったことが要因だった。ただ、「粘っただけあって、しっかりとした楽曲を揃えることができた」という。
 
 
また、テレビ朝日との共同出資子会社AbemaTVもサブスクリプション型動画配信プラットフォーム「Abema」を年内にローンチする予定。このサービスもフルネイティブで作ったアプリでサービスを提供する予定で、ニュースコンテンツのほか、ゴルフ、音楽チャンネルなど嗜好性の高いコンテンツを提供するとのこと。動画サービスに関しては、Ameba生放送の年内リリースやAmebaStudio(アメスタ)のフルリニューアルなども予定している。
 
 
(編集部 木村英彦)
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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