Live2Dは、6月26日、東京都内でゲーム開発者やコンテンツクリエイター向けの年次イベントとして「alive 2015」を開催した。「Live2D」とは、2Dで描かれたイラストをアニメーションとして表現できるツールだ。ゲームアプリのリッチ化の一環として近年脚光を集めており、『ガールフレンド(仮)』や『バトルガールハイスクール』、『あんさんぶるスターズ』など有力タイトルで利用されるようになっている。
今回レポートするセッションでは、ヤフーの吉田一星氏が「なりきろいどアプリが切り開くLive2Dの新しい可能性」と題して、『なりきろいど』におけるLive2Dの活用事例を紹介した。
まず、『なりきろいど』というアプリだが、アバターになりきって通話やチャットができるコミュニケーションツールで、今年4月にリリースされた。顔認識機能を搭載しており、ユーザーの表情に合わせて、2Dアバターの表情や動きがころころと変えていく。2Dアバターは、Live2Dと協業し、アニメの質感を生かしたまま立体的な動きを実現したという。相手に顔を見せずに、知らない人とコミュニケーションが取れ、新しい友達を見つけることができる。
続いて開発の経緯を語った。まず、アプリで使われている顔認識技術は、ヤフーが独自開発した技術で、頭部の姿勢や表情を推定し、それに連動してアバターを動かす点に特徴がある。吉田氏は、スマートフォンのフロントカメラを有効活用したいと考えたことが開発のきっかけだったと語った。そして、エンターテインメントアプリとして『怪人百面相』をリリースし、コミュニケーションに活用しようと考えて開発に取り組んだのが本作となる。2013年夏にLive2Dに話をもちかけて開発をスタートし、2年近くかけて開発した。
▲『怪人百面相』では自分の顔と他の人物や動物などが合成できる。
『なりきろいど』のアバターは、Live2Dのアバター機能を活用したアプリで、ユーザーは、10億とおり以上の組み合わせのアバターがつくれる。自分に似せたアバターや、アバターのきせかえといったことも可能だ。このアプリでのアバターのユニークなところは、ティッシュやイカなど人外アバターも充実している点にある。これはよくわからない世界観を表現するものとなっており、コンセプトは『サマーウォーズ』の「OZ」のような世界観をイメージしたという。こうした世界観については、Live2Dからの提案があった。人外アバターについては、喜怒哀楽のアクションも用意されている。例えば、宇宙人系のアバターは、笑うと光ったり、怒ると墨を出したり、悲しむとワタがでたりと、さまざまなアクションが発生する。またティッシュ系では喜ぶとハートマークがでたり、怒るとティッシュが燃えたりする。また『寄生獣』とのコラボも行われており、『寄生獣』に登場する「ミギー」になりきることも可能だ。怒るとカマがでたり、笑うと目がたくさん出てきたりする。
今後の展開については、通話とチャットにフォーカスしたアプリとして、無限の可能性を秘めていると語った。現在想定している利用シーンについては、例えば、ニコニコ生放送で、顔を隠して放送している"生主"がいるが、顔を隠していろいろなアクションを使ったり、歌ったりといったこともやりやすくなると考えているという。このほか、テレビ会議やコールセンター、遠隔教育、英会話、声優オーディションなど、多種多様な利用シーンが想定される。
最後に吉田氏は、『なりきろいど』は無限の可能性を持っているものの、ヤフーの持つ企業イメージと大きく異なり、社内では異端なサービスであると明かしたうえで、今後、ヤフー社内だけでなく、社外の企業とのコラボレーションなどを通じて、アプリの持つ可能性を引き出していきたいと語った。現在、コラボレーションを組む相手を募集しているという。興味のある人はぜひ連絡してほしいとのこと。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- ヤフー株式会社
- 設立
- 2019年10月
- 代表者
- 代表取締役社長 小澤 隆生
- 決算期
- 3月