JFOODO、「食×アニメ」の海外プロモーションメディア向け説明会を開催…「転スラ」プロデューサー・成田真一郎氏を迎えてのトークセッションも

日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)は、「食×アニメ」海外プロモーションメディア向け説明会を3月18日に都内で開催した。

「食×アニメ」海外プロモーションとは、「食」と「アニメコンテンツ」という日本が誇る二つの産業資産を組み合わせ、農林水産物・食品の輸出促進への寄与を目指す事業。

22年度の調査、23年度のアメリカでのアニメイベントのブース出展に続き、24年度は、アメリカ・ロサンゼルスで「食×アニメ」を広い面で展開すべく、人気アニメ「転生したらスライムだった件」とコラボレーションした街ぐるみのキャンペーン「 Slime x Little Tokyo- The One Who Devours All J-Food」を行った。

アニメのグッズショップや日本食店舗が集積したロサンゼルスのリトルトーキョーにて、日本産食材をフィーチャリングしたメニューを展開する12の飲食店を対象に消費者がスタンプラリーで回遊できるキャンペーンを実施したところ、大きな話題に。また、スタンプラリーの参加者へのアンケート実施や参画飲食店を含むインタビューの実施を通して、今後の展開における多くの示唆を得ることができたという。


▲「Slime x Little Tokyo - The One Who Devours All J-Food 」 の告知物と一部メニュー喫食の様子。

この日の説明会は、「Slime x Little Tokyo - The One Who Devours All J-Food 」のほか、今年度の施策から得られた可能性に基づきながら「食×アニメ」海外プロモーションにおける今後の展望や国内関係事業者へのメッセージを発信する目的で開かれた。


▲会場に展示された「転スラ」コラボキャンペーンのスタンプラリー景品。

JFOODOが仕掛ける「食×アニメ」、その成果は?

説明会前半はJFOODO執行役の北川浩伸氏が登壇し、JFOODO「食×アニメ」の事業概要の紹介及び2024年度事業報告を行った。


▲JFOODO執行役・北川浩伸氏。

JFOODOが「食×アニメ」事業を始めてから3年が経ち、「手応えを感じている」と北川氏。「インバウンドの海外旅行者を見ても、食を楽しむために日本に来ていると感じることができる」と、産業競争力の観点から日本の“食”は世界において有力であり、伸びていく産業だと捉えているという。

もう一つの注目産業として、北川氏はアニメーションを挙げ、「映画の祭典で日本のアニメーションが世界的な賞を取るなど、大きな産業競争力を持っている」とした。そのアニメーション産業の競争力をどのように活かせばよいかをJFOODOでは考え、「食×アニメ」事業を進めていると説明した。

続いて北川氏は、2023年度に行われた「ラブライブ!サンシャイン!!」とのコラボを事例に事業の結果を公開。同IPを借りて、アメリカ・ロサンゼルスで行われたイベントでは、描き下ろしのビジュアルを活用して希少性の高さを生み出した。また、静岡県沼津市を舞台にした作品ということで「インバウンドまでつながればいいな」(北川)という思いもあったそうだ。

実際にイベントを開催してみて、「数字的にも良い結果だった」と北川氏。しっかりとマネタイズができているところは、単なるイベントで終わるのではなく稼得性の高いものになったと続けた。

漫然とイベントを打って終わりではなく「そこから学びがなければならない」と北川氏。「ラブライブ!サンシャイン!!」コラボを経て、アニメは喫食体験への大きなトリガーとなる可能性があり、その中でも起因となるようなアニメタイトルがあるという。加えてアニメのコミュニティサイトが食のPRに貢献することや、アニメの世界観を大切にしたメニューが効果的であること、現地の小売店、飲食店の協力なくしては動けないことが「当たり前なんですけどしっかりとわかった」(北川)そうだ。

2023年度のイベントを受けて、北川氏は技術面、運営面、マインドを次年度に向けた課題に掲げた。そして2024年度は、「転生したらスライムだった件」を活用した取り組みを行った。

2024年度は昨年度から進化させた部分があるという。一つは昨年度はアニメの展示会に出展していたが、「点でイベントを打つのではなく面を抑えて一気にプロモーションを展開した」(北川)と、今回はアメリカ・ロサンゼルスにあるリトルトーキョー一帯を活用させてもらってキャンペーンを開催。「これは複数の店舗の皆さんのご協力がないと出来ない。つまりオールジャパンでやらないと実現できなかった」と北川氏は語った。

そのほか、日本の食と日本のアニメに関するアンケートを実施してデータを蓄積したり、「食×アニメ」を対外的に発信することで事業の認知度を高めていった。

「転スラ」コラボキャンペーンでは、JFOODO側で企画を考え、食とアニメをきっちりコラボレーションさせるためにIP事業者や日本食品 卸・商社、現地のメディアや関連団体など異業種が連携し、日本産品の消費を拡大させるスキーム構築に注力したとのことだ。

その結果、「転スラ」コラボキャンペーンでは、特別メニュー提供が約1200セット、日本円にすると370万円弱売り上げた。アニメファンへのアンケートに関しては744件をとっており、このデータをもとに分析をしていきたいとした。

また、北川氏はキャンペーン協力者からのコメントを一部紹介。例えば飲食店からは「売れ行きがよかった」「新メニュー考案の材料が増えた」「日本食のレストラン同士の交流の場ができた」といった声が寄せられたそうだ。

ほかにも「アニメをきっかけに日本食を食べる人がたくさんいるので期待している」(レストラン団体)、「アニメを見て食べてみたいという人がいるので続けてほしい」(アニメショップ)、「アメリカの消費者の態度変容はかつて10年単位だったがいまは2~3年なので早く動かないと他国の競争相手にマーケットが奪われると思う」(卸業者)とさまざまなコメントを紹介した。

2024年度の事業成果について「キャンペーンに参加した飲食店の約8割が新たな日本産食材の取り扱いを始めた」「新しく卸業者との取引を始めた」「定番商品として継続販売を予定している」「参加飲食店の約半数で、前年同月比で売上が10%伸びた」と北川氏。「食×アニメ」によって「飲食店舗にアニメファンを誘引し、売上の拡大、新規取引の拡大が可能である。これはやはり、ひとつのキャンペーン、アニメの力だと思っている」(北川)と述べた。


▲北川氏は「食の事業者がアニメとコラボしたいと思った時にIPホルダーとつなげる仕掛け」や「食の事業者がこういう仕事をするときに何か新しい資金的なスキーム」を次に向けた課題として挙げた。

「転スラ」と今回のプロモはシナジーのある取り組み(成田)

説明会後半では、アニメ「転生したらスライムだった件」プロデューサーであるバンダイナムコフィルムワークスの成田真一郎氏を迎え、『「食×アニメ」事業における期待と課題、両分野のシナジーを生み出すための、国内関係者事業者へのメッセージ』をテーマにしたトークセッションが行われた。

全世界シリーズ累計4500万万部、アニメ累計視聴者数30億回突破の人気コンテンツである「転スラ」について、「とある事件をきっかけに命を落としてしまった平凡なサラリーマンがふとしたことで魔物のスライムとして生まれ変わったところから始まる物語です。魔物として新たな世界を生きていく主人公・リムルは、さまざまな種族と出会い、仲間を増やしていき、そのコミュニティーの長となって国や文化を発展させて多種多様な種族との共存、共栄を目指していく。そんなファンタジー作品となっています」と、まずは成田プロデューサー自ら作品紹介をした。


▲バンダイナムコフィルムワークスの成田真一郎氏(アニメ「転生したらスライムだった件」プロデューサー)

「転スラ」は作中、食事というものが多く描かれており、成田氏も「国づくりというところが転スラの大きなテーマとなっております。その中で食というのは多分に登場する要素でありますので、そういう意味でも今回のプロモーションはとてもシナジーのある取り組みでした」と語った。

食の描写は昨今のアニメ作品においてブームになっているのだろうか? これについては「例えば、スタジオジブリさんの作品が取り上げられる際も“ジブリ飯”という言葉があるように、アニメーションの中で食べ物というところがフィーチャーされているなというのは、業界にいる身として感じています」と成田氏。アニメの中で食、食べ物が強く打ち出されている理由については、「食べ物をアニメで表現するのはとても大変なことになります。その分、力がこもっており、ほかのシーンよりも際立った特徴を持つのかなと思います」(成田)とした。

ここで北川氏から「今回のプロジェクトが成功した要因は?」という質問が。「コラボレーションを行う際、作品の内容をしっかりと捉えたうえでご提案、お声がけをいただいたというところ」が一つの要因であると成田氏。アニメーションは絵をもって何かを表現する。そのため実際に手を動かしてくれるアニメーターやスタジオとのコミュニケーションが不可欠。作品のテーマ性を理解してもらえていることが「アニメを表現してくださる方に説明しやすかったことが成功につながった」(成田)とのこと。

裏を返せば、アニメの世界観、価値観がわからないでコラボをするのはあまりよくないようだ。成田氏も「昨今、IPを使ったタイアップは効果的ではあると思いますが、とりあえず作品だけを使いたいという部分が見えてしまいますと、我々としても少し熱意が冷めてしまうといいますか、どのくらいやったらいいのかわからなくなりますので」とコメント。

「書類で記載された文面だけで説明するとやはり聞く側は固くなってしまうけど、 今回のコラボは最初のお取り組みのご提案の時点でその先のプロモーションがすごくリアルに、現地でこういう展開をしたいというものが明示されていたので、それとともに説明していただけたのはイメージしやすかった。そういった意味でやりやすかったです」(成田)と加えた。


▲もう一つの成功要因として成田氏は「主人公のリムルは日本人のサラリーマンということで(コラボイラストにもある日本酒や海鮮丼などの)日本食というのが自然に表現できる点も作品として大きなアドバンテージでもあったかなと思っています」との考えを示した。

プロモ成功を受け、「今後ビジネスに活かしていくと考えたときに、今回は食とアニメでしたが、こういう異業種のコラボを行う意義は?」と北川氏。IPを広げていくために、例えばアニメイベント、玩具イベントなど、さまざまなところにプロモーションをしかけるが、「エンターテインメント業界の中でしか能動的に訴えかけることができない」(成田) そういう意味で、異業種とのコラボはアニメやゲーム、マンガの文化に触れてこなかった層にリーチできるため、作品にとってもありがたいことのようだ。

加えて、IPの海外への広がりについても触れ、「国が違えば文化、趣味嗜好は当然違ってきます。その国、文化にそくした作品的な長所、プロジェクトの長所があると、より広がっていきやすいと思いますし、そういったところを関わっている人間が見つけていかなければなりません」と成田氏。何が喜ばれるのかは国や文化によって異なり、作品によってはどの国でも愛されるというのは難しいかもしれない。成田氏はIPと国の相性について、「他作品の実績だったりをしっかり注目するというのが、国内のプロモーションにおいても絶対必要ですし、作品関係者が日々分析するべき」とした。

そういう意味で今回の「転スラ」キャンペーンは、IPと国の相性が良かったのだろうか? 作品的な観点からと前置きした成田氏は「ミリムは元々食べ物を加工する文化にいなかったキャラクターでしたが、作品の中で日本人サラリーマンだったリムルが色々な食文化を波及させて、ミリムは食べることが大好きなキャラクターになった。そのミリムが海鮮丼を持ってキラキラした表情をしていると、仮に作品を知らなくても美味しそうだと思えるイラストに仕上がっていると思います」とし、それがアメリカの人たちに受け入れられた要因のひとつではないかと述べた。

異業種間のコラボは上手くいくのかと思っている人もいるだろう。それを成功させるためにはどうすればいいのか? これについては成田氏は「我々はアニメーション業界の中での知識はたくさん持っていますが」としつつ、異業種というところの知識はゼロだという。しかし、手を取り合ってやる以上は相手の業界、分野の話をしっかりと聞き、歩み寄ることが大切。その上でお互いが理解をしていくためには「言葉のすれ違いはよくあるので、そこはしっかり翻訳する方たちが必ず必要になる」(成田)とした。

民間と企業によるコラボレーションは今後も可能性はあるのか? そして受け入れ態勢はあるのだろうか? それについて「転スラコラボは良いフォーマット、成功例を提示できたと思います。これが必ずしもこのタッグだけではない、ほかの色々な業種、IPとの取り組みというところも、今回のものをひとつ基盤として大きく広がっていくことはできるんじゃないかと思います」と成田氏は語った。

最後に北川氏、成田氏は国内関連事業者に向けて次のようなメッセージを送った。

「作品にとっては色々な方との取り組みというところは、広げるという意味でも、新たな刺激、ポジティブに捉えられる関係者が多いと思いますので、ぜひ興味のある作品がありましたら、物怖じせずに、お問い合わせフォームでもきっかけはなんでもいいと思うので始めてみるところに出会いがあります。今後も我々はそういった方たちと一緒にやっていけたらなと思っております」(成田)

「今回は私たちのチャレンジではありましたが、これは仲間の協力がなければできません。ぜひ私たちの仲間になっていただいて、一緒に、オールジャパンで、みんなで海外を目指すようにしたいと思っています。ぜひご協力ください」(北川)

株式会社バンダイナムコフィルムワークス
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会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコフィルムワークス
設立
1976年11月
代表者
代表取締役社長 浅沼 誠
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