京大卒→投資銀行→上場企業社長がeSportsベンチャーに転身した理由 中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第130回
ゲームのスコア競争は以前からコアゲーマーの間で存在してきたが、1990年代に米国でのLANパーティ(オフライン会場でゲームを一緒にプレイする文化)を基軸にEVOのようなeSports大会が始まったのが1996年。韓国では1998年に「StarCraft」流行をきっかけにeSports産業育成が始まり、中国も2019年から職業として公認。ドイツでも2020年にeSports選手へのビザ発行を許可したりと、各国でスポーツ競技、スポーツ選手として認定される流れができている。だが「食える」かどうかは別物。日本でも2010年に初めてスポンサー契約を結んだのが「ウメハラ」こと梅原大吾氏、そこから続く形でマゴ、ときどの3人から「プロゲーマー」の歴史が始まるが、『スーパーストリートファイターIV』など格闘ゲームを中心とする彼らから言わせると「格闘ゲームの「プロ」を名乗っているのは、世界でも20~30人・…日本人で、しかもゲーム1本で食べているという人間に限定すれば、さらに4人に絞り込まれる(ときど『東大卒プロゲーマー』2014)。すでに10年がたち、日本にはすでに300人以上ものプロゲーマーが認定されているが、果たしてそこで「ビジネス」は成り立っているのか。今回はeSports起業で資金調達を行ったCELLORBの話を伺った。
■UZABASE/NewsPIcksの元代表が社員20名のEsportsベンチャーに転身
――:自己紹介からお願いします
佐久間 衡(さくま たいら)です。eSportsスタートアップのCELLORBの取締役COOをやっております。弊社はもともとVARREL(2015年設立、2020年にDonutsグループ入り)とTOPANGA(2011年設立、格闘ゲームを中心にプロゲーマーのマネジメントやストリーミング配信、eスポーツ大会の運営を手がけてきた)の2社が2024年に統合してできた企業です。eスポーツチーム「VARREL」、格闘ゲームコミュニティー「TOPANGA」、格闘ゲームアパレル「+1F」の運営のほか、高校におけるeスポーツ部の活動を支援する「クラサポ」やeスポーツプレイヤー育成のためのユースチーム運営など、eスポーツ業界の持続的な発展を視野に入れた活動にも取り組んでいる企業です。
――:「ゲーム産業」「スポンサー」「興行主(大会運営)」「動画配信サービス」などの事業のすそ野があるなかでCELLORBは「eスポーツチーム運営会社」に組しますね。今回はeスポーツ企業として珍しい「10億円調達」という記事があり、取材させていただきました。
引受先はUTECをリードとしてD4V(Design for Ventures)、EX Innovation Fund(テレビ朝日ホールディングスのCVC)、地域と人と未来(名古屋市)、SMBCベンチャーキャピタル(東京・中央)になります。半年がかりでしたが、ようやくここまで来れました。
――:個人的な驚きはNewsPicks社長というイメージが強かった佐久間さんが 突然eスポーツベンチャー企業の役員になったことです。
そうですね、私は2013年にUZABASEに入社してから子会社の代表などをやっていたんですが、米国経済メディアのQuartz買収(2018年)後に、Quartzの売却・撤退の責任をとって創業者の梅田優祐が退任したんですよ。その2021年1月のタイミングから創業者の稲垣雄介と私が共同CEOという形で経営し、その中で2022年末にUZABASEを非上場化しました。…詳細は省きますが、結論からいうと共同代表を4年ほどやったタイミングで、メンタルダウンになったんですよね。自分の思い込み含め、いろいろなプレッシャーが一度に降りかかって、私も人生初めてのことでした。それで結果として2024年12月に退任したんです。
――:それでお休みされてたたはずが、半年もたたずにベンチャーに入社とは…。
本当にしばらく休もうと思ってノープランで休職していたんですよ。アーリーリタイアの選択肢もありましたし、執行者としての責任を追わず、いくつかの会社で経営アドバイザーをするという選択肢もありました。でも第三者の立場で何か物言いしていても面白くないんですよね。やっぱりどこかにがっつりコミットしたいと思い始めた中でCELLORBの代表の鈴木さんと話す機会があり、業務委託などの期間もへて2025年5月から正式に取締役になりました。
――:しかしあれだけ注目の上場企業の経営者をやっていた方が、こんなベンチャー段階の企業に入社される、というのはずいぶん珍しいことなのではないでしょうか?
サイズでいうとUZABASEも2013年1月に入社したときには20〜30人くらいでしたから。実は今のCELLORBと変わらないサイズのときに入社してるんですよ。そこから3年半かけて2016年に上場にもっていくまでのプロセスも、組織としての段階的な発展も、その成功体験・失敗体験をCELLORBでも生かせるなと思ったんです。
――:CELLORBの経営陣はどんな方々なんですか?
鈴木文雄さんが広告代理店出身でeスポーツ業界をずっと作ってきた人なんですよ(2014年にLoLの日本公式プロリーグLJL創設、2018年にCESA協力のもと日本eスポーツ協会(以下、JeSU)を設立し理事就任)。そこにTOPANGAを立ち上げた豊田風佑さん(「にゃん師」とよばれ、2011年に格闘ゲーム団体TOPANGA創設)や東大生プロゲーマーで有名な谷口一(ときど)さんがいて、この3人と自分はキャリア的にもスキルセット的には補完関係にあって、よいチームを築けていると思います。
――:投資家としてUTECがいたというのも、驚きました。株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズで、あまりエンタメというよりはTechや技術研究分野でのVCという印象です。
UTEC自身もずっと言っているのが「エンタメへの投資は、一番に経営陣が重要だ」、と。この4人の経営陣がいたことが今回の投資につながってます。
エンタメそのものはギャンブル性があるけど、投資家たちはギャンブル自体をやるわけじゃない。サービスの立ち上げからマネタイズまでの構造への再現性がどこまであるかどうかをジャッジされますよね。

■ゲームスキルだけではない。ファンダムづくりが強い日本のゲームストリーマー市場のすそ野
――:eスポーツ市場を比べてみました。世界40億ドル視聴者8億人、となかなかの成長を見せてますが、問題は「MD&チケット」の小ささ。ユーザーから直接回収するのは3-4%、収益の半分以上は「スポーツベッティング」領域です。かつ日本ではそれは非合法なわけですし、日本は200億円足らずの市場のほとんどは「協賛&広告」。「日本がだいぶ盛り上がっていない」&「海外にすそ野が広げいないと儲からない」という構造的な欠陥なのかと思います。


出典)Statistaより中山作成
数字だけでいえばそうなんですが、日本の市場としての強みもあります。じつは、ゲーム配信を行う「ストリーミング」について、同時接続者数が大きかったり、エンゲージメントが強いという意味で「日本のプロゲーマー」は世界的にも目立っているんですよ。元プロゲーマーのZETAのSHAKA(しゃか)さんは同時接続数で世界有数のポジションにいます。
――:え、そうなんですか!?意外です。海外のTwitch配信もあるし、そもそもプレイしているゲームは海外向けだと桁が変わるので、海外ストリーマーのほうが断然優位かと思ってました。
コロナの巣ごもり需要のタイミングで、世界的にeスポーツ選手たちがオンライン配信に取り組み、フォロワーを爆発的に増やしてきました。配信を中心としているストリーマーの方々も、総配信時間の約50%はゲーム配信だと言われています。
――:にじさんじの「葛葉」 なんかもその領域ですよね。
葛葉さんはゲームもうまいし、キャラもたってるし、トーク力抜群で、正直“死角がない"。トーク力がないとそもそも人がつかないんですが、じゃあトーク力だけあればいいかとそれはそれで埋もれちゃう。ゲームの競技シーンを長く経験してきたプロゲーマーや元プロゲーマーは、ゲーム配信をエンタメ化できる素養を持ち、ストリーマーとしてのポテンシャルは極めて大きい。

――:でも日本人選手が得意な「格闘ゲーム」って、選手寿命短くないですか?
いやいや、実は逆で格闘ゲームのほうが、選手寿命が長いんですよ。FPS系(First Person Shooting、VALORANT、APEX、オーバーウォッチ、FORTNITEなど)やMOBA系(Multiplayer Online Battle Arena、League of LegendsやポケモンUNITEなど)のほうが選手寿命は一般的に短い。
格闘ゲームの特性として「同じシーンが再現される確率が高く、準備してきた戦略や経験値が生きやすい」。FPS系やMOBA系でももちろん戦略や経験は活かせますが、状況の多様性が格闘ゲームと比較して圧倒的に高いので、異なる状況へのスピーディな適応、反射神経の重要性が高くなります。
従って、格闘ゲームの選手寿命は比較的長くなり、競技シーンという露出もある中で長く配信をやっていると、その分だけファンもつきやすくなると考えられます。
――:配信が苦手な人っていませんか?プレイはうまくても、とにかくしゃべりが得意ではない、とか。
もちろんそういう方はいます。ただ、他のスポーツと同じですが、長期間競技シーンに適応して30-40代まで続けている選手は、ファンへの魅せ方や人生哲学が研ぎ澄まされていきます。なので、ゲームを通じたエンタメ的な配信でも、視聴者の質問に答える雑談的な配信でも、内容が面白い。
――:たしかにeスポーツ選手って20~30万人といった多数のフォロワーを抱える選手も多く、さらに、ライブ配信の「同時接続者数」としてみるとフォロワー数100万人越えの配信者の水準を出している選手もいますね。
日本はファンエンゲージメントの高さが特徴ですよね。逆に、ときど選手 は週1回くらいしかライブ配信していませんが、編集動画ではあれだけ(1動画あたり10万人超えも多い)視聴数もとれています。プロの選手になってくるとストリーマーと違って毎日配信というのはちょっと厳しいんですが、競技シーンでの露出もあるので、ファンエンゲージメントが持続的に高い状態をつくることができる。


出典)佐久間氏提供資料

出典)SPEEDA
――:eスポーツ業界に、CELLORB以外にどんな会社があるのでしょうか?
山田亮介さんが加入したことで話題になったCRAZY RACCOON(CR社)は東京ドームで5万人規模の自社のイベント(CR FES)を開催しています。また、有名ストリーマーやプロゲーマーを多く抱えるZETA DIVISIONは、Twitch上での動画再生時間(2024年8月)で、世界のeスポーツチームで一位です。
また、REJECTも資金調達してますし(2024年11月に10.7億円調達)、我々CELLORBも含め、IPOを目指す企業も今後増えるのではないでしょうか。もっとこの業界がパブリックになれば、注目度もビジネス構造も変わってくると思います。
■格闘ジャンルでも世界はとれるのか?FPS、MOBA全盛期における日本ゲームの位置づけ
――:個人的に気になっていたのが、「ゲームジャンル」なんですよ。日本でeスポーツといえば「格闘」が一番人気。でも世界的には下記7ジャンルのポートフォリオが結構違いますよね。「MOBA」「FPS・シューティング」「格闘」「パズル」「スポーツ」「RTS」「OCG(カードゲーム)」。

出典)Statista(2024年11月時点)調査より中山作成。日本はPreferred eSports genre in select countries 2024より追加
確かに海外と日本ではまず流行ってるタイトルが違いますよね。そもそもPCゲームメインでeスポーツシーンが育ってきた欧米、ASEANなど新興国だとモバイルゲームが強く、日本はSwitchやPlay Stationなどコンソールが強い。その違いがゲームジャンルの違いにも影響しています。
世界全体で言うと、eスポーツタイトルではFPSとMOBAが優位です。

――:格闘って「応援するには短時間すぎる」と聞いたんですよね。すぐ終わってしまうから、試合として盛り上がるタイミングやポイントが少ない、と。
いや、そんなことはないですよ。チーム戦では1試合1時間程度です。休憩時間もとってチームで作戦を練り直すやり取りもあります。このジャンルだから時間的に不利、ということはないと思います。
逆に格闘ゲームの強みは「わかりやすさ」ですよね。お互いにダメージを与え合い、ゲージがなくなったほうが負け。ストリートファイター6のインパクト返しなど、派手な演出で盛り上がりポイントも分かりやすい。Viewability(見やすさ)という意味ではFPSやMOBAを上回る可能性もあると思っています。
FPSやMOBAはすでにメジャーなeスポーツタイトルとしての地位を世界的に確立していますが、格闘ゲームもそこに入ってくると想定しています。その時に、「格闘ゲーム大国」としての日本の歴史、強みもより活きてくるはずです。
――:アーケードゲーム市場がきちんと残っていた日本ならではですよね。『ストリートファイター2』ブームがあって、それが家庭用移植するなかでカプコンVSSNKの2D格闘対決があり、セガVSバンダイナムコの3D格闘対決へとつながっていく。1990年代のゲーム会社の競争が現在の日本Eスポーツ界を形作ってます。しかしながら、カプコン社のeスポーツ事業でいうとこのように赤字も長く続いています。
eスポーツ事業の運営が難しいのは「間接効果の集計」だと思います。大会運営だけでは黒字にしにくいんですが、競技シーンの盛り上がりは、ゲームの購買やプレイ継続に転化し、間接的には、Year Passなどの継続課金要素含めたゲーム自体の売上に効くはず。ただその間接効果の集計は困難です

出典)Capcom社IRより中山作成
――:たしかにTCG(トレーディングカードゲーム)文脈でいくと、コミュニティにおけるバトルは製品の根幹をなしています。こういうプレイ経験そのものはおカネをうまなくても、間接的には多くの収益を生み、企業に還元されています。
ゲーム業界においてこれだけ「コミュニティの必要性」が叫ばれているのは、次々に新しいゲームをリリースするのではなく、継続課金、バージョン課金を通じて一つのゲームタイトルを長く楽しんでもらう形にになってきていることが大きい。持続的にに楽しんでもらうためには、特定のゲームタイトルのコミュニティを持続的に盛り上げる必要がある。その中心をなすのは、eスポーツとしての競技シーンとゲーム配信であると思います。
■京大数学者、ゲームをめぐる数奇な人生
――:なぜ佐久間さんはゲームが好きなのですか?
長崎の田舎育ちだったことも影響しているかもしれません。エンタメに接する機会が少なく、学校の中での話題の中心はゲームで、新しい攻略法をもってくる人間は尊敬を集めてましたし、ゲームという世界がもつ自由さはまぶしかったですね。
――:最初に触れたゲーム機はどれなんですか?
4、5才で買ったゲームウォッチですね。そのあと小1のときにゲームボーイを買ってもらい、実はファミコンは経ずに小5のときにスーファミを買いました。当時、トイレに行く間も惜しんでゲームやってました。
――:実際僕も、うちの息子もおしっこ漏らしながらゲームやってましたね…。むしろ子供と一緒にやると普通に負けるし、本人も大人を打ち負かすのが楽しそう。こういうゲームのもつ平等性というのはとても魅力ありますよね。
うちもそうです。うちの子の一人は知的障がいがあり、最初は全然コントローラーの扱いが分からなかった。ただ、ゲームの本質はフィードバックなので、ボタンを押して、画面がどう反応するかを見ながら、時間をかけてコントローラーの扱いに慣れていくことができた。今では私も一緒にプレイすると、普通に負けます。ルールが複雑なリアルスポーツだと、これは中々難しい。そういうゲームが本質的にもつ平等性みたいなものは本当にいいところだなと思います。ストリートファイター6(2023)は「サウンドアクセシビリティ」といって目が見えない方でもプレイできる仕様が入っているんですよ。
――:障がい者や高齢者、社会のダイバーシティが進んでいるほど、逆にゲームの効能性もあがると言われています。
自分の母親が幼稚園・保育園の経営をやっています。そこには大人も子どもも、障がいを持っていてもそうでなくとも、「遊び」を通じて学び合う空間があります。元々は自宅で運営していて、学校から帰ると家にはいつもいろんな人たちがいた。そのような家庭環境も、私の人格形成、「誰でもユニバーサルに遊べるゲームが好き」という考えに影響していると思います。
――:佐久間さん自身はどんなゲーム作品に影響を受けてきたんでしょうか?
一番影響うけたのは「RPGツクール」ですね。ゲームそのものを理解する抽象レイヤーがあがった。ゲーム内でプレイヤーの移動を邪魔する樽が置いてある時、そこに樽を置くゲームデザイン上の理由があったりする。そういう「クリエイターの視点」を得られるようになったのはあのゲームのお陰です。それって数学にも似ているんです。
――:数学とゲームが、ですか?
抽象レイヤーをあげていく、というプロセスには数学とゲームの共通点があります。図形の上でどんな関数が定義されるかによって、逆に図形を定義したりもできますし、その図形の上で定義される関数全体がなす代数的構造から図形を定義することもできる。、そうやって「抽象レイヤーをあげていくことで本質を把握する」ということは、数学のベースの考え方ですし、ゲームから学んだ考え方でもあると思います。
――:そこまでゲームが好きだったのにゲーム会社に就職しようとは考えなかったんですか?
小学校の時には特にスクウェアのファンでしたね。小学生の時にスクウェアの募集要項など眺めていた記憶があります。その募集要項の中で募集人数が「若干名」としか書かれてなくて。若干名ってなんだよ!と思ったのを覚えています。だんだん年齢を重ねていくにつれて、「仕事としてのゲーム」を考えることはなくなり、数学が好きになって、数学の研究者を目指して大学に入りました。
――:大学院はどうでした?京都大の数学、ってもうゴリゴリの総本山みたいなところですよね?
普通に挫折しましたね。研究者を目指すプロセスに入れてもらったんですが、毎週、現役バリバリの研究者を相手に、彼らにとって興味深い内容を考えながら数学的な発表を行い続けるのは地獄でした。そこでやり取りする圧倒的な天才、研究者のタマゴの方々ですら、将来は全く保証されていない。あまりに大変過ぎるなと。これは結構な「挫折経験」でしたね。それで就職に振り切ろうと思ったんですが、数学関係の先輩でいうと大学院から金融業界にいく人は多いですね。保険会社のアクチュアリーとか。
――:じゃあUBSにいったのはわりと「順当なキャリア」だったんですか?
いや、結構珍しくてですね。投資銀行のクオンツアナリストとかになるのはよくあるんですが、M&A・資金調達といった投資銀行部門に行くのはあまり先行例のない選択肢ではありました。
投資銀行のインターンに参加して、Financial Modelによって、この会社をM&Aすべきかどうか、最適なストラクチャーは何か、定量的に分析できるところなどが面白いなと思ったんです。EPS(Earnings Per Share:1株当たり純利益)のaccretion/dilution analysisですね。現株主から見て、利益が希薄化しない買収価格や買収スキームが定量的に示せる。現実の意思決定を数学的に判定できるのが面白いなと思って。
――:最近メディア露出の多いゴールドマンサックスの田中渓さんも同じような仕事でしたよね
彼とは就活同期ですね。ただ、数学を使うと言っても、四則演算なので、大学院でやっていたことが生きる、という感じではないんですが。
――:UBS入社後にUZABASEに移られたのはどういう背景だったのですか?
6年ほどUBSの東京やロンドンなどで働いていて、梅田と新野というUBS時代の同僚が立ち上げたUZABASEに入社したのが2013年です。「財務分析を民主化する」という思想にとても共感して入りました。最初の4年ほどは日本事業の執行役員をやって、2017~20年はいくつかの子会社の代表をやっていたのですが、2021年からグループ全体の共同代表になりました。
――:UZABASEではどんな仕事をされていたのですか?
既存事業の再成長、新規事業の立ち上げ、M&A、スタートアップ投資など色々やってきましたが、特に、エンジニアやデザイナーの方と一緒にプロダクトを作るのが好きでした。SPEEDA、FORCAS、INITIAL(現在はすべてSpeedaに統合)などの「経済分析を民主化する」SaaSプロダクトでプロダクトオーナーを務めてきました。

■イベントコマースの可能性。エンタメ業界のTechの弱さは透明性の低さに起因
――:たしかにコミュニティの観点からもゲーム業界にとってのeスポーツ市場の重要性があがっていることは確かです。ただ中山としてもeスポーツ企業が資金調達というのは聞いたことがなかったので、資金調達のプロセスについて、ぜひ伺いたいと思っておりました。
2025年5月くらいから、本格的に投資家とコミュニケーションをとりはじめて、だいたい4か月かけて8月にリード出資を決めてもらいました。そこから1か月半かけてリード以外の投資家を集めて来ました。
――:ときどさんがEVOの大会中なのに投資家インタビューに出た、というコミットの高さにも驚きました。
ラスベガスのEVOの会場からなんとか時間をつくって参加してくれました。冒頭でお伝えしたように、ほとんどのVCにとって「eスポーツって何だ?」というところからスタートしていたので、丁寧に業界の説明を行うことに加えて、「どのような人が」経営をしているかをきちんと伝えていく必要がありました。その過程で、eスポーツのトッププレイヤーであり、CELLORBの取締役でもあるときどさんの意見を聞きたいと、何度もVCからときどさんへのヒアリングの要望がありました。競技シーンで多忙な中、すべてのヒアリングに丁寧に答えてもらったときどさんには感謝しかありません。
――:SaaSのUZABASEとeスポーツのCELLORBで似た部分ってあるのでしょうか?なにか佐久間さんの経験が生かせるような。
「ファンが本当に望んでいるものを届けて、継続的に楽しんでもらうことが本質」という意味ではSaaSとeスポーツは似ています。どちらもLTVビジネスであり、ファンやユーザーが離れては事業が成立しない。ウソが成り立たない。
SaaSでは「ユーザーとの共創」を掲げて取り組んできましたし、それが私がSaaSが大好きな理由ですが、eスポーツでは「ファンとの共創」に取り組んでいきたいと考えています。
――:SaaS企業に比べて、もっとエンタメ産業が取り組むべきこと、はどういうことになりますか?
一言でいうなら「オープンさ」だと思いますね。私がUZABASEでやってきたことの一つは「スタートアップデータのオープン化」です。上場時の有価証券届出書の内容をデータベース化していた企業を買収し、スタートアップのデータについては、一部のデータは無料で誰でも見れる状態にして公開してきました。また、これらのデータを官公庁に納入し、スタートアップに関する政策立案にも役立ててもらいました。そのことによって、スタートアップに興味を持つ人、企業が広がり、スタートアップへの投資や、スタートアップと大企業の事業提携などが広がったのではないかと考えています。
やはり、オープンなデータが無い所に人や企業は集まりません。企業として、データに基づいて事業の予見性が確保できることは、圧倒的に重要です。eスポーツはJeSUが「日本eスポーツ白書」を発行していますが、私も今後、eスポーツのデータのオープン化に寄与していきたいと考えています。
他のエンタメ業界においても、データをオープン化することは、人や企業を呼び込む一つの有望な手段になり得るのではないかと思います。

会社情報
- 会社名
- Re entertainment
- 設立
- 2021年7月
- 代表者
- 中山淳雄
- 直近業績
- エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
- 上場区分
- 未上場