楽天<4755>は、この日(8月19日)、Androidアプリストア「楽天アプリ市場」のサービスを開始するとともに、東京都内でタレントの南明奈さんを招いて記者発表会を開催した。今回の発表会では、人気タレントの南明奈さんも応援に駆けつけ、トークショウを行った。
「楽天アプリ市場」は、180社のアプリ開発会社による、ゲームや占い、知育、ライフスタイルなど様々なジャンルの390タイトルのアプリを提供する。このなかには「楽天アプリ市場」限定アプリも含まれており、取り扱いアプリは順次拡大していくとのこと。
このほか、楽天の他のサービスとの連携も意識されており、アプリの購入やアプリ内課金では「楽天スーパーポイント」を利用できる一方、支払額の10%がポイントとして還元されるなど「楽天らしさ」を強く打ち出したサービスとなっている。
■幅広いディベロッパーが新しいジャンルのアプリを出せるようにしたい
まず楽天代表取締役副社長の島田享氏が登壇し、楽天としての事業戦略と狙いを語った。楽天は、インターネット上で「B2B2C」と呼ばれる、マーケットプレイス型のビジネスを展開してきた。この代表が「楽天市場」だ。ここから派生し、現在では、トラベルやデリバリー、ゴルフ場などを展開し、今回のアプリストアとなった。
スマホアプリの市場は劇的に伸びており、2015年ではAndroidだけで5000億円、2018年には1兆円規模になるとの予測がある。ただ、市場の現状は、上位10個のアプリの収益が全体の48%を占めるなど、寡占状態にある。この状態からロングテールをどう作るかが重要なテーマと市場の現状を分析した。
これまでの市場では、ゲームアプリが強かったが、楽天アプリ市場では、ゲームアプリだけでなく、漫画や音楽、占い、教育など多種多様なアプリを提供する開発会社を支援するため、収益還元に積極的に行っていくという。
既存のアプリのプラットフォーマーは、売上額のうち、30%の手数料をとったが、「楽天アプリ市場」では15%に抑える。残りの15%のうち、10%はユーザーにポイントとして還元し、残りの5%はディベロッパーに還元する。ディベロッパーは75%の取り分となる。
「30%のマージンを取るか、15%のマージンを取るか。アプリのディベロッパーにとっては非常に大きい問題だ。この30%が負担になっており、思うようにアプリ開発ができない、気軽に開発できない、ということを聞く。幅広いディベロッパーが新しいジャンルのアプリを出せるようにしたい」とまとめた。
■多彩なキャンペーンやポイントサービス、セキュリティという楽天の強みを活かす
続いて、楽天アプリ市場事業部部長の栗原祐一郎氏が登壇し、「楽天アプリ市場」の特徴と今後の展開を説明した。「楽天アプリ市場」では、楽天グループの強みである、「B2B2C」のノウハウ、1億1000万人にものぼる強力な会員基盤、楽天スーパーポイントを活かして事業展開を図っていくと述べた。
楽天アプリ市場が他のアプリストアと異なる特徴として、(1)多彩なキャンペーン、(2)スーパーポイント、(3)セキュリティをあげて、それぞれの特徴を説明した。
まず、キャンペーンは、他のストアより安く買えるお得コーナー、アイテムが貰えるコーナー、ポイントがザクザク貯まるコーナーなどを行っていく。楽天市場の象徴である、お買い物マラソンやスーパーセールなど季節イベントを踏襲して活性化していく考えだ。
また楽天スーパーポイントだが、アプリの購入に加えて、課金をした人に購入額の10%をポイントとして還元する。楽天グループではお馴染みのポイントサービスだが、アプリでもポイントが利用できる点も業界として大きな特徴と述べた。「クレジットカードやキャリア決済でアプリやアイテムを購入することに抵抗のある人もいる。楽天のサービスで貯めたポイントを使って課金やアプリを購入したいという人もいるのでは」と語った。
セキュリティに関しては、トレンドマイクロの協力の下、強力なセキュリティを構築したことも明らかにした。ここでトレンドマイクロ執行役員の吉田健史氏が登壇し、セキュリティについて紹介した。
Androidアプリ市場における不正アプリは、アプリマーケットが急激に大きく中、不正アプリも急増し、2年前は70万タイトルほどだったが、その10倍となる710万タイトルに急増したという。そしてマーケットが大きくなることを考えるとさらに大きくなる可能性があるとのこと。
「楽天アプリ市場」は、Trend Micro Mbileapp Reputationと呼ばれるシステムを導入している。すでにリリースされているアプリを楽天アプリ市場で出す場合、トレンドマイクロのデータに蓄積したデータベースを照会して、審査してパブリッシャーに即座に回答する仕組みになっているとのこと。
また、楽天アプリ市場で初めて出すようなアプリ、あるいは改変を加えられたものも解析を行い、挙動をチェックする。静的解析として、APKファイルの中にコードやコンポーネントを解析して不正な挙動をするものか調べる。動的解析として、クラウド上のサンドボックスで動かして挙動を確認する、といったことも行われるそうだ。
アプリに関しては、セキュリティ上のチェックを行ったうえで、他のアプリストアで行われているような、「楽天アプリ市場」の規約に沿ったアプリか、そしてストアに相応しいアプリカどうかをチェックする。
このほか、楽天アプリ市場を利用するユーザーには、不正対策アプリを検出する機能を月1回、無料で提供するといったことも行うという。
なお、楽天の提供するMVNO「楽天モバイル」の端末にも「楽天アプリ市場」をプリインストール提供することも決定した。ただ、楽天モバイル専門のサービスではないため、独自のプロモーションも行っていく予定だ。
楽天グループでは現在、「O2O戦略」を強化しているが、楽天アプリ市場では楽天イーグルスやヴィッセル神戸、カフェなど楽天の持つオフラインのアセットを使ってアプリディベロッパーのプロモーションを行っていく考え。「オンラインの施策はやり尽くさせていると感じており、新しいプロモーションの形も提供したい。」と意気込みを示した。
これ以外には、オープニングキャンペーンとして、楽天アプリ市場のアプリをダウンロードすると300ポイントをプレゼントするキャンペーンも行っているという。
▲南明奈さんは、端末に52個のアプリが入っているという。ゲームアプリはもちろん、乗換案内や地図など実用性アプリ、写真加工・動画加工のムービーを駆使しているという。ゲームについては、育成ゲームやパズルゲーム、恋愛ゲームなどを楽しんでいるそうだ。特に恋愛ゲームでは「ロマンチックなシチュエーションでイケメンがかっこいいセリフなどを話してくれるとキュンキュンする」という。写真加工や動画加工のアプリを充実させてほしいというリクエストを出した。開発チームも前向きに対応していくそうだ。
(編集部 木村英彦)
■関連サイト
会社情報
- 会社名
- 楽天グループ株式会社
- 設立
- 1997年2月
- 代表者
- 代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史
- 決算期
- 12月
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4755