ネクソン<3659>は、8月18日、東京都内でパートナーシップを締結している Big Huge Gamesが開発したストラテジーゲーム『DomiNations -文明創造-(以下、ドミネーションズ)』のメディア向け発表会&試遊会を開催した。発表会には、開発元であるBig Huge Gamesのティム・トレインCEOも駆けつけゲームの紹介を行った。
■ネクソン熊谷氏が語るパートナー戦略
まず、ネクソン経営企画室長の熊谷 峻平氏がネクソンの事業戦略とBig Huge Gamesとのパートナーシップについて説明した。
まず、ネクソンのパートナーシップ戦略を理解してもらうには、ネクソンを理解してもらうことが近道とし、ネクソンの会社の特徴を紹介した。ネクソンの最大の特徴は「国際性」だ。
1994年に韓国で創業したネクソンだが、2003年には日本に本社をおいてビジネス展開を行い、2011年12月に東京証券取引所に上場した。さらにアメリカ人であるオーウェン・マホニー氏が社長を務めている。また業績を見ると、売上高のうち、日本国内は13%に過ぎず、韓国や中国、欧米など海外で収益の87%を稼いでいるという。
国際性豊かなネクソンでは、2014年3月にマホニー氏が社長就任して以来、United Front GamesやTURBO Studios、Socialspiel Entertainment、Robotokiなど外部の開発会社とのパートナーシップ構築に注力してきたという。今回リリースされる『ドミネーションズ』は、ネクソンとのパートナーシップ案件としては第1弾のアプリになる。
では、なぜネクソンは、海外の有力開発会社とパートナーシップを組むことができているのか。ネクソンの持つ国際的な事業基盤だけでなく、Free to Playのゲーム開発・運営に関する技術・ノウハウに魅力を感じている会社が多いとのことだった。そうしたネクソンの強みをベースにした実績も開発会社をひきつけているという。
欧米のパートナーでは、エレクトロニック・アーツと『FIFA ONLINE 3』と『FIFA Online 3M』を韓国でパブリッシングして成功に導いたほか、Valve社との『Counter Strike Online』も全世界でヒットした。こうして実績をあげているところが欧米のゲーム開発会社に安心感を与えているのではないかとのことだった。
グローバルな事業基盤に関しては、韓国と日本、中国、欧米でビジネスを展開するなど、世界中に事業基盤を持っている。とりわけ、欧米のゲーム開発会社にとっては「アジア市場は攻略が難しい市場」だという。アジア市場を得意とするネクソンは、欧米のゲーム開発会社にとっては組みやすい相手という。
もうひとつ大きな要因としては、Free to Playのゲーム開発・運営のノウハウがあげられる。「Free to Playのゲームは、欧米の開発会社にとっては未知の領域でどうやって作ったらいいのかわからない。当社は、ノウハウを持っていることからパートナーに魅力を感じてもらえるのではないか。」と述べた。
■『CoC』と『AoE』を融合させたストラテジーゲーム
続いて、Big Huge Game CEOであり、プロジェクトのリーダーでもあるTim Train氏が登壇し、Big Huge Gameと『ドミネーションズ』を紹介した。会社の社歴だけみると、設立から2年半年ほどだが、開発チームをみうと、ずっと一緒にゲームを作ってきた開発者がコアメンバーとなっているという。
開発チームのメンバーにある共通項は、"歴史を扱った戦略ゲーム"を得意としていることだ。過去に『Civilization』や『Age of Empires』、『Rise of Nations』などのタイトルを手がけてきたメンバーがいるほか、『FrontierVille』の開発・運営に携わったメンバーも在籍しているとのことだった。
他方、モバイルゲーム市場を見ると、『Clash of Clans』や『BOOM BEACH』、『Game of War』などに代表されるリアルタイム・ストラテジーゲームが人気だ。Tim氏は、『Clash of Clans』や『BOOM BEACH』などモバイル戦略ゲームの功績は数百万人に戦略ゲームの遊び方や楽しさを伝えたことを評価しているという。
ただ、こうしたタイトルは、リリースから一定期間経過し、次に、どういったゲームをプレイしたらいいのか疑問に持っているプレイヤーも多いとみており、その回答のひとつとして『ドミネーションズ』を開発したそうだ。『ドミネーションズ』は、『Clash of Clans』と『Age of Empires』が融合させたようなゲームとなっている。
それでは、『ドミネーションズ』はいつ頃から開発を始めたのか。会社を設立した2013年からスタートしたとのこと。当時は10名体制で始めた(現在では40名体制まで拡大した)。その開発手法はユニークで、1年ほどプロトタイプの制作に時間を費やしたとのことだった。仕様書や企画書を一切作らず、いきなりコーディングを始めたそうだ。そして、毎日ひたすらプレイして、何が面白くて面白くないのかフィードバックし、議論し、改善する、という一連のプロセスを繰り返したという。
βテストの方法も特殊で、コミットしたプレイヤー30人に毎日30分、30日間、参加し続けてもらった。完成度の高くないゲームのβテストへの参加に、そこまでコミットしてくれる人を集めるのが難しく、3ヶ月ほどの期間を要したものの、このプロセスを通じて、ゲームを磨きこむことが可能になったという。その後のステップとして、社員や家族によるテスト、そしてオープンβを行った。
「2年の開発期間を経て、今年の4月2日に欧米で正式配信が始まった。今回、アジア配信を発表できることを嬉しく思います」と述べたあと、ゲームの特長を紹介した。Tim氏は、世界中の何千万もの人にプレイしてもらい、その中からこのゲームをきっかけに歴史に興味を持って勉強する人がでてくれば嬉しいとも語った。
■スマホ向けリアルタイムストラテジーの正統進化
本作では、石器時代から宇宙時代にいたるまでの人類史上存在する様々な文明の中で、 ソロプレイや協力プレイを楽しみながら、 自国の発展を目指し、 他国に勝利していく内容となっている。『Clash of Clans』で遊んだことのある人であれば、すんなりと入れるのではないか。
ゲームは、石器時代から始まる。最初は、果物や狩猟で資源を集めていくとともに、未開の地を開拓したり、様々な施設を建てたりして領地を発展させていく。その都市の中心である文明の核心である「タウンセンター」を発展させていくと、石器・青銅・鉄器時代などとなり、8つある文明から選ぶことができる。現代や宇宙時代まで発展させることができ、ユニットもそれに応じて進化していくそうだ。例えば、マシンガンや飛行機、戦車などが使えるという。
▲ゲーム開始当初。領地内にいるウサギや鹿、熊など狩猟したり、果物などを採集したりして資源を集めていく。
▲石器・青銅・鉄器時代を経て、文明を選択した後の都市。短時間の試遊だったため、レイアウトがぐちゃぐちゃだが、領地はかなり広がる。記者はギリシャを選択した。
選択できる文明は、中国、イギリス、フランス、ドイツ、ギリシャ、日本、韓国、韓国、ローマの8文明となっている。それぞれの文明に固有のユニットが用意されており、その種類は全部で数百にものぼる。どの文明を選ぶかによって、ユニットやスキルなども変わるため、国の発展の仕方や戦争なども変わってくるという。
▲タウンセンターを発展させていき、鉄器時代が終了すると、文明が選択できる。文明ごとに特殊効果が付いており、中国だと人口が増加しやすくなるほか、タウンセンターでボーナス守護兵が追加でもらえるといった効果がある。ギリシャは、15分以内の施設建設・アップデートであれば無料で即座に完了するといった特殊効果があった。
都市建設に関しては、従来の『Clash of Clans』以来のリアルタイムストラテジーの"文法"を踏襲しつつ、シムシティ的な要素を取り入れている。例えば、「道路」が用意されており、道路を敷設してレイアウトを重視しながら町づくりを進める必要がある。この道路があることで、自分だけの、オリジナリティの高い町づくりも楽しめる。
戦闘は、他のプレイヤーの都市を攻撃して資源を奪い取るPvP(Player versus Player)のほか、マップ上にあるコンピューターの操作する国と戦うPvE(Player vs Enemy)が用意されている。戦闘ではユニットを繰り出して、タウンセンターを破壊すれば勝利となる。他の戦略ゲームと異なる点として、「ここを攻めろ」などとターゲットとなる施設を選択できる点だろう。
▲戦闘は、他のプレイヤーと戦うPvPと、マップ上を進んで拠点を撃破していくPvEが用意されている。
なお、ストラテジーゲームのもう一つの醍醐味である「同盟」を他のプレイヤーと組むことも可能だ。ストラテジーゲームの面白さは、同盟同士の対戦だが、Tim氏によるとそれほど遠くない将来に導入する予定だという。また、同盟を組む場合、異なる文明のプレイヤーと組むこともおすすめだそうだ。自分たちでは持てないユニットを派遣しあえるため、結果として軍事力が高まるという。
プレイした感想は、好きな文明を選んで進化させていく要素などは、従来のストラテジーゲームとは一味異なっていると感じた。同盟機能の強化や、新しい文明の追加なども行っていくとのことで、ゲームも今後一層の深みを増していくことだろう。スマートフォンで手軽に、骨太なストラテジーゲームを遊びたい、という方にはおすすめだ。興味のある人は、早めに事前登録をしてはいかがだろうか。
(編集部 木村英彦)
■『DomiNations』
会社情報
- 会社名
- 株式会社ネクソン
- 設立
- 2002年12月
- 代表者
- 代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3659