【gumi決算説明会】國光社長「投資フェイズから回収フェイズに」 新作『誰ガ為のアルケミスト』は2月1億円突破、大型タイトルで来期黒字転換狙う



gumi<3903>は、3月14日、東京都内でアナリスト・機関投資家向けの第3四半期決算説明会を開催した。すでに報じたように、第3四半期累計(2015年5〜2016年1月期)の連結決算は、売上高160億7500万円(前年同期比22.0%減)、営業損益16億2300万円の赤字(前年同期4億2000万円の黒字)、経常損益16億6600万円の赤字(同2億9200万円の黒字)、最終損益21億3200万円の赤字(同2億2500万円の赤字)と減収・営業赤字転落となった。

ただし、第3四半期(15年11月〜16年1月期)の連結を見ると、増収・赤字幅が大幅に縮小するなど改善した。売上高51億4700万円(前四半期比1.8%増)、営業損益1億2200万円の赤字(前四半期9億6800万円の赤字)、経常損益1億0400万円の赤字(同10億6500万円の赤字)、最終損益3億6700万円の赤字(同11億3900万円の赤字)だった。

決算説明会に臨んだ國光宏尚社長は、「『ブレイブフロンティア』の全体の収益に占める比率がピーク時の8割から3割に低下した。特定タイトルに依存する"一本足打法"から脱却できた」と述べた。『ファントムオブキル』や『ファイナルファンタジー・ブレイブエクスヴィアス(FFBE)』、『ドラゴンジェネシス』、『ソードアート・オンライン(SAO) コードレジスタ』などが寄与したことが背景で、gumiはアプリストア売上ランキングTOP100に最大6タイトルを送り込んだディベロッパーとなった。
 


國光氏としても自社グループのアプリ開発・運用力には自信を深めたようだ。今後、「投資フェーズから回収フェーズへの移行」を図り、2017年4月期には黒字転換を目指す。『クリスタルオブリユニオン』や『ブレイジング オデッセイ』、『シノビナイトメア』など、注目を集める大型タイトルを続々とリリースするほか、『ファントムオブキル』など国内開発ゲームの海外展開、そして、海外グループ会社で開発中の大型タイトルの配信も行う。また海外拠点の再編に伴うコスト削減も寄与する。


 
■『ブレフロ』落ち込むも『FFBE』や『ファンキル』などが貢献

まず、第3四半期の状況を中心に見ていこう。売上高は、QonQで1.8%増の51億4700万円だった。主力タイトル『ブレイブフロンティア』日本語版は、配信後の期間経過に伴い、MAU(月次アクティブユーザー数)が減少し、減収になった。しかし、『ファントムオブキル』と『ドラゴンジェネシス』は1月に過去最高の売上を記録したほか、昨年10月にリリースした『FFBE』もフル寄与したことなどが奏功した。また、『SAOコードレジスタ』や『ブレイブフロンティア』海外版も堅調だったとのこと。
 
【gumiの四半期別売上高の推移(億円)】


営業損益は1億2200万円の赤字と、前四半期の9億6800万円から赤字が大幅に減少した。増収効果に加えて、売上原価と販売管理費が減少したことが主な要因。売上原価については外注費を前四半期比で8.0%減の8億7600万円に抑制した。増収となったにも関わらず、支払手数料が減少した。一見すると不思議な現象だが、同社によると、他社IPタイトルの売上が伸びた一方で、『ブレイブフロンティア』が減収となったことによる。他社IPタイトルの売上には、パブリッシャーの決済手数料とレベニューシェア(収益分配)を除いた「ネット計上」のものがあるためだ。ちなみに、コイン消費額である「グロス」(総額)の売上高を見ると、過去最高水準となったそうだ。また販売管理費については、大規模プロモーションを行わなかったことに伴い、広告宣伝費も49.9%減の5億0300万円に大きく減らしたことが奏功したという。
 



▲従業員の人数は738名から777人に増加した。これは国内と海外(主にフランスと韓国とみられる)で採用を実施したためだ。海外拠点の整理を行うため、第4四半期以降は再び減少が見込まれる。


 
■第4四半期は広告宣伝費の増加で赤字幅拡大 新作の寄与は僅少

続く第4四半期は、売上高51億4700万円(前四半期比1.0%増)、営業損益7億円の赤字(前四半期1億2200万円の赤字)、経常損益8億円の赤字(同1億0400万円の赤字)と微増収・赤字幅拡大を見込む。最終損益については税効果の見積もりが困難であるため、記載していないとのこと。
 


売上高については、『ブレイブフロンティア』日本語版が新機能の追加でQonQで20%の伸びを見込むほか、『FFBE』もゲーム内施策や有力IPとのコラボなどで増収を見込む。その一方、『ブレイブフロンティア』海外言語版はMAUの減少を想定し、QonQで20%程度の減少を見込んでいるそうだ。新規タイトルについては僅少な数値を採用し、全体としては売上高は横ばいとなる見通し。費用面では、海外拠点の再編による人件費の減少を想定する一方、『ファントムオブキル』の大型プロモーションと新規タイトルの配信に伴うプロモーションを行うため、広告宣伝費が5億7000万円増加する。広告宣伝費の増加が赤字幅拡大の要因となる。
 


 
■個別タイトルの状況

個別タイトルの状況は以下のとおり。
 
▲『ブレイブフロンティア』は日本語版は、3周年に向けてマルチプレイ要素や幻想進化といった新機能を実装し、QonQで20%の増収を見込む。海外言語版は、ハイレベルユーザー向けのダンジョンの追加や、ギルド機能などの新機能を実装するが、MAUの減少を想定し、20%の減収となる見通し。

 
▲『ファントムオブキル』は、『Fate/stay night[UBW]』とのコラボを3月より実施中。3月下旬より、大型プロジェクト「プロジェクトZERO」を実施する予定。「プロジェクトZERO」では、新シナリオ「地上編」の追加や、コンセプトフィルム、VRコンテンツ体験などを提供する。

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▲『誰ガ為のアルケミスト』は、1月28日にリリースしたばかりのタイトルだが、大規模プロモーションを行っていなかったものの、2月単月は月商1億円を突破した。4月以降、『ファントムオブキル』や『ブレイブフロンティア』など主力タイトルとのコラボを行う予定だ。

 
▲『ドラゴンジェネシス』は、1月に過去最高売上を記録した。2周年イベントやコラボキャンペーンなど大型施策を実施する。『SAOコードレジスタ』は、共闘コンテンツなど新機能を追加する予定。

 
▲『FFBE』は、500万DLを突破するなど、引き続き好調に推移しているという。ゲーム内施策の追加や有力IPとのコラボでさらなる拡大を図る。

 
▲『LINE三国志ブレイブ』は、ギルド機能を2月に追加するなど大型アップデートを実施した。今後もコンテンツや機能追加するとともに、LINEと連携したプロモーションを行うことでランキング100位以内への定着を目指す。

 
▲『クリスタル オブ リユニオン』は、ストラテジーゲームのやりこみ要素に加え、純国産RPGとしての物語性、キャラクター性を備えた大作になるとのこと。事前登録者は5万人を突破するなど好調だという。

 
▲『シノビナイトメア』は、これまでにない3Dダンジョンの探索型RPGとなる。東京ゲームショウ2015でも注目を集めたタイトルだが、順調に開発が進んでおり、今春リリース予定だ。

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▲『ブレイジング オデッセイ』は、2DのアクションRPGとなる。当初は今冬リリース予定としていたが、初夏のリリースに変更した。コンテンツの拡充などを行いクオリティアップを図るため。

 
▲『ファントムオブキル』海外言語版は、昨年冬にリリース予定だったが、今春に変更した。現地の嗜好に合わせたローカライズを行う必要を感じたという。中国配信はディー・エヌ・エー(DeNA)と共同で行う。『ブレイブフロンティア』と並ぶ世界的なヒットタイトルを目指す。

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■海外子会社の再編

このほか、トピックスとして、海外子会社の再編についても言及があった。3月11日、gumi Canadaとgumi Germanyを閉鎖するほか、gumi Americaと谷米信息技術(上海)有限公司の事業縮小を行い、第4四半期に3億6000万円の特別損失を計上すると発表した。

gumiでは、これまでグローバルパブリッシングを行う拠点を整備する一方、「地産地消」のための開発拠点の整備も進めてきた。パブリッシングについては一定の成果が出たものの、地産地消については地域によってゲームの出来栄えに差がでているため、選択と集中を行い、現段階で期待できる拠点にリソースを集中させる方針にしたという。

特にフランスと韓国で開発したゲームアプリの仕上がりがよく、同社としても期待しているそうだ。ローンチ時期は未定。「プロトタイプができあがったところで、各開発拠点でのプロダクトを見比べるとうまくいっているところと、うまくいっていないところがはっきりしてきた」という。
 


 
■VRへの取り組み

コロプラやグリーなどと同様、VR事業にも注力しはじめている。VRの市場規模は、2020年は1500億ドルに拡大すると見込まれており、ゲーム市場のみならず、エンタテイメントやコマース市場においても変革が見込まれる。こうしたなか、自社でのVRコンテンツの開発に加えて、VRコンテンツの開発を行うスタートアップに投資する投資ファンドなどを組成した。ソーシャルゲームやネイティブアプリ市場では早期参入の有無が成否を分ける要因のひとつになったが、成長が見込まれる市場に早期に参入することで国内外での収益機会の確保を目指す。

昨年12月に指導したTokyo VR Startupsは、VR分野におけるスタートアップ企業に対し、資金提供だけでなく、ワーキングスペースの貸与、バックオフィスサポートなどさまざまな支援を提供し、必要に応じて事業協力を行うという。さらにゲーム業界やエンターテインメント業界の有識者がメンターとなり、日本を代表するVR企業の育生と輩出を目指す。また米国を中心としたVR/AR市場への投資を行うベンチャーキャピタルファンドVR FUNDに出資し、米国の有力VR企業との関係も強化する。
 
 
(編集部 木村英彦)
株式会社gumi
http://gu3.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社gumi
設立
2007年6月
代表者
川本 寛之
決算期
4月
直近業績
売上高120億6600万、営業損益50億4000万円の赤字、経常損益45億1400万円の赤字、最終損益59億3400万円の赤字(2024年4月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3903
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