gumi<3903>の100%出資子会社であるTokyo VR Startupsは、6月29日、VRに特化したインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups」(TVS)において、参加企業の最終発表の場として「Demo Day」を開催した。
当日は、参加企業5社による各社プロダクトのプレゼンテーション/デモなどが行われ、国内外から150名近くの投資家・企業が参加した。各社は2016年1月~6月までの6ヵ月間のプログラムを通じて、VRプロダクト・サービスのプロトタイプ開発を行い、その発表の場が「Demo Day」となる。
本稿では、筐体を使用した別次元のVR体験を提供する株式会社ハシラスのプレゼン模様を取材。
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■VR未体験者にも「やってみたい」と思わせるアトラクションづくり
登壇したのは、ハシラスの代表を務める安藤晃弘氏。じつは安藤氏は、元・江戸古典奇術師というプロマジシャンの経歴を持つ。異色の経歴を持つ安藤氏だが、当然マジシャンとして人々に驚きや感動を提供するノウハウには長けており、VRの体験デザインにもその力が発揮。現在は、ソフト・デザイン・ハード制御の3名と共にVRアトラクションを制作する株式会社ハシラスの代表を務めている。
▲驚くことにわずか2年間で9種類・39個ものアトラクションを制作してきた。
▲業界関係者であれば、一度はハシラスが制作したアトラクションを目にした方も多いのではないだろうか。写真は、サンシャインシティ展望台に常設されている「TOKYO弾丸フライト」。ゴーグルを装着し人間大砲型のマシンに乗り込み、未来の東京の名所をフライトできるアトラクションだ。
そもそもVRアトラクションの定義とは、どういうものなのか。ひとつは視覚と連動した強烈な体験として、全身でVR世界にダイブできるのが魅力。また、ダイナミックな主観移動のため、酔いの低減にも繋がっているという。何より、VR未体験者に「やってみたい」と感じさせる目を引く効果も持つようだ。加えて、狭いスペースで広いVRワールドを動けるため、面積あたりの稼働率も良好で、訴求対象が広くイベントとの相性も良いようだ。
▲安藤氏がVRアトラクションで気を配っているのは、プリミティヴな主観移動。体感の特徴ごとに類型化して筐体をデザインし、同一筐体で異なるソフトが使えるようにしているという。たとえば今回、陸上歩行として馬をモチーフにしたゲームが展示されていたが、仮にラクダや象など別の生物を用いたコンテンツであっても、同じ陸上歩行型として該当することができる。
安藤氏いわく「とにかく超凄いものを作るために、コスト度外視。そのほか現実的に楽しめるレベルまで落とし込む」と実現までのこだわりを語った。なお、現在は上部写真のマス目を埋めていっている状態で、すべて埋めることで「どんな映画やアニメの世界でも入り込める。結果的に汎用性が高くなる」と言葉を添えた。
▲これまで制作した一部アトラクションが展示されている「VR SHOWROOM」も開始。開所式はVR空間で行ったほか、近くには商談スペースも設けているという。
安藤氏の今後の構想は、「移動式のVR遊園地」の実現だ。自社開発以外の相性のいいコンテンツと連携して全国展開し、ドームやAR、インディーズなど様々なものを巻き込んで行いたいという。ただひとつ大きな障害として、一部HMDは13歳未満が体験できないことで、子連れのファミリー層に体験してもらえない心配があるようだ。
これについては7歳からでも楽しめるスマホゴーグルAR・VRなどを用いて、複数人が同時に体を動かして遊べるコンテンツを用意していくという。また、十数人同時に360度の没入体験が楽しめるドーム映像は、全年齢対象のため、お子さんやお年寄りなど幅広い方でも体験できる。
現在進行中のプロジェクトとしては、おもに外資コンサルとのVRキャラバン全国展開を計画中。そのほか、銀行系証券会社からのVRマーケットに関するコンサルティング、韓国企業とのVRテーマパークのプロデュース、メインチャイナ及びNZからのプロダクツ輸出に関する交渉など、話題に事欠かない。
最後に安藤氏は、特注筐体を受注しながらも「VR界のシルク・ドゥ・ソレイユとしてVRキャラバンを作っていきたい」と語った。「シルク・ドゥ・ソレイユやディズニーが成し遂げたことは、単に面白いものを提供しただけではない。家族にとって一生の思い出になるような体験を提供した。そういうものをVRの世界で実現でしたら、元芸人としては冥利に尽きる」と続け、プレゼンを締めくくった。
ここからは、ハシラス社の製品はもちろん、会場で展示されていたVRアトラクションを実際に体験してみた。
■『Hashilus』 (株式会社ハシラス)
▲白熱する4人同時対戦、非常に揺れるので自分との戦いも重要。
実際のロデオマシーンにまたがり、HMDを付け、手綱を模したデバイスでムチをいれることで加速するゲーム。4人同時にプレイができ、順位を競って争う。なお今回の設置スペースには、扇風機と霧吹きが設置されており、水たまりを通過する際にはアナログながらも非常に体感指数の高い経験を行うことができた。また、ロデオマシーン自体もかなり暴れる装置であったためか、手綱を操作するのも一苦労といった状況だった。毎日プレイすると痩せるんじゃないか、と思うほどだ。友人らとやればかなり盛り上がるだろう。
■スウィングコースター(企業名:株式会社ハシラス)
▲ただ乗っているだけで旋回しているような気分に。
HMDを装着、レールが設置された池袋の街をジェットコースターで滑走するVRコンテンツ。スタートはサンシャイン60の高層階から飛び出し、滑走していく。動きのないブランコに乗っているだけだが、不思議と上下左右に振られている感覚がし、VRならではの体験ができるタイトルだと言えよう。
■『四季の世界遺産ドライブ」(リクルートテクノロジー)
▲ライド感溢れる筐体。
Oculus Riftを装着し、ハンドルを握れば、バイクに乗って観光地を体験できるVRコンテンツだ。ローラーの上を走る車輪付きのバイク筐体、大きな扇風機、霧吹き器、体育会系のスタッフなど、VRとアナログの力が重なって、かなりの体感型のコンテンツとなっていた。詳細は写真や動画を確認することでわかるが、必要に応じて配置されているスタッフが、筐体を押し引きすることで、かなりライド感を味わうことができた。これぞバーチャルリアリティという具合だろう。
▲ローラーの上で車輪を置きよりリアルな再現を。
■『3Qドーム』(工房ヒゲキタ)
▲直径6Mほどの大きなドーム。
黒い大型の球体で、中に入るとドームの内側に360度映像が投影されている。この大きさならではのスペクタクルな映像と13歳(*)以下でも体験できる優しい仕様になっている。今回の体験では、航空機からの都内を撮影した360度動画を公開しており、見慣れた街を新しくより広い視点で鑑賞することができた。なお、ドーム内の映像は市販のプロジェクターを使用しており、更に高性能な4Kのプロジェクターを使用することで、より高画質な映像を提供できるということだ。
*HMD型のVRでは身体への影響を考えて、13歳以下の子供の体験を禁止していることが多いため
▲圧巻の映像空間。
(取材・文:編集部 原孝則)
(取材・撮影:編集部 和田和也)
(取材・撮影:編集部 和田和也)
■株式会社ハシラス
会社情報
- 会社名
- Tokyo XR Startups株式会社
- 設立
- 2015年12月
- 代表者
- 代表取締役 川本 寛之