9月15日から9月18日までの期間、千葉幕張メッセにて開催されている「東京ゲームショウ2016(以下 TGS2016)」。「VR元年」たる今年は、やはりかなりのVR推し。そんな中、10年以上前からHMDの開発と販売を行ってきた「Vuzix(ビュージックス)」ブースにお邪魔して、実機視聴と担当者の話を聞いてきた。
HMDのみならずスマートグラスにおいても実績を持つVuzix。もう何年も前から日本国内の大企業と協業して、工場内など実際の業務に使用できるようなアイテムも開発してきた。
今回メインで出展されていたのは「iWear」なるビデオヘッドフォンで、これはホームエンターテイメントスクリーンとしてデザインされている製品だ。よって、VRに特化したものではなく、美麗な映像コンテンツを楽しめる高解像度が魅力。ドット間が網目になるスクリーンドア現象がなく、視聴に際して不安は少ない。
入力解像度は640×480~1920×1080。内蔵のヘッドトラッキングセンサーによりVR機器としても普通に使用できる。USB以外にもHDMIがあるため、端子のあるどんな機器にも使用できる事が最大の魅力だろう。
実際に用途例として展示されていたものは、PCやゲームやスマホ、Blu-rayレコーダーなど。さらにはドローンや顕微鏡などにも接続可能。ドローンは開催場所の規定によりバッテリーやプロペラを外されていたが、是非一度上空からのリアルタイムな視聴をしてみたいものだ。もっとも、操作の習熟には時間がかかってしまいそうだが。
使用感としては、下部に隙間があるため熱がこもらず連続使用が可能。遮光フィールドなど没入感を増やす際には隙間を埋めるパーツが用意されているので、そちらにも不安はない。内部構造はガッツリと左右が分かれているため「視聴に違和感があるのでは?」と思ったが、これまでに体験したHMDの中でも違和感なく装着できた事を記しておきたい。
また、SteamVRプラグインの詳細が公式HPにあるため、Steamを利用している方はそちらもチェックだ。開発者向けにUnity無償アセットも配布している。
■Vuzix柏氏に聞く、これからのHMD・VR
――:国内向けのVR状況はどうですか?
柏氏:正直日本が一番厳しいですね。PlayStationVRが出てきて認知され始めましたが……。『ポケモンGO』でARという言葉が一気に普及したんで、VRもこれからではないかと。OculusはPCのスペックが要求されてしまうので、結局高価ですよね。そういう面でも、PlayStationVRがリードすると思います。
――:出展場所がVRブースではありませんね。
柏氏:当社の製品はVR対応HMDですので、今回はこちら(グリーブースの横)に出展しております。来年くらいはVRとしてもブースを出したいですね。今回はVR系のHMDがいくつか出ていますが、そのレベルは様々。映像視聴用のHMDが逆に皆無に近いんです。VRに囚われてしまって、綺麗な映像を観られるものが少ない。3D視聴用HMDとしての我々はある意味隙間産業でやっています。現状のVRのHMDは割と簡単に作れてしまいますから、皆さんこぞって作っていると思うんです。しかし当社の製品「iWear」ともなるとそう簡単には作れません。その点ではノウハウもありますしリードしていますね。
――:SteamVRの対応もしていますね。
柏氏:最近対応しました。しかしSteamと言っても、まだまだ皆さん知らないんですよね。だからSteamVRを知っているユーザーさんは本当に少ない。実は今回、SteamVRでのデモをやろうかと考えていたんですが、CEDEC2016の現場で「Steamってなんですか?」と聞かれた事から「ここでSteamをやるのは止めよう」と決めました。デベロッパーでそうですから、一般の方に分からないのでは意味がありません。
余談ですが「Androidってなんですか?」と聞かれた事もあったりします。業界の人間として、これはもっと頑張らなきゃいけないなと実感しました。VRについてはいかに敷居を下げるかが本当に重要で、コンシューマーではそこを常々気にかけています。だからこそ、VRの普及、認知度の向上としてPlayStationVRさんには成功していただきたいんですよ。そこから間口を広げていって、業界全体を盛り上げていただきたい。我々もVR業界を盛り上げて行きます!
(取材・文:ライター 平工泰久)