【インタビュー】ディライトワークスエンジニアチームに訊く 『Fate/Grand Order』配信開始から1年間の道のり、そしてこれからの挑戦
TYPE-MOONが展開するFate新作RPG『Fate/Grand Order』。2015年の配信開始以来、現在では700万ダウンロードを突破。1年が経過した現在でもスマートフォンアプリのシーンを代表する作品として人気を集めている。
多くのプレイヤーが集まる作品の中で、特に重要なポジションとなるのがエンジニアだ。そこで今回、ディライトワークスのエンジニアとして活躍する田村祐樹氏、荻野洋氏にインタビューを実施。これまでの道のりとともに、『FGO』にかけるこだわりを聞いた。
テクニカルディレクター
田村 祐樹 氏(写真右)
荻野 洋 氏(写真左)
――まずはおふたりがディライトワークスに入社するまでの経緯について教えてください。
荻野氏:スーパーファミコンの時代からこの業界に入り、その後プレイステーションやセガサターンとコンシューマゲームの開発に携わってきました。ハードが様々ならジャンルもRPGやレースゲームなど、様々な作品を作ってきましたね。そして今から10年ほど前、モバイルゲームが盛り上がり始めたタイミングで転職を決断しました。転職してすぐのころはいわゆるガラケー向けのアプリが中心で、徐々にスマートフォン向けの開発へシフトしていきました。その経験がディライトワークスへの入社にも繋がりました。
田村氏:私も最初はコンシューマ系で、ゲームボーイカラーから始まりゲームボーイアドバンス、ゲームキューブなど任天堂ハードでの開発を8年くらい続けていました。その後モバイルが盛り上がってきたタイミングでモバイルゲーム会社に転職し、会社の成長を見届けたところでディライトワークスに入りました。
――2人ともコンシューマ出身だったのですね。エンジニアチームには、ほかにもコンシューマでの開発を経験したスタッフは多いのですか?
荻野氏:多い方だと思います。コンシューマ系の会社で20年勤めた経験を持つ人もいますし、さまざまな環境でたくさんのゲームを作ってきた、経験豊富なスタッフが多く在籍しています。
――転職する際、ディライトワークスを選んだ決め手はなんだったのですか?
荻野氏:私の場合はディライトワークス設立時から在籍していたので、ほかのスタッフに比べると少し特殊ですね。しかし、当時自分が理想とするゲーム創りに集中できる開発環境にもっとも近かったのがディライトワークスでした。
田村氏:私が入社する決め手になったのは規模感ですね。以前勤めていた会社は急激に大きくなっていき、それは良いことであると同時に上手くいかないことも増えました。そこで会社が一定のステージに到達したため、独立して自分の会社をつくり、いくつかの会社さんのお手伝いをさせていただいてました。ディライトワークスはそのうちの1社だったのですが、当時4、50人程度の規模で小回りが利き、自分のやりたいことができると感じました。またこれから会社が大きくなっていく過程の中で、前の会社が大きくなっていった時の知見も役立てると考えたのも理由のひとつです。
――そして現在は『FGO』を中心に見ていると。
荻野氏:私は『FGO』のために入社したようなものなので、分野としても『FGO』のクライアント部分に絞って業務にあたっています。
田村氏:私の場合は『FGO』はもちろんですが、『バンドやろうぜ!』などの新作アプリも全体的に見ています。『FGO』において担当する分野は荻野がクライアント、私はサーバーサイドですね。
――『FGO』を運営する上で、特に意識していることはありますか?
荻野氏:求められるもののハードルが非常に高いので、それをいかにして超えていくかは常に意識しています。送られてくる要望の中には難しい内容ももちろんありますが、そんなときこそこちらから提案を出しつつ、より良い方向へ持っていけるように努めています。
田村氏:ユーザーさんに快適に遊んでいただくことを第一に考えていて、運営開始当初はサーバーが落ちてしまう事態があったものの、ようやく安定した環境になってきたかと思います。しかしユーザーさんの数は今も増え続けているので、現状に安心せず、できるだけ先回りして問題を解決できるように考えています。
――運営が始まってから今までを振り返ると、苦労も多かったのではないでしょうか。
田村氏:最初は整備されていない部分が多かったですし、はっきりと決まった担当がいない分野もありました。私が入社したときは、トラブルシュートが最初の業務でした。協力会社を探したり、必要なツールを導入したり、ボトルネックを調査したりですね。すでに運営が始まっているタイトルだと、動かしながら仕組みも作っていく必要があるので、開発初期の作品とはまた違った難しさがありました。
――これまでもたくさんのアップデートがあったと思いますが、中でも印象的だったものはありますか?
荻野氏:クライアント側はアップデートごとに少しずつ問題を解決していくので、特定のアップデートに注目するのは難しいですね。強いて言えば、都度おこなっているユーザーインターフェイスの改良によりゲームが遊びやすくなり、更にアップデートごとに様々な機能も追加されてきました。現在のゲームはリリース初期とはだいぶ違った姿になっていると思いますので、その進化については感慨深く、印象に残っていますね。
田村氏:インターフェイスはかなり改修をしてきたところです。サーバーだと、やはり人が増える年末のサーバインフラ対応が印象的でした。
――開発現場で、ディライトワークスならではの特徴を感じることはありますか?
荻野氏:誰もがモノを創ることに真面目であることは特徴と言っていいと思います。極端な話、面白いモノを創ること以外は頭にないくらいのスタッフが揃っています。意見も積極的に言い合いますし、みんなでひとつの作品を創っている感覚が強いです。
田村氏:ユーザーさんに面白いゲームを届けたい気持ちが強く、『FGO』でもイベントを開催するたびに社内外から意見が活発に送られてきます。開発側でもそうして得た意見を積極的に取り入れて自ら改善にむけて取り組んでいくところが特徴的ですね。
――おふたりが普段どんな作業をしているか教えてください。
田村氏:日々の決まった作業というものはあまりなく、運営型のゲームなので突然入る仕事もありますし、スタッフのマネージメントもこなさなければいけません。その都度出てくる問題を解決しつつ、中長期的な考えのもと判断しています。これは私に限らず全スタッフに言えることで、ルーティンと言える作業はあまり多くありません。
荻野氏:毎日かならず行う業務というと、エンジニアチーム内のタスク調整がありますね。あとは各プログラマーが書いたプログラムのレビュー、あとは『FGO』に入る新しい機能の打ち合わせも日々ありますね。
――8月に行われたCEDECでは塩川さん(FGO PROJECT クリエイティブディレクターの塩川洋介氏)が「毎アップデートで一石を投じる」と話していましたが、エンジニアとして苦労する部分もあるのではないでしょうか。
荻野氏:大変な中にもやりがいがあり、みんな楽しんで作業していると思います。アップデートに関する提案は、急に来ることもありますが、それも含めてさまざまなことに対して柔軟に対応することが、毎日の大きな流れになっています。以前勤めていた会社で慣れたという人もいれば、この会社で柔軟な対応を学んだという人もいます。
――『FGO』といえば、TYPE-MOONさんとの共同開発タイトルでもありますが、TYPE-MOONさんのこだわりをエンジニアとして感じることはありますか?
田村氏:なによりTYPE-MOONのみなさんも1人のプレイヤーであり、しっかりとゲームを楽しんでくれています。普段からFGOを遊んでいるので、当然快適に遊びたい気持ちも持っていますし、そこから出てくる要望も多いです。私たちとしてもそういった要望は極力叶えていきたいと考えています。
――現在はエンジニアを含め採用を強化しているとのことですが、求めている人物像があれば教えてください。
荻野氏:モノを創ることに対する熱意を持っている人ですね。技術力に関しては最低限あれば、熱意で十分カバーできると思います。もちろん技術力も、あるに越したことはないですけどね。
田村氏:ユーザーさんが面白いと思えるもののために技術を使えることが大事だと思います。単純に技術力があって、作ることが楽しいと思えても、それに触れるユーザーさんが楽しまなければ意味がありません。高度な技術とゲームとしての面白さは必ずしもリンクしないので、面白さにこだわって、内容に合った技術を選択できる人が望ましいです。
――ちなみに現在のスタッフは、どのような人物が多いのでしょうか。
荻野氏:現在はクライアントサイドとサーバーサイドの両方を合わせて15、6人で、クライアント側が少し多い程度です。年齢層だと30代中盤のスタッフがメインで最年長だと50代の人もいます。最近は若いプログラマーも増えてきたところなので、ベテランが若手に教えていく環境が自然にできあがっていますね。
――経験や知識の面だと、どんなものを身につけていると業務に役立ちますか?
荻野氏:個人的には、プログラム以外に企画やデザインなどにもある程度の知識があり、1人でゲームを作る事の出来るスキルがあれば、業務をよりよく進める事が出来るのではないかと思います。
田村氏:今まで多くのエンジニアと話をさせて頂いていますが、プログラミングの専門的な知識は十分なのですが、ゲーム開発に関する知識が足りない人も増えています。
最近のゲーム業界では幅広い知識を持っていたほうが、ほかの部署との連携もスムーズになります。例えばAIばかり賢くしても、キャラクターのモーションが伴っていなければ面白さには繋がりません。AIを作るだけでなく、AIを活かすためにはどんなアクションをしてほしいかまで考えてほしいのです。
――知識を共有するための勉強会などは開催しているのですか?
田村氏:今は社外での講演会に参加することが多いのですが、社内でも積極的に行っていきたいですね。技術系の書籍も揃っていますし、それを読み込む機会も作っていきたいです。
荻野氏:勉強会に参加しようという意欲の高いスタッフが多いので、、これからは開催する機会も増えていくと思います。まだまだ若い会社ですので、定期的な勉強会などの文化を定着させやすいのも魅力のひとつだと思います。
――ちなみに、新しいスタッフが入った場合は『FGO』の運営に携わるのでしょうか?
荻野氏:弊社でもっとも大きなプロジェクトが『FGO』なので、可能性は高いと思います。ですが必ずしもそうとは限らず、『バンドやろうぜ!』や新しいプロジェクトも選択肢に入りますね。
田村氏:そのときの社内の状況、そしてもちろん本人のやりたいことを尊重しつつプロジェクトや担当を決定します。
――福利厚生やサポート面で特徴的なものはありますか。
田村氏:明確なルールとして固まっているわけではありませんが、必要な機材や書籍は望んだものを提供してもらえます。PCにしても高スペックのマシンを使っていますし、希望さえあればデュアルディスプレイにも切り替えられます。
荻野氏:Macが欲しいといえばMacになりますし、ノートとデスクトップも選択できます。開発環境の面で困ったことは一度もないですね。あとはCEDECなどのイベントも会社側がサポートしてくれて、さまざまなノウハウを吸収できる体制になっています。過去にはE3へ視察に行ったこともありました。
――それでは、個人的でもチーム全体でも構いませんので、今後の目標があれば教えてください。
荻野氏:スマートフォンアプリに限定せず、面白いことがあればなににでも挑戦していきたいですね。最近だとVRが盛り上がっていますが、常に人に受け入れられるものは変わっていきます。その流れをとらえ、新しい事に挑戦していく姿勢が大事だと思っていますので、今後もハードは問わず、人がいるところには積極的に作品を送り出したいです。
田村氏:長くやってきていると、リスクを取らないことがリスクになる可能性があります。今が安定しているからといって、そのままでいると時代の変化に取り残されます。挑戦は常にしていきたいですし、既存の技術もさらに突き詰めて、組み合わせることも考えていきたいです。スマートフォンにはまだまだ可能性がありますが、それだけでなくリアルタイム通信や、自動テスト、VRやARといった技術、開発プロセスの改善、さらにはまったく新しいプラットフォームにも挑戦していくつもりです。
(C)TYPE-MOON / FGO PROJECT
多くのプレイヤーが集まる作品の中で、特に重要なポジションとなるのがエンジニアだ。そこで今回、ディライトワークスのエンジニアとして活躍する田村祐樹氏、荻野洋氏にインタビューを実施。これまでの道のりとともに、『FGO』にかけるこだわりを聞いた。
■コンシューマでの経験をディライトワークスで活かす
ディライトワークス株式会社テクニカルディレクター
田村 祐樹 氏(写真右)
荻野 洋 氏(写真左)
――まずはおふたりがディライトワークスに入社するまでの経緯について教えてください。
荻野氏:スーパーファミコンの時代からこの業界に入り、その後プレイステーションやセガサターンとコンシューマゲームの開発に携わってきました。ハードが様々ならジャンルもRPGやレースゲームなど、様々な作品を作ってきましたね。そして今から10年ほど前、モバイルゲームが盛り上がり始めたタイミングで転職を決断しました。転職してすぐのころはいわゆるガラケー向けのアプリが中心で、徐々にスマートフォン向けの開発へシフトしていきました。その経験がディライトワークスへの入社にも繋がりました。
田村氏:私も最初はコンシューマ系で、ゲームボーイカラーから始まりゲームボーイアドバンス、ゲームキューブなど任天堂ハードでの開発を8年くらい続けていました。その後モバイルが盛り上がってきたタイミングでモバイルゲーム会社に転職し、会社の成長を見届けたところでディライトワークスに入りました。
――2人ともコンシューマ出身だったのですね。エンジニアチームには、ほかにもコンシューマでの開発を経験したスタッフは多いのですか?
荻野氏:多い方だと思います。コンシューマ系の会社で20年勤めた経験を持つ人もいますし、さまざまな環境でたくさんのゲームを作ってきた、経験豊富なスタッフが多く在籍しています。
――転職する際、ディライトワークスを選んだ決め手はなんだったのですか?
荻野氏:私の場合はディライトワークス設立時から在籍していたので、ほかのスタッフに比べると少し特殊ですね。しかし、当時自分が理想とするゲーム創りに集中できる開発環境にもっとも近かったのがディライトワークスでした。
田村氏:私が入社する決め手になったのは規模感ですね。以前勤めていた会社は急激に大きくなっていき、それは良いことであると同時に上手くいかないことも増えました。そこで会社が一定のステージに到達したため、独立して自分の会社をつくり、いくつかの会社さんのお手伝いをさせていただいてました。ディライトワークスはそのうちの1社だったのですが、当時4、50人程度の規模で小回りが利き、自分のやりたいことができると感じました。またこれから会社が大きくなっていく過程の中で、前の会社が大きくなっていった時の知見も役立てると考えたのも理由のひとつです。
――そして現在は『FGO』を中心に見ていると。
荻野氏:私は『FGO』のために入社したようなものなので、分野としても『FGO』のクライアント部分に絞って業務にあたっています。
田村氏:私の場合は『FGO』はもちろんですが、『バンドやろうぜ!』などの新作アプリも全体的に見ています。『FGO』において担当する分野は荻野がクライアント、私はサーバーサイドですね。
――『FGO』を運営する上で、特に意識していることはありますか?
荻野氏:求められるもののハードルが非常に高いので、それをいかにして超えていくかは常に意識しています。送られてくる要望の中には難しい内容ももちろんありますが、そんなときこそこちらから提案を出しつつ、より良い方向へ持っていけるように努めています。
田村氏:ユーザーさんに快適に遊んでいただくことを第一に考えていて、運営開始当初はサーバーが落ちてしまう事態があったものの、ようやく安定した環境になってきたかと思います。しかしユーザーさんの数は今も増え続けているので、現状に安心せず、できるだけ先回りして問題を解決できるように考えています。
――運営が始まってから今までを振り返ると、苦労も多かったのではないでしょうか。
田村氏:最初は整備されていない部分が多かったですし、はっきりと決まった担当がいない分野もありました。私が入社したときは、トラブルシュートが最初の業務でした。協力会社を探したり、必要なツールを導入したり、ボトルネックを調査したりですね。すでに運営が始まっているタイトルだと、動かしながら仕組みも作っていく必要があるので、開発初期の作品とはまた違った難しさがありました。
――これまでもたくさんのアップデートがあったと思いますが、中でも印象的だったものはありますか?
荻野氏:クライアント側はアップデートごとに少しずつ問題を解決していくので、特定のアップデートに注目するのは難しいですね。強いて言えば、都度おこなっているユーザーインターフェイスの改良によりゲームが遊びやすくなり、更にアップデートごとに様々な機能も追加されてきました。現在のゲームはリリース初期とはだいぶ違った姿になっていると思いますので、その進化については感慨深く、印象に残っていますね。
田村氏:インターフェイスはかなり改修をしてきたところです。サーバーだと、やはり人が増える年末のサーバインフラ対応が印象的でした。
――開発現場で、ディライトワークスならではの特徴を感じることはありますか?
荻野氏:誰もがモノを創ることに真面目であることは特徴と言っていいと思います。極端な話、面白いモノを創ること以外は頭にないくらいのスタッフが揃っています。意見も積極的に言い合いますし、みんなでひとつの作品を創っている感覚が強いです。
田村氏:ユーザーさんに面白いゲームを届けたい気持ちが強く、『FGO』でもイベントを開催するたびに社内外から意見が活発に送られてきます。開発側でもそうして得た意見を積極的に取り入れて自ら改善にむけて取り組んでいくところが特徴的ですね。
――おふたりが普段どんな作業をしているか教えてください。
田村氏:日々の決まった作業というものはあまりなく、運営型のゲームなので突然入る仕事もありますし、スタッフのマネージメントもこなさなければいけません。その都度出てくる問題を解決しつつ、中長期的な考えのもと判断しています。これは私に限らず全スタッフに言えることで、ルーティンと言える作業はあまり多くありません。
荻野氏:毎日かならず行う業務というと、エンジニアチーム内のタスク調整がありますね。あとは各プログラマーが書いたプログラムのレビュー、あとは『FGO』に入る新しい機能の打ち合わせも日々ありますね。
――8月に行われたCEDECでは塩川さん(FGO PROJECT クリエイティブディレクターの塩川洋介氏)が「毎アップデートで一石を投じる」と話していましたが、エンジニアとして苦労する部分もあるのではないでしょうか。
荻野氏:大変な中にもやりがいがあり、みんな楽しんで作業していると思います。アップデートに関する提案は、急に来ることもありますが、それも含めてさまざまなことに対して柔軟に対応することが、毎日の大きな流れになっています。以前勤めていた会社で慣れたという人もいれば、この会社で柔軟な対応を学んだという人もいます。
――『FGO』といえば、TYPE-MOONさんとの共同開発タイトルでもありますが、TYPE-MOONさんのこだわりをエンジニアとして感じることはありますか?
田村氏:なによりTYPE-MOONのみなさんも1人のプレイヤーであり、しっかりとゲームを楽しんでくれています。普段からFGOを遊んでいるので、当然快適に遊びたい気持ちも持っていますし、そこから出てくる要望も多いです。私たちとしてもそういった要望は極力叶えていきたいと考えています。
■面白いことがあればなににでも挑戦したい
――現在はエンジニアを含め採用を強化しているとのことですが、求めている人物像があれば教えてください。
荻野氏:モノを創ることに対する熱意を持っている人ですね。技術力に関しては最低限あれば、熱意で十分カバーできると思います。もちろん技術力も、あるに越したことはないですけどね。
田村氏:ユーザーさんが面白いと思えるもののために技術を使えることが大事だと思います。単純に技術力があって、作ることが楽しいと思えても、それに触れるユーザーさんが楽しまなければ意味がありません。高度な技術とゲームとしての面白さは必ずしもリンクしないので、面白さにこだわって、内容に合った技術を選択できる人が望ましいです。
――ちなみに現在のスタッフは、どのような人物が多いのでしょうか。
荻野氏:現在はクライアントサイドとサーバーサイドの両方を合わせて15、6人で、クライアント側が少し多い程度です。年齢層だと30代中盤のスタッフがメインで最年長だと50代の人もいます。最近は若いプログラマーも増えてきたところなので、ベテランが若手に教えていく環境が自然にできあがっていますね。
――経験や知識の面だと、どんなものを身につけていると業務に役立ちますか?
荻野氏:個人的には、プログラム以外に企画やデザインなどにもある程度の知識があり、1人でゲームを作る事の出来るスキルがあれば、業務をよりよく進める事が出来るのではないかと思います。
田村氏:今まで多くのエンジニアと話をさせて頂いていますが、プログラミングの専門的な知識は十分なのですが、ゲーム開発に関する知識が足りない人も増えています。
最近のゲーム業界では幅広い知識を持っていたほうが、ほかの部署との連携もスムーズになります。例えばAIばかり賢くしても、キャラクターのモーションが伴っていなければ面白さには繋がりません。AIを作るだけでなく、AIを活かすためにはどんなアクションをしてほしいかまで考えてほしいのです。
――知識を共有するための勉強会などは開催しているのですか?
田村氏:今は社外での講演会に参加することが多いのですが、社内でも積極的に行っていきたいですね。技術系の書籍も揃っていますし、それを読み込む機会も作っていきたいです。
荻野氏:勉強会に参加しようという意欲の高いスタッフが多いので、、これからは開催する機会も増えていくと思います。まだまだ若い会社ですので、定期的な勉強会などの文化を定着させやすいのも魅力のひとつだと思います。
――ちなみに、新しいスタッフが入った場合は『FGO』の運営に携わるのでしょうか?
荻野氏:弊社でもっとも大きなプロジェクトが『FGO』なので、可能性は高いと思います。ですが必ずしもそうとは限らず、『バンドやろうぜ!』や新しいプロジェクトも選択肢に入りますね。
田村氏:そのときの社内の状況、そしてもちろん本人のやりたいことを尊重しつつプロジェクトや担当を決定します。
――福利厚生やサポート面で特徴的なものはありますか。
田村氏:明確なルールとして固まっているわけではありませんが、必要な機材や書籍は望んだものを提供してもらえます。PCにしても高スペックのマシンを使っていますし、希望さえあればデュアルディスプレイにも切り替えられます。
荻野氏:Macが欲しいといえばMacになりますし、ノートとデスクトップも選択できます。開発環境の面で困ったことは一度もないですね。あとはCEDECなどのイベントも会社側がサポートしてくれて、さまざまなノウハウを吸収できる体制になっています。過去にはE3へ視察に行ったこともありました。
――それでは、個人的でもチーム全体でも構いませんので、今後の目標があれば教えてください。
荻野氏:スマートフォンアプリに限定せず、面白いことがあればなににでも挑戦していきたいですね。最近だとVRが盛り上がっていますが、常に人に受け入れられるものは変わっていきます。その流れをとらえ、新しい事に挑戦していく姿勢が大事だと思っていますので、今後もハードは問わず、人がいるところには積極的に作品を送り出したいです。
田村氏:長くやってきていると、リスクを取らないことがリスクになる可能性があります。今が安定しているからといって、そのままでいると時代の変化に取り残されます。挑戦は常にしていきたいですし、既存の技術もさらに突き詰めて、組み合わせることも考えていきたいです。スマートフォンにはまだまだ可能性がありますが、それだけでなくリアルタイム通信や、自動テスト、VRやARといった技術、開発プロセスの改善、さらにはまったく新しいプラットフォームにも挑戦していくつもりです。
(C)TYPE-MOON / FGO PROJECT
会社情報
- 会社名
- ディライトワークス株式会社
- 設立
- 2014年1月
- 代表者
- 代表取締役 庄司 顕仁