【インタビュー】200万DLを記録した「おそ松さん」スマホゲームは沖縄で生まれた…DLE子会社ちゅらっぷすとAppBeachに訊く 沖縄のゲーム開発環境とは
ディー・エル・イー(DLE)<3686>は先日、スマートフォン向けゲームアプリの運用事業を行う子会社AppBeach(アップビーチ)を沖縄県那覇市に設立し、2015年7月に設立されたちゅらっぷす(本社:沖縄県那覇市)との3社間で連携してゲーム事業を強化していくことを発表した。
ちゅらっぷすは、大ヒットアニメおそ松さんIPを利用した『おそ松さんのへそくりウォーズ』に携わり、AppStore売上ランキング最高13位を記録し、業界でも話題を呼んだ。
本稿では、ちゅらっぷすとAppBeachに取材を実施。DLEとの会社体制設立経緯と、沖縄のゲーム開発環境について話を聞いてきた。
ちゅらっぷす株式会社
ディレクター
竹廣将史氏(写真左)
ディレクター
小菅聡氏(写真中央)
AppBeach株式会社
永田裕一氏(写真右)
—本日はよろしくお願いします。まずそれぞれのご担当分野を教えて頂けますか。
竹廣氏(以下、竹廣):ディレクター、兼プランナーです。『おそ松さんのへそくりウォーズ』(以下、『へそウォ』)の立ち上げ時より企画・開発、運営に携わっています。
小菅氏(以下、小菅):ディレクターとして運営に関わる全体進行、施策やバージョンアップ等の管理を中心に担当しております。
永田氏(以下、永田):私はAppBeachで所長兼プログラマーをしています。運用に特化した会社として主にグループで開発したタイトルを扱っていますが、今後は他社様のタイトル運用も増やして行きたいと思っています。
—改めて会社の設立経緯からおしえて頂けますか。
竹廣:元々親会社のDLEにデジタルコンテンツ部というものがあり、そこでアプリ開発を行っていました。ちゅらっぷすは、よりデジタルコンテンツに力を入れようということで設立されました。それが2015年の7月のことでしたね。なぜ沖縄に拠点を置いたのかというと、沖縄県がIT企業誘致を積極的に行っているという背景と、ゲーム部門を扱う沖縄の学校が増え、ゲームを作りたいという若い方が増えているなどの理由があります。
…あとは、純粋に楽しいからというのもありますかね(笑)。東京で一緒に仕事をしている方も、打ち合わせで沖縄に行けるとなると、楽しみにしてもらえるので、エンタメに携わる企業として、パートナーさんにも楽しみを提供できるのは良いことだなと思います(笑)。
—デジタルコンテンツ事業が多くなっていたことが背景にあるのですね。
竹廣:今まではDLEの内製で抱えられないものは外注するケースが多かったのですが、今後はちゅらっぷすとAppBeachが担っていきます。DLEのIPに「秘密結社 鷹の爪」や「パンパカパンツ」などがありますが、社外のIPにも積極的に取り組んでいく方針で、『へそウォ』以外に映画「GANTZ:O」などの様々な人気IPのコンテンツを開発しています。
小菅:昨今はコンテンツを出すスピードも大事なので、体制をより強化したかったというのも背景にありますね。ちゅらっぷすに加えAppBeachが立ち上がったことで、よりスムーズに進められる体制になったと思います。
永田:AppBeachは2016年11月に設立されました。DLEがIPを創出・取得し、ちゅらっぷすが新規開発を行い、AppBeachが運用、DLEが運用タイトルのアニメ化やグッズ化といった二次展開するというサイクルを実現できる体制構築が狙いです。
—昨年11月から設立ということですが、今現在はすでに具体的な動きはあるのでしょうか。
永田:現在は、『へそウォ』と小規模タイトルの運営を行いつつ、DLEのIP作品のアプリの制作を行っています。運用ラインに余裕があるので、開発も行っている段階です。
—運営が中心なものの、新規開発も行うのですね。『へそウォ』は今後運営をAppBeachに移管されるのでしょうか。
竹廣:ディレクター、プランナー、デザイナー含め主要スタッフがちゅらっぷすにいるので完全に移行することはないと思いますが、同じ施設内にオフィスがあり距離も近いため協力して運営を進めています。
—AppBeachはセカンダリー事業もされるのでしょうか。
永田:そうですね。グループ会社以外のタイトル運営に携わることも積極的に行いたいと考えています。
小菅:今、グループ内には『へそウォ』や、スタッフが過去に経験してきたゲーム運営のノウハウがあります。それらをAppBeachや今後採用する人へ共有していくことで単独でも運営を行える体制になると思います。
—まずは、人員を拡充しつつ、実績を作っていくという段階ということですね。『へそウォ』の開発経緯についても教えていただけますか。
竹廣:エイベックス様から開発打診を受け、その時にはちゅらっぷすも設立されており開発体制が整っていましたので、弊社が担当することになりました。開発に着手したのはアニメが始まる前で、もっとカジュアルなゲームを想定していました。しっかり作り込んだカジュアルゲームとして作っていたのですが、アニメがヒットして、世の中でもおそ松さんが非常に盛り上がってきたので、ゲームの内容も変えて多くのユーザーに応えられるようなものにしないといけないと思い、途中で方向転換しました。それが今の形になっていますね。
—では、初めから沖縄で開発を行われていたと。
竹廣:そうですね。リリース直前から運用の初期にかけては、規模が大きくなり、沖縄県の他のゲーム会社のスタッフさんにもご協力いただきましたね。当時運用していた自社案件などフォローしていただき、『へそウォ』の開発に注力しました。
—他のゲーム会社さんに、外注といった形で開発を依頼することはよくありますが、実際に社内に来てもらうというのは、珍しいですね。
竹廣:これも沖縄ならではなのかなと思いますが、それぞれのゲーム会社がすごく協力的な文化があります。普段から勉強会や飲み会などでの交流があり、声を掛けやすい関係にあります。「ウチ今ちょっと大変だから、エンジニア何人か協力願えませんか?」「わかった。じゃあ来週から何人か対応しましょう」みたいな相談はすごくやりやすいですね。
小菅:瞬発力のある動きは取りやすい環境ですね。人を増やしたりするのも繋がりがある分早いです。そして、それぞれの会社さんがどの分野に強いのかも明確に分かっているので、最適な形をとりやすいですね。そういう意味では、沖縄でなかったら今の『へそウォ』は作れなかったと思います。大きく開発方針を変更したので、近隣企業様の協力がなければもっと時間がかかっていたはずです。沖縄であることがいい方向に働いたと思います。
—沖縄ならではという話がでましたが、沖縄に来た時にはどう感じましたか?それまでは東京にて働かれていたと思いますが。
竹廣:実は私たちは3名とも県外からの移住組ですが共通認識として冬でも暖かくて、通勤ラッシュもないので、「過ごしやすい」の一言ですね。車や自転車での通勤になり、家も遠いわけではないので、その辺りのストレスを感じることなく、ものづくりに専念できます。施設設備も東京と変わらず一通り揃っているので、不便もないですね。あと女の子は綺麗な方が多いです(笑)。生き生きとしている魅力的な人が多いですね。
小菅:オンオフのメリハリがつけやすいと思います。通勤は竹廣が言った通りで、その時間やエネルギーをゲーム作りに充てることができます。また、オフタイムからも良い影響はあります。観光客が多いというのもあって、周りに楽しそうにしている人たちが多いですね。空港からのモノレールがわかり易いのですが、これから遊びに行こう、楽しもうという雰囲気が目立ちます。東京の電車では受けない印象で、ワクワクした空間を自然に体験できるのは良いことですね。
誰かを楽しませるというクリエイティブな仕事をしている上では、すごく重要なことで、ゲームって人の感情を動かして「面白い」と思ってもらうことじゃないですか。楽しげな雰囲気に沖縄全体が包まれているような心地はきっとアドバンテージだと思っています。玄関を出るときにサングラスをして出勤するのはワクワクしますしね。会社や自宅からでも30分あれば綺麗なビーチに行けますので、リゾートな空間がとても身近。休日の過ごし方は大都会とはまた違っていてこれもまた良いですね。
永田:沖縄は青い空と青い海がいつでもあるのが良いですね。青い海を見ているだけでもリフレッシュでき、新しいインスピレーションにもつながりますね。
小菅:『ポケモンGO』が出た時は、「おや?」っと思いましたけどね。全然ポケストップがないぞと(笑)。
竹廣:あれは格差を感じましたね(笑)。東京に行った時に、ポケストップの多さには驚きました。
—逆に不便と感じるという点はその「情報の格差」になるのでしょうか。
小菅:東京ですと、街頭や中吊り広告などの入れ替わりが早いのもあって、移り変わりが早く感じますが、沖縄では広告が替わることがあまりないので、時間が遅く感じる印象があるかと思います。とはいえ、インターネットがありますので、情報収集やコミュニケーションでロスが起きるということは少ないですね。やや雑誌の発売日や映画、テレビ番組は少し遅れているようですが…。
竹廣:過去に一度、台風の影響で、週刊誌が届かなかったことがあったそうです(笑)。
永田:遅い部類のものはありますが、仕事に致命的な影響を与えるものはなく、むしろ先ほど話したようなメリットが上回ると感じる人は多いのではないでしょうか。
—空港もすぐ近くにありますからね。
小菅:ええ。羽田空港まで2時間半で着陸するので、大阪-東京間とあまり変わらないかと思います。那覇市内に空港があることから、福岡に拠点を置いている会社さんと同じ感覚だと思います。
竹廣:流行の刺激が少ないのは事実としてありますが、ネットでの情報収集を積極的にできる人であれば、特に問題はないですね。また、この手の問題は海外展開する際や、海外の企業さんが日本に進出する際にも同じことが言えます。特別沖縄だけが抱えていることではないので、体制が整えられているかどうかの違いだと思います。
小菅:どこの会社さんもコンテンツを全世界配信できる時代です。その中で、一拠点だけで全ての情報や流行を得るのは困難ですので、沖縄だから損している、東京だから得をしている、という格差はかなり少なくなった時代なのかなと思います。
—それぞれの会社では、沖縄出身の方はどれくらいいらっしゃるのですか。
竹廣:ちゅらっぷすでは、7割ぐらいが沖縄出身ですね。
永田:AppBeachも7割が沖縄出身ですね。
—半分以上が沖縄出身なのですね。年齢としてはどういった層になりますか。
小菅:メンバーのほとんどが20代ですね。平均は30歳になっています。
—沖縄の学生さんはゲーム業界志望の方は多いのでしょうか。
竹廣:多いと思います。今は個人でもゲームが作れる時代ですので、学生時代からゲームを作っていたという人も多いです。また、開発者や学生が集まって情報共有やワークショップを行ったり、短期間でゲームを作るゲームジャムというのも頻繁に開催されていますので、技術者からも学生に業界に入ってもらおうという動きはあります。
—ゲーム関連の専門学校は多いのでしょうか。
小菅:IT系やデザイン系の専門学校は多いですね。その中でもゲーム科もあって、卒業生も入社してもらっています。あと、沖縄出身の人はあまり外に出る傾向は少ないですね。なので、沖縄にゲーム会社が増えているのは良い動きだと思います。
竹廣:一方で、ベテランの方が少ないという課題はあります。ここ最近になって、沖縄のゲーム会社が増えてきたので、経験豊富な方はどうしても県外でご活躍されてきた方になります。あとはUターン、Iターンして沖縄で働くようになった方もいらっしゃいますが、もっともっと多くの方に参加してもらいたいなと思います。
—沖縄でゲーム開発を行う企業は増えているのでしょうか。
永田:はい。6年前は沖縄のゲーム会社は2社ぐらいでしたが、今では10社以上はあります。それぞれに強みや文化が築けているので、どんな人でも働きやすい場所はあると思います。
竹廣:一度来ていただけたら、良さは必ずわかってもらえると思います。元々、沖縄拠点を考えていなかったゲーム会社さんが打ち合わせをきっかけに拠点を持つようになったケースもありますので、まずは来てもらいたいですね。弊社への見学も歓迎しています。小菅と共に沖縄のディープスポットへもご案内します(笑)。
—ちゅらっぷす、AppBeachさんそれぞれではどういった方を募集中でしょうか。
竹廣:特に足りていないのは、プランナーやディレクターですね。
デザイナーでもエンジニアでも熱意のある方は大歓迎ですね。ゲームに限らず、エンタメ全般が好きで、とにかく人を楽しませることが大好きな人は向いていると思います。
小菅:企画からリリース、運用までできている作品があるので、経験が浅い方でも教えられるノウハウもあります。もちろん、経験豊富な方でご自身の経験を生かしたいという方は大歓迎です。
永田:AppBeachとしてもプランナーとディレクターですね。プロジェクトリーダーを目指したい人が来ていただけたら嬉しいです。
小菅:まだコンパクトな規模の会社なので、ご自身の考えや表現がダイレクトに反映できる環境です。大きな会社ですと、やりたいことをできるまでの過程が長いですが、我々であれば早く実現できると思います。ディレクターやプロデューサーとの距離がすごく近いからですかね。大きな会社だと距離を感じることが多いと思いますので、そこを魅力に感じていただけたらぜひ来て欲しいですね。
あとは、経験も多く積めると思います。基本的には数年かけた長期開発は行わないので、新しい企画や施策に携わる機会は多いです。成功体験やチャンスの数は多く、「一つのプロジェクトに2年も入っていて、まだ成功かどうかもわかりません」ということはないので、多くの体験はできると思います。もともとはサーバーエンジニアがクライアントプログラムに興味があって、シフトしていったというケースもあるので、自分のやりたいことを実現しやすいと思います。
—最後に今後の展望お聞かせいただけますか。
竹廣:おそ松さんのアプリゲームはいくつか出ていますが『へそウォ』はおかげさまでファンの皆様のご支持をいただけており、すごく嬉しく思っています。IPのファンが何を望んでいて何を提供すべきかを見極めて、それに応えていける強みが私たちにはあると自負しています。
そこからさらに、期待を超えるものを提供することを心掛けています。また、今後は新しいタイトルも提供していきます。もちろん、自社オリジナルも考えておりますので今後のちゅらっぷす・AppBeachにご期待いただきたいです。
—ありがとうございました。
©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会
©AVEX PICTURES INC.
ちゅらっぷすは、大ヒットアニメおそ松さんIPを利用した『おそ松さんのへそくりウォーズ』に携わり、AppStore売上ランキング最高13位を記録し、業界でも話題を呼んだ。
本稿では、ちゅらっぷすとAppBeachに取材を実施。DLEとの会社体制設立経緯と、沖縄のゲーム開発環境について話を聞いてきた。
■沖縄だからこそリリースできた『おそ松さんのへそくりウォーズ』
ちゅらっぷす株式会社
ディレクター
竹廣将史氏(写真左)
ディレクター
小菅聡氏(写真中央)
AppBeach株式会社
永田裕一氏(写真右)
—本日はよろしくお願いします。まずそれぞれのご担当分野を教えて頂けますか。
竹廣氏(以下、竹廣):ディレクター、兼プランナーです。『おそ松さんのへそくりウォーズ』(以下、『へそウォ』)の立ち上げ時より企画・開発、運営に携わっています。
小菅氏(以下、小菅):ディレクターとして運営に関わる全体進行、施策やバージョンアップ等の管理を中心に担当しております。
永田氏(以下、永田):私はAppBeachで所長兼プログラマーをしています。運用に特化した会社として主にグループで開発したタイトルを扱っていますが、今後は他社様のタイトル運用も増やして行きたいと思っています。
—改めて会社の設立経緯からおしえて頂けますか。
竹廣:元々親会社のDLEにデジタルコンテンツ部というものがあり、そこでアプリ開発を行っていました。ちゅらっぷすは、よりデジタルコンテンツに力を入れようということで設立されました。それが2015年の7月のことでしたね。なぜ沖縄に拠点を置いたのかというと、沖縄県がIT企業誘致を積極的に行っているという背景と、ゲーム部門を扱う沖縄の学校が増え、ゲームを作りたいという若い方が増えているなどの理由があります。
…あとは、純粋に楽しいからというのもありますかね(笑)。東京で一緒に仕事をしている方も、打ち合わせで沖縄に行けるとなると、楽しみにしてもらえるので、エンタメに携わる企業として、パートナーさんにも楽しみを提供できるのは良いことだなと思います(笑)。
—デジタルコンテンツ事業が多くなっていたことが背景にあるのですね。
竹廣:今まではDLEの内製で抱えられないものは外注するケースが多かったのですが、今後はちゅらっぷすとAppBeachが担っていきます。DLEのIPに「秘密結社 鷹の爪」や「パンパカパンツ」などがありますが、社外のIPにも積極的に取り組んでいく方針で、『へそウォ』以外に映画「GANTZ:O」などの様々な人気IPのコンテンツを開発しています。
小菅:昨今はコンテンツを出すスピードも大事なので、体制をより強化したかったというのも背景にありますね。ちゅらっぷすに加えAppBeachが立ち上がったことで、よりスムーズに進められる体制になったと思います。
永田:AppBeachは2016年11月に設立されました。DLEがIPを創出・取得し、ちゅらっぷすが新規開発を行い、AppBeachが運用、DLEが運用タイトルのアニメ化やグッズ化といった二次展開するというサイクルを実現できる体制構築が狙いです。
—昨年11月から設立ということですが、今現在はすでに具体的な動きはあるのでしょうか。
永田:現在は、『へそウォ』と小規模タイトルの運営を行いつつ、DLEのIP作品のアプリの制作を行っています。運用ラインに余裕があるので、開発も行っている段階です。
—運営が中心なものの、新規開発も行うのですね。『へそウォ』は今後運営をAppBeachに移管されるのでしょうか。
竹廣:ディレクター、プランナー、デザイナー含め主要スタッフがちゅらっぷすにいるので完全に移行することはないと思いますが、同じ施設内にオフィスがあり距離も近いため協力して運営を進めています。
—AppBeachはセカンダリー事業もされるのでしょうか。
永田:そうですね。グループ会社以外のタイトル運営に携わることも積極的に行いたいと考えています。
小菅:今、グループ内には『へそウォ』や、スタッフが過去に経験してきたゲーム運営のノウハウがあります。それらをAppBeachや今後採用する人へ共有していくことで単独でも運営を行える体制になると思います。
—まずは、人員を拡充しつつ、実績を作っていくという段階ということですね。『へそウォ』の開発経緯についても教えていただけますか。
竹廣:エイベックス様から開発打診を受け、その時にはちゅらっぷすも設立されており開発体制が整っていましたので、弊社が担当することになりました。開発に着手したのはアニメが始まる前で、もっとカジュアルなゲームを想定していました。しっかり作り込んだカジュアルゲームとして作っていたのですが、アニメがヒットして、世の中でもおそ松さんが非常に盛り上がってきたので、ゲームの内容も変えて多くのユーザーに応えられるようなものにしないといけないと思い、途中で方向転換しました。それが今の形になっていますね。
—では、初めから沖縄で開発を行われていたと。
竹廣:そうですね。リリース直前から運用の初期にかけては、規模が大きくなり、沖縄県の他のゲーム会社のスタッフさんにもご協力いただきましたね。当時運用していた自社案件などフォローしていただき、『へそウォ』の開発に注力しました。
—他のゲーム会社さんに、外注といった形で開発を依頼することはよくありますが、実際に社内に来てもらうというのは、珍しいですね。
竹廣:これも沖縄ならではなのかなと思いますが、それぞれのゲーム会社がすごく協力的な文化があります。普段から勉強会や飲み会などでの交流があり、声を掛けやすい関係にあります。「ウチ今ちょっと大変だから、エンジニア何人か協力願えませんか?」「わかった。じゃあ来週から何人か対応しましょう」みたいな相談はすごくやりやすいですね。
小菅:瞬発力のある動きは取りやすい環境ですね。人を増やしたりするのも繋がりがある分早いです。そして、それぞれの会社さんがどの分野に強いのかも明確に分かっているので、最適な形をとりやすいですね。そういう意味では、沖縄でなかったら今の『へそウォ』は作れなかったと思います。大きく開発方針を変更したので、近隣企業様の協力がなければもっと時間がかかっていたはずです。沖縄であることがいい方向に働いたと思います。
■感情が動く体験を自然に得られる…沖縄のゲーム開発環境
—沖縄ならではという話がでましたが、沖縄に来た時にはどう感じましたか?それまでは東京にて働かれていたと思いますが。
竹廣:実は私たちは3名とも県外からの移住組ですが共通認識として冬でも暖かくて、通勤ラッシュもないので、「過ごしやすい」の一言ですね。車や自転車での通勤になり、家も遠いわけではないので、その辺りのストレスを感じることなく、ものづくりに専念できます。施設設備も東京と変わらず一通り揃っているので、不便もないですね。あと女の子は綺麗な方が多いです(笑)。生き生きとしている魅力的な人が多いですね。
小菅:オンオフのメリハリがつけやすいと思います。通勤は竹廣が言った通りで、その時間やエネルギーをゲーム作りに充てることができます。また、オフタイムからも良い影響はあります。観光客が多いというのもあって、周りに楽しそうにしている人たちが多いですね。空港からのモノレールがわかり易いのですが、これから遊びに行こう、楽しもうという雰囲気が目立ちます。東京の電車では受けない印象で、ワクワクした空間を自然に体験できるのは良いことですね。
誰かを楽しませるというクリエイティブな仕事をしている上では、すごく重要なことで、ゲームって人の感情を動かして「面白い」と思ってもらうことじゃないですか。楽しげな雰囲気に沖縄全体が包まれているような心地はきっとアドバンテージだと思っています。玄関を出るときにサングラスをして出勤するのはワクワクしますしね。会社や自宅からでも30分あれば綺麗なビーチに行けますので、リゾートな空間がとても身近。休日の過ごし方は大都会とはまた違っていてこれもまた良いですね。
永田:沖縄は青い空と青い海がいつでもあるのが良いですね。青い海を見ているだけでもリフレッシュでき、新しいインスピレーションにもつながりますね。
小菅:『ポケモンGO』が出た時は、「おや?」っと思いましたけどね。全然ポケストップがないぞと(笑)。
竹廣:あれは格差を感じましたね(笑)。東京に行った時に、ポケストップの多さには驚きました。
—逆に不便と感じるという点はその「情報の格差」になるのでしょうか。
小菅:東京ですと、街頭や中吊り広告などの入れ替わりが早いのもあって、移り変わりが早く感じますが、沖縄では広告が替わることがあまりないので、時間が遅く感じる印象があるかと思います。とはいえ、インターネットがありますので、情報収集やコミュニケーションでロスが起きるということは少ないですね。やや雑誌の発売日や映画、テレビ番組は少し遅れているようですが…。
竹廣:過去に一度、台風の影響で、週刊誌が届かなかったことがあったそうです(笑)。
永田:遅い部類のものはありますが、仕事に致命的な影響を与えるものはなく、むしろ先ほど話したようなメリットが上回ると感じる人は多いのではないでしょうか。
—空港もすぐ近くにありますからね。
小菅:ええ。羽田空港まで2時間半で着陸するので、大阪-東京間とあまり変わらないかと思います。那覇市内に空港があることから、福岡に拠点を置いている会社さんと同じ感覚だと思います。
竹廣:流行の刺激が少ないのは事実としてありますが、ネットでの情報収集を積極的にできる人であれば、特に問題はないですね。また、この手の問題は海外展開する際や、海外の企業さんが日本に進出する際にも同じことが言えます。特別沖縄だけが抱えていることではないので、体制が整えられているかどうかの違いだと思います。
小菅:どこの会社さんもコンテンツを全世界配信できる時代です。その中で、一拠点だけで全ての情報や流行を得るのは困難ですので、沖縄だから損している、東京だから得をしている、という格差はかなり少なくなった時代なのかなと思います。
■若手が集まる土壌…経験を広めることで沖縄ゲーム業界を大きくしたい
—それぞれの会社では、沖縄出身の方はどれくらいいらっしゃるのですか。
竹廣:ちゅらっぷすでは、7割ぐらいが沖縄出身ですね。
永田:AppBeachも7割が沖縄出身ですね。
—半分以上が沖縄出身なのですね。年齢としてはどういった層になりますか。
小菅:メンバーのほとんどが20代ですね。平均は30歳になっています。
—沖縄の学生さんはゲーム業界志望の方は多いのでしょうか。
竹廣:多いと思います。今は個人でもゲームが作れる時代ですので、学生時代からゲームを作っていたという人も多いです。また、開発者や学生が集まって情報共有やワークショップを行ったり、短期間でゲームを作るゲームジャムというのも頻繁に開催されていますので、技術者からも学生に業界に入ってもらおうという動きはあります。
—ゲーム関連の専門学校は多いのでしょうか。
小菅:IT系やデザイン系の専門学校は多いですね。その中でもゲーム科もあって、卒業生も入社してもらっています。あと、沖縄出身の人はあまり外に出る傾向は少ないですね。なので、沖縄にゲーム会社が増えているのは良い動きだと思います。
竹廣:一方で、ベテランの方が少ないという課題はあります。ここ最近になって、沖縄のゲーム会社が増えてきたので、経験豊富な方はどうしても県外でご活躍されてきた方になります。あとはUターン、Iターンして沖縄で働くようになった方もいらっしゃいますが、もっともっと多くの方に参加してもらいたいなと思います。
—沖縄でゲーム開発を行う企業は増えているのでしょうか。
永田:はい。6年前は沖縄のゲーム会社は2社ぐらいでしたが、今では10社以上はあります。それぞれに強みや文化が築けているので、どんな人でも働きやすい場所はあると思います。
竹廣:一度来ていただけたら、良さは必ずわかってもらえると思います。元々、沖縄拠点を考えていなかったゲーム会社さんが打ち合わせをきっかけに拠点を持つようになったケースもありますので、まずは来てもらいたいですね。弊社への見学も歓迎しています。小菅と共に沖縄のディープスポットへもご案内します(笑)。
—ちゅらっぷす、AppBeachさんそれぞれではどういった方を募集中でしょうか。
竹廣:特に足りていないのは、プランナーやディレクターですね。
デザイナーでもエンジニアでも熱意のある方は大歓迎ですね。ゲームに限らず、エンタメ全般が好きで、とにかく人を楽しませることが大好きな人は向いていると思います。
小菅:企画からリリース、運用までできている作品があるので、経験が浅い方でも教えられるノウハウもあります。もちろん、経験豊富な方でご自身の経験を生かしたいという方は大歓迎です。
永田:AppBeachとしてもプランナーとディレクターですね。プロジェクトリーダーを目指したい人が来ていただけたら嬉しいです。
小菅:まだコンパクトな規模の会社なので、ご自身の考えや表現がダイレクトに反映できる環境です。大きな会社ですと、やりたいことをできるまでの過程が長いですが、我々であれば早く実現できると思います。ディレクターやプロデューサーとの距離がすごく近いからですかね。大きな会社だと距離を感じることが多いと思いますので、そこを魅力に感じていただけたらぜひ来て欲しいですね。
あとは、経験も多く積めると思います。基本的には数年かけた長期開発は行わないので、新しい企画や施策に携わる機会は多いです。成功体験やチャンスの数は多く、「一つのプロジェクトに2年も入っていて、まだ成功かどうかもわかりません」ということはないので、多くの体験はできると思います。もともとはサーバーエンジニアがクライアントプログラムに興味があって、シフトしていったというケースもあるので、自分のやりたいことを実現しやすいと思います。
—最後に今後の展望お聞かせいただけますか。
竹廣:おそ松さんのアプリゲームはいくつか出ていますが『へそウォ』はおかげさまでファンの皆様のご支持をいただけており、すごく嬉しく思っています。IPのファンが何を望んでいて何を提供すべきかを見極めて、それに応えていける強みが私たちにはあると自負しています。
そこからさらに、期待を超えるものを提供することを心掛けています。また、今後は新しいタイトルも提供していきます。もちろん、自社オリジナルも考えておりますので今後のちゅらっぷす・AppBeachにご期待いただきたいです。
—ありがとうございました。
©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会
©AVEX PICTURES INC.
会社情報
- 会社名
- 株式会社ディー・エル・イー(DLE)
- 設立
- 2001年12月
- 代表者
- 代表取締役社長執行役員CEO 小濵 直人
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高17億500万円、営業損益5億5900万円の赤字、経常損益5億9000万円の赤字、最終損益5億2000万円の赤字(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3686