【NDC17】140ヵ国以上でグローバルに展開を行う『HIT』でアジア・ヨーロッパ・北アメリカの特徴を検証…地域に合わせた言語・時差対策を公開

 
ネクソン<3659>の連結子会社であるネクソンコリアが、4月25日~4月27日の期間、ネクソンコリアのオフィスおよび近隣施設にて、開催した韓国最大規模のゲーム開発者向けカンファレンス「Nexon Developers Conference 17(NDC17)」。
 
NDCは、世界中からゲーム開発者が集い、ゲーム開発に関するノウハウや経験の共有を目的に、2007年より開催されている。2011年に本格的に外部公開を開始して以来、近年では2万人を超える来場者と100以上の講演を誇る、韓国最大規模のゲーム開発者向けカンファレンスだ。
 
11年目を迎えるNDC17では、アート、ゲーム開発、マーケティング、キャリアなど、多岐にわたるテーマで計121の講演が開催される。ネクソンコリアのイ・ウンソク氏による基調講演を始め、モバイルゲームでは、SupercellのTimur Haussila氏による「Supercellのゲーム開発」などの講演を実施している。
 
本稿では、『HIT』のグローバル展開における事後検証についての講演をレポートしていく。


▲本講演に登壇したのは、NAT Games グローバル企画チーム チームリーダーのキム・ドングン氏。過去にはネクソンの『CLOSERS』で企画チームリーダーや、NCSOFTの『タワー オブ アイオン』でレベルデザイナーを務めた経歴を持つ。

まずキム氏は、本講演では『HIT』を紹介するとともに、同タイトルをグローバル展開するために努力した点、最後に2017年の目標について明かしていくと説明した。

『HIT』グローバルバージョンは、2016年に中国と日本を除く140ヵ国で配信が開始されたスマホ向けゲームアプリである。続けてキム氏は、3つのサーバーをアジア、ヨーロッパ、北アメリカに置いていることが特徴であると紹介した。なお、本講演において説明されるアジアサーバーの記録には日本の記録は含まれないとのこと。


▲本タイトルは現在、11言語に対応しており、2017年下半期にはさらに1言語が追加される予定だという。

さらにキム氏は、サーバー別の指標として3つのサーバーでそれぞれキャラ生成数がどのような数値になっているかを公開した。また、各サーバーごとにキャラ生成数の数が最も多い国は、アジアではタイ、ヨーロッパではデンマーク、北アメリカではアメリカだったという。これは、DAUランキングの記録とも共通している部分であるとのこと。

【アジア】


【ヨーロッパ】


【北アメリカ】


全体的に男性キャラが1番始めに生成される傾向にあったという。レナは実装されたのがリリース後4カ月だったため、時期的な関係で生成数が少なめになっているとキム氏は説明した。


▲最高レベル基準が高いのは、どのサーバーもレナだったとのこと。

そのほか、サーバー別に売り上げが高い国は、アジアが台湾、ヨーロッパがフランスとドイツ、北アメリカがアメリカだという。


▲ここで、これまでに販売した外見装備を紹介。上段左のハロウィンは最も売り上げが良かった衣装、上段中央の『アラド戦記』コラボはヨーロッパで最も売り上げが良かった衣装、上段右のSF衣装は当初、期待値の高いものではなかったが予想に反して2番目に高い振り上げを誇っている。
 

▲なお、売り上げの多くは「召喚」によるところが大きいとのことだった。


▲また、韓国の特徴として、アップデートをせずとも月の始めには高い収益を上げられていることを紹介。


▲こちらは、アップデートに対するサーバーごとの売り上げを表したグラフ。アジア圏ではアップデートに対する反応が良いものの、ヨーロッパや北アメリカのサーバーのユーザーは頻繁なアップデートに疲れを示し売り上げに繋がらないことがあるようだ。ただし、ヨーロッパ・北アメリカの速度に合わせてアップデートを行うと、アジアから「遅すぎる」という意見が上がることもあると、グローバル展開における難点を紹介した。

ここからは、グローバル展開するために努力した点について紹介。キム氏は、3つの必須要素として「言語」「時差」「離脱率」を挙げ、約3カ月の期間でこれらに対する準備を行ったと話した。


▲テキストを11言語に翻訳、また音声についても対応を行っている。


▲バナーに表示されるテキストを様々な言語に対応すると容量も大きくなってしまうため、苦労もあったという。
 
また、同じ意味の言葉でもタイ語やトルコ語など、かなりテキストが長くなってしまう言語もあるため、文字の間隔についても考えさせられたと当時の悩みを明かした。本タイトルでは、「決まった間隔の中で自動で行送りをする」「決まった間隔の中で自動でスケール調整をする」「翻訳を修正する」という3つの方法で対応したと対策を明かした。
 
140ヵ国でサービスしているため、レイドなど時間が限定されているイベントなどについては時差の問題も発生する。こちらについては、サーバーごとに適切な時間を割り当てることで対策したとのこと。
 


▲例として、韓国でアジアサーバーに繋ぐと18時、ヨーロッパのサーバに繋ぐと0時、北アメリカのサーバーに繋ぐと6時にコンテンツがオープンされる仕組みになっている。

続いて離脱率について、本タイトルは容量が大きいゲームとなっているため、ダウンロード時間の長さが懸念のひとつだったという。そこで、対策のひとつとしてダウンロード時間に表示するコンテンツを改善したことを紹介した。
 

▲最初はイメージグラフィックのみだったものをWeb漫画へ、さらに映像に変えることで離脱率が劇的に減少したとキム氏は語った。

その他、現在は韓国のデータに基づいた難易度調整を行うことで離脱率を抑えることに成功している。その結果、リリースから9カ月で1000万ダウンロードを達成、RPGジャンルの人気ランキングおいて76カ国で1位を獲得、全体ランキングでもベトナムで1位、香港で2位、台湾で3位、タイで4位と各国で人気を獲得している。


 
最後にキム氏は、2017年の目標として「ライブサービス」の導入により各国で国内の300%以上高い結果が出たことから、 新規ユーザーの離脱を防ぐ対策を実施していきたいと展望を語った。現在約500万人のアクティブユーザーがいることを明かし、これからも分割ダウンロード機能や容量減少を実現することでさらに離脱率を減らしていくという。さらに、今後のアップデートについては、よりグローバルな思考に見合ったシステム・コンテンツなどを開発できるよう検討したいとコメントし、講演の締めとした。

 
(取材・文:編集部 山岡広樹)


 
■『HIT』
 

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株式会社ネクソン
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会社名
株式会社ネクソン
設立
2002年12月
代表者
代表取締役社長 イ・ジョンホン(李 政憲)/代表取締役CFO 植村 士朗
決算期
12月
直近業績
売上収益4233億5600万円、営業利益1347億4500万円、最終利益706億0900万円(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
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