ドリコム<3793>の内藤裕紀社長(写真)は、7月27日開催した第1四半期の決算説明会で、バンダイナムコエンターテインメントとの合弁会社として、「株式会社BXD(ビーエックスディー)」を設立し、HTML5のゲームプラットフォームへの参入を決定した経緯について語った。
内藤氏によると、検討を始めたのは、1年半ほど前だったという。同社が、新しい戦略として「IPシフト」を打ち出したころだが、ネイティブアプリ市場を脅かす脅威は何かと研究したそうだ。当時、VRが市場を脅かす存在と言われたが、「ちょっと違う」と考えたと明かした。VRについては、アーケードやPS4、XBOXなどハイエンド市場がメインになるからだ。
その一方でゲーム市場の歴史をみると、ゲームマーケットが成熟し始めると、新規ユーザーが獲得しづらくなる状況にある。そうなると、HIGH ARPUなコンテンツに向かいやすい。より簡単に遊べる環境を提供する必要があると考え、ブラウザに着目した。HTML5の技術的な進歩もあり、ブラウザゲームの限界を突破できるのではないかと考えたとのこと。
以後、IPを使ったネイティブアプリの開発を行う一方で、HTML5の技術研究を行い、ブラウザゲームでどこまで表現できるか可能性を検討した。その結果、発表会のデモで示したように、『ONE PIECEトレジャークルーズ』や『ジョジョの奇妙な冒険スターダストシューターズ』と同じ体験が提供できることを確認した。ネイティブアプリで提供しているマルチプレイなども実現しているという。
ただ、事業としてどう展開していくか検討しているとき、一社で展開するのは難しいと判断し、ドリコムと同様、HTML5の可能性を検討していたバンダイナムコエンターテインメントと組むことになった。スピード感を持って取り組むため、合弁会社を設立することにしたそうだ。これまでもIPタイトルで共同で展開していたことも話が進みやすかった要因といえるだろう。
HTML5のプラットフォームでは、かつてモバイルゲームで遊んでいたライトなユーザーをメインとし、さらにコアなゲームユーザーにも遊んでもらいたいという考え。ゲームのタイトルが前面に出ているが、コミュニケーションプラットフォームの開発も行い、友達同士で手軽に遊べるゲームプラットフォームにしたいとイメージしている。
現在のネイティブアプリでは、友だちと一緒に遊ぶにしても、まず、アプリをダウンロードしてもらって、チュートリアル突破してもらわないといけない。さらにアプリの容量が大きくなり、手軽に始められるようなものではなくなりつつある。理想としては、URLを送って、それを見た友人がすぐにバトルが始められるような、手軽なものをイメージしているとのこと。
リリース時点のタイトルは、『ドラゴンボールZ』と『ファミリースタジアム』、『アイドルマスター』とし、いずれも完全新作としてゼロから開発している。プラットフォームには、サードパーティも受け入れるが、他のプラットフォームと異なり、数ではなく、IPタイトルを中心に少数精鋭、つまり「質」を重視する。「年間リリースは、多くて一桁台後半になる」。
プラットフォームやゲーム開発と同時進行で、サードパーティの誘致も行っているが、話をした半数以上の会社がHTML5の可能性に対して検討・研究していたところが多く、「そうだよね」という反応が多かった。ネイティブ市場でのアプリ開発や集客が難しくなる一方、HTML5でできることが増えており、その可能性を感じる会社が増えているようだ。
アプリストアでは、シリアルコードを使ったプロモーションができないが、ブラウザのタイトルでは自由にできるメリットがある。バンダイナムコグループの展開するグッズや玩具、施設などと連動して、リアルで目にする機会が増えるプロモーションも展開する方針。
内藤社長は、「これは少しポジショントークになってしまうかもしれないが」と前置きしつつ、「ネイティブアプリがPCで楽しめるプラットフォームが活発になっているように、ブラウザゲームの潜在力は感じている。各社の決算説明資料から読み取れないものだ。ネイティブアプリ市場並みに拡大するかどうかは正直分からないが、今回のプラットフォームを通じてゲームから離れてしまった人に戻ってきてもらいたい」と述べた。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793