【セミナーレポート】ロケーションVRの問題共有します ファンデーションは落ちない、その機材は本当に壊れている? 運営を通してわかった既存店舗との違いとは【後編】


ロケーションベースVR協会は、4月12日、クリーク・アンド・リバー本社で施設型VRオペレーションセミナーを開催した。VR領域で今特に注目を集めている施設型のVRについて、実際に携わっているトップランナー達が登壇しその知見を共有した。本稿では堅苦しくなりがちなトピックに対して終始和やかでユニークなセミナーとなったその内容をお届けする。
 

セッションではモデレーターとして、ソニー・ミュージックコミュニケーションズの松平恒幸氏が務め、ロケーションベースVR協会の理事でハシラスでもある安藤 晃弘氏(写真左)、CAセガジョイポリスの速水和彦氏(写真正面左)、電通の足立 光 氏(写真正面右)、バンダイナムコアミューズメントの田宮 幸春氏(写真右)、それぞれの立場から施設型VRの現状を語った。
 

後編となる最初のテーマはコントローラーだ。あくまでも無人化するためという前提での話となるが、VRでのコントローラーはVR内から見えることも多いので利用上においては有利な点だろう。バッテリーの充電に関しても逃れられない問題のため、6,7時間くらいでバッテリーはなくなるので、クレードルは必須アイテムとなる。

ただし、ガンコントローラーなど特殊なものにおいてはクレードルを使用や、また盗難という問題においても注意は必要だ。
 

続いては、チュートリアルだ。コンテンツを体験する場合、説明が必要になるような際にはコンテンツの中で説明や待ってる間にポップなどを読むというのがスマートな形ではある。ただ田宮氏はそれを踏まえた上で「そもそも操作説明が必要なVRコンテンツをなるべく作らないほうがよい」とのことだ。

というのも、あくまでもVRはコンテンツの中に入っており仮想空間にいる自分は「さぁ何をしよう?」という状態が体験と自然になる。このボタンを押すとこれが出来ると言った内容は普通のゲームと一緒になってしまうということだ。見たものを直感で判断できるようなコンテンツにしないと体験として成立しないのではないかと力説していた。

そういう意味ではせっかくの体験として利用できるようになったVRを、通常のゲームのような作りにするのではなくコンテンツ開発時の設計思想で自然に遊べるようにするほうが良いと、同社の設計思想を混じえて話していたのが印象的だ。
 

VRでは自身の位置などを検知するためにキャリブレーションが必要となる。ここでズレが生じると、体験時の没入感の喪失など後味の悪い状況になってしまう。また現在VRにおいてキャリブレーションと一言で言っても、その範囲は多岐にわたっている。

例えば頭の方角や位置をあわせるもの。コンテンツ開始前に正面を向かせることで、設定を行っているものが多い。これは非常に有効でスタッフが判断をすることなく対応が可能だ。ただしマルチプレイゲームなどでは、身長の差がある場合、その差を埋めるキャリブレーションが必要となるケースも有るようだ。

またVR空間自体がずれるケースでは、物理的な空間にトラッカーをおいておくという手法だ。その位置を取得しておくことでずれた際の検知や補正などができる。なお現在ロケーションVR施設ではこの問題に関しては上手くいってるようだ。先に挙げた方法や、VR HMDを特定の位置に戻しておくことで、解決しているという。
 

過去に50台のGearVRを一斉に装着して体験するイベントがあった際の知見が披露となった。端末の都合上、外部モニターには表示できないので、その際には、コンテンツ内で右見てくださいといった指示を出し、向いてない人は見えないんだなと判断するような仕組みをとったようだ。大勢の人数で体験する場合こういった方法は有効だろう。
 

VR体験中には視界が妨げられるので、安全性の観点からも見守るための人員を配置することがある。そういった背景があるため、アテンド失くすことはまずありえないようだ。そのため、数をどこまで削減するかをポイントにしたい。またコンテンツによっても対応が変わってくるため、その点に併せる必要も出てくる。

ライド系であれば少ない人数でも対応できそうだが、フリーローム系であれば動く人一人一人についてもおかしくない。例えばゼロレイテンシーは人が接近するとぶつからないようなマークを表示するようなが、そういった事を無視して体験する人がいるからアテンドが必要になるという。また最近ではVR空間自体を少なく作っておくことで、それ以上進まなくなるので、監視の目はそこまで必要なくなるのではないかとのこと。

もちろんホラーシューティングなどでは驚いて銃を振ってしまうケースもあるため、安全性の追求が重要な点になる。そういった意味では「VR ZONE SHINJUKU」の攻殻機動隊では、プレイスタイルで抑制するような仕組みをとっており、それを無視すると体験としてのペナルティが出るようになっている。(走ると敵に察知されることや、壁に入ろうとすると即死するなど)

また壁などに迫っていくことで視界を暗くするなど、ただ警告出すより効果的なようだ。
 

話は次々に進み、エラー対応に関してだ。では実際に体験してトラブルになった場合どうすればいいか。

その解決方法として挙がったのは、以下の3点だ。

・プレイヤーからの呼び出しをシステム
・事故、地震、火事など災害対応 
・システムトラブル

VRは個人の体験になるので何が起こっているか外部からはわかりにくい。そのために本人から呼び出せる仕組みがほしいというわけだ。ただこのシステムが誤動作すると体験している身としては興ざめだ。そういう意味では解決方法は今の段階では難しいという。次に体験中に災害が起こったらどうなるかだ。

特にVR施設ごと作る場合は、消防機関から検査を受ける必要がある。すでに商業施設にあって1コンテンツ置くのはいい。ただ施設として見た場合、どういう対策をしているかという話だ。災害が起きた時に施設では警報がなって非常灯がつく、それは基本的な
はもちろん必要だ。また開催などが発生した際に自動的に電源をOFFにするカットリレーが働くのでそういう意味では安心だ。ただし電源がいきなり置いても大丈夫なように作っている必要はある。

なおバックパックPCはカットリレーが効かないので、注意が必要だろう。
 
また体験者が警報になってるを気がつくのかという点は必ず担保しなくてはならない。ヘッドフォンの防音性が高く、VR HMDでは視覚も見えないという状況だとNGをくらうことがある。事例としてはお台場のVR ZONEではオープンエア型のヘッドフォンを使用し、外の音が聞こえるものを使用していた。ただそういった中で消防機関とやり取りしている中で、電源がきれてるときに、一定のdbの音が聞こえてれば良いというのがわかったようだ。ただVR施設は新しいのでない言われるかわからんので、かなり慎重に対応をすすめていったという。

ただしネットカフェだと、また条件が異なるようだ。ネットカフェでの体験は個室なのでアテンドを必要としていないという。ただしVRに限らず火事になった際には状況が掴みにくい。窓もなく、密閉率も高い。という状況のため、使用するヘッドフォンは耳たぶより小さな製品を使用しているという。そのため外の音が常に聞こえるという設計になっているようだ。

最後にシステムトラブルの話だ。VRコンテンツ複雑になっている中、一番無人化に近い方法としてはオンラインの監視ではないかという。何か問題が合ったらオンライン上で対処するというものだ。ただしスタンドアローンのHMDに対しては対応できないという問題がある。

 

無人オペレーションにした場合、機器の盗難の恐れも出てくる。そういった問題の帽子はどうすればよいだろうか。基本的には無人化するなら有線でつなぐことが盗難防止になる。監視カメラを付けると有効な方法だ。ただし、盗難に対してどこまでの費用効果が得られるかという視点は常に必要だ。年に1、2個であれば目を瞑るくらいのことなのか、その兼ね合いは重要な点になる。
 
なお、余談だが速水氏によると、最近の監視カメラの性能は非常に高く、鮮明に録画できるので、お釣りの硬貨の本当に出ていないのか、その枚数を含めても確認できるためトラブルはほぼ回避できるのだという。
 
*18,19のバッテリー充電に関しては既に前編似合った内容で触れているので割愛している

現在VR ZONE SHINJUKUでは備品の管理に困っているようだ。実際にユーザーが体験する際にちょっとした問題があるとすぐに体験してもらうための機器を交換することがある。ただ練度の高いアテンダーだとそれが本当に交換する必要があるのか、手元の対応で直せるのか、分からない状態でバックヤードに溜まっていくのだという。

もちろん、一度そうやってバックヤードに戻る機器には印はあるものの、練度の差によって大きく影響が出ることもあり、その管理のコストがかなり高くなっているのだという。大きい施設だと切実な問題になるという。そのため後ろ側で

この点ジョイポリスのゼロレイテンシーも同様なようで半分壊れている時期もあったという。この背景にはVRはまだシステム含めてまだ不安定だというのがあるようだ。この問題の解決はまだまだ先になりそう。練度が高まれば、壊れた時にわかるようになること、そもそもハードウェアとして壊れなくっていくのではというのが速水氏の見解だ。このメンターの質は、VRの施設内で非常に重要で、専門知識のある人間もまだ少ない。修理できる人財もほぼいない。

これに補足する形で田宮氏は、アーケードの機器は経験上、壊れやすいところのあたりがついているそうだ。そのため、壊れやすい所については、マニュアルに壊れた時に直せるレベルで出荷していることが多いのだとか。そこまでシステマチックになっているのであれば、良いのだが、現在のVRはそのレベルまで進んでいないので体制を作るコストが大変だという。

また安藤氏は、このことから運営を行うにあたって、社内にPCに詳しい人財が必須になるとのことだ。
 

最後のお題となるのは「その他」の問題に関してとなる。女性をターゲットにしたVRも最近では増えてきているが、その際に問題となるのはファンデーションだという。ファンデーションがスポンジに付いた際には、臭いや色も全く落ちないんだそうだ。過去のイベントでは、過去にはGearVRのスポンジ部分が全て無駄になったこともあったそうだ。

またファンデーションを付けた体験者も安心できない状況になる。2016年の東京ゲームショウの刀剣乱舞の体験では「体験後の出口付近には、化粧ルームも用意していた。ロケーションVRでは今までにいない層も取り込んで行きたいという面もあり、ターゲット層に対してはそういった細やかなケアが重要になってくるだろうとした。

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最後にモデレーターの松平氏が、業界全体のちからで理想論で言うとオペーレーターが0になる日まで改善を進めてきたいと思うとセミナーを締めくくった。