【イベントレポート】カスタマーサポートのあり方とは? 業界での地位向上もにらんだCX交流会をコロプラで開催

コロプラ<3668>は、同社のオフィス内にあるリラクゼーションスペース「コロパーク」において、「第二回ソーシャルゲーム業界CX座談会」を開催した。

同イベントはゲーム業界を中心に様々な業界から顧客応対のプロフェッショナルが集まり、パネルディスカッションやグループディスカッションを行うイベントとなる。今回参加した企業は、Studio Z株式会社、KLab株式会社、株式会社ポンテム、グリー株式会社、司会進行を務めた株式会社ビジプルなど9社だ。

サポート業務といえば、これまではメールの応対が主流だったが、現在はTwitterをはじめとしたSNSや生放送・動画配信など、ユーザーと繋がる様々なチャネルが生まれている。そんな中でカスタマーサポート(CS)のあり方を見直し、ユーザーとより良く接するにはどうしたら良いか、というのがイベントの主旨となる。
 
 

 

■CSからアプローチするファン作りとは



イベントでは、最初にコロプラの顧客応対部門のマネージャー近藤 雅弘氏(写真)が登壇し、挨拶を行った。その中で近藤氏は「これまでの顧客応対の課題は、特定のタッチポイントのみにフォーカスをあて、その業務フローや利用するツールの品質について議論することが多かった。しかし、現在はアプリの中身だけでなく、各部門の総力で勝負するフェーズ。各社の顧客応対だけみても、差別化を狙うなかで、徐々に課題は変わり始めている。今後は、タッチポイントを増やし、タッチポイント毎の課題解決を追求すること、それをいかにスピード感もって行うかが、ファンになっていただくための重要な取り組みになるのではないか?」と、顧客応対の今後のありかたについても語っていた。

イベントの第一部ではコロプラ 近藤 雅弘氏、KLabの大前 真人氏、Studio Zの須藤 英樹氏、司会にビジプルの森川 仁史を迎えパネルセッションを行なった。
 
 

最初のイベントテーマは「ファンづくりのための取り組み」。まずディスカッションのお題として「各社の考える”ファン”の定義とは?」について各社が話を展開した。

コロプラの近藤氏は、ファンの定義は難しいとしながらも、「SNSなどでお祝いやお礼のコメント、イラストなどを投稿してくださるお客さまはファンのあり方の1つ」と解釈しているという。加えて『魔法使いと黒猫のウィズ』の5周年や『白猫プロジェクト』が4周年を迎えた際、お祝いのメッセージなどをイラスト付きでアップしてくれたファンの方が多く見受けられたと答えた。
 

 
続いてKLabの大前 真人氏(写真)だ。自社のゲームを愛してくれて、継続的・長期的にアプリを利用してくれている方をファンとして考えているそうだ。また、応対している中で、「今後も応援しています!」など好意的なメッセージをいただくことも多いため、そういった喜んでいただける応対を継続していき、ファンになっていただける方を増やしていきたいと理想も交えて説明した。


 
一方でStudio Zの須藤 英樹氏(写真)は、自社のゲームが好きなだけではなく、NPS(ネットプロモータスコア)のスコアに10、または9をつけてくれる「推奨者」をファンとして定義しているという。また内面的には、SNSでのファンアートを公開するようなお客様と想定しているとのこと。さらには『エレメンタルストーリー』のファンイベントで、オリジナルグッズを作ってお客様同士で配ったり運営にまで届けてくれるような人が究極的な存在ではないか、とその理想を語った。

では、ファンを作るために3社はどのような取り組みを行っているのだろうか。それが続いてのお題である「ファンづくりのために各社取り組んでいることは?」となる。

近藤氏は今、一番想いを持って取り組んでいるのが、この「ファン作り」についてだと話す。まずファンになってもらう前提として、「全てのお客様のご利用状況や定性的な面、たとえば遊んでくださっている時の感情をしっかりと知ることが重要」だとし、最近、コロプラではその部分を正確に捉えるための組織環境が構築されたという。

近藤氏がこれまでに担当してきたサービスに限ると、メールでのお問い合わせが主流である時代に、「そのメールを利用してくださるお客様は、サービス利用者の10%未満」であったという。残り90%以上のお客様の声については、もちろん担当者がSNS等を自主的に閲覧して確認することはあるが、十分にフォローできていたかというと、正直なところ言い難いとのこと。

しかし、近藤氏がコロプラの顧客応対部門を統括するようになってからは変わったという。自身の部門の役割として2つのアプローチを行なっているそう。「1つ目はタッチポイント毎のサイレントマジョリティ(お問い合わせを利用されないお客さま)の規模を正しく理解すること、2つ目がタッチポイント別のお客さまの属性を理解すること」と近藤氏は現状の取り組みを説明した。

また、「現状は、1通1通わかりやすく納得感のある対応といったオペレーションを重視しフォーカスしている」と語ったのはKLabの大前氏だ。しかし、平行して顧客対応チームの改革中で、オペレーション機能の改善として業務時間の割合をVOCに向け、自社内への良質なフィードバックができるような環境構築の検討を行なっているという。具体的には、チャネル追加やアクティブサポートだと答えた。

須藤氏は、前提としてStudio Zの体制が全社一丸でファンを作るというスタンスだと語る。NPSの採用理由はまさにこの点で、全社共通でわかりやすい定量的な指標が必要だったという。この取り組みによって、社内ではNPSが売り上げ指標に並ぶほどに浸透してきているそうだ。例えば、改修目的で「NPSの改善のため」とプランナーが書くようになったことは「今のStudio Zの強み」と強調していた。

もちろんその文化を浸透させるにあたっては、並々ならぬ苦労があったようだ。障害対応の補填で不満が出た際などデータを細かに取り、NPSスコアの上げ下げによって起こるアプリへの影響を説明し続けてようやく根付いた、と語っていた。

そして最後のお題は「ファンづくりにおいての課題」に関してとなる。

近藤氏は今の課題に対して、「お客様の声(VOC)と向き合うための適切なタッチポイントの設置」の必要性を語り、それについては「コロプラは徐々に実現できている」とのこと。また「新しいチャネルの設置で気をつけているのは、設置するチャネルの種類と、対象サービスのお客様の年齢層」とのこと。

例をあげると「体験談として、T層やF/M1層の多いサービスでメールのお問い合わせ窓口しかなかった時に、チャット窓口を導入したことで効果はすぐに現れたが、その成功事例をもとにF/M2-3層の多いサービスに同じ施策を入れたところ全くハマらなかった」。そのため適切なボリュームをつかむことが大事で、その分析をいかにスピード感をもって推進していくかが、今の課題になっていると説明した。

この点に関しては大前氏も「おそらく各社も今は模索中の段階」と同意。現状の課題はお客様の声(VOC)をどういった手法で集約していくかということ。ファンに喜んでもらえること、かつゲームがよりよくなることという2軸で考えて、現状に満足せずその時々の課題を探しつづけて、PDCAを回していきたいと答えた。

一方で須藤氏は、課題は多いがその中でも「ユーザーと真の意味でコミュニケーションが取れる人材とそのスキルセットが欠如しているのでは」と提起していた。須藤氏の言うコミュニケーションは非常に範囲が広い。というのも、その範囲はユーザーからのメールや掲示板といった言語領域だけに止まらず、UIといった非言語の部分においても含まれているからだ。

例えばUIの悪い部分があったとして、そのまま放置されているようであれば、コミュニケーションができていないと判断している。そういった意味で100%のコミュニケーションができていないのが今の課題、と須藤氏は説明した。
 

 

■変わりゆくカスタマー対応に求められるスキルセットと人物像、キャリアップについて


続いて、パネルディスカッションの「イベントテーマ2:正社員の雇用とキャリアパスの考え方」に話は移る。最初のお題は「正社員採用に求める条件」だ。

現在、コロプラでは「カスタマーサービスディレクター」を募集しているという近藤氏。チームの目標が、VOCをもとにお客様をファンにすることであるため、VOCのディレクションができる人物を探しているという。CSやコールセンターでの経験は土台として必要だが、ディレクター(演出家)というだけあって、テーマパークでの経験や企画プランナー職を経験しているクリエイティブなスキルセットのある人物を求めているとのこと。

大前氏は、以前はオペレーターが中心だったが、今後のことを考えると顧客応対の経験を踏まえた上で、リーダーとしての経験値も求めているそうだ。また、それ以上にホスピタリティや、CSの存在意義や使命に対して、自身の意見をきちんと持っている人を重宝していると説明。さらにこれからは分析の経験がある人を募集するつもりだと加えた。

須藤氏は、求める要素が3つあると話す。1つ目は、分析ができて洞察力のあるユーザーインサイトを持っていること。「相手の本心が読めないとズレた回答になるから」というのがその理由だ。2つ目はStudio Zのスタイルとして全社一丸で巻き込んでいく必要があるため、周囲を巻き込む力と困難を突破するやりぬく力を求めているという。

そして3つ目はホスピタリティだ。なおホスピタリティは、面接時の言葉の端々や書類が見る人のためになっているか、という点をチェックしていると説明した。
 

次のお題は「入社後の教育プラン」に関して。

コロプラの近藤氏の組織では、「なんでもいいので、面白いことや自分がやりたいことを1つやってくれ」と言っているそうだ。まずは1人1つプロジェクトをPMとして半期に一度ローンチさせるところまでをコミットしてもらうというマネージメントをしており、発案の時点で組織目標との親和性が多少ずれていても承認していること。理由は何よりも本人がやりたいことをやりきる達成感と成功体験を持たせ、その成功事例をどこにいっても話せるネタになることが、その人にとっても会社にともって財産になるからであると語る。

また、マネジメント側としても、メンバー全員が役務を果たし会社に貢献しつつも、ある程度自由な方向性で好きなことにトライをする環境を用意するには、チームくらいの規模がちょうど良いという。

「以前のCSのキャリアパスを考えると、応対を極めることでマネージャーになるというのが一般的であった」と語る近藤氏だが、「このままでは頑張っているメンバーの成長機会を潰すように感じており、CSにおける新たな仕事の要件定義を自分たちの世代で作れたら良い」とその想いを語っていた。また、本人のやりたいことを組織内で実現することで、社員としての長期雇用にも繋がるのではないかと加えた。

KLab大前氏は、メール対応にフォーカスしていたが、ファンに喜んでもらえるような提案をサポートの視点から立案していけるような環境作りを目指していきたいとのこと。ただし、今までのCSスタイルを否定するわけではなく、今まで培ったノウハウを重要視して、インプットする前提の上での話となると説明した。

そんな中、須藤氏が話したのは主にマインド面に関してだ。あくまでも自論としながら、「CSを長く務めていると、慣れていないこともあり0から作ることに抵抗のある人が多いのではないか」という点から、マインドチェンジをするための案件をまるごと任せるそうだ。実際に新入社員がオフラインイベントの担当をし、やりきったあとは大きな成功体験に繋がったと語っていた。そのため、まず経験を積むことを重視しているのがStudio Zの教育プランだという。
 

3番目のお題は「どのようなキャリアパスを考えているか」となる。

近藤氏は、「さきほどのお題と重複しますが、どんなことでも良いので、組織で楽しいことを考え、それがお客様の感動体験の創造と企業の成長、ひいては業界のポジティブな評価に繋がるのであれば、それは文字通りCXを体現できているので、顧客応対部門のやるべき仕事としてしまってもいいのでは?」と会場に投げかけていた。

また「それができる環境を我々が作り上げ、10年前のCSには想像のつかない仕事をCSがしてるんです。今後、それがコロプラのお客様応対部門のキャリアパスであるという認識を業界に広げ、ゆくゆくは業界におけるCSの定義が変わるところまで行きたい。自分の子供が同じ仕事をしたいといってくれたらとても嬉しいです」と続けた。

「オペレーション部門の改善や業務分業化をしていきたい」と話したのは大前氏。そういった背景があるため、オペレーション外の業務改善やグループのマネージメントといったことをキャリアパスの1つとして想定しているという。また、今後CSのあり方はマーケティングに近いものになるのではないかと考えているそうだ。そのため企画力を使ったステップアップもあるのではとその構想を明かした。

「自身が元々ガチガチのCSの人間だった」という須藤氏は、あくまでも個人の経験が濃い話になると前置きした上でキャリアアップの要素を3つ語った。CSの体験から、バックオフィスで稼いでいない引け目があったという。ただ、プランナーやマーケッターに就いた際には、CS経験からユーザーインサイトが理解できたのは非常に役立ったとのことだ。

「昔はプロダクトアウトで面白いもの作ってなんとなく売れた。でも、今はマーケットインで、面白いもの作ってもお客様の意見聞いて常に進化しないと生き残れない状況」と説明し、プランナーやマーケッターに横展開するのが良いのではとした。また2つ目は少々過激な内容だが、「他社に転職するのもいいのでは?」と考えているという。必ずしも同じ会社で働く必要はなく、培った経験を他社で役立たせることができると説明した。そして3つ目は、自社内でのキャリアアップと基本に立ち返った。
 


最後のお題は「顧客対応部門のキャリア上の成功を掴む要素」だったが、ここで司会の森川 仁史(写真)から「最初のテーマであった”正社員採用に求める条件”と根本は一緒になるのでは?」とのツッコミが入り、「成功するためのチーム内コミュニケーションとは」というお題に変更となった。

現在コロプラの顧客応対部門では、お客様と接する取り組みについては、オンライン/オフライン問わず、取り組みに関しては必ず関係するように、とメンバーに話して行動しているという。例えば、コロプラではマーケティングチーム主体のオフラインイベントを開催しているが、CXの創出を目的として今年から参加しているという。また官公庁とのコミュニケーションをはじめ、社外的な活動も始めたとのこと。

さらには社内でインシデントがあった際の交通整理も率先してやっているそうだ。近藤氏はその理由として、「社内調整に際しては、お客様と日々向き合っている我々がイニシアチブをとって、お客様に対してあるべき姿勢を社内へ啓蒙していくことが、会社への貢献になる」と話していた。

「自社に対してもチームはユーザーのためにいると宣言している」という大前氏。ユーザーにより沿うことを第一に考え、それをチームとしてどう実現するか同じマインドで話合えるかがポイントになる。また、上位層とのコミュニケーションにおいては、CSとしての見解、数値分析、法律の知識といったものが非常に大事になるため、CSに必要な専門知識をより深めていくことが大事では、と話した。

須藤氏の内容は実にシンプル、「外に出ろ」だ。「社内で当たり前と思っていることは、本当にそうなのか?」、ズレに対する”気づき”のタイミングを早めたいと、その理由を説明した。「今回のようなイベントはCS業界で珍しいので、こういった機会を増やしていこう」とメンバーに話しているそうだ。
 

第2部は参加者によるグループディスカッションとなった。参加した会社を別のグループに分け、与えられたそれぞれのお題をもとに、お客様にどういう返信するのかディスカッションし、返信内容をまとめた。どのグループも、当初は和やかながらも、次第に熱を帯び議論が活発になっていった。
 
 



 
ディスカッション後は、各グループの代表が返答例の発表を行なった。お題の要望は、中学生のユーザーからで「妹の誕生日に何らかのプレゼントをしたい」というもの。このお題を受けたグループでは、実際に似たような問い合わせがあった際、どのような対応をしているのか情報の交換をしていた。

ファン作りという使命はあるものの、現実的な問題としてなかなか受け入れるのは難しいのではないかといったことをグループ内で議論をしていたそう。またユーザーのプレイデータを確認しつつ、どういう人物であるかを把握し、サプライズを含めてどうにか対応できないかを話し合っていた。
 


 
最後にコロプラの近藤氏は、「企業間、特にCSの交流はもっと増やしていくべき。固定化した環境では新しいアイデアや発想が生まれにくいため、今後もこのような機会を率先して作っていきたい」と語った。また近藤氏は個人としての大きな野望もあるようで、そのために「まずは業界におけるCS/CXのポジションを、より価値の高いものにしていきたい。」と続け、イベントを締めくくった。

 


 

イベントの最後にコロプラの近藤氏が話していたように、企業間のCSの交流を増やしてきたいとのこと。今後顧客対応イベントへの参加に興味がある企業は、下記のリンクよりコロプラ宛に問い合わてみよう。
 

問い合わせはこちら

※メーラーが開きます
グリー株式会社
http://www.gree.co.jp/

会社情報

会社名
グリー株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高613億900万円、営業利益59億8100万円、経常利益71億2300万円、最終利益46億3000万円(2024年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
企業データを見る
KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
企業データを見る
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役会長 チーフクリエイター 馬場 功淳/代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高309億2600万円、営業利益28億5800万円、経常利益32億7600万円、最終利益18億9300万円(2023年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
企業データを見る
StudioZ株式会社
http://studioz.co.jp/

会社情報

会社名
StudioZ株式会社
設立
2016年11月
代表者
代表取締役 池幡 賢
決算期
3月
企業データを見る
JP GAMES

会社情報

会社名
JP GAMES
企業データを見る