【Sp!cemartゲームアプリ調査隊】スマホ向けパズルゲームのトップを走る『ガーデンスケイプ』の施策とシリーズの強みを分析


スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。ゲームアプリの運用情報をいつでもウォッチできる「Sp!cemartカレンダー」や、毎月発行しているレポートを提供している。
 

なかでもカレンダーは、セールスランキング上位のモバイルオンラインゲームのゲームシステム・運用施策をダッシュボード形式のWEBツールとして提供。ゲーム内プロモーション施策の効果測定やセールスランキングと運用効果の相関関係を時系列で分析できる。
 
本連載記事ではSp!cemart協力のもと、カレンダー機能を用いた、ランキング上位タイトルの直近のゲーム内施策を分析。今回はPlayrix Gamesの
『ガーデンスケイプ』の施策をピックアップする。
 

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(以下、Sp!cemartゲームアプリ調査隊より) 
 

■パズルゲームのトップを走るが広告問題も

 

 
■『ガーデンスケイプ』
提供:Playrix Games
リリース日:2016年8月25日

 
「スマートフォン向けパズルゲーム」と聞くと、恐らく多くの方が『キャンディークラッシュ』シリーズを思い浮かべるかもしれませんが、同ジャンルのポジションも昨年から徐々に変化してきました。ポスト、『キャンディークラッシュ』として人気を集めているのが今回紹介する『ガーデンスケイプ』シリーズです。
 
同作は、ピースを動かして3つ以上並べると消える、いわゆるマッチ3ゲーム。『キャンディークラッシュ』と同様のゲーム内容ですが、最も特徴的なのが箱庭系の要素を取り入れていることです。ステージをクリアしていくことで★が手に入り、その★を消費して庭を清掃したり、修理したり、豪華にしたりと、物語と成長要素を兼ね備えているのが魅力です。
 
これまでのスマホ向けパズルゲームといえば、『キャンディークラッシュ』のようなステージ踏破式、『LINE:ディズニーツムツム』のタイムアタック+スコア競争式と大きく分けて2種類でした。一方で『ガーデンスケイプ』は、マッチ3ゲームでありながらも、パズルステージをクリアした達成感のみならず、徐々に箱庭世界が豊かになっていく過程を楽しめるという新しい要素を加えたことで、大ヒットを記録しました。
 
なお、米国の調査会社Sensor Towerでは、『ガーデンスケイプ』の総収益が15億ドル(約1640億円)を突破したとする、推計結果を同社のブログ記事で発表しています。地域別の売上高は米国が35%と最も多く、ドイツが12%で2位。四半期別の収益は、2017年第3四半期(7~9月)から2019年第1四半期(1~3月)にかけて低下したものの、その後は収益が回復しているという。日本のストアランキングでもTOP30に入ることが目立ってきた時期と重なっているように思えます。
 
 
なお、続編にあたる『ホームスケイプ』は2017年9月19日にリリースされ、『ガーデンスケイプ』同様にランキング上位にランクインしています。基本的なルールはそのままに、新しいパズルステージを遊べるほか、『ホームスケイプ』ではその名の通り、庭の代わりに家をリフォームしたり、豪華にしたりすることが目的となります。
 
さて、両作とも気付いたときには国内でリリースされて、そして大ヒットを記録していました。実際にプレスリリースによる告知やキャンペーンの情報など、国内ゲームメディアで情報が掲載されていないほか、目立ったプロモーションも見受けられません。純粋な口コミをはじめ、WEB広告や動画広告を通じた施策で徐々にユーザー数を伸ばしていったことが考えられます。
 
一方で動画広告については、ゲーム内容とあまりにもかけ離れているクリエイティブで、ユーザーから反感を買っているのも事実です。下記は『ホームスケイプ』の広告クリエイティブですが、パズルゲームというより、場面場面でアイテムを使用するアクションゲームのような内容になっています。
 
 
実際に両作とも安定してアプリストアのダウンロードランキング上位に位置していることから、上記の広告クリエイティブに一定の効果はあるのでしょう。ですが、期待していたゲーム内容とは異なるため、ユーザーの反感を買うだけではなく、タイトルとしてのブランドも著しく低下させる恐れがあります。『ガーデンスケイプ』シリーズは面白い作品だからこそ、誤解のない露出方法に切り替える必要があります。
 
ここからは、『ガーデンスケイプ』のマネタイズのおさらいをはじめ、直近におけるランキング推移と施策について、「Sp!cemartカレンダー」で覗いてみましょう。

 

■ガチャ非採用タイトルとしてのマネタイズ

 
まずは『ガーデンスケイプ』のマネタイズについておさらいしておきましょう。本作のマネタイズは、主に有償アイテムのコインの販売です。コインはスタミナ回復やコンティニューなどに使用します。コインのラインナップは以下の通り。
 
【コインのラインナップ】
・コイン1000枚(120円)
・コイン5500枚(610円)
・コイン12000枚(1,220円)
・コイン25000枚(2,440円)
・コイン53000枚(4,900円)
・コイン110000枚(9,000円)

 
なお、本作にはガチャは存在しません。そのため、基本的にコインの用途は「スタミナ回復」「コンティニュー」「時間短縮」の3つとなります。それぞれの金額感と基本ルールは下記の通りです。
 
【スタミナ回復】
スタミナがゼロのときのみ、コイン×900(108円相当)で購入可能(全回復)。30分ごとに1回復するほか、ギルドメンバーにリクエストを行うことで、応じた人数分が回復できます(4時間ごとに上限5)。なお、失敗しない限りスタミナは消費されません。
 
【コンティニュー】
有料アイテムと引き換えに行え、コンティニューの回数が増えるたびに必要なコインの数も増加していきます。コンティニュー後は、失敗時の続き+手数5回の状態で再開。また、復活2回目以降はボーナスとして、ステージ開始時にアイテムが配置されます。

 
▲コンティニュー1回はコイン×900(108円相当)。同じステージで何度もコンティニューを行うことで、必要コイン数も上昇していき、5回目に関しては3300枚(約396円)となりました。どうしてもクリアできないステージに関しては、このようにコンティニューを繰り返すことが予想され、同時にマネタイズにもつながることが考えられます。
 
【時間短縮】
特定のストーリー進行には、時間経過が必要となります。コインを使用することで、5分:50枚(6円相当)、10分:75枚(9円相当)と、それぞれ時間短縮が可能です。とはいえ、少額のためマネタイズの柱にはなっていないでしょう。

 
このほか、ショップにおけるパック商品の販売も挙げられます。250円から1万円超えまで、バラエティに富んだパック商品が用意されていますが、基本的に中身は有料アイテムのコインとゲーム内アイテムが入っており、金額に応じてその個数が異なる形です。
 
ゲーム内アイテムには、特定のピースを消したり、入れ替えたりと、「あと少しでクリアできるのに…」という場面において需要が高く、アイテムを数多く持っていることにこしたことはありませんので、継続的に遊んでいるユーザーはコイン単体の購入より、パック商品に課金していることが考えられます。
 
また、海外系タイトルに多いのが突発的なセール販売です。例に漏れず『ガーデンスケイプ』シリーズでも採用しており、プレイ中に突然ポップアップで値下げ中のお得な商品を紹介してくれます。どれも金額としては500円以下とリーズナブルな値段設計のため、課金ハードルを著しく下げる施策として機能していることがうかがえます
 
 
『ガーデンスケイプ』【調査期間:2019年12月1日~12月30日】

 
Sp!cemartカレンダーでは、直近の施策及びランキング推移として、2019年12月1日(日)~12月30日(月)を抜粋しました。ランキング推移を見てみると分かる通り、セールスランキング(オレンジ色)とダウンロードランキング(青色)が安定しています。
 
なかでもセールスランキングでは、国内タイトルのように期間限定ガチャの有無でランキングが乱高下することなく、コンティニューやステージクリアを目指したアイテム(パック商品)購入に有料アイテムの課金が充てられていることから、このような安定感を実現しているのだと考えられます
 
一方でメインストーリーを進めていくだけではなく、定期的なゲーム内イベントも開催し、ユーザーを飽きさせないような取り組み、ひいては課金にもつながるステージ接触数を増やしていることが分かります。
 
「ライフを失わずにクリア(失敗せずに連続クリア)し続けることで、ステージ開始時にアイテムを得られる」タイプの個人施策はもちろん、パズルゲームのなかでは珍しいGvG(ギルドvsギルド)施策も行っていました。
 
GvG施策では、ステージクリア時のスコアに応じて「ゴールドの盾」を得られ、その入手数の累計をギルド間で競うもの。1位の報酬は十数万のコインをギルドメンバー全員(最大30名)に分配されることだけあって、ユーザーは積極的に該当ステージに挑戦していくことが予想されます。
 
これまでパズルゲームはひとりで黙々と遊んだり、誰かとスコアを競ったりしていましたが、『ガーデンスケイプ』シリーズはゲーム内のイベント施策で“共闘”という軸でユーザー行動を活性化させていました
 

■庭か家か。全く同じ2作品だからこその強み

 
『ガーデンスケイプ』シリーズは、一見して『キャンディークラッシュ』のようなマッチ3ゲームですが、ちょっとしたエッセンスを加えたことで、現在のスマホ向けパズルゲームのひな型となりました。
 
実際に2019年にリリースされた国内のスマホ向けパズルゲームには、漏れなくコアなパズルゲーム部分に加えて、ストーリー進行が楽しめる箱庭系要素が加わっています。これは、大ヒット中の『ガーデンスケイプ』シリーズを参考にしていることが考えられます。
 
もうひとつ、同シリーズの特徴的な点として、全く同様のゲームである『ガーデンスケイプ』と『ホームスケイプ』が、とくにカニバリゼーションを起こさず2作品とも大ヒットしていることについてです。
 
 
筆者が考えるに、2作品ともヒットしている背景には、同様のゲームである安心さと、スタミナの妙が関係しているのではないでしょうか
 
前者の同様のゲームである点は、登場人物や世界観、基本的なゲームルールと進行が同じなことで、スムーズにゲームを楽しめるほか、全く別のアプリではありますが、同シリーズの別モードとして単純にステージ数が増えた感覚で捉えているユーザーが多いのではないかと思います。庭か家か、という程度で基本的にどちらか遊んでいるユーザーは、必ずもう片方のゲームをインストールしているということです。
 
後者のスタミナの妙は、どちらか一方でスタミナが枯渇した際に、回復するまでの間にもう片方のシリーズ作品を遊ぶという、時間の有効活用による2作品の循環が行われているのではないかと考えます。
 
余談ですが、実は『ガーデンスケイプ』シリーズは、もともとニンテンドー3DSのダウンロード用ソフトからが始まりでした。『Gardenscapes つくろう!大庭園』(提供:アークシステムワークス)というタイトルで2014年にリリースされており、ゲーム内容はマッチ3ゲームではなく、3Dグラフィックを採用した箱庭系の物探しゲームでした。
 
当時は、お世辞にも大ヒットしたというわけではありませんが、その後にマッチ3ゲーム要素を加えて、親しみやすさを意識してか3Dから2Dに変更するなど、さまざまな改修を経てスマホ向けパズルゲームとしてタイトルをリニューアルしました。コア部分である物探しを変更し、庭を作るという世界観及び成長要素をひき立てたことで今作のようなゲームが生まれたのではないかと思います
 
「Sp!cemartカレンダー」では、各ゲームのイベント情報をランキング推移と共に閲覧できます。自社はもとより、競合他社の施策一覧を取りまとめた分析などにもご活用できます。ぜひ、ご興味がある方はお問い合わせページからご連絡ください。
 

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■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「Sp!cemart」というサービス名称で各種ソリューションを提供。

コーポレートサイト:http://corp.spicemart.jp/
Sp!cemart 商品に関する問合せ:info@spicemart.jp
 

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設立
2015年7月
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代表取締役 久保 真澄
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