【イベント】eスポーツに携わる人材育成・発信の場…現役講師が登壇する「esports 銀座 school」初となるオープンキャンパスをレポート
コナミデジタルエンタテインメントは、1月13日、銀座クリエイティブセンター内に新設される「esports 銀座 school」のオープンキャンパスを開催した。
「esports 銀座 school」は2020年4月に開校が予定されているeスポーツ業界の様々な場面で活躍できる人材を育てることが目的として開設される学校となる。
当日は、同校の説明会のほか、現役プロゲーマーによる座談会や講師による授業が行われた。本稿ではそのオープンキャンパスの様子をレポートしていく。
■コナミが運営し、業界の現役講師が登壇する「esports 銀座 school」
昨年の東京ゲームショウにて発表された「esports 銀座 school」。これまでも個別説明会は実施されていたが、今回が施設も内覧できる初の説明会となる。
説明会では、コナミのeスポーツにおける取り組みが紹介され、これまでのノウハウを生かされたカリキュラムを予定されていることが挙げられた。
授業を通じて、プロゲーマーの実技スキルはもちろんのこと、プロとして自身を売り込める力も養成していくとしている。具体的には、動画編集やイベント企画・運営についても講義として育成していくことで様々な形にて活躍できる人材を狙いとしている。
取り扱うタイトルは4タイトル。それぞれ選択するカリキュラムによって扱うタイトルは定められている。全日制のコースでは複数のタイトルを受講してもらう方針になっており、他のタイトルにも触れることによって考え方や戦略を養ってもらうそうだ。タイトルについては今後の受講生のニーズも考慮しながら追加していく予定だ。
講師については、現場で活躍する講師陣を予定しており、世界で活躍しているプロゲーマーはもちろんのこと、イベント運営においても長年活躍している講師やプロデュース分野ではフリーランスで活躍している方々も登壇予定だ。
▲いわゆる畏まった授業ではなく、授業自体も楽しめる形を目指していきたいそうだ。
カリキュラムのコースについては全日制の「MAX WORK」、選択・短期集中制の「SELECT WORK」と二種類が用意されており、ダブルスクールや社会人でも通えるシステム体系にされている。
▲MAX WORKのコマ数と受講イメージ。タイトルは『パワプロ』『ウイイレ』『Dota2』になる。
▲SELECT WORKの受講イメージ。『フォートナイト』は SELECT WORKにて選択可能だ。
入学においては、全日制のMAXWORKにおいては書類選考と面接を通じて入校となる。
■プレイスキルだけでなく、総合力が求められるプロゲーマー
オープンキャンパスでは、本校の講師となる現役プロゲーマーchip氏とちょぶり氏による座談会も用意されていた。同じく、セルフプロデュースの講師であるナレーターMC森一丁氏のファシリテーションのもと「プロゲーマー」に関するトークセッションが行われた。
まずはじめに、「プロゲーマーになるにあたり必要なもの」という問いが挙げられ、プレイスキルは大前提として、人間性などプロとしては総合力も求められると挙げた。事実、プレイスキルだけで活躍、生業とできるのは難しく、様々な協力者やスポンサーとの関わりも重要になってくることが挙げられた。
▲PES LEAGUE 2019 CO-OP部門 日本代表 chip氏
また、eスポーツ自体はまだまだこれからの業界となるため、自分自身で発信してく必要性が高く、語学や動画編集などもできるに越したことがないと説いた。
森氏から「万が一『ウイニングイレブン』という作品がなくなったらプロとしてやっていけなくなるのでは?」という質問に対しては、eスポーツの特性であるゲームの仕様変更への対応も挙げられた。
『ウイニングイレブン』の他にも、多くのゲームタイトルでは新しいシリーズが出てくる。毎年出る作品に至っては一年間しかやり込むことができないので、仕様変更にも柔軟に対応していく必要があると話した。変化の激しい競技なので、継続して勝っていく力は自ずと求められると評した。
▲全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI 準優勝 ちょぶり氏。
一方で、作品の特性を分析し、柔軟に対応していける力が養われるので、別の競技タイトルでも活躍できる可能性が高いのもeスポーツの特性とも話し、仮に『ウイニングイレブン』というシリーズ作品が無くなったとしても、プロゲーマーとして活動を継続することはできるのではと話した。
トークセッションの他にも、模擬授業として、実際に『ウイニングイレブン2020』の対戦も行われた。フォーメーションの組み方など、タイトルや大会の仕様に応じた考え方などがプレイを通じて解説されていた。
授業では、プロとしてのスキルが挙げられ、具体的な事例を基に講演された。例えば、「プロにアドリブはない」と話し、突発的なアクシデントや演出も全て想定して臨むことが求められると説き、テレビショッピングや大道芸人の演出を基に人々を楽しませるメカニズムを解説していた。
最後に森氏からは、プロになるには100%近い確率でなれるが、トッププロになるには限られると説き、少しでも実現できる確率を上げるお手伝いをしていきたいと意気込みを語り、模擬授業を終えた。
■楽しみながらも一職業人として自立できる授業を目指す
オープンキャンパス終了後、「esports 銀座 school」の校長である大田良彦氏の囲み取材が行われた。ここでは同氏のインタビューを紹介する。
——:プロゲーマーから入学生へのメッセージにて、「覚悟を持って入って欲しい」という声が多かったが、実際にプロゲーマーだけで生計を立てるのは難しいのでしょうか。
▲説明会途中にあったプロゲーマーからの激励メッセージ。
現状だと、単独で生計を立てている人は限られていて厳しいです。というのも、国内では大会の数も少なく賞金の制限もあるからです。海外だと数多く大会もあり、大学では支援する機関もあったりします。日本だと法規制の問題もあるので、今後も整備していく必要もあるが、それと同時にプロゲーマーを職業として確立する必要もあります。
本来であれば、プロゴルファー等のプロスポーツ選手と同じはずなので、体制が整っていけば、伸びていく規模はあるはずです。国内でも足並みそろえていければ海外にも負けない規模になるはずなので、今後の可能性についてはそこまで悲観視はしていないです。
——:学校開設の構想はいつからありましたか。
2〜3年前からeスポーツを盛り上げる施設と人材育成の場にしていこうと考えてきました。また、私自身ゲームを作り続けてきたので、人を楽しませることも考え続けてきました。ですので、本校では退屈な授業というのはしたくないです。興味を持っていただけるような授業を用意していきたいです。
セルフプロデュースの模擬授業もオープンキャンパスでは行いましたが、あのような授業を今の高校生や大学生にも受けてもらいたいと思っています。その為に、タレント性の高い先生をそろえ、楽しくて且つなるほどと思える授業を用意しています。充実したカリキュラムが用意できている自負はありますね。
——:授業で意識している点はありますか。
タイトルを絞りしっかり指導していく形をとっているところです。「タイトルが限られているのはなぜか」という質問も多く頂きますが、これはしっかりと教育していきたいという我々の考えからです。
よくあるプロゲーマーの指導というと自習が多く、数あるタイトルを好きに選んで実習するスタイルが多いんです。ただ、数多くのタイトルをそれぞれ専門の先生が教えるというのは人員にも限りがあり不可能だと思います。自習だと可能ですがそれは授業ではないと私は思います。当校では設備も完備し、しっかりと指導ができる授業をしていきたいです。
▲実技ルームではゲーム機材の他にもアイトラッキングなどの設備も完備。
プロゲーマーが試合中どこに目線を配っているかなどの本格的な指導も行うそうだ。
また、「ゲームが上手くなれば良い」というところだけをフォーカスして、環境と時間を与えて自習で上達してくださいというところも多いです。ただ、それは結局、”本人の努力”に任せているだけなんです。私はそれだけじゃないと思います。
一つの職業人として、自立する為に必要なことは多いです。残念な事ですが、プロゲーマーはマナーが悪いという声も聞くことが現状としてあります。そういったビジネスマナーや立ち振る舞いも教育すべきと思い、座学も設けました。
▲座学の部屋では開放的なスペースが用意されていた。発表の場としても活用される。
——:これまでの説明会等にて進学検討者のご家族などからはどのような声を聞いていますか。
意外にも年齢層の高い方に説明会には来て頂いており、お子様の為に話を聴きにきたという人が多いです。最近、ネット高校というのも進学の潮流として出てきており、親御さんの感覚が私たちが学生だった頃から変わってきているのではと思います。子供がやりたいことがあるなら、その道を一緒に考えていく、応援してあげたいという考えが増えてきているのかなと思います。
昨年には茨城国体でのeスポーツ競技の採用もあって、選手の応援にいらっしゃる祖父母の方も多くいました。日本国内でもeスポーツの理解は浸透してきているのかなと思います。
——:卒業後の就職サポートを気にする人もいるかと思いますが、どのようにお考えですか。
卒業後の就職サポートなどに関心のある方もいらっしゃいますが、本校のカリキュラムは1年間しか期間がありません。ですので、開校と同時に就職活動が始まるので、就職のサポートはお約束できないというのが本音です。
ただ、講師の方々は最善に活躍されている方たちなので、親身に協力していきたいと考えています。他のプロ選手同様、トッププロになるには本人の頑張り次第になりますが、できる限りの協力はしていきます。
また、私は3年とかよりは1年だけ学ぶというのが自身のキャリアを考える上で肝になると思います。カリキュラムが1年というのは自信を持って教えていける期間と判断して設定しているのもありますが、もう一つ側面があり、1年で進路を判断できる期間とも思っています。
この1年で学んだことで、しっかり考えて判断できると思いますし、マナーなどの社会人として役に立つ事も学べているはずです。仮にプロゲーマーの道が難しくともイベント運営の道でやっていく、といった判断もできるはずです。この1年間でしっかり学び今後の進路が判断できる、という点は親御さんにも理解は得られやすい長さと思っています。
——:将来的な増設や地方開校は考えているのでしょうか。
昨今ではeラーニングといったネット配信も進んできていますが、ネット配信はあえて考えていないです。eラーニングではできないこともあり、セルフプロデュースの授業等がそれに当てはまると思っています。
もちろんニーズに合わせて大阪などの地域で開校することも考えていかないといけないですが、教育ビジネスとして拡大していくというよりは、まずは生徒に何が返ってくるか、eスポーツやゲーム業界の発展に繋がるかを考えていきたいです。
——:4月からの開校になるが、何をもって成功とみていますか。
生徒が何を残せたかが成功の可否かなと思っています。ゲーム作りというエンタテインメントをやってきた我々の強みも生かしていきたいので、生徒たちに喜んでもらえ、将来に役立つ事が身につくことにこだわっていきたいと思います。
定員は80名を予定していますが、定員数はこだわっていません。これが学校法人だと、どれだけ入学してもらったかも意識しないといけないと思います。そこはゲーム会社が運営しているという強みにもなるのかなと思います。
楽しい授業が受けられる学校にしていきますので、楽しみにしてください。
——:ありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社コナミデジタルエンタテインメント
- 設立
- 2006年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 東尾 公彦/代表取締役社長 早川 英樹
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1940億1100万円、営業利益336億4700万円、経常利益348億9300万円、最終利益278億2800万円(2023年3月期)
会社情報
- 会社名
- コナミグループ株式会社
- 設立
- 1973年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 上月 景正/代表取締役社長 東尾 公彦
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高3603億1400万円、営業利益802億6200万円、最終利益591億7100万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム(ロンドン証券取引所にも上場)
- 証券コード
- 9766