【セミナー】非効率な施策が効率的なゲーム運営に繋がる…グリー・DeNAが明かすコミュニティマーケティングの考え方とその効果とは


 
ミラティブは、7月21日、スマホゲームのマーケティングやコミュニティ運営に関するセミナー「グリー×DeNAに学ぶ!LTV向上につながるコミュニティマーケティングの考え方と施策事例」を開催した。
 
ゲームアプリ市場は現在、長期運営タイトルが増えてきている中、コミュニティマーケティングの重要性も注目されている。ただ、その重要性や施策の効果に頭を悩ませる担当者も多いだろう。
 
本イベントではWFS(グリー)とDeNAでそれぞれコミュニティマーケティングに取り組み、タイトルの成長につなげてきた2名の登壇者を招き、コミュニティマーケティングの意義や成果につなげる考え方、施策の実例が語られた。本稿ではその模様をレポートする。 
 

「非効率」こそが「効率」化への道…二社が実感するコミュニティマーケティングの重要性

 

はじめに、両社が考えるコミュニティマーケティングの目的について語られた。
 
鶴川氏は三つの側面として考えていると話し、一つ目にアイデアの種の発見、二つ目に情報の伝搬として重要だと話す。コミュニティが形成されると、普段SNSなどで発信をしないユーザーの声も聞くことができ、共感を得ることができるからだ。
 
ユーザーにとっても、同じコンテンツを遊んでいる立場からの情報は盛り上がりやすい傾向にあるので、信頼できるユーザーからの情報は他ユーザーにも良い変化をもたらすと考えているようだ。
 
そして、三つ目に遊ぶ理由の拡張を挙げた。過去の分析においてもプレイ理由に人の繋がりが増えているケースを挙げ、継続率の向上としても価値があると話した。
 
この三つを実現するために重要なステップがユーザーとの信頼関係を構築することだと鶴川氏は話す。この前提がないと、いくらバズる施策を行なったとしても最大化は図れず、維持していくことも困難だという。
信頼関係を築くことで初めてユーザーとコンテンツを共創できると話し、信頼がなければただの押し付けや独りよがりの運営になってしまうと説いた。
 
小泉氏のWFSではマーケティングにおいて「効率」「非効率」の二極化を突き詰めているという。「効率」についてはweb広告などの獲得効率などを指し、「非効率」の領域でコミュニティーマーケティングに取り組んでいる。
 
そして、コミュニティマーケティングをやるかやらないかの議論はとうに昔の話であり、絶対にやるべき施策であると話した。
 
その背景として、昨今のアプリマーケティングでは、ゲーム以外のアプリとも可処分時間の争いが熾烈にあるので、いかに長く遊んでもらうかという観点が非常に重要になっているからだと話す。コミュニティ形成は費用も手間もかかるし、KPI設計がしづらく非効率なものではあるが、どの企業でも常に行うべき施策だと自身の考えを示した。
 
▲『アナザーエデン』と『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか〜メモリア・フレーゼ〜』(以下、『ダンメモ』)などのタイトルの2周年と3周年の施策にて用いたツール推移。3周年ではミラティブや開発者アカウントのTwitter、Fanbeatsを活用したコミュニティ運営も行っているようだ。
 
鶴川氏も「非効率」を積み上げていくからこそ「効率」的なマーケティングやゲーム運営が実現できると話し、両者ともにコミュニティマーケティングの重要度の高さが伺えた。
 
 

■動画やSNS …コミュニティ形成の向き合い方や分析方法とは

 
両者とも効率的なマーケティングを行うためには非効率な施策も積み上げていくことが大事だと語るが、コミュニティマーケティングには手間もかかるのも事実。また、数値に出しづらい面も多く、担当者としてはいかに会社に理解を得られるかも気になるところ。このコミュニティマーケティング施策の効果をどのように可視化していくのか。
 
 鶴川氏はTwitterを例に語る。注目している点の一つ目は投稿数と投稿者数、そしてRT数だという。その中で、盛り上がっていない部分に着目することも重要だと話す。網羅的にみないと偏ったユーザー理解に繋がることも多いからだ。
 
二つ目に、投稿された内容の感情と、その感情の継続日数に注目しているという。
 

▲分析にはTwitterAPIなどを活用しているそうだ。
 
例えば、ネガティブ感情の例を挙げると、人気キャラのガチャ施策を行った場合は、「キャラを獲得できなくて悔しい」というネガティブな感情の投稿が増える傾向があるが、短期で収束することが多い。しかし、ゲーム内イベントやゲームシステム根幹への「面白くない」といった不満については長く続く傾向だ。このようにネガティブ感情の継続日数や内容によって、対処する方法や優先順位は変わってくる為、特に注視しているそうだ。
 
三つ目として、話題の内訳も確認するようにしている。どういった内容で盛り上がっているかによって、どのような施策が今のユーザーに受け入れられるかを日々観測していくことが大事だと話した。


 
施策ごとではどのように見ているのか。DeNAでは段階的に指標を設けており、まず重要視しているのはコミュニティに受け入れられたかどうか。受け入れられて初めてエンゲージメントや多くのユーザーによる発信に繋がるので、Twitterなどの反響を見て確認しているという。
 
次に、Twitterでの話題がいかにゲーム内に影響を与えたか、具体的にはゲームHAUに相関関係があるかを分析しているという。相関関係が見られた場合は上記図のPoint3にシフトし、ゲームへのアクセス数と他のKPI(ガチャ画面の表示回数や課金率など)との相関関係を分析し、LTVに貢献できたかどうかを判断しているそうだ。
 
加えて、数字だけでなくTwitterの意見などの定性情報も踏まえて分析を行っているそうだ。DeNAではTwitterがメインのコミュニティのタイトルが多いので、Twitterにコンテンツを提供して反響をみていくそうだ。その際は、ゲームアクセスへの導線の確保よりもユーザーの感情変化を大きくできる内容を意識しているという。
 
ここで、「ゲーム内の施策が良いからこそうまくいった」と考えることはないかという質問については、他の施策との比較や、HAUや分単位のアクティブユーザー数との相関など、複数の面で分析することで判断するようにしていると回答。この点については積み上げていくことで得られるノウハウが培われていくものと話した。
 
小泉氏は生放送や動画施策を重要視しているそうだ。可視化という点では、コミュニティ施策としてミラティブを活用しており、ミラティブのキャンペーン参加者のユーザーIDを取得し、ゲーム内のアクティビティと付き合わせて分析している。その結果、課金継続率・ARPPU共に増加を実現でき、新規インストールにもつながったと話す。
 
 
ただし、あくまで施策の目的はコミュニティへの参加者数や盛り上げにつなげることであり、課金効果などの数値は社内の賛同形成に役立てる程度で捉えているという。
 
他にも、生放送では視聴者数やコメント数、リアルイベント施策では参加者のリアクションなどを重視しているそうだ。定性的に効果を見ることも多いため、会社の上層部に現場に来てもらうことも担当者としては重要になってくるとも話した。
 
 

■継続して信頼関係を築いたからこそ実現できた施策

 
 
ここからは実際の施策事例について話された。小泉氏からは『ダンメモ』の事例を挙げ、生放送は三年間毎週生放送を行っていると語る。毎週最低でも2万回程度は再生されており、コミュニティに定着していると話す。
 
三年間欠かさず毎週配信してきたからこそのコミュニティ形成だったと小泉氏は振り返る。生放送にこだわっている理由としては、ユーザーが生放送を面白いコンテンツとして受け止めてくれる点と、ユーザー間の関わり活性化にも寄与していると実感しているからだそうだ。
 
そして何より、運営側が顔を出して情報を発信することで、情報の理解度向上や信頼関係の構築につながると話す。バグなどの不具合についても生放送でコアユーザーへの発信ができ信用に繋がっているそうだ。
 
 
鶴川氏からは7月2日に行われた『メギド72』の施策事例が語られた。これまでにもハッシュタグを提供し、ユーザーのコメントを募集する施策を行っていたが、今回は『メギド72』をプレイしていない人にも楽しんでもらうことを狙って「私にとっての7月2日」というテーマの施策を実施。
 
これによりコミュニティの外にいる人々にも参加してもらうことで作品を知ってもらえるようにしたそうだ。結果的には、プレイしていない人も参加してもらうことができ昨年以上の盛り上がりを醸成することができたと話す。
 
 

■まずは継続してコンテンツに触れてもらう機会を

 
ここまで両者の施策が話されたが、コミュニティマーケティングを行うにあたって低コストで取り組みやすい施策についても触れられた。
 
小泉氏はコミュニケーションがとれるチャネルを増やすことを挙げ、生放送の出演者がTwitterアカウントを開設し、些細なことでもコミュニケーションを取れるようにしていると話した。そして、ミラティブを活用して毎日配信を行っているそうだ。どちらも低コストで行えるので、コミュニティ施策において重要な、やり続けることや継続してコンテンツに触れる機会を作ることが、無理なく実現できていると話した。
 

▲ミラティブ内「まいにち配信」
 
 そして、新しい取り組みとしては、Fanbeatsによるファンクラブの開設を行なっているそうだ。最近ゲーム化が発表された「シドニアの騎士」では有料ファンクラブを発足し、参加人数はリリース前ながら1000人を超える規模となっている。この施策については、さらに濃いコミュニティ形成を目指した取り組みだと話した。
 

▲ファンコミュニティプラットフォームサービス「Fanbeats」
 
鶴川氏は、組織内のブランディングも大事だと話した。コミュニティマーケティングは効果を示すことが難しく時間もかかるものである。だからこそ、社内においても「ユーザーの声を一番理解している人だ」という自らのブランディングが大事だと説いた。社内にユーザーの声やコミュニティレポートを展開することで、開発チームからコンテンツ制作に関して相談される機会が増えていったと自身の経験を振り返っていた。
 
 
最後に設けられた質疑応答においても、ユーザー反響の分析方法やその基準についての質問が挙がっていたが、両者からは総じて、コミュニティマーケティングは時間もかかり、マーケティング予算との兼ね合いも必ず出てくるので、社内の理解や自身の熱量、そして何よりやる意義をしっかり考えることが重要という考えを述べ、セミナーは締めくくられた。
 
 
【次回セミナーのご案内】
なお、ミラティブでは、オンラインセミナー「ミラティブでのユーザー体験と施策事例」を、10月8日(木) 16:00~17:00に開催する。このセミナーでは、「なぜミラティブを使うユーザーはゲーム内のLTVが上がるのか」という点について、N1のユーザー体験から解説する。また、それをふまえた効果的な施策事例も学べる内容となっている。

 

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株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1367億3300万円、営業損益282億7000万円の赤字、税引前損益281億3000万円の赤字、最終損益286億8200万円の赤字(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る
株式会社WFS
https://www.wfs.games/

会社情報

会社名
株式会社WFS
設立
2014年2月
代表者
代表取締役社長 柳原 陽太
企業データを見る
ミラティブ

会社情報

会社名
ミラティブ
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