【ゲームアプリ調査隊】人気作を多数保有する「Yostar」の新作RPG『ブルーアーカイブ』、リリース前後を振り返る(提供:スパイスマート)


スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。同社のサービス「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」では、ゲームアプリの運用情報をいつでもウォッチできる「カレンダー」や、毎月発行しているレポートを提供している。

なかでもカレンダーは、セールスランキング上位のモバイルオンラインゲームのゲームシステム・運用施策をダッシュボード形式のWEBツールとして提供。ゲーム内プロモーション施策の効果測定やセールスランキングと運用効果の相関関係を時系列で分析できる。 
 

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本連載記事ではスパイスマート協力のもと、カレンダー機能を用いた、ランキング上位タイトルの直近のゲーム内施策を分析。今回はYostarの『ブルーアーカイブ』の施策をピックアップする。

   
(以下、Sp!cemartゲームアプリ調査隊より) 

 

【調査箇所】人気作を多数保有する「Yostar」の新作RPG


 
■『ブルーアーカイブ』
提供:Yostar(開発:NAT Games)
リリース日:2021年2月4日
【調査箇所:2021年2月3日〜3月4日】



『ブルーアーカイブ(以下、ブルアカ)』は、『リネージュⅡ』や『TERA』などを手掛けたNAT Gamesが開発、『アズールレーン』や『アークナイツ』『雀魂 -じゃんたま-』をリリースしたYostarが運営を担当している、完全新作RPG。
 
これまでYostarが手掛けてきた作品は、まず中国版をリリースし、のちに日本向けにローカライズされるという流れが多かったですが、本作は最初から日本向けに製作された作品です。しかし、Yostarの作品自体に一定数のファンが付いているためか、すでにTwitterやbillbillなどで本作のキャラやコンテンツに触れている海外のユーザーが確認できます。
 
本作のメインコンテンツは、基本的にオートで進行するバトル。挑戦中にプレイヤーができるのは必殺技の発動くらいですが、それによって戦況が大きく変わるのが特徴。さらに、周回がとても楽にできるため、ストレスなくプレイできるのもポイント。
 
 
リリース後は、早々にセールスランキングの上位に登場し、TOP30圏内をキープし続けました。さらに、AppStore・GooglePlay両方の人気無料ゲームアプリランキングで1位を獲得するなど、最初の流入は十分にあったと理解していいでしょう。
 
本作の舞台は、さまざまな種族が共存する学園都市「キヴォトス」。主人公=プレイヤーは先生となり、個性的な生徒たちと交流しながら、学園の各所で起こる問題を解決するために活動しはじめます。
 
重火器や兵器が日常的に登場する特殊な世界観ですが、シナリオの内容自体はかなりコミカルで明るめ。しかし、世界観やキャラのバックボーンはかなり深く作りこまれているようです。



メインのストーリー以外にも、サブストーリーなどでキャラと関われたり、パーソナルな部分に触れるシナリオが多数用意されていたりするため、プレイヤーが色々な場面でキャラに接することができるようになっています。
 
さて、本稿では ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「LIVEOPSISイベントカレンダー」を用いり、新作『ブルアカ』のリリース前後について、プロモーションやゲーム内施策を中心に深掘りしていきます。 まずは直近のプロモーション施策について整理してみましょう。 
 

【プロモ施策】発信ではキャラ設定や世界観も考慮

 
【リリース前のプロモーション施策(一部)】
■ 2020年7月17日 プロジェクトの発表、ティザーPVの公開、公式Twitterの開設
■ 同年7月17日~31日 クローズドβテストの応募受付開始
■ 同年8月6日~16日 クローズドβテスト開催
■ 同年9月30日 情報発信ブログ【アロナ通信】開設
■ 同年12月7日 リリース時期を2020年内から2021年初頭に変更
■ 同年12月26日 「エアコミケ2」にて公式グッズを販売
■ 2021年1月4日 事前登録を開始
■ 同年1月25日 リリース事前番組を配信
■ 同年2月4日 正式リリース

 
上記は『ブルアカ』におけるリリースまでの主な流れです(プレスリリースや公式Twitterの情報をもとに作成)。上記の施策以外にも、公式Twitterでゲーム情報を公開したり、キャンペーン状況を投稿したりと、さまざまなアクションが間接的に同作のプロモーションに寄与していました。
 
なかでもTwitterでの動きが活発で、TIPSの掲載や有名イラストレーターによるお祝いイラストの投稿、公式4コマの連載など、その活動は多岐にわたりました。また、新しいキャラを発表すると同時に、担当声優のサイン入り色紙のプレゼントキャンペーンを開催。この活動は、リリース前から現在に至るまで、非常に高い頻度で行われています。
 
公式サイトでの情報発信やTwitterの文面に関しては、本作に登場するナビゲーターキャラ「アロナ」の口調風になっているのが特徴的。
 

▲アロナ通信では、βテストの情報や修正点などを、登場キャラとの対談形式で発信しています。
 
WEB以外での広告活動にも積極的で、リリースに合わせて山手線を中心に、大規模な交通広告を展開していました。一駅ごとにイラストの異なる看板やデジタルサイネージ、池袋駅「京王線アドストリート」に全32枚のイラストパネルを掲載。
 
リリース後は、上記の施策に加え、多数のVTuberなどにプレイ配信を案件として依頼。主にいちから株式会社が運営する「にじさんじ」所属のライバーや、漫画家・佃煮のりおがプロデュースする事務所「のりプロ」の犬山たまき氏、イラストレーターとしても有名なしぐれうい氏・伊東ライフ氏、個人として活動している天開司氏など。
 
選出理由は、おそらくYostarが運営する『雀魂 -じゃんたま-』の大会などで、以前から繋がりのあった事務所、人物であることがうかがえます。配信はリスナーにかなり好評で、同時接続数や視聴回数が伸びています。
 
また、前述したお祝いイラストなどでキャラを前面に出していたことで、Twitterやpixivなどでファンアートが多数投稿されていました。これによって、知名度がさらに上がったといえます。
 

【ゲーム内施策】リリース施策はピックアップガチャ

 
ここからはリリース直後の施策について言及していきます。本作では、キャラクターを育成してストーリーを進めていく、一般的なスマホ向けRPGのそれです。基本的にユーザーは、ストーリー進行を目的に、大多数の時間を育成に励んでいくことになります。
 
本作のマネタイズは、有償アイテムの青輝石の販売です。青輝石は主にガチャなどで使用します。青輝石のラインナップは以下の通り。
 
【青輝石のラインナップ】
・青輝石 有償48個(120円)<単価:2.50円/割引率:0.0%>
・青輝石 有償196個+無償4個(490円)<単価:2.45円/割引率:2.0%>
・青輝石 有償392個+無償28個(980円)<単価:約2.33円/割引率:6.8%>
・青輝石 有償592個+無償68個(1,480円)<単価:約2.25円/割引率:10.0%>
・青輝石 有償1176個+無償174個(2,940円)<単価:約2.18円/割引率:12.8%>
・青輝石 有償1960個+無償340個(4,900円)<単価:約2.13円/割引率:14.8%>
・青輝石 有償4000個+無償800個(10,000円)<単価:約2.08円/割引率:16.8%>

 
マネタイズの根幹となるガチャでは、バトルに参戦するキャラ(生徒)のみが排出されます。ガチャには、常設と期間限定のキャラピックアップガチャの2種類があり、前者には天井が存在します。
 
どちらかのガチャを1回回すごとに、「呼び出しポイント」が1点ずつ加算されていき、300点まで溜めるとピックアップ対象のキャラを呼び出せます。なお、天井に到達するには、約74,880円かかります(有償アイテムを最低単価で計算した場合)。
 
すでに所持しているキャラをガチャで獲得した場合は、自動的に神名のカケラに変換されます。これを、ショップにて各キャラの神名文字と交換可能(神名のカケラの変換個数はそれぞれ★3→50個、★2→10個、★1→1個)。
 
排出されるレアリティは、★1(排出率79%)→★2(排出率18.5%)→★3(排出率2.5%)の順番。一方でガチャの金額感は、1回で青輝石120個(300円相当)、★2以上が1人確定する10連は青輝石1200個(3,000円相当)です。
 
【リリース直後における主なゲーム内施策】
■ リリース記念ピックアップ募集 ほか

 
【調査箇所:2021年2月3日〜3月4日】(※再掲)

 
■2021年2月4日~2月11日
 リリース記念ピックアップ募集

 
恒常のログインボーナスやミッションなどは展開していますが、リリース記念と称した期間限定の施策は、そこまでの数はありませんでした。リリース直後の期間限定施策は、ピックアップ募集「拝啓、はじまりの季節へ」。特段、変わった特徴のあるガチャというわけではなく、純粋に人気キャラクターのピックアップガチャとなっています。
 

▲ランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「LIVEOPSISイベントカレンダー」を用いたところ、リリース日の2月4日の施策にはオレンジのガチャだけがあります。あとは、お知らせやメンテナンスのお詫びが並んでいます。
 
期間限定というわけではありませんが、購入制限付きのお得な青輝石の販売がありました。リリース日にセールスランキングが急上昇したことを考えると、おそらく多くのユーザーが下記の(お得な)青輝石を購入して、前述したピックアップガチャに利用したことがうかがえます。
 
【青輝石(購入制限あり)のラインナップ】
※購入制限回数1回
・青輝石 有償48個+無償30個(120円)
・青輝石 有償196個+無償124個(490円)
・青輝石 有償392個+無償253個(980円)
・青輝石 有償592個+無償383個(1,480円)
・青輝石 有償1176個+無償759個(2,940円)
・青輝石 有償1960個+無償1265個(4,900円)
 
※購入制限回数3回
・青輝石 有償4000個+無償2600個(10,000円)
 
 
本作の魅力としては、周回プレイがしやすいうえに、しっかりやり応えのあるプレイシーンが挙げられます。短時間で周回作業を終わらせられるため、ゲームに時間を割けないというようなユーザーでも、長期的に遊びやすくなっています。
 
とはいえ、オートプレイだけ行ってもクリアできないよう設計されており、逆にキャラの組み合わせやEXスキルのタイミングを工夫すれば、推奨レベルの高いステージでもクリアできます。この遊びやすさと奥深さのバランスが絶妙に良いというのが、本作が評価されている要因のひとつでしょう。
 
そのほか、キャラクターの魅力を最大限ユーザーに訴求できたことも大きなメリットになったのではないかと考えます。公式にてツイートされている応援イラストを皮切りに、公式4コマや、絵師によるファンアートが多く投稿されているため、ゲーム以外の部分でもキャラに触れられる機会が多い。ここから、本作をプレイし始めたというユーザーも一定数いたのではないでしょうか。
 
また、絆ストーリーやサブストーリーによって、メインに関わらないキャラの掘り下げができているのも良いポイント。ぱっと見で好きになったキャラのストーリーがどこにもなければ、ユーザーは離れてしまう。それらをストーリーを小出しにすることで解決したのは得策でした。リリース当初はバグやサーバー攻撃の影響もあり、ストアレビューのユーザー評価があまり芳しくありませんでしたが、実際にプレイしてみると、その評価以上の内容に仕上がっていると感じました。
 
「LIVEOPSIS イベントカレンダー」では、各ゲームのイベント情報をランキング推移と共に閲覧できます。自社はもとより、競合他社の施策一覧を取りまとめた分析などにもご活用できます。ぜひ、ご興味がある方はお問い合わせページからご連絡ください。
 

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■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「LIVEOPSIS(ライブオプシス)」というサービス名称で各種ソリューションを提供。

コーポレートサイト:http://corp.spicemart.jp/
Sp!cemart 商品に関する問合せ:info@spicemart.jp
 

■Sp!cemartゲームアプリ調査隊 バックナンバー

Vol.1 〜待望のシリーズ最新作『マリオカート ツアー』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜

Vol.2 〜新作リズムゲーム『欅坂46・日向坂46 UNI'S ON AIR』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜

Vol.3 〜初週で全世界1億DLを記録した『Call of Duty®: Mobile』、リリースから直近1ヵ月の運営施策を探る〜

Vol.4 〜Riot Games大特集。新作『Team Fight Tactics』の概要から『LoL』の直近プロモ・e-Sports施策まで〜

Vol.5 流入から定着まで繋げた7つの施策…大ヒット中の『FFBE 幻影戦争』、事前登録からリリース直後の施策を総まとめ

Vol.6 事前プロモ(ほぼ)なし…突如配信された『ワールドフリッパー』ヒットの背景。リリース前後の施策を分析

Vol.7 運営7周年を迎えた長期運営タイトル『にゃんこ大戦争』…長く愛される理由をゲーム“内外”の施策から分析

Vol.8 好調なリスタートを切った『魔界戦記ディスガイアRPG』、リリース中断から再開までの8ヵ月間の動向を分析

Vol.9 大ヒット中の『デュエル・マスターズ プレイス』、売上ランキング2位の背景をIP×マネタイズの観点から分析

Vol.10 スマホ向けパズルゲームのトップを走る『ガーデンスケイプ』の施策とシリーズの強みを分析

Vol.11 海外発のストラテジーゲーム『Rise of Kingdoms -万国覚醒-』がヒットの兆し。リリース前後の施策を分析

Vol.12 ヒットを生み出し続けるYostar待望の新作『アークナイツ』を分析。リリース前施策からマネタイズまで

Vol.13 売上ランキングTOP10入りの『メダロットS』を分析。既存ファンに向けた「メダロット」ならではの露出も

Vol.14 ゲームはスローライフだが運営施策は挑戦的…『どうぶつの森 ポケットキャンプ』これまでの歩み

Vol.15 目指したのは「リアルなミニ四駆体験の追求」…『ミニ四駆 超速グランプリ』ヒットの背景を分析

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Vol.39 歴代キャラの支えと、新規性に富んだオリジナル要素のチャレンジ。『テイルズ オブ クレストリア』のリリース前後を分析

Vol.40 セルラン1位を獲得した『アークナイツ』。該当期間にフォーカスして徹底分析

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Vol.43 5周年を迎えた『アイドリッシュセブン』。休眠ユーザーに訴求したSSR7人確定の「無料77連ガチャ」が話題

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Vol.49 『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』ヒットの背景と今後に期待できる3つの理由

Vol.50 全世界2500万人が体験した聖闘士たちの躍動。海外開発の『聖闘士星矢 ライジングコスモ』が日本でヒットした背景

Vol.51 中国bilibiliの新作『ファイナルギア』がスマッシュヒットを記録中。その勢いをゲーム内外から分析

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Vol.54 『原神』ヒットの軌跡。 リリース前後の施策から読み解く

Vol.55 『モンスターストライク』7周年施策を分析。長期運営タイトルとして仕掛けたゲーム内外施策を探る

Vol.56  1周年を迎えた『FFBE幻影戦争』。「FFX」コラボや有償1幻導石ショップなど気になる施策をピックアップ

Vol.57  ランキング急上昇中の『にゃんこ大戦争』。日本にエールを送る、 明るく楽しい8周年施策を調査

Vol.58 戦略性に富むバトルが話題の『イリュージョンコネクト』、リリース前後の施策を分析

Vol.59 『ジャンプチ ヒーローズ』、「鬼滅の刃」コラボで急浮上。劇場版が未曾有の大ヒットを見せるなかどのような施策を打ち出したのか

Vol.60 『ロマサガRS』2周年施策を振り返る。ファンに向けたTVCMや豪華なゲーム内施策など

Vol.61 『ファイナルギア』×「エヴァ」コラボを分析。親和性抜群の施策は年末年始で無料DL・セルラン共に急浮上

Vol.62  『リゼロス』の年末年始。TVアニメ2期後半が絶賛放送中のIPタイトルが仕掛けるゲーム内外施策

Vol.63 リリースから3ヵ月の『オクトパストラベラー 大陸の覇者』、施策もコンテンツも充実した年始を分析

Vol.64 リリース1ヵ月後も安定した推移を見せる新作『アサルトリリィ Last Bullet』、リリース前後を振り返る
 

会社情報

会社名
Yostar
設立
2017年1月
代表者
代表取締役社長 李 衡達
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