【セミナー】『モンスト』のサウンドプロデュースに迫る。独自の世界観とキャラクターをいかに表現できるかが焦点


1月27日、『モンスターストライク』(以下、モンスト)を運営するミクシィ主催のオンラインセミナーTHE METHOD#7-2『モンストの世界を作り出すためのサウンドプロデュースって?〜モンストのサウンド大公開スペシャル〜』が行われた。

本セミナーは、プロダクトにおいて実践されている「ものづくりの方法論」の発信・共有を目的としている。今回のテーマとして扱われたのは、『モンスト』でのサウンドの制作進行について。

セミナーでは『モンスト』のサウンドプロデュースチームのリーダーを務める生亀貴之氏が出演し、サウンドデザインに関する説明が行われた。本稿では、セミナーの内容についてレポートをお届けしていく。なお、前回のセミナーではサウンドデザインに関して語られているので、下記の関連記事も併せてご覧いただきたい。

▼関連記事
【セミナー】『モンスト』チームのサウンドデザインのこだわりとは…BGM・SE・ボイスにおける細かな「音量調整」がゲームへの没入感を決定づける

【登壇者紹介】生亀 貴之(いきがめ たかゆき)
フリーのコンポーザーを経て2018年ミクシィにジョイン。モンスト事業本部 コンテンツクリエイション室 サウンドグループに所属し、現在はサウンドプロデュースチームのリーダーとして従事している。主にモンスターストライクのBGMやPVのサウンド制作、オーケストラやモンソニ!プロジェクトのサウンドディレクションなどに携わる。



キャラクターにフォーカスを当てたサウンドづくり

BGMやSE、ボイスデータをはじめ、歌唱楽曲やオーケストラ、ライブなど多くの楽曲を扱う『モンスト』。作品内で扱っているサウンドの種類の多さ、ジャンルの広さから、現在は「桑原理一郎氏」「サウンドデザインチーム」「サウンドプロデュースチーム」の3つのラインに分けられているという。

「桑原理一郎氏」のラインでは作曲家・桑原氏をメインにBGM制作やボイスの収録が進行、「サウンドデザインチーム」 のラインではSEやBGM・ボイスデータの制作が行われる。生亀氏が率いる「サウンドプロデュースチーム」では、キャラクターに紐付いたBGM制作や歌唱楽曲といった、キャラにフォーカスしたサウンドを作ることが多いそうだ。

サウンドプロデュースチームはその他にも、『モンスト』のスピンオフプロジェクト「モンソニ!」の歌唱楽曲制作、限定キャラの初登場PVや獣神化PVなどPVのサウンド制作、オーケストラやモンソニライブの制作も行っていると生亀氏は紹介した。



続いて、サウンドを制作するプロセスについて、実際に制作したサウンドを例に挙げ説明。BGMを制作していくうえでは、曲の長さやループさせる必要があるかなど、ゲームの仕様を事前に把握しておくことが重要なポイントだという。

ゲームの仕様について理解したうえで、舞台背景やキャラクターの設定に関する情報をもとに、ジャンルや使用する楽器を決定。例えば、イラストに和と洋を合わせたような雰囲気があれば、和風の曲調に西洋音楽の要素を取り入れるといった調整を行っているとのこと。音楽的なイメージを分かりやすく言語化していく作業を重ねて、曲の原型を形にしていくそうだ。




「超究極フェルシア編」に使用されるBGMでは、悲壮感がありつつも綺麗なメロディと、研究室を彷彿させるインダストリアルなパーカッションをイメージ。クリエイターの深川翔太氏のデモ音源に元に、よりキャラクターに沿ったメロディーやコード進行などのアイディアを組み合わせて楽曲のブラッシュアップが行われていたとのこと。



一方、「モンソニ!」楽曲の「式日ノカロル」では、全体を通して重低音を効かせたラウド系の音作りにすることで、骸のダークな印象を表現。楽曲冒頭では妖艶なボーカルとギターを響かせることで、ビジュアル系らしさを演出したと説明した。

●参考動画
【新作ミュージックビデオ】骸「式日ノカロル」(MV)【モンソニ!|モンストアニメTV】




最後に生亀氏は「サウンドをプロデュースすることにより、世界観やキャラクターの魅力を補強することができます。皆さんも気に入ったクエストやキャラクターのBGMについて、ぜひ音を出してプレイして頂けると嬉しいです」と話し、講演の締めとした。

『モンスト』のBGMについて、キャラクターや世界観など様々な視点から制作されていたことが分かった本セミナー。本作をプレイする際にはサウンドをオンにして、楽曲の構成やコンセプトについて思いを馳せてみてはいかがだろうか。

●質疑応答
セミナー後半では、生亀氏が視聴者からの質疑応答に対応する時間が設けられており、視聴者から数多くの質問が寄せられた。以下では、質疑応答の模様についてお伝えする。

──:スマホゲームは移動中にプレイするユーザーも多く、マナーモードにしている方も多いと思います。サウンドプロデュースチームのリーダーという立場から、そういった音を出さない遊び方に対してどのような印象をお持ちですか?

生亀 貴之氏(以下、生亀氏):ゲームにとってサウンドは標準搭載されているべき存在であり、ユーザーの都合でオン・オフを選べる環境が大事だと思っています。スマホの設定によりBGMのオン・オフが選べるというのは、便利な時代だとポジティブに捉えています。

また、サウンドをオフにできるゲームと、全く音が鳴らないゲームというのは別物だと思っていて。普段音を出さないでプレイしているユーザーの方でも『モンスト』の代表的なSEやBGMが流れると、モンストの音だと認識ができますよね。サウンドはゲームの世界観に対して、しっかりと役割を果たせていると思っています。

──:ディレクションの際にプロデューサーとクリエイターとで制作物のイメージが乖離していた場合、どのような解決策を取りますか。

生亀氏:『モンスト』では事前の打ち合わせをしっかりと行っているため両者間でイメージが乖離するということはほぼありませんが、制作に着手する前に、プロデューサーとクリエイター両者の意見をできる限り交換しておくことが重要だと思います。制作の過程でさらに要素を足したり、調整したりしていくのがより良い作り方になるかと。

──:サウンドディレクターになるためには、どのようなスキルが必要になるのでしょうか。

生亀氏:ディレクターは作曲スキルよりも、曲についてのイメージを言語化していくスキルが重要です。極論を言うと、作曲ができなくてもサウンドディレクターにはなれると思いますが、曲のイメージを言語化するための音楽制作に関する知見は必要になってくると思います。

──:仕事に携わる上で意識していることはありますか?

生亀氏:TVを視聴していて曲のコード進行など耳慣れない音がBGMで流れていると、メモを取るようにしています。また、テーマパークやアトラクションを体験する際には、使用されている音楽をチェックするようにしています。

──:これまで制作してきたBGMにおいて、一番苦労した楽曲は何でしょう。また制作での達成感はどういったところにありますか。

生亀氏:『モンスト』の場合はキャラクター設定が詳細でイメージが湧きやすく、BGMに関してはそれほど苦労しないかもしれません。BGMに対してユーザーの皆様からポジティブな反応を頂けたとき、達成感がありますね。

──:ありがとうございました。

株式会社MIXI
https://mixi.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社MIXI
設立
1997年11月
代表者
代表取締役社長 木村 弘毅
決算期
3月
直近業績
売上高1468億6700万円、営業利益248億2000万円、経常利益182億5000万円、最終利益51億6100万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2121
企業データを見る