1月13日、『モンスターストライク』(以下、モンスト)を運営するミクシィ主催のオンラインセミナーTHE METHOD#7『~ユーザーをモンストの世界へ誘うための【サウンドデザイン】とは~』が行われた。
本セミナーは、プロダクトにおいて実践されている「ものづくりの方法論」の発信・共有を目的としている。今回のテーマとして扱われたのは、『モンスト』でのサウンドデザイン について。
『モンスト』のBGM、SEなどの制作やディレクションやサウンド監修業務に携わる戸田章世氏が出演し、サウンドデザインに関する説明が行われた。本稿では、セミナーの内容についてレポートをお届けしていく。
【登壇者紹介】戸田 章世(とだ あきよ)
各種コンテンツサウンド開発や、事務所所属作家として歌唱楽曲の作編曲などの経験を経て、2018年ミクシィに中途にてジョイン。モンスターストライクのBGM、SEなどの制作やディレクション、各種実装データ準備や、サウンド監修業務に携わる。 現在はモンスト事業本部 コンテンツクリエイション室 サウンドグループ サウンドデザインチームのチームリーダーとして従事。
ユーザーをモンストの世界へ誘うためのサウンドデザイン
『モンスト』のサウンドグループについて、戸田氏はまず「サウンドデザインチーム」と「サウンドプロデュースチーム」の2つに分かれていると説明。
サウンドデザインチームに所属する戸田氏は、主にゲーム内のサウンドデータの制作や、そのデータに紐づくゲーム外コンテンツのサウンド準備や監修を担当しているという。
サウンドデザインについて戸田氏は、「映画やゲーム、アトラクションなど様々な分野での解釈がある」としつつ、『モンスト』のサウンドデザインチーム内では「体験デザインの 一環」と定義しているそうだ。
ゲームデザインや世界観設定にサウンドが連携しながらも、ゲームユーザーの驚きを一番の軸とする「ユーザーサプライズファースト」を重視していると続けた。
続いてサウンドデザインの制作について、『モンスト』のSEを例に挙げての説明が行われた。本作では、敵に攻撃が当たった際に様々な効果音が鳴る仕組みとなっている。戸田氏によると、同じSEにも関わらず、音量やピッチなどの組み合わせにより、ゲームテンポや爽快感の違いが感じられるような効果音づくりが可能になっているという。
実際の現場では、風切音や打撃音など、様々なSEを複雑に組み合わせながら制作していくパターンが多いそうだ。SEとSEとの間をあえて無音にして緊張感を持たせるなど、
数秒の時間内に組み合わせていくことも、サウンドデザイナーの腕の見せ所となっているとのこと。
▲音を3つ繋げて1つの演出としてみた時に、最後がピークになってフィニッシュ感があって分かりやすい。
▲2番目が大きくてピークになっているが、演出として分かりにくい。しかし、演出内容としてこのような構成が求められる場合もある。
また、BGMを実装する際には「どんな音量で聴かせるか」を考えることも、サウンドデザインを行う上で重要な要素だと続ける。例えば、ドラマや映画ではクライマックスに向かうに連れて音量が大きくなるなど盛り上がりがコントロールされているため、BGMの音量がストーリーの邪魔になっていない。
『モンスト』のクエストのBGM・SEでも同様に、道中・ボス・クライマックスの順に音量が大きくなっていくよう調整が行われていると、戸田氏は説明する。ボイスの場合は、どんなシチュエーションで再生されるかを考慮しつつ、音量や質感の調整が行われているそうだ。
サウンドデザイナーとしての仕事は、YouTubeで公開中のモンストニュースや生配信動画の制作にも及んでいるという。
実際に戸田氏は、動画の収録音声でのノイズの調整や、正しいSE素材が使用できるよう手配、配信の監修にも携わっていると紹介。コロナ禍によりオフラインイベントの開催を自粛していることもあり、モンストニュースを始めとしたYouTube動画のサウンド周りには特に聴きやすさに留意しているとのことだ。
戸田氏は最後に、「これからも皆さんの期待を超えるサプライズを届けられるように、サウンドデザインを頑張っていきます。皆さん応援のほど、宜しくお願い致します」と話し、セッションの締めとした。
ゲームユーザーの驚きを何より優先する「ユーザーサプライズファースト」の精神で制作が行われているという『モンスト』のサウンドデザイン。SEの音の繋がりや組み合わせ、BGMの強弱について意識を向けることで、より没入感に浸れるプレイが楽しめることになりそうだ。
●質疑応答
セミナー後半では、戸田氏が視聴者からの質疑応答に対応する時間が設けられており、視聴者から数多くの質問が寄せられた。以下では、質疑応答の模様についてお伝えする。
──:サウンドを制作する上で、普段から意識していること、気を付けていることは何でしょうか?
戸田:ゲームコンテンツや3Dコンテンツなど、色んな媒体に意識的に触れるようにしています。サウンドデザインを勉強するうえで意外と役立つのは、映画のトレーラー映像なんですね。映像はもちろんのこと、BGMやSE、ボイスなどのサウンドデザインは、すごく参考になります。実際の映画を鑑賞する際には、サウンド面に注意して聴くようにしていますね。
──:サウンドデザイナーになるには専門学校、もしくは音楽学校で学ぶのが一般的でしょうか。全く別な分野からでも、独学でサウンドデザイナーになることは可能ですか?
戸田:専門学校や音楽大学で身につける知識は、確かに大事かもしれません。しかし、サウンドデザインに関しては効果音や演出を作っていくことを重視しますので、座学よりも自身が感じたままに制作することが大事になってきます。
私自身、東京藝術大学を中退していますので、専門学校や音楽学校を卒業していなくても、サウンドデザインナーになれるということは、私が証明しています。現在は映像をスマートフォンでキャプチャしてPCに取り込み、サウンドを付けるといったことがソフトウェアで可能で、そういったソフトを活用することが、一番の勉強になると思っています。
──:仕事をしていていくうえでのこだわりや、やりがいについて教えてください。
戸田:サウンドのどの部分にピークやメリハリをつけるのかが、こだわっている部分です。そうして制作したサウンドや演出について、ユーザーさんからSNSで「カッコ良い」などコメントを頂けることが、やりがいが感じられる瞬間ですね。
──:サウンドデザインの仕事は、リモートワークで行われているのでしょうか?
戸田:現在はそうですね。サウンド制作は集中して行う必要があるため、リモートワークが向いているように感じています。ただし、企画の話をする場合にはリモートだと、時間が余計にかかってしまうこともあるので、対面でのコミュニケーションですり合わせることが多いです。
──:仕事でつまづいてしまった時などには、どのようにしてモチベーションを上げていますでしょうか?
戸田:つまづいてしまった時には、失敗がなぜ起きてしまったのかをよく考えて原因を追求し、対策を立てることが重要です。失敗からは学べることは多いので、落ち込み過ぎず、失敗を糧にするつもりで頑張るのが良いと思います。
会社情報
- 会社名
- 株式会社MIXI
- 設立
- 1997年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 木村 弘毅
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1468億6800万円、営業利益:191億7700万円、経常利益156億6900万円、最終利益70億8200万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 2121