第4回:最初にして最大の関門「CPIテスト」のやり方と心構え
ハイパーカジュアルゲームを中心に、開発やパブリッシングをしている「タツマキゲームズ株式会社」代表の畑佐(はたさ)と申します。久しぶりの東京ゲームショウのリアル開催で業界は盛り上がっていましたね!私も2日続けて幕張へ行き、週末は泥のように眠りこけていました。さて、第4回目はハイカジ開発における鬼門「CPIテスト」について記載していきます。
大切な心構え
大前提としてハイパーカジュアルゲームのCPIテストは、通過しないことのほうが圧倒的に多いです。もちろん、企画を考えているときやプロトタイプをつくっているときは少なくとも「イケる!」と思いながらつくっているので、テストを通過しないとそのたびにヘコむことになります。これが半年、1年と続くとやっぱりどうしてもだんだんネガティブなループに入ってしまうのですが、それを少しでも軽減させ、健全な精神を保つために大事な心構えがあります。それは「テスト結果を単発で捉えない」ということです。
CPIテストをしていると「あーだめだった。次はコレ。またダメだった〜じゃあ次は…」と、どうしても各企画それぞれの結果を、離散的に見てしまいがちですが、こうするとそれらのプロトタイプは「単なる失敗作」に成り果ててしまいます。そうではなく、テストを通過しなかったプロトタイプはあくまでもそのテストを通して分かった結果の一つとして考えることで、それらは失敗作ではなく成功タイトルに至るまでの「通過点」にすることができます。
それはつまり「実験」に近いようなものであり、それぞれのテスト結果を「蓄積」していくことでもあります。「今回はこのモチーフ、このメカニクスでCPIがこのくらいだったから、次はモチーフそのままでメカニクスだけ変えたらどうなるかな?」とか「これまでテストしてきた内容とCPIを一覧で並べてみると、比較的このジャンルがCPI安いからもっとココを攻めてみよう」とか、そんなイメージです。
これまで歩んできたテストの道のりをしっかりと記しておき、振り返ればいつでもその痕跡をみることができ、そしてその先の道標を調整できるようにしておくことが、テストをする上で大事な心構えだと考えています。必ず、CPIテストの結果は一覧にして見られるようにしておきましょう!
▲過去のテストデータは必ず蓄積しよう。
CPIテストの基本設定
テストの設定は各パブリッシャーごとに微妙に異なる箇所があるかもしれませんが、タツマキゲームズでは以下のような設定で行なっています。明確な理由は無いのですが、各社の設定方法を聞いたり海外サイトなどで集めた情報を参考にして構築したものになっています。
媒体 | Facebook広告 |
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配信国 | アメリカ |
OS | Android |
ターゲット | 全年齢、男女 |
広告動画の数 | 4本〜10本 |
日予算 | $50〜$110(動画数で変更) |
期間 | 4日間(96時間) |
CPI目標 | $0.5未満 |
経験上、日予算や期間を多少変更したところでテスト結果が大きく変わることはまず無いので、大体このくらいの設定内容になっていれば信頼できるテスト結果が得られるかと思います。
広告動画の仕様
CPIテストでもっとも重要になる広告動画についてですが、具体的なケーススタディやテクニックについては次回の記事で詳しく書きたいと思います。ここでは制作する動画のスペックだけをさらっとお伝えしておきます。
解像度 | 1080 x 1350(4:5) |
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秒数 | 15秒〜30秒 |
サウンド | 無し |
ポイントは、サウンドの有無です。特にCPIテストのときには、サウンドを動画に入れていません。そもそもスマートフォンで動画広告を見る人のほとんどがミュートになっているそうです。これは、ご自身の経験上もなんとなく感覚として理解できるのではないでしょうか。
また、これまで私が試してきたデータ上もサウンド(特にBGM)の有り無しではほとんど結果が変わりませんでした。これは前回の記事でも記載しましたが、サウンドを探す労力や動画編集ソフトで付けていく作業量の積み重ねと比べると費用対効果が悪いため、CPIテストの際にはサウンドなしを基本としています。逆に結果が悪かったときにサウンドを疑うのも無駄ですし、サウンドなしでもいいパフォーマンスが出るゲームのほうが、地力が強いですからね!
▲テストを何度も繰り返すことは、大量の動画をつくるということ。
迷ったらテスト!でもお金もかかる…
ハイパーカジュアルにおいて鉄則なのは「迷ったらテストをする」ということです。
もちろんつくっている人自身の感性や主観は大切な判断材料ではありますが、一方で、ハイカジプレイヤーたちの感覚とは大きくズレているということも少なく有りません。あまりに小さな変更点(例えば移動速度を少し変えたり自キャラのサイズを微調整したり)まで全てテストする必要はありませんが、カメラの視点・背景のアセットといった見た目に大きく関わる部分は、迷ったらその選択肢の分だけ動画を作ってテストをし、CPIで「どれがベストか」を判断するのが推奨です。
動画バリエーションの分け方についてはまた次回の記事で詳しくお伝えしますが「迷ったらテスト」というのを今は胸に刻んでおいてください!
ただし、すでに勘の良い読者の皆様ならおわかりかと思いますが、先ほど記載した基本設定でテストをすると少なくとも一度のテストで$200ほどの費用がかかることになります。今のレートで日本円にすると1回あたり大体3万円弱くらいって感じですね…円安怖い。
そして前回の記事に記載しましたが、ヒットするタイトルが生まれてくるのは良くても20本に1本程度。つまりテストも最低20回と考えると60万円ほどの出費がかさむ可能性があります。さらに同じプロトタイプで色々なパターンを試すことでその金額はどんどん増えていきます。
ハイカジにおいて「迷ったらテスト」することはとても大切であり、費用面がネックになって「本当はテストしたいけど今回はやめとくか…」となってしまうのは非常に勿体ないことです。特に個人の開発者の方は、心置きなくテストを行うためにもパブリッシャーと組んでつくっていくことをオススメします。逆に、資金面の心配が少なく、新規事業としてスケールを狙うイチ企業がチャレンジする場合は、自分たちでパブリッシングまで行なうことをオススメしています。当たったときのリターンは、その方が圧倒的に大きいですからね!
設定を疑うな、ゲームをつくれ
最後に1つお伝えしたいことがあります。「設定を疑うな、ゲームをつくれ」。記事を書きながら思いついた言葉です。特に自信のあったプロトタイプでCPIテストの結果が良くないと「なにか設定が間違ってるんじゃないのか」とか「アメリカじゃなくて別の国にしたほうがウケるはずだ!」と設定を疑いがちになってしまいますが、そんなことはありません。少なくとも上記に記載した設定で目標のCPIが出ていなければ、全世界でスケールするハイカジをつくりあげるのは難しいです。良くない結果が得られたなら、それをきちんと糧にして次のゲームをつくりましょう!
今回のまとめ
さて今回はCPIテストについて少し踏み込んだ内容でお伝えしてきました。断言しますが、ハイカジの開発においてこのCPIテストが最も、一番、最大級に!…難しくて、高いハードルです。実際にやってみると平気で$2とか$3とか、目標値の数倍のCPIが出ちゃったりします。「いやいや$0.4台とか出るわけ無いやん」って絶対に感じると思います。
ですが、ほぼすべてのハイカジ開発者がそのスタートラインから始まっています。テストは一発で通るわけが有りません。失敗ではなく通過点と考えて、成功までの道のりをつくっていきましょう!
メールやDMはお気軽に!
タツマキゲームズではハイパーカジュアルのあらゆるご相談をお受けしております! ハイカジに興味を持ったり始めてみようかなという人を増やしたいと思っていますので、まずはお気軽にメールやTwitterでご連絡ください。この連載で書いてほしい内容なども大歓迎です。ホントに何でも聞いてください、包み隠さずお伝えします(笑)
メール:info@tatsumaki.games
Twitter:ハタサ@タツマキゲームズ(@noots_87)
次回予告
次回は「動画広告の作り方と、気をつけるべきポイント」というテーマで掲載予定です。お楽しみに!
・ハイカジ道 特別連載「全米一位への道」バックナンバーは ⇒ こちら
会社情報
- 会社名
- タツマキゲームズ株式会社