【決算レポート】トーセ、2月中間は営業益78%増 家庭用ゲーム開発は高稼働 大型案件の複数引き合いでリソース割当に苦慮、まさに嬉しい悲鳴か

トーセ<4728>の2023年8月期 2月中間期の連結決算は、売上高30億3700万円(前年同期比15.1%増)、営業利益2億5800万円(同78.0%増)、経常利益2億7400万円(同107.4%増)、最終利益2億0100万円(同204.2%増)と大幅増益だった。主力のゲームソフトの開発依頼が旺盛なことに加え、プロジェクトマネジメントの強化が奏功し、トラブルによる追加コスト発生がなく、売上、利益ともに大きく伸びた。

・売上高:30億3700万円(同15.1%増)
・営業利益:2億5800万円(同78.0%増)
・経常利益:2億7400万円(同107.4%増)
・最終利益:2億0100万円(同204.2%増)

 今回の記事では、前回の第1四半期決算を振り返りつつ、中間決算の状況を見ていきたい。構成は以下の通り。

 

【目次】
会社概要と第1四半期の振り返り
中間決算は引き続きゲームソフト事業が拡大
人材獲得競争の激化を受けて人的投資を強化
2023年8月期の業績見通し

 

■会社概要と第1四半期の振り返り

トーセは、1979年11月に創業した会社で、家庭用ゲームソフトの受託開発の老舗ともいえる企業だ。「受託開発」とは、最近ではクライアントワークともいうが、顧客のゲームソフトパブリッシャーから委託を受けてゲームソフトの開発を行い、対価を受け取ることで収益を上げていくビジネスだ。

日本国内には多くの受託開発のゲーム会社があるが、創業以来、数々の人気ゲームソフトの開発に携わってきた実績と歴史、そして技術やノウハウの蓄積がある。近年では、家庭用ゲームソフトの企画・開発だけでなく、スマートフォンゲームの企画・開発、運営業務なども行っている。

ちなみに、上場企業としての受託開発の会社は、情報開示という点からは難しいところがある。市場関係者に業績や見通しを説明する際、売上に関連する顧客情報を勝手に開示するわけにはいかないからだ。案件1つ1つの影響も大きく、1つ失注しただけで業績予想にも大きな影響を与える。

記者個人としても2000年代に受託開発の会社が複数上場した際、情報開示を巡ってアナリストと険悪な雰囲気になった説明会に遭遇したことがある。

余談はさておき、今回発表の決算を見ていく前に、第1四半期の状況から振り返っていこう。今年1月に発表された第1四半期決算は、売上高16億5400万円(前年同期比20.7%増)、営業利益1億8400万円(同53.2%増)と大幅増益で着地した。

・売上高:16億5400万円(同20.7%増)
・営業利益:1億8400万円(同53.2%増)
・経常利益:1億8000万円(同38.6%増)
・最終利益:1億1300万円(同43.8%増)

同社では、家庭用ゲームソフトについて複数の開発案件が進行したとしている。ハイエンド技術を要する案件や新規性のある案件など想定していた水準からは大きく乖離はないという。またモバイルゲームの新規開発案件については慎重に商談を進めたため、売上が減ったそうだ。

 

■中間決算は引き続きゲームソフト事業が拡大

続いて本題の中間決算を見ていこう。同社の事業セグメントは、2つの事業が存在しており、主力はゲームソフト開発のデジタルエンタテインメント事業だ。売上・利益ともに同社の大半を締めていることがわかる。こちらを中心にみていこう。

デジタルエンタテインメント事業
・売上高:28億4600万円(同16.0%増)
・営業利益:2億2500万円(同119.2%増)

その他事業
・売上高:1億9000万円(同3.4%増)
・営業利益:3200万円(同22.1%減) 

デジタルエンタテインメント事業は、サブセグメントとして、家庭用ゲームソフトの開発と、モバイルコンテントの開発に分かれる。今回の決算で大きく伸びたのは、家庭用ゲームソフトの受託開発で、売上高は3割増の19億5200万円だった。

同社では、開発案件が複数進行し、開発者の稼働率が高い状況にあるなか、大規模な開発案件を中心に複数の引き合いがあり、開発リソースの割当が難しく受注に苦慮している状況にあるそうだ。まさに嬉しい悲鳴といえそうだ。

クライアントワークという性質上、顧客の情報開示を確認新柄開発実績の公表を行っている同社だが、開発実績としては以下の発表があった。

・クライシス コア -ファイナルファンタジーVII- リユニオン(2022年12月発売)
・ドラゴンクエスト トレジャーズ 蒼き瞳と大空の羅針盤(2022年12月発売)

現在開発を進めているのは、マルチプラットフォームで展開する大型案件と、完成に近づいているNintendo Switch向けの案件、VRゲーム機向けの案件などで、順調に開発が進捗しているそうだ。

他方、モバイルゲームについては、開発を受託している運営業務は順調で、新規の開発案件が複数進んだものの、前年同期には開発中止になった大型案件の売上計上があったため、結果としては減収となった。売上高は5.0%減の8億9400万円だった。

 

 

■人材獲得競争の激化を受けて人的投資を強化

ゲームソフト開発において、最も大事なのは人だ。優秀な開発者・クリエイターを新たに採用し、そして在籍する人材の確保のため、待遇の引き上げを行ったとのこと。人材獲得競争が激しくなっており、人材への投資を強化する。急激な物価上昇による従業員の生活に配慮し、1月に全員に一時金を支給したほか、この4月から待遇改善のためのベースアップも行う。5.0%を超える昇給を行う。

 

 

■2023年8月期の業績見通し

続く2023年8月期の業績は、売上高62億5600万円(前期比10.5%増)、営業利益5億8000万円(同23.6%増)、経常利益6億円(同18.6%増)、最終利益3億5200万円(同13.6%増)、EPS46.48円を見込む。従来予想からは変更はないとのこと。

・売上高:62億5600万円(同10.5%増)
・営業利益:5億8000万円(同23.6%増)
・経常利益:6億円(同18.6%増)
・最終利益:3億5200万円(同13.6%増)
・EPS:46.48円

計画に対する進捗率は、売上高48.5%、営業利益44.5%、経常利益45.7%、最終利益57.1%となっている。

・売上高:48.5%
・営業利益:44.5%
・経常利益:45.7%
・最終利益:57.1%

 

株式会社トーセ
http://www.tose.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社トーセ
設立
1979年11月
代表者
代表取締役会長 齋藤 茂/代表取締役社長 渡辺 康人
決算期
8月
直近業績
売上高46億1500万円、営業損益5億2200万円の赤字、経常損益5億100万円の赤字、最終損益2億6000万円の赤字(2024年8月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
4728
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