ユーザー理解によるマーケティングとプロダクトの有機的な連動が必須の時代に…シンキングデータ社が語るユーザー定着における分析手法をレポート

Liberteenzとシンキングデータは、6月15日、オンラインにて、「IPだよりから脱却するデータドリブンマーケティング- データから読み解くASO対策×リテンション向上 -」と題したセミナーを開催した。

本セミナーはデータを基にした顧客理解から、ASOによる新規獲得の最大化と獲得したユーザーをきちんと定着させる方法について講演された。

本稿ではセミナーの内容について一部紹介していく。


アプリの入口と顔となる検索順位とスクリーンショットの重要性とは

まず初めに、Liberteenzの宇野氏からはアプリの検索順位とスクリーンショットの重要性について講演された。検索順位はアプリの発見や認識における中心的な役割を果たし、スクリーンショットはストアで確認できるゲーム画面となり、ユーザーからの印象を大きく左右する要素だ。

検索順位の話を始める前に、宇野氏はアプリランキングの一般的な動向について触れ、多くの長寿タイトルがランキングを占めていることを示した。一例として、リリースから3年以上が経過したアプリがダウンロード数で大半を占めていることが紹介された。

次に、実際に2つのタイトルを例に挙げた。『プロセカ』では、検索順位がいくつかの主要キーワード、特に音楽ゲームに関連するキーワードで高く、全体のダウンロードの約30%がこれらのキーワードから来ていることが資料からもわかるそうだ。また、ブランドキーワードからの流入が全体の37.8%を占め、一方で非ブランドキーワードからの流入が60%以上を占めていた。

『雀魂』の事例では、iOSとAndroidの間でキーワードランキングが大きく異なることが示された。特にiPhoneのダウンロード数が多く、Androidと比べても3倍以上となる。そんなiPhoneでのダウンロードは非ブランドキーワードからの流入が大きかったそうだ。

これらの分析結果から、検索順位を高め、非ブランドキーワードからのダウンロード数が増やすことがアプリ成長の鍵となると述べた。

そして、iOSとAndroidのそれぞれで検索順位を上げる方法も講演内では紹介された。iOSでは、タイトル、サブタイトル、そしてApp Store Connectで登録できる100文字のキーワードが重要となるそうだ。一方、Androidでは、タイトルと説明文が重要で、説明文中のキーワードが検索順位に大きく影響していると宇野氏は語る。

▲いくつかのゲームジャンルの例も講演内では紹介された。

続いて、スクリーンショットについても触れられた。アプリマーケティングにおける成功の鍵として、IP(知的財産)訴求だけでなく、しっかりとしたゲーム性の訴求が必要とされつつあるという。

アプリマーケターは、IP推しオンリーからIPとゲーム性を両方理解しやすく説明する方法にシフトすることが求められているそうだ。

例えば、有名なIPタイトルとして、「ONE PIECE」や「進撃の巨人」を題材にしたゲームもあるが、これらのスクリーンショットだけを見て、「どんなゲームなのか?」と言われた場合、判断が難しいことがあるそうだ。キャラクターや原作場面を再現したゲーム画面だけでは、ゲームの基本的な概念を理解するのが難しい。

そこで重要となるのが、「IPとゲーム性を分かりやすく説明する」ことだという。IPを全く無視する必要はないが、ゲーム性も分かりやすく説明することで、ユーザーはゲームの概念をより深く理解することができるのだ。

このような考え方は、スクリーンショットやプレビュー動画における構成にも反映されている。最近では、Apple Search Adsのカスタムプロダクトページを使用して、クリエイティブの比較検証が可能となている。これにより、ゲーム性推しのものとIPタイトル推しのものを比較し、結果を把握することができるそうだ。

具体的な事例として、ある戦略系のゲームでは、ゲーム性推しのものと人気のIPタイトル推しのものを比較した結果、ゲーム性推しのものの方が7日後のリテンション率が高く、結果として7日後に残ったユーザー数も多かったという結果が出たという。

これは、IP推しのクリエイティブはユーザーの引きが強く、CTRが高い一方で、ゲーム性にギャップを感じてリテンション率が低下してしまう傾向があるからだと考えられる。そのため、IPで引きを作りつつ、ゲーム性もしっかりと訴求することが重要であると宇野氏は説いた。

他にも、スクリーンショットなどの静止画のみでなく、プレビュー動画の活用や工夫を行うことでもCVR向上が期待でき、講演ではいくつかの事例が紹介されていた。

これらのハウツーは、さまざまな検証を経て得られた結果であり、静止画を使用しているアプリのマーケターは、これらの手法から試してみてはどうかと宇野氏は語った。

アプリの検索順位とスクリーンショットはダウンロード数や利用者数に大きな影響を与え、検索順位を高めるためには、適切なキーワードの選定とそれらを効果的に使用することが重要で、スクリーンショットはアプリの顔となり、その質はアプリのダウンロードに直接的な影響を及ぼすことになる。

これらの要素を最大限に活用することで、アプリの成功に対する可能性を高めることができるので、アプリ成長のお手伝いを行っているLiberteenzでは今後も支援していきたいと語り、詳細な話が気になる人は無料診断もあるのでぜひ活用して欲しいとして講演を終了した。

 

 

マーケティングとプロダクトの有機的な連動が必須の時代に

 
シンキングデータ社からは、データアナリストの白石氏が登壇し、ユーザーの定着に向けたゲーム内行動データ分析の手法について語られた。

冒頭ではまず、同社について紹介された。シンキングデータは、シンガポールに本社を構え、ゲームに特化したデータ分析ソリューションを提供しているグローバルテクノロジー企業となる。2015年創業から900社・5000ゲームタイトル以上のデータ分析を行っている。

2022年8月からはグローバル化戦略の重点市場として、日本への本格参入を発表。ツールに留まらずゲームにおけるデータ分析のメソッドやナレッジからサポートサービスまで提供しており、日本国内での利用も進んでいるようだ。

講演では、データ分析の目的とその重要性について白石氏より触れられた。

データ分析における中心的な目的とは、プレイヤーを多面的に理解することだという。この理解は、ビジネス観点から言えば顧客理解に相当する。ゲームアプリにおいては多様な遊び方が存在し、ユーザーは様々なモチベーションでゲームを楽しんでいる。

爽快感を求めるものから、キャラクターへの愛着、他のプレイヤーとの交流、コミュニティへの愛着など、多岐にわたり、ユーザーそれぞれのモチベーションを理解することがゲーム分析では肝要となる。

そして、データ分析を通じてプレイヤーを多面的に理解することは、一つの事象を異なる角度から見ることだと白石氏は語る。

その事象は、一面から見ると全く異なる姿にみえるかもしれないが、それが一つの事象であることは事実だ。多角的な視点からユーザーを理解することで、ユーザーの真の姿が明らかになることがデータ分析だと可能になるそうだ。

またユーザー理解ができたとしても、実際のアクションにどう紐づいているかも考える必要がある。例えば、あるユーザーが毎日アプリを起動し、1ヶ月前に一度課金したとしても、その情報だけでは具体的な改善策を提案することは難しい。

そのユーザーが他のプレイヤーと比べてどのような特徴を持つのか、最近の行動パターンは過去とどう違うのか、起動は頻繁に行っているものの課金行動はどうなのか、といった比較で分析することが重要となる。

比較の例としては、時間とユーザー、そして空間という観点から行う比較があり、これらを比較することで、施策にも落とし込めるようになるのだ。

続いて、白石氏からはデータドリブンの考えについても語られた。データドリブンとはデータに基づいて意思決定を行うという考え方であり、これにより、サービスの改善スピードの向上、チーム内の言語の共通化、組織の活性化、決定プロセスの透明化などの利点が得られる。

これまでは、プロデューサーなどが感覚や経験に基づいて決定を行っていた。しかし、その方法では、なぜその施策をとったのかというノウハウを社内に蓄積することができず、拡張性も再現性もない。

それに対し、データドリブンによるアプローチでは、論理的な一貫性を作ることも可能となる。つまり、ユーザーの変化やデータの変化に応じて施策を変え、それによってデータがどのように変わるのか、最終的にユーザーがどのように変化すべきなのかという一連の流れを明確にし、組織としてゲームをより良くしていくことが可能となるのだ。

ここで、ユーザーを定着させる話として、KPIとリテンションの向上についても説明された。ゲームアプリもビジネスの一部であり、マネタイズまでにもいくつかポイントがある。

▲ゲームビジネスにおけるカスタマージャーニーの簡易図

そのKPIは企業やゲーム作品によって異なるが、類型化すると、「ユーザーを増やす」、「起動させる(アクティブにする)」、「課金や他の特定の行動をさせる」、という3つの観点に大きく分けることができる。

リテンション、つまりユーザーを定着させるという指標は、「アクティブにさせる」という観点になる。ユーザーの行動で言うと、初日以降にアプリを起動したかどうかになるが、リテンションの重要性はアプリの質が問われる点にある。アプリの質が良ければ、リテンション率も向上される。

ここで定着という目線で考えると、ユーザーがインストール前に抱いていた期待とのギャップが重要となる。このギャップの度合いによってアプリの質というものがユーザーの中で定められるのだ。

故に、マーケティング施策との有機的な連動が求められるのだ。昨今の競争が激しいアプリゲーム業界ではこの連動は必須と言える。

マーケティングでは、ユーザーが求められていそうな要素をキャッチアップし、プロダクトの改善に活かすことが求められ、ゲーム開発ではゲームプロダクトのコアバリューをしっかり共有し、マーケティング施策に活かすことが求められるのだ。

では、データ分析の実際的な手法として、リテンションを分析する方法が紹介された。

リテンションも一つの指標であり、特定の傾向を時系列で見ることができる。しかし、それだけでは「今日は昨日より良かった」や「1週間前より良くなった」といった理解しか得られないため、さらなる分析につなげるのは難しい。そこで、マーケティングとアプリ内の行動を一貫して分析することで、より深い理解を得られると白石氏は紹介した。

例えば、ユーザーがキャラクタークリエイティブに魅力を感じてアプリをインストールした場合、そのキャラクターが獲得できたか、そして何回獲得したかという情報を組み合わせることで、より詳細なリテンション分析が可能となる。

講演では、その具体的な実例も紹介されており、キャラクター訴求型のクリエイティブでユーザーがアプリを使った場合での1日後、7日後、14日後、30日後のリテンション率が分析されていた。その事例によると、キャラクターを獲得することができたユーザーのリテンション率は、それができなかったユーザーよりも高く維持されていた。

そして、このような分析を実現するためには、データ分析ツールの活用が不可欠であり、分析プラットフォーム「ThinkingEngine」が紹介された。「ThinkingEngine」は、誰でもデータアナリストになることができるという設計思想で生まれており、データを理解し、分析するスキルを身につけることができる。

また、「ThinkingEngine」は、データの取得から理解までのフローを一気通貫で実現することが可能であり、データの無駄をなくし、誰でもダッシュボードを見てデータを理解することができるそうだ。このような効率的なデータ分析により、データの理解と分析を行う時間が短縮され、より効果的な分析やクリエイティブ制作に専念することが可能となる。

▲講演中、白石氏によって分析のデモンストレーションも行われた。

最後に白石氏からは、ユーザーの真の姿を理解し、よりよいゲーム体験を提供するための戦略を立てるお手伝いをしていき、各社や業界の貢献につなげられたら幸いとして講演は終えた。