【セミナー】シンキングデータ、Craft Eggが語るゲーム運営におけるデータ分析と施策への活用方法とは?…ゲーム業界のデータアナリストが集まったMeetupをレポート

ThinkingDataとgamebizは、8月2日、「ThinkingData 0→1 Meetup 2023 Summer」〜バンダイナムコネクサス、Craft Eggが語るゲーム運用のPDCAサイクルに繋げるデータ分析とは?〜と題したセミナーを開催した。

本セミナーでは、各ゲーム会社のデータ分析チームの戦略や施策にどう活かしていくのかに焦点を絞り、人気タイトルを運営・分析を行なっている株式会社バンダイナムコネクサス、株式会社Craft Eggのキーマンが登壇し、それぞれの会社ではどのような体制で取り組んでいるのかなどについて語られた。

本稿ではThinkingDataとCraft Eggの講演をレポートしていく。

重課金ゲーマーが語るゲームを辞める理由とデータの活用方法とは?

まず初めに、シンキングデータの古田氏が登壇した。

株式会社シンキングデータ
アカウントエグゼクティブ
古田 雅也氏

2015年AppBank株式会社にて社長秘書兼、新規事業を担当。2017年サイバーエージェントグループCyberBullへ入社し広告コンサルタントを担当。2018年株式会社issekiを設立。2021年Appier Japanにセールスとしてジョイン。現在はシンキングデータでセールスとしてアプリ事業者様のデータ分析基盤の構築、データ・ドリブンな運営を支援。趣味はゲーム、コンシューマーゲームからアプリゲームまで幅広くプレイ。MMOゲームで妻とも出会う。

古田氏は毎年高額の課金をゲームに費やすほどの” 重課金ゲーマー”だという。そういったゲーム好きが高じてゲーム業界に関わるようになり、現在はシンキングデータにジョインするに至ったという。

シンキングデータはゲームに特化した分析プラットフォーム「ThinkingEngine」を提供しており。そのサービスの設計思想として、「誰でもデータを扱える」「誰でも高度な分析手法が使える」を挙げ、その利便性や考えに反響もあり、現在では900社以上のゲーム企業がこのツールを使われているそうだ。

そんなシンキングデータの古田氏からは重課金ゲーマーが語る重課金する理由やゲームを辞める理由について紹介された。

古田氏がご自身の経験ももとに考える課金する理由として、コミュニティで人気者になりたいなど、自己顕示欲を満たすためや、キャラクターやアイテムに魅力を感じる他、課金自体が楽しいという理由を挙げた。

そんな重課金ゲーマーがゲームを辞める理由はどういったものかと言うと、以下の理由多いという。

これらの理由のうち、ライフステージが変わることによる引退や一緒にプレイしている人が辞めたからという理由は仕方がないものではあるが、その他の理由についてはデータで解決できる余地があると古田氏は語る。

ゲームを辞める要因として、重課金ゲーマーであってもある日急に課金を辞める瞬間、「課金疲れ」があるという。重課金ゲーマーでなくとも、実感したことのある人は多いのではないだろうか。

この「課金疲れ」については、”先週高額な課金で手に入れたキャラクターよりも今週のキャラクターの方が魅力的だった”などのインフレやゲームサイクルの疲弊から起きているものとなる。

ユーザーの疲弊を回避するには、データを用いて「課金疲れ」をコントロールしていくことが、結果的にユーザーにも長く楽しんでもらえ、ゲームの長く運営することで繋がるそうだ。事実、データ分析によるサイクルのチューンナップにて継続率や売り上げが向上したケースは古田氏もこれまで目の当たりしたようだ。

ただ、「課金疲れ」をデータで管理していくと言っても、ただ課金率や課金額、イベント頻度をみていくだけでは実態をとらえることはできず、ゲームやユーザーの行動を理解した上で分析を進めていくことが重要だと説いた。

ユーザーの行動を理解した上で、一定の間隔で課金してもらうことがゲームの長期運営にも繋がるようだ。

古田氏からはそんな重課金ゲーマーの「課金疲れ」を避ける手段もいくつか紹介された。例えば、個別でプレゼントを行うといったものだ。海外のゲームではよく採用されているVIP制度などもその方法の一つと言えるだろう。

最後に古田氏からは、重課金ゲーマーとしても、長くゲームを楽しむことが望みではあるので、データを活用することでユーザーもゲーム会社も幸せになれたら幸いと話し、講演以外のノウハウもぜひ共有していきたいので、些細な悩みでも是非相談いただきたいとして講演は終了した。

 

 

データだけでなく「ユーザーインサイト」も汲み取った分析を

続いて、Craft Eggの落合氏が登壇し、同社の分析体制のほか、ゲームへの取り組みについて語られた。

株式会社Craft Egg
データアナリスト
落合 拓実氏

広告代理店にてエンジニアとして、DMPサービスの基盤構築・運用を担当。2019年Craft Eggに入社後、デジタルマーケティングを見つつデータアナリストとして分析基盤の構築、ユーザ行動分析を担当。

Craft Eggといえば、『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』(『ガルパ』)が知られている。ブシロード社と手がけている作品となり、ゲームの他さまざまなメディアミックスが行われているのが特徴だ。

そんなCraft Eggではデータアナリストとしてのポジションは複数の部門に関わる役割だと話す。

そして、Craft Eggのデータアナリストとしては意識していることは以下の4つだという。

 

1.メディアミックスならではの視点

2.ユーザー目線でPJを俯瞰して考える

3.仮説は、まず広く

4.アプリ内外問わずに提案

メディアミックスを数多く行っていることから、アプリ内に問わず考えることが多いそうだ。だからこそ様々な切り口にてユーザー群の特徴を想定しているそうだ。

例えば、クラスター分析によるセグメントを分けるほか、ユーザーの感情やモチベーションも測るために、定期的にユーザーインタビューを実施しているという。


いわゆる課金率や継続率などの表面的データだけではわからない部分もあるので、ユーザー理解については特に意識を払っているそうだ。

ゲームの体験や感じる感情は人それぞれなので、「ユーザーインサイト」を汲み取った上でのデータ活用を目指していきたいとして、講演は終了した。

▲講演では、ユーザーインタビューのやり方や仕様についても質疑応答がされていた。例えば、ユーザーインタビューを行う人物は誰であるべきか、といった質問など。Craft Eggでは、なるべくユーザーさんの等身大の声が聞けるような工夫をおこなっていると、会場では具体的に答えていた。


セミナーでは座談会も実施され、参加者からの質問などにも応えていた。各ゲーム会社、同じ悩みを抱えていることも多く、その後の懇親会でも盛んに情報交換を行なっていた。

なお、シンキングデータ社では9月20日にて、アプリゲーム向けデータビジネスカンファレンス「ThinkingData Summit 2023 Tokyo」を9月20日(水)に開催予定だ。

本イベントは"データと情熱が交わる、ゲームクリエイターの集い。"をテーマとし、ゲームデータの分析にまつわるプロフェッショナルを招いてゲームデータにおける、最新トレンド、事例、活用方法について講演予定だ。

また、セッション後は、参加者同士で情報交換ができるネットワーキングパーティーも予定している。

登壇者には、『アーチャー伝説』で知られるHABBY社のCEO王氏も登壇予定と、世界で活躍するゲーム会社も集まる予定だ。

東京ゲームショウ前夜祭として、ゲーム業界関係者が集まるイベントとなるので、気になる人は以下のページよりチェックしてみよう。