カバー、北米・英語圏でのビジネス・コンテンツ拠点「COVER USA」を開設 谷郷元昭氏「北米からVTuberのポジションを確固たるものへ」

カバー<5253>は、3月12日、「COVER USA開設発表会」を開催した。今回発表された「COVER USA」とは、VTuber IP「ホロライブプロダクション」を展開する同社が、北米・英語圏でのビジネス・コンテンツ展開のさらなる加速に向けて設立する海外拠点のこと。発表会には代表取締役社長・谷郷元昭氏が登壇。「COVER USA」の概要と、今後の取組を解説した。

2016年に日本初のバーチャルYouTuber(VTuber)誕生以来、現在のVTuberはエンターテイメントのカテゴリーとして市場を形成するに至っている。矢野経済研究所によると、2023年度の国内VTuber市場は800億円、グローバルインフォメーション社によると、世界VTuber市場規模は、16億3,900万米ドル(2021年時点、約2,353億円)から、174億米ドル(2028年時点、約2兆5,000億円)に成長すると予測されている。

一方で、一般社団法人日本経済団体連合会のPolicy(提言・報告書)によれば、ゲーム・アニメ・漫画を含む世界のコンテンツ市場は2025年に1.31兆ドル(約183兆円)に拡大すると推計されているものの、過去10年間の日本の国内のコンテンツ市場成長率は2.3%と、米国や韓国、英国、中国、インドなどと比較して低位にあり、「韓国・中国の後塵を拝し、世界シェアは減少傾向にある」と言及されている。
このように国内コンテンツ市場が停滞し、日本発IPコンテンツのさらなる海外展開が求められるなか、VTuber IP「ホロライブプロダクション」を展開するカバーでは、2020年より海外展開を強化している。直近では、所属タレントのチャンネル登録数のうち海外比率は35.3%(2023年12月末時点)に達しているほか、物販の海外顧客に占める割合も3割を占めている状況だ。

カバーは現在も海外で活動するタレントが30名以上存在。海外のチャンネル登録者数は2,900万人、海外イベントにも23年4月~12月の期間で26件に出展するなど、その人気は日本を飛び越えたものになっている。
様々な形で海外市場を見てきた谷郷氏は、「今後は3つの視点で補強が必要」と語る。1つ目は「各国のカルチャーに合わせたIP創出」。これまでも言語別のIP創出と、PGCの多言語コンテンツの制作を行ってきたが、⽇本と⽐較すると、PGCをファンに提供するまでのスピード感とクオリティがつくりにくい課題もあった。

2つ目は各国のカルチャーに合わせたUGC⽀援。UGCとはファンが制作する⼆次創作「User Generated Content」のことで、⽇本とは異なり、出展形式が限られるため、様々なかたちのUGCづくりを⽀援する機会が少ないと感じたとのこと。
そして3つ目が、各国のカルチャーに合わせたビジネス。2023年7⽉にはホロライブEnglishが⽶国初ライブを開催し、瞬発的な収益は確保できたが、グローバルにコンテンツ展開を⾏う上でのサステナブルな収益設計の必要性を感じたと語る。

この3つの学びを経て開設されるのが、北米・英語圏でのビジネス・コンテンツ拠点「COVER USA」だ。
谷郷氏は、キャラクターI Pの収益はマーチャンダイジングが中⼼であり、グローバルで収益をつくるためにはアニメ⽂化が根付いていることに加え、コマース領域(MDやライセンス・タイアップ)で収益をつくれるビジネス環境が必要だという。
また、世界で収益をつくる⽇本のキャラクターI Pは、北⽶においてメディアを通して⼈気と熱狂をつくり、M Dやライセンス分野で収益をつくってきた実績がある。そこでカバーとしても、まずは北⽶エリアから徹底したローカライズを展開していくことが重要だと考えた。

「COVER USA」では、各⾔語地域ごとにローカライズされたPGC(プロによって制作されたコンテンツ「Professional Generated Content」)の提供をはじめ、コラボレーションやライブ開催、イベント展開など、現地でのパートナーリレーションを強化する「コンテンツの現地化」、「ファンによるゲーム開発」などのファンに寄るUGCを盛り上げるために、イベント出展や各種⼆次創作に求められるファンコミュニティや環境整備を推進する「UGCの現地化」、現地企業によるVTuber活⽤の促進のため、現地での営業拠点を通じて、ネットワークを拡⼤し、グッズの独⾃開発・現地販売網の確⽴を推進する「ビジネスの現地化」という3つのテーマを掲げている。

「COVER USA」の営業開始日は2024年7月を予定しており、これに伴い体制も変更。これまでは日本から様々な企画、顧客対応を行ってきたが、ここに現地拠点が加わることにより、コンテンツ供給は引き続き日本が行いつつ、イベント施策や物販、営業等の収益分野の活動を現地化させていく。

今後もロードマップも公開され、2024年にグローバルビジネスに向けた現地化(ローカライズ)を推進、そして2025年以降は他分化圏への拡大も考えているという。
最後に谷郷氏は、「VTuberはマンガアニメゲームに続く日本発のコンテンツ」とコメント。との上で、「まずは北米から、そのポジションを確固たるものへしていきたい」と、「COVER USA」に対する期待を述べた。