【寄稿】「越境ECを通して海外から日本のゲーム関連商品を購入されるお客様の特徴」(BEENOS株式会社)

 

BEENOS株式会社(市場コード:3328)の連結子会社で越境ECおよびジャパニーズコンテンツの海外進出をサポートするBeeCruise株式会社の岩本夏鈴です。BEENOSグループは日本の商品を購入したい海外のお客様の購入サポートを行う越境ECを主力事業としています。海外のお客様向けに提供する越境EC支援サービス「Buyee(バイイー)」では、利用者数が550万人を超え、日本企業の海外向け販売支援数は累計で6,000件を超えました。

Buyeeでは様々な商品が海外のお客様から購入されていますが、ゲーム分野は常に人気の高いカテゴリです。

Buyeeを利用される海外のお客様は趣味的消費の強い傾向があり、新しい商品だけではなくレトロな商品も購入されています。本寄稿では豊富な越境ECの購入データを通して、海外から日本のゲーム関連商品を購入されるお客様の特徴について、人気商品やユーザー層、意識調査の結果など様々な側面から解説していきます。

 

■越境EC市場の概観

国境を超えて商取引を行う「越境EC」の市場は拡大しています。経産省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」によると、世界の越境EC市場規模は2021年の7,850億ドルから2030年には7兆9,380億ドルまで拡大すると予測されています。市場規模の拡大に伴い、Buyeeの流通総額も年々増加しています。

 

 

■ゲームの海外人気

PwCの発表する「Perspectives from the global entertainment & Media outlook 2022-2026」によると世界のゲーム市場は増加を続け、2026年には3211億ドル(約47兆円)の市場規模への拡大が予測されています。この影響は越境ECでの消費にもおよんでおり、2024年上半期に海外のお客様から購入された商品カテゴリではハード、ソフト、周辺機器を含む「ゲーム」は全カテゴリ中7位にランクイン、ゲームカテゴリの購入件数は2021年の同時期に比較して2024年の上半期は2.4倍まで拡大しています。米オークションサイトでは2021年に「スーパーマリオブラザース」などの作品で高額の落札が相次ぎ話題となりました。ゲーム作品は日常的な利用だけではなくコレクション用途としても注目されていることがわかります。

 

■なぜ海外のお客様は越境ECで日本のゲーム関連商品を購入されるのか

ではなぜ海外のお客様はわざわざ越境ECで日本からゲーム関連商品を購入されるのでしょうか?ゲームを購入される海外のお客様向けの意識調査は未実施のため、今年2月にBuyeeを利用する海外アニメファン807名にBEENOSが行った意識調査の結果をご参考として紹介します。

越境ECを通じてアニメグッズを購入する理由については「自国では購入できない商品が欲しいから」という回答が最も多く72%、次いで「購入できる商品の種類が多いから」が65%となりました。海外のお客様は自国で購入できない商品を越境ECで探される傾向があるようです。

Buyeeで購入されているゲームカテゴリの商品は、コントローラーやケーブルなどの周辺機器を除くと、ハードとソフトがおおよそ半々の割合となっています。のちほど詳しく見ていきますが、アニメグッズの購入利用と同様に、自国で購入できる新作は越境ECでは購入されず、コレクション目的など趣味的な購入と考えられる旧タイトルや旧世代機がよく購入されています。

 

 

ゲーム関連消費が最も多いエリアは北米です。2024年上半期におけるゲームカテゴリのエリア別購入ランキングでは1位となっています。2020年以来、北米エリアにおける人気商品カテゴリランキングは一貫して「おもちゃ・ホビー・ゲーム」分野が1位となっており、継続的な人気の高さがわかります。購入者層は北米を含み下記の通りすべてのエリアで男性がメインユーザーとなっており、年代は30代と40代が中心です。Buyee全体では10代の女性や20代の男女の利用が拡大している傾向があり、例えばアニメグッズの購入層ではヨーロッパ、東アジア、北米、中東の4エリアで20代女性がメインユーザーに入っていますが、男性ユーザーへの偏りはゲームカテゴリならではの特徴と言えます。

 

  

■2024年上半期の越境ECにおけるゲーム関連消費の具体

ゲーム消費のうち、「ハード機」の越境ECでの購入データをまずは見ていきましょう。2024年の上半期にBuyeeで売れたハード機のランキングは以下の通りです。

 

1位のplay stationのほか、ファミコン、ゲームボーイなど旧世代のハード機が売れている結果となりました。最新機器は世界各地で購入できることが考えられわざわざ越境ECで購入する必要がない点と、越境EC利用者のコレクター趣向という2つの点からこのような結果になったものと考えられます。

このほか、ごく少数ではありますが、1975年に日本初の家庭用ゲーム機として発売された「テレビテニス」の購入も確認することができました。Buyeeを利用する海外のお客様の趣味的消費という特徴がわかる結果となりました。

では、ソフトではどのようなタイトルが購入されているのでしょうか?2024年上半期にBuyeeで売れている商品の結果は以下の通りとなりました。

 

 

シリーズとしては「ポケットモンスター」の人気が高く、タイトルとしては「ポケットモンスター金・銀シリーズ」が海外のお客様から購入されています。ポケットモンスター金・銀は、初代の「赤・緑」から進化したシステムが搭載されることでファンの中でも人気のタイトルとなっており、その傾向は海外のお客様においても同様であることがわかる結果となりました。読者の皆様も楽しまれた経験はありますでしょうか。なお、ポケットモンスターのIPはTitleMaxの発表した「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」によると、メディアフランチャイズの総収益は921億2100万ドルと推計され、史上最大のコンテンツと紹介されています。

このほかにも意外なタイトルとして、1986年に発売され攻略の難解性から伝説的なゲームと称される「たけしの挑戦状」や、2023年にAI機能を搭載したPCゲームとして無料配信されることで攻略タイムアタックが話題となった「ポートピア連続殺人事件」のファミコン版などもごくわずかですが海外のお客様から購入されています。メジャーなタイトルだけではなくこのようなゲームも購入されていることから、海外のお客様のこだわりの強さが伺えます。

 

■モバイルゲーム市場と越境ECでの消費

続いてモバイルゲームに関する越境ECの消費動向を見ていきましょう。NEW ZOOの発表する「Global Market Report 2024」によると、2023年のゲームの市場規模は1839億ドル(約27兆円)見込みとなっており、そのうち49%をモバイルゲームが占めています。

 

近年ではモバイルゲーム原作のアニメ化がすすみ、もともとゲームユーザーではない層にも接点が広がり、より多くの方にゲームの世界観を届けることができるようになっています。さらに一部のアニメは動画視聴サービスなどを通じて世界からアクセスできる環境となっており、作品のファンとなった海外のお客様は、越境ECにおいて原作であるモバイルゲームの関連グッズを購入することが可能です。

20204年上半期におけるモバイルゲーム関連グッズの購入件数のランキングは次の通りです。いずれのタイトルにおいても、魅力的なキャラクターが多数登場していることが共通の特徴です。多様なキャラクターの中から、「推し」を見つけ、商品購入を行うことは日本の方にとっても頷ける行動様式と言えるのではないかと思います。

 

 

■越境EC利用者の意識調査から見る海外のお客様の内面

最後に、今年6月にBuyeeを利用される海外のお客様1821名に聞いた「越境ECと日本文化に対する意識調査」の結果から海外のお客様の内面を見ていきましょう。

日本に興味を持つきっかけとなった文化について質問したところ、1位は「アニメ」で65.2%、「ゲーム」は42.8%で2位にランクインしました。続いて、魅力に感じる日本文化について質問したところ、1位は「アニメ」71.5%、2位「日本食」61.0%、「マンガ」57.6%と続き、「ゲーム」は4位の55.5%でした。どちらの回答からも海外のお客様はゲームを日本の文化と強く認識し、魅力を感じていただいていることがわかります。

 

 

続いて越境ECで購入する商品ジャンルと、リピートしたい商品ジャンルについて質問したところ「ゲーム関連グッズ」と回答した方はそれぞれ34.5%、40.2%となり、どちらも「アニメグッズ」に次ぐ2位となりました。購入意向においても海外のお客様のゲーム関連消費に対する意欲の高さがわかる結果となりました。

 

 

さらに、越境ECの利用頻度について質問したところ、「1か月に1回程度」が最も多く35.8%となりました。「1週間に1回程度」9.6%と「1週間に2回以上」8.6%という回答を含めると、54.0%の方が月に1回以上越境ECを利用しており、回答者の半数にとって越境ECでのお買い物は日常の一部になりつつあることがわかりました。

 

■まとめ

さて、終わりにここまで見てきた内容をまとめていきます。世界のゲーム市場の規模は拡大しており、越境ECでは多くの商品を海外のお客様からご購入いただいています。Buyeeを利用するお客様は半数以上が1か月に1回以上、越境ECで商品を購入されており、ゲームに関するお客様は北米エリアが多く、とくに30代と40代の男性が中心です。ハード・ソフトにおいては旧世代の商品人気が高い一方で、世界のゲーム市場のうち約半数を占めるモバイルゲームの関連グッズも購入されています。Buyeeを利用するお客様は多くの方がゲームを日本の魅力的な文化と認識されて越境ECでの購入意欲も高いことが伺えました。

以上のことから日本のゲームは海外のお客様から時間や場所を超えて愛されていることがわかり、購入手段のひとつとして越境ECが利用されています。今年6月には政府が「新たなクールジャパン戦略」を発表し、ゲームを含むIPやコンテンツなどの日本のソフトパワーを高め、海外展開を推進していく方針が発表されています。今後も世界にゲーム文化が広がり、越境ECを通じた商品購入は拡大していくことが予想されます。