25年冬アニメは「3話」前後で二極化 『メダリスト』と『SAKAMOTO DAYS』は高い注目度を維持【アニメデータインサイトラボ調査】

ブシロード<7803>のグループ分析組織にあたるアニメデータインサイトラボは、アニメビジネスにおける調査を実施した。今回は、その後の4週間のデータを追加し、どの作品が視聴者の関心を維持し続けているのか、また新たに注目を集めている作品はあるのかを分析していく。

 

■はじめに

2025年冬アニメの放送が開始してから5週が経過した。前回の分析では放送開始前から1週目までの「初動」に注目し、『薬屋のひとりごと』や『SAKAMOTO DAYS』などの作品が高い注目を集めていることを確認した。今回は、その後の4週間のデータを追加し、どの作品が視聴者の関心を維持し続けているのか、また新たに注目を集めている作品はあるのかを分析していく。

 

■分析概要

【分析対象】
2025年冬アニメ
新作:40作品
続編:17作品

【使用データ】
Googleトレンドによる検索量データ(週次)
※各作品の放送1週目の数値を100%として、その後の推移を相対的に表示

【分析期間】
冬アニメの放送1週目~放送5週目

【比較データ】
2024年の各クール(冬、春、夏、秋)の同期間データ

 

■クール全体の注目度分析

2025年冬アニメの特徴を理解するため、まず過去1年間のクールと比較した全体的な傾向を分析する。

【新作アニメの注目維持率推移】
2025年冬クールの新作アニメは、2週目に92.00%という高い維持率を示している。これは2024年の各クールと比較して最も高い数値であり、前クール(2024年秋:74.04%)と比べて約18ポイント上回っている。

しかし3週目以降は例年同様に徐々に低下し、5週目時点では49.70%まで落ち込んでいる。とはいえ2週目の大きな数字からも分かるように、新作タイトルが初動から話題を獲得したクールだったとも言える。

 

【続編アニメの注目維持率推移】
続編アニメについて、2024年冬クール(前年)と比較すると維持率の安定性が低下している。前年の続編アニメは5週目で95.58%まで上昇し、むしろ後半で再浮上する動きがあったが、今期は66.81%と相対的に低い水準にとどまっている。

  

■注目作品の5週間推移分析

【注目度TOP10作品の分析】
新作・続編を問わず、5週間時点での注目度維持率が特に高かったTOP10作品の動きを振り返る。今回のランキングには、前クールからの人気を維持する続編作品と、新たに注目を集め始めた新作作品が混在している。
 

 

【続編アニメ】
『俺だけレベルアップな件』『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』『Dr.STONE』などは、5週目で初動を25~37%上回る注目度を記録し、原作人気や前作からのファンの期待をしっかり維持している。特に『俺だけレベルアップな件』は中盤に入ってのバトルシーンなどでSNS上の評判が再浮上し、5週目に137.50%となっている。

 

【新作アニメ】
今回のTOP10のうち、最も勢いがあるのが『メダリスト』と『SAKAMOTO DAYS』。『SAKAMOTO DAYS』は放送2~3週目で大きく伸びており、『メダリスト』は週を追うごとに注目度が上昇している。また、『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』や『この会社に好きな人がいます』のように、序盤にやや落ち着いたものの、ストーリーの起伏によって盛り返した作品も存在する。

上位5作品のうち、新作は『メダリスト』と『SAKAMOTO DAYS』がランクイン。一方続編勢は『薬屋のひとりごと』が1位となっており、『俺だけレベルアップな件』や『Dr.STONE』も高い水準を維持している。新作・続編問わず、原作の強みとアニメ化のクオリティが掛け合わさった作品がトップを占めていることが見て取れる。今期はスポーツ枠やコメディ枠など多彩なジャンルが食い込んでいる。

   

■新作アニメの注目度詳細分析

全体のTOP10にもランクインしていた新作を中心に、5週目までの注目度の推移を詳しく見ていく。

5週目までの推移を見ると、上位3作品(『メダリスト』『SAKAMOTO DAYS』『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』)がいずれも初動の100%を大きく超える維持率を示しており、新作アニメ内で抜きん出ている。

『SAKAMOTO DAYS』は放送開始直後からそのバトルアクションを中心に話題となり、2週目に跳ね上がった後も高水準を保ったまま推移している。

また、『メダリスト』も各話で丁寧な人間ドラマと迫力ある演技シーンを描き、「回を追うごとに泣ける」とSNSでも高評価が増えており、5週目で192.31%と驚異的な伸びを記録している。

『メダリスト』と『SAKAMOTO DAYS』が突出した数値でランクイン。『BanG Dream! Ave Mujica』や『悪役令嬢転生おじさん』も大きく注目度を落とさずに、上位にランクインしている。

  

■データから読み取れる特徴的な動き

5週目までのデータを俯瞰すると、今季特に伸びた作品には以下の傾向が共通していることが見えてくる。

【初動ブーストの成功】
1~2話のクオリティが高く、SNSで好意的に拡散されると急上昇しやすく、その後も「見始めて正解だった」「続きが気になる」といったポジティブな循環を生みやすい。

例:『SAKAMOTO DAYS』が跳ね上がった背景には、アクション演出への絶賛がある

 

【中弛みの少ないストーリー構成】
今季伸びた作品は回を追うごとに盛り上がりが増す構成になっていたり、重要キャラや神回を序盤~中盤にタイミングよく配置したりするなど、視聴意欲を途切れさせなかった。

例:『メダリスト』が各話ごとにフィギュアシーンの見せ場を丁寧に描き、回を重ねるごとに「泣ける」と好評価が蓄積

 

【SNSバズを後押しする話題性(キャスト・主題歌など)】
アニメ内容以外の面でも「有名アーティスト起用」「意外な主題歌コラボ」など仕掛けがあると、SNSでの拡散が加速しやすい。

例:『メダリスト』の主題歌米津玄師、『悪役令嬢転生おじさん』のマツケンサンバなど。とりわけ、既存ファン層以外へリーチできる話題の有無が、最初の一歩を踏み出させる決め手になる場合も多い

 

【継続的な宣伝・ファンコミュニケーション】
配信環境が充実した現在、放送開始後も公式が定期的にSNS企画や最新情報を発信し続けることで、話題を持続させる効果がある。イベントや追加キャスト発表、放送中の販促活動などが、リピーターと新規視聴者の橋渡しとなる。

例:『BanG Dream! Ave Mujica』はライブイベントや音楽リリース情報を適宜投入し、視聴者の興味を維持

 

こうした要素を複合的に行える作品ほど、「初動~5週目の間で注目度が失速しにくい」傾向が見られた。逆に言えば、どれか1つでも大きく欠けると“折れ線グラフが急低下"してしまう可能性が高いのが、今期特有の厳しさとなる。

 

■まとめ

今期のデータからは、新作アニメが初動で注目を集めやすい一方、放送2~3話目で明確な評価が定まりやすく、そこで話題を生んだタイトルはさらに伸び、盛り上がりに欠ける作品は一気に視聴を落とす「二極化」が進んだことが見て取れる。

続編アニメに関しても、大きく数字を伸ばす作品は物語の山場や人気エピソードを中盤以降に投入し、初動を超える注目を生み出しているが、大半のタイトルは落ち着いた維持率に留まっており、何かしらの“神回"や話題づくりがない作品は数字を伸ばしづらい状態がうかがえる。

配信の追い視聴が当たり前になった現在では、序盤での好評価や口コミ拡散がさらに重要性を増し、中盤であっても大きなイベントや仕掛け次第で一気に盛り返す余地があるなど、放送後半まで目が離せないクールといえる。

 

・レポート著者
SevenDayDreamers
湯通堂 圭祐
マクロミルでデータサイエンティストとして複数の新規事業を立ち上げ、その後、FiNC Technologiesでデータ分析、グロースハック、プロダクト開発、経営企画、人事の責任者を歴任。現在は、SevenDayDreamersを創業し、データとAIを活用してコンテンツIPの価値最大化に取り組む。

・レポート編集
アニメデータインサイトラボ
代表:大貫 佑介

 

©全修。/MAPPA
©BanG Dream! Project
©つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会
©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会
©鈴木祐斗/集英社・SAKAMOTO DAYS製作委員会
©久世蘭・講談社/「黒岩メダカに私の可愛いが通じない」製作委員会
©上山道郎・少年画報社/悪役令嬢転生おじさん製作委員会・MBS
© Anime Data Insight Lab

株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
IPディベロッパー、それはIPに翼を授けること。 オンラインサービス充実へ
IPディベロッパー、それはIPに翼を授けること。 オンラインサービス充実へ

会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
企業データを見る