『ダンダダン』や『アオのハコ』など話題作は視聴者との新たな接点創出に成功…アニメデータインサイトラボ「データで見る2024年夏秋アニメの注目度比較」を公表

ブシロード<7803>のグループ内のデータ分析組織「アニメデータインサイトラボ」は、調査レポート「データで見る2024年夏秋アニメの注目度比較」を公開した。2024年の夏アニメと秋アニメへの注目度を比べながら、それぞれのシーズンならではの特徴や視聴者の反応の違いを分析したという。

 

■はじめに

2024年の秋アニメシーズンも12月に入り終盤にさしかかる中、各作品の視聴者評価が明らかになってきた。前回の分析では、2024年夏アニメについて、放送開始からの注目度の変化を追いかけた。そこから分かったのは、放送開始時に話題を集めた作品でも、必ずしもその後も視聴者の支持が続くわけではないこと、そして放送期間中の様々な展開が作品の最終的な評価に大きく影響することだった。

これらの発見を活かし、今回は夏アニメと秋アニメの注目度を比べながら、それぞれのシーズンならではの特徴や、視聴者の反応の違いを探っていく。このデータ分析を通して、各シーズンの作品がどのように受け止められているのか、より具体的に理解することを目指す。

 

■分析方法

【分析対象】
・2024年夏アニメ:42作品(シリーズ作品を除く新作アニメ)
・2024年秋アニメ:36作品(シリーズ作品を除く新作アニメのうち、10月12日までに初回放送済の作品)

【使用データ】
・Googleトレンドによる検索量データ(週次)

【分析期間】
・夏アニメ:2024年7月~9月放送分
・秋アニメ:2024年10月~11月放送分

 

■データの解釈に関する注意事項

本分析では、注目度を以下の2つの視点から評価している。

①初回注目度の比較
・各作品の放送初週における相対的な注目度を示すもの
・最も高い注目を集めた「ダンダダン」を100として数値化
・この指標は作品への注目度を示すものであり、必ずしも視聴率や人気度を直接的に表すものではない

②注目度の維持率
・各作品の放送1週目を100%とした相対的な変化を示すもの
・高い維持率は初期の注目度を継続して保っていることを意味する
・低い維持率は、必ずしもその作品の人気が低いことを意味するわけではなく、初期の高い注目度と比較して相対的に低下していることを示す
・作品間の比較は、この相対的な変化のみに基づいており、絶対的な人気度を反映するものではない

 

■夏秋アニメの初回注目度動向

【夏アニメ初回注目度分析:SNS戦略が切り開いた新たな可能性】
夏アニメで高い注目を集めたのは「しかのこのこのここしたんたん」と「逃げ上手の若君」の2作品で、平均の7.5倍以上という注目度を獲得しており、放送前から高い期待を集めていたことがうかがえる。特に「しかのこのこのここしたんたん」は音楽を中心としたソーシャルメディア戦略が高い注目度獲得に貢献したと考えられる。

 

【秋アニメ初回注目度分析:原作人気とリメイク作品が牽引】
秋アニメでは、夏シーズンをさらに上回る注目度の集中が見られた。トップの「ダンダダン」は平均の10倍以上という圧倒的な注目度を記録した。週刊少年ジャンプ+で連載中の人気漫画のアニメ化として、放送前から大きな話題を呼んでいたことが、この高い数値に表れている。

次いで「らんま1/2」と「アオのハコ」が平均の5倍以上の注目度を獲得している。「らんま1/2」は高橋留美子先生の名作リメイクとして世代を超えた注目を集め、「アオのハコ」は週刊少年ジャンプでの連載と積極的なプロモーション展開が功を奏したと考えられる。

  

■新作アニメの成功パターン:夏秋アニメTOP10から読み解く

2024年夏アニメと秋アニメを合わせて初回放送週の注目度を比較すると、秋アニメの「ダンダダン」が首位に立ち、夏アニメの「しかのこのこのここしたんたん」と「逃げ上手の若君」、秋アニメの「らんま1/2」と「アオのハコ」が続く結果となった。 

これら上位5作品に共通するのは、強力なIPか効果的なプロモーション戦略の存在。「ダンダダン」「逃げ上手の若君」「アオのハコ」はジャンプ系列の人気作品、「らんま1/2」は世代を超えて支持される名作のリメイク、「しかのこのこのここしたんたん」はSNSを中心とした話題作と、それぞれ異なるアプローチで高い注目を集めることに成功している。 

  

■夏秋アニメの注目度推移比較

【シーズン平均値の推移(7週目まで)】
夏秋新作アニメの注目度推移の平均値を分析すると、2024年の夏アニメと秋アニメは、ほぼ同様の減衰カーブを描いていることが分かる。両シーズンとも2週目で75%前後、3週目で60%前後まで減少し、4週目以降は初回注目度の約45%前後で安定する傾向が見られる。この類似した推移パターンは、現在のアニメ視聴における一般的な傾向を示している可能性がある。

 

【夏アニメ注目度維持率TOP5の分析】
前回記事の分析で見られた傾向は、7週目の段階で既に顕著に表れていた。特に「負けヒロインが多すぎる」は6週目に182%まで急上昇しており、この勢いがその後の10週目までの高維持率につながっている。同様に「ハズレ枠の状態異常スキル」も7週目時点で119%と高い注目度を維持し、継続的な支持を集めていたことが分かる。

 

【秋アニメ注目度維持率TOP5の分析】
秋アニメで特筆すべきは「ダンダダン」の圧倒的な注目度維持率。初回から一貫して注目度を伸ばし続け、7週目時点で217%という驚異的な数値を記録している。これは夏アニメの最高維持率を大きく上回る成績。

また「来世は他人がいい」は2週目に122%まで上昇後、90%前後の高い水準を安定して維持。「アオのハコ」も2週目に106%まで上昇し、その後緩やかな減少を見せながらも7週目で84%という高い維持率を示している。

 

【プロモーション戦略の効果分析】
夏アニメと秋アニメの注目度推移から、効果的なプロモーション施策の重要性が浮き彫りになっている。夏アニメでは「負けヒロインが多すぎる」が有名タレントのメディア露出により大きく注目度を伸ばし、「2.5次元の誘惑」はゲームリリースとの連動で注目を集めることに成功した。

秋アニメにおいて最も顕著な例が「ダンダダン」。放送開始時の注目度を100とした場合、海外視聴者を中心としたSNSでのショート動画拡散戦略が奏功し、7週目時点で217%という驚異的な数値を記録している。同じく秋アニメの「アオのハコ」も、11月以降、ファミリーマートとのタイアップやサンシャイン水族館でのコラボイベント開催など、作品の世界観を体験できる企画を展開することで高い注目度を維持している。

平均維持率が7週目で40%台まで低下する中、効果的なプロモーション施策を展開した作品は60%以上の高い維持率を記録している。これは、アニメ作品の長期的な成功には、放送開始時の話題提供はもちろんのこと、視聴者との新たな接点を創出し続けることが重要であることを示唆している。

  

■今後の展望:冬アニメ期に向けた示唆

夏秋アニメの分析から、今後のアニメプロモーションにおける重要なポイントが見えてきた。特に注目すべきは、4週目以降の注目度低下への対策。平均注目度が初回の48%まで低下する時期に対し、以下のような施策を行うことが効果的かもしれない。

・視聴者とアニメの接触頻度の向上
・目を引く本編のシーンの切り抜き
・WEB広告やSNS広告で効率の良いクリエイティブの配信
・生活圏に掲出されるポスター等

忙しい現代人は、興味のあるコンテンツを時間のあるときにじっくりとみようと大事にとっておき、結局見ないでしまう傾向があると感じる。そういう人たちに向け、リマインドや今すぐ見なきゃという気持ちを創出することも必要かもしれない。

・作品の流行感の醸成
・作品世界観を体現したコラボカフェやイベント
・定期的な小規模展示や屋外広告の出稿
・ファン同士の会話のネタを提供

今、自分の周りで話題になっていることについて話す流行敏感層にアプローチすることが必要だと考えている。彼らは話題のタネにする目的でアニメを視聴しているように見受けられるのでコアでも所属するコミュニティで話題となるような広報展開が効果的かもしれない。

・気軽にコンテンツを消費できる機会の創出
・アニメ誌や情報サイトなどでの短い時間で作品の魅力を伝える記事の配信
・アニメをショートで配信
・身近なインフルエンサーとの同時視聴

気軽にコンテンツと接触できるように従来なら手をつけないアニメの中身を少し伝えることも必要になるかもしれない。気になってそのままアニメを一気に見てしまう例も報告されている。

冬アニメ期に向けては、放送開始時の高い注目度を活かしつつ、4週目以降の注目度低下を見据えた戦略的なプロモーション計画が求められる。視聴者が作品と継続的に関われる機会を創出することが、作品の成功につながる重要な要素となるだろう。

 

・レポート著者
SevenDayDreamers
湯通堂 圭祐
マクロミルでデータサイエンティストとして複数の新規事業を立ち上げ、その後、FiNC Technologiesでデータ分析、グロースハック、プロダクト開発、経営企画、人事の責任者を歴任。現在は、SevenDayDreamersを創業し、データとAIを活用してコンテンツIPの価値最大化に取り組む。

・レポート編集
アニメデータインサイトラボ
代表:大貫 佑介

株式会社ブシロード
http://bushiroad.com/
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会社情報

会社名
株式会社ブシロード
設立
2007年5月
代表者
代表取締役社長 木谷 高明
決算期
6月
直近業績
売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
7803
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