【決算レポ】ドリコム、24年10-12月は売上2.2倍、黒字転換 『ウィズダフネ』は"正常化"とPC版で成長余地 自社IPWアニメ化など出版も拡大一途
ドリコム<3793>の2025年3月期 第3四半期(2024年10~12月)の連結決算は、売上高41億8200万円(前四半期比120.7%増)、営業利益2億8800万円(前四半期は2億4700万円の損失計上)、経常利益2億7500万円(同2億6500万円の損失計上)、最終利益1億9800万円(同8億6800万円の損失計上)と大幅増益・黒字転換を達成した。
・売上高:41億8200万円(前四半期比120.7%増)
・営業利益:2億8800万円(同2億4700万円の損失計上)
・経常利益:2億7500万円(同2億6500万円の損失計上)
・最終利益:1億9800万円(同8億6800万円の損失計上)
■『ウィズダフネ』は十分な運営ができない中でも大きく貢献
10月15日にリリースした新作『Wizardry Variants Daphne(ウィズダフネ)』が十分な「運営」ができない中でも2ヶ月半で売上高21億6000万円を計上するなど大きく貢献した。その結果、会社全体として前四半期比で売上高は2.2倍と大きく伸び、第1四半期、第2四半期と赤字が続いた営業損益も黒字に転換した。
『ウィズダフネ』については、他の主力タイトルと異なり、自社配信となるため、ストアの支払手数料として売上の30%の費用が発生するほか、リリース時の広告宣伝などの先行投資、不具合対応などの費用も発生したという。いずれも費用増となる要因だが、強烈な増収効果で吸収した。
説明にあたった内藤裕紀社長は『ウィズダフネ』について、「リリース当初の不具合対応やカスタマーサポートの再構築に多くの時間を割いたため、新しいキャラの追加やイベント開催など通常の運営が十分にできない中での成果だ。通常の運用フェーズに入っていく第4四半期は売上が再度伸びる」との見方を示した。
好調の理由について問われると「モバイルゲームの成功ルールと真逆なものを提供し、唯一無二の体験を提供できていることが大きいのではないか」と回答した。通常、ストレスなくゲーム進行できるものがモバイルゲームの主流だが、攻略サイトを確認しながら進めてもすぐに頓挫してしまうなど難易度を高くしているという。
こうした難易度の高さからユーザー同士のやり取りがSNSで活発に行われるようになっており、Youtubeの実況も盛り上がりを見せているそうだ。不具合が多発していた中にあってもアプリストアの評価も高い評価を得ていたのは唯一無二の体験を提供できていることが大きいと分析しているそうだ。
既存の運用タイトルに関しては、季節要因などもあるが、第3四半期としては弱含みで推移したとのこと。第1四半期にリリースした『悪魔王子と操り人形』については、ゲームとしてのサービス終了を発表したが、今後もIPとしての展開は継続していく考え。
▲『悪魔王子と操り人形』のサービス終了が決定し、運用タイトル全般が黒字になったという。
■出版も増収 自社作品のアニメ化も発表
ゲーム事業の好調ぶりが目立つが、IP創出の役割を担うコンテンツ事業はノベル・コミックの刊行が増えており、それに伴って売上も拡大している。引き続き投資フェーズにあるものの、赤字幅も縮小しており、第3四半期の収益改善に貢献したという。
『エリスの聖杯』や『ブレイド&バスタード』と「ドリコムメディア」作品のアニメ化も昨年10月に発表した。『ブレイド&バスタード』は、ウィザードリィの世界観に基づく作品。すでに『ウィズダフネ』とコラボを実施しているが、アニメが海外でも人気になればゲームに今まで以上にポジティブな影響を与えるだろう。
このほか、エンタメ×テクノロジーでWeb3・ブロックチェーン、AIの取り組みも進展した。ブロックチェーンゲームで扱っているゲーム内通貨がBCトークンという形で、日本でも大手の仮想通貨取引所であるコインチェックで取り扱いを開始しており、より多くの人が売買できるような状況になった。また、ゲーム開発を中心としたAIの取り組みも社内で進み、社外販売も発表した。
内藤社長は「モバイルゲーム会社からIP×テクノロジーを軸にエンターテイメントコンテンツをグローバルに提供する企業に転換を図っているが、その中で新規タイトルだけでなく、自社IPのアニメ化も発表し、目指している姿に一歩一歩近づいている」と総括した。
■第4四半期の見通し
2025年3月期第4四半期の業績は、売上高53億円(同10.2%増)、営業利益5億2600万円(同82.6%増)、経常利益4億7800万円(同73.8%増)、最終利益6億2300万円(同214.6%増)を見込む。
・売上高:53億円(同10.2%増)
・営業利益:5億2600万円(同82.6%増)
・経常利益:4億7800万円(同73.8%増)
・最終利益:6億2300万円(同214.6%増)
第3四半期の黒字転換の立役者となった『ウィズダフネ』は、前四半期の不具合対応から通常運用フェーズに移行したことで、さらに売上が伸びていく見通し。Steam(PC)での展開も想定しており、海外を含めたユーザーの獲得を目指して、海外プロモーション展開も強化していく。
内藤社長は「12月下旬から新しいキャラクターやイベントの追加が始まり、メインコンテンツである『奈落』のシナリオを定期的に追加できるようになってようやく通常の運営といえるところだ」とPCリリースも含めて、『ウィズダフネ』の今後の展開に期待を寄せた。
また、新規タイトル『Disney STEP』もこの四半期に日本、韓国、台湾、香港、マカオでリリースする。ディズニーIPを活用したリアルライフ宝探しゲームで、25年春にリリースする予定(3月3日に正式リリース)。これに伴い広告費も増える見通し。
業績予想については、モバイルの新規タイトルについては出してみないとわからない部分があり、獲得ユーザーやアクティブユーザー数、そして売上などの合理的な予想が非常に難しい中でも現時点で知りうる数字・情報をベースとして算定したとのことだった。
▲コンソールゲームやPCゲームの展開についても説明した。試験的な取り組みで短期的には業績への影響は限定的だろうが、中長期の取り組みとして注目したいところ。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793