【決算レポ】コーエーテクモHD、9月中間決算は既存タイトル中心で減収減益…大型新作を続々投入する下期に収益集中

コーエーテクモホールディングスは10月27日、2026年3月期 9月中間期(2025年4〜9月)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比11.2%減の312億円、営業利益は同25.2%減の79億円と減収減益となったが、先に業績予想の上方修正を行ったように、期初計画を上回る水準で着地した。

【第2四半期累計業績】
・売上高:312億6800万円(同11.2%減)
・営業利益:79億6400万円(同25.2%減)
・経常利益:177億9500万円(同15.3%減)
・最終利益:134億6500万円(同15.7%減)
 

 

■エンタテインメント事業、オンライン・モバイルが減速

セグメント別にみると、エンタテインメント事業は、売上高が285億円(前年同期比13%減)、営業利益が77億円(同25%減)と減収減益だった。オンライン・モバイル分野の売上が大きく減少したことが響いた。2023年度に配信を開始したモバイルタイトルのロイヤリティ収入が減少し、オンライン・モバイル分野の売上は197億円から157億円へ約40億円減少したとのこと。

 

一方、コンソール・PC分野の売上はほぼ前年並みだった。『アトリエ』シリーズの新作を9月末に発売し、既存タイトル群のリピート販売が底堅く推移した。DL販売が伸びた一方、パッケージとDLCはやや減少した。協業案件(他社パブリッシング含む)の売上減も見られたという。 

同社は、大型新作タイトルを発売する四半期に収益の多くを稼ぐ傾向にあり、今期は下期、特に第4四半期に集中する見通し。その意味で、この四半期は大型新作を準備する「踊り場」の時期に当たる。同社はシリーズIPを軸に、リメイクやリマスター、DLC展開などの「安定収益化施策」を続けており、既存IPが利益を支える構造を維持した。

 

下期以降、『ゼルダ無双 封印戦記』『仁王3』『ぽこあ ポケモン』などの大型タイトルの発売を控えており、第3四半期と第4四半期に収益が伸びるものと期待される。

 

このほか、アミューズメント施設事業は売上22.9億円(前年同期比10%増)、営業利益3.8億円(同52%増)と好調。既存店舗の稼働率改善が寄与した。不動産事業も「KT Zepp Yokohama」の稼働が貢献し、堅調な増収を確保した。

 

■通期見通しは据え置き 下期に新作集中

2026年3月通期の業績予想は、売上高920億円(前期比10.6%増)、営業利益310億円(同3.5%減)、純利益270億円(同28.2%減)と従来予想を据え置いた。下期に大型タイトルの発売が集中することから、その状況次第では業績予想は上下に変動する可能性がある。為替前提は1ドル=140円で、1円の変動が営業利益に約1億円の影響を与えるとしている。

【2026年3月期の見通し】
・売上高:920億円(同10.6%増)
・営業利益:310億円(同3.5%減)
・経常利益:370億円(同26.0%減)
・最終利益:270億円(同28.2%減)
・EPS:83.07円

【通期計画に対する進捗率】
・売上高:34.0%
・営業利益:25.7%
・経常利益:48.1%
・最終利益:49.9%

  

■プライム市場上場維持を達成 流通株比率37%に

2025年9月には自己株式処分および公募増資を実施した。流通株式比率は3月末の29.9%から37.3%へ上昇し、プライム市場の上場維持基準を全項目で満たした。個人投資家層の拡大も目的とする。

 

 

■「世界トップ10入り」へ 中計で開発・グローバル戦略を強化

同社は2025〜2027年度を対象とする第4次中期経営計画を進行している。長期ビジョンとして「世界トップ10入り」を掲げ、3カ年で累計営業利益1000億円超、単年度400億円の再達成を目指す。

 

事業戦略では、

・マルチプラットフォーム同時展開の推進
・大型タイトルとミドルタイトルのバランス強化
・自社パブリッシングによる海外販売体制の拡充
・IP事業部によるライセンス・グッズ展開の拡大

を柱に据える。

 

 

■下期に注目作が集中 「仁王3」「ゼルダ無双」など

第4次中計に基づく公表済みパイプラインには、以下の大型・注目タイトルが並ぶ。

・NINJA GAIDEN 4(プラチナゲームズとコーエーテクモゲームスの共同開発)- 2025年10月ローンチ
・ゼルダ無双 封印戦記(コーエーテクモゲームス開発)- 2025年11月ローンチ(国内:コーエーテクモゲームス、海外:任天堂)
・仁王3(コーエーテクモゲームス開発)- 2026年2月ローンチ
・ぽこあ ポケモン(ポケモンとゲームフリーク、コーエーテクモゲームスの共同企画・開発)- 2026年春ローンチ
・三國志8 REMAKE with パワーアップキット(コーエーテクモゲームス開発)- 2026年1月ローンチ
・真・三國無双 ORIGINS(コーエーテクモゲームス開発)- 2026年1月ローンチ
・大型DLC 真・三國無双2 with 猛将伝 Remastered(コーエーテクモゲームス開発)- 2026年3月ローンチ
・零~紅い蝶~ REMAKE(コーエーテクモゲームス開発)- 2026年初頭ローンチ

とりわけ『仁王3』については中東・北アフリカ地域への展開も予定されており、グローバル戦略強化の象徴的タイトルとなる。

 

 

■IP事業の拡張も本格化

2022年度に立ち上げたIP事業部では、アニメやグッズ、自社制作フィギュアなどを通じた収益多角化を推進した。『ライザのアトリエ』を中心に、他社アプリとのコラボレーションも進めている。今後はIP活用を独立した事業領域として確立し、グループ収益の成長ドライバーとする構えだ。

  

■開発人員は2700人規模に拡大

2025年度時点でグループの開発人員は2684人に達し、前年から7%増となった。コンソール分野に65%、モバイル分野に35%の比率で投資を継続していく。新規採用と育成を通じ、開発パイプラインの増強を図る。

  

■総括

今回の9月中間決算は、新作のリリース時期の関係もあって減収減益となったものの、計画は上回って進捗している。下期は、大型タイトル群の市場投入による巻き返しが見込まれるところだ。中期的には「開発の拡充」と「グローバル販売力の強化」を両輪とし、世界的総合エンタテインメント企業への成長基盤づくりを進める方針だ。

コーエーテクモホールディングス株式会社
http://www.koeitecmo.co.jp/

会社情報

会社名
コーエーテクモホールディングス株式会社
設立
2009年4月
代表者
代表取締役会長 襟川 恵子/代表取締役社長 襟川 陽一
決算期
3月
直近業績
売上高831億5000万円、営業利益321億1900万円、経常利益499億8800万円、最終利益376億2800万円(202年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3635
企業データを見る