ポータブルゲーミングPCとして高い完成度を誇る「ROG Xbox Ally」。本記事では、実際にROG Xbox Allyを試用した編集部員による座談会の様子をお届けする。第一印象から操作性、ディスプレイ、パフォーマンス、バッテリー、Windowsベースの使い勝手、そして総合的な満足度まで、多角的にその魅力と課題を深掘りします。ゲーミングUMPCの購入を検討している方はもちろん、ROG Xbox Allyに興味がある方も必見です。
■第一印象:軽く、持ちやすく、質感も高い
――:皆さん、実際にROG Xbox Allyを触ってみた最初の印象はいかがでしたか?
編集B:僕はかなり良いと感じましたね。これまでのいわゆるポータブルゲーミングPCの中では、完成度が高いと感じました。
まず、手に取ったときに「軽い」と思いました。他機種と比べると、重量自体はそこまで変わらないはずなんですが、重心の取り方がうまくて、手に持ったときの“軽さ"を感じます。グリップも握りやすく、持ったときの安定感が違いますね。
編集A:確かに、重さそのものよりも重量配分のバランスがいいですよね。持っていても疲れにくいと感じました。
ライター:僕も同感です。デザイン面でも質感が高く、正直、他の機種が少しチープに見えるくらいでした。ASUSらしい高級感があります。
編集B:そうですね。中華系のUMPCも触ったことがありますが、仕上がりのレベルが違います。やはりASUSの製品だなという印象です。
編集A:グリップ部分の加工も良いですよね。滑りにくく、手触りも上質です。
――:では、逆に気になった点はありますか?
編集B:セットアップの手間ですね。最初の起動からゲームを始めるまでの手続きが少し多いと感じました。Windowsベースなので仕方ない部分もありますが、もう少しシンプルだといいかなと。
ライター:確かに。僕はMicrosoftアカウントを持っていなかったので、そこから登録しないといけなくて、少し面倒でした。
編集B:ポータブルゲーミングPC共通の課題ですね。Steam DeckのようにSteamアカウントだけで完結しないので、初心者にはハードルが高く感じるかもしれません。
■操作性:コントローラーの出来は非常に良い
――:操作感についてはいかがでしたか?
編集A:コントローラー対応のゲームに関しては、非常に快適でした。ボタン配置も自然で、背面ボタンの位置も手になじみます。スティックや十字キーの感触も良く、特に不満はありません。
ライター:僕は格闘ゲームを中心に試しましたが、反応が良く、入力の遅延も感じませんでした。普段PS5のコントローラーでプレイしていますが、遜色ないレベルです。
編集B:僕も同じ意見です。Switchよりも操作しやすいと感じました。特にグリップの厚みがしっかりしているので、片手でも安定して持てます。Switchだと薄くて指を引っかけにくいですが、ROG Xbox Allyはその点が優れていますね。
編集A:そうそう。軽く持っても安定して遊べるのは大きいです。UI面でも、ボタン配置の変更がしやすいなど、細かいところまで配慮されています。
ライター:スティックの感触も良かったです。Switchの初代モデルに比べると、明らかに精度が高い。格ゲーでも問題なくプレイできました。
――:入力面で気になった点などはありますか?
編集B:文字入力は少し不便でした。やはりタッチパネルでの入力には限界があります。BluetoothキーボードやUSB接続の外付けキーボードを使えば解決しますが、携帯機としての使い勝手を考えると、もう少し改善の余地はありますね。
ライター:Wi-Fiのパスワード入力などでちょっと手間取りました。画面に表示されるキーボードの反応が鈍いときがあって、そこはWindowsの問題もありそうです。
編集A:確かに。キーボードを繋げば快適ですが、初期設定の段階では少し手こずるかもしれません。
■ディスプレイの印象:想像以上に美しく、描画も滑らか
――:続いて、ディスプレイや映像の印象についてはいかがでしたか?
編集A:思った以上に綺麗だと思いました。発色が良く、細かい描画もくっきりしています。正直、家のモニターより綺麗かもしれません(笑)。
ライター:僕もそう感じました。普段はNintendo Switch Liteを使っていますが、ROG Xbox Allyの美しい描画には驚きました。価格もスペックもぜんぜん違うので、比較すること自体、間違いである気がしますが…。
編集B:リフレッシュレートも高く、軽いタイトルなら120Hzで動作します。『Slay the Spire』のようなGPU負荷が低いゲームでは120fpsが安定して出ていました。一方で、『サイバーパンク2077』など3D系の重量級タイトルでは60fps前後が限界ですが、描画が乱れるような不満は特に感じませんでしたね。
――:Switchと比べても明確に違いが分かる感じですか?
ライター:はい。これはあくまで個人の感想ですが、Switch2と比べてもROG Xbox Allyのほうがグラフィックが美麗に思えます。解像度の差もありますし、全体的にディテールが細かく、奥行きのある映像でした。
■パフォーマンス:重いゲームも十分遊べる
――:動作のパフォーマンス面ではどうでしたか?
編集B:概ね良好でした。試した中では、唯一動かなかったのはベータテストをやっていた『Call of Duty: Black Ops 7』くらいです。それ以外は設定を調整すればほぼ動作しました。『サイバーパンク2077』なども、画質を落とせばプレイできます。
編集A:僕も一通り試しましたが、どのゲームも安定していました。もちろん高画質設定だと60fpsを維持するのは難しい場面もありますが、十分許容範囲です。
ライター:格闘ゲームも遅延なく遊べましたし、RPGなどでは全く支障なしですね。全般的に“快適に遊べる"という印象です。
編集B:ただ、ROG Xbox Ally Xと通常モデルでは性能差を感じました。Xの方はメモリが多く、CPU・内臓GPUの世代が新しいので処理が安定しています。通常版はタイトルによってはフレームレートが30fpsを下回るケースもありました。
■発熱とファンノイズ:改善が感じられる
――:排熱やファンの音についてはどうでした?
編集A:1時間ほど連続で遊びましたが、背面が熱くて持てないということは一切なかったです。ファンの音も思ったより静かでした。
編集B:僕も同じですね。ベンチマークを回すような負荷時はファンが少しうなりますが、それでも許容範囲です。以前のモデル(初代Ally)では、熱でSDスロットが壊れるトラブルもありましたが、今回はそのあたりがかなり改善されている印象です。
ライター:普段Switchを利用していると、「お!排熱してる!」っていう感覚がちょっと新鮮ですよね(笑)。実際、熱をうまく逃がしている設計になっていると思います。
■バッテリー:設定次第で持続時間に差
――:バッテリーの持ちはどうでしたか?
編集B:設定次第でかなり変わりますね。18W固定のバランスモードなら、2時間ほど遊んでもまだ余裕があります。逆にターボモード(35W)だと電池の減りは早いですが、フレームレートの安定感は増します。
ライター:僕は付属のアダプター以外でも充電を試しました。140W対応の充電器を使うと、92Wくらいで急速充電ができました。付属のACアダプター(65W)よりも速い充電ができるのは便利ですね。
編集A:モバイルバッテリーを併用するのも現実的ですね。最近は65W給電対応の製品も増えているので、外でも十分運用できると思います。
■Windowsベースの使い勝手:慣れが必要、まだ粗さも
――:ROG Xbox AllyはWindowsベースのシステムですが、その使い勝手についてはどう感じましたか?
編集B:正直、まだ改善の余地がありますね。ゲームモード中にWindowsの通知が割り込んで動作が止まったり、スリープからの復帰でクラッシュしたりすることがありました。ライブラリーボタンの挙動も少し分かりづらく、UIはもう少し洗練されてほしいと思います。
ライター:ライブラリーモードから復帰しようとしたとき表示がおかしくなる時がありました。初めて触る人には少しとっつきにくいと思います。ライブラリ画面にデフォルトで入っている宣伝用のゲームが削除できなかったり、カスタマイズの自由度が分かりにくかったりしました。
編集A:慣れてくるとそれなりに使えますが、最初の数時間は結構困りました。Windowsとしての機能を維持しつつ、ゲーム機としての分かりやすさを両立するのは難しいと思いますが、もう少しチュートリアル的な導線があると助かりますね。
編集B:あと、ボタンまわりも若干混乱しやすいです。コマンドセンターで温度の確認や動作モードを切り替えられるのは便利ですが、機能の多さに慣れるまで時間がかかる。ガジェット好きには嬉しいけど、一般ユーザーは戸惑うかもしれません。
ライター:確かに。メニューボタンや表示ボタンの機能もソフトによって違うので、最初は混乱しました。
編集A:ゲーム専用機に比べると「ホスピタリティ」が足りないというか、まだWindowsらしい複雑さをそのまま持ち込んでいる印象です。
■クラウドゲームやリモートプレイ:今回は未検証だが期待あり
――:クラウドゲームやリモートプレイは試されましたか?
編集B:今回は時間の都合で試せませんでした。ただ、スペック的にはGeForce NOWやSteamリモートプレイにも十分対応できるはずです。
ライター:そうですね。軽めのクラウドプレイなら快適に動くと思います。
■快適性と満足度:操作感は高評価、重量には課題も
――:全体としての快適性や満足度はいかがでしたか?
編集A:ゲームの快適性は高いです。コントローラーの操作性も良く、描画も滑らかで、遊んでいてストレスを感じません。ただ、軽いとは言いましたが、物理的な“重さ"は気になりますね。いくら工夫されていると言っても、1時間を超えると手が疲れてくる。Switch Liteくらいの重量が理想かなと思いました。
ライター:僕も同じです。テーブルに置いたり体勢を変えながらプレイすることが多くなります。長時間遊ぶには少し工夫が必要ですね。
編集B:サイズも7インチと大きめなので、個人的にはもう一回り小さくてもいいかなと思いました。有機ELで6インチ程度のモデルが出たら自分には理想的です。
――:持ち運びに関してはどうでしょう?
ライター:十分アリだと思います。重量はあるとはいえ、ノートPCに比べれば断然コンパクトですし、外でも遊べます。
■価格とターゲット:誰に向く製品か
――:価格面についてはどう感じましたか?
編集B:ROG Xbox Ally Xは13万9800円、通常版は8万9800円です。5万円の差は大きいですが、メモリや性能差を考えるとXの方が安心ですね。
編集A:とはいえ、その価格差で「Switch 2」本体がまるごと買える金額差ですからね(笑)。ライトユーザーなら無印でも十分遊べると思います。
ライター:僕は“1台目のPC"としては勧めにくいかなと思いました。Windowsまわりの操作に慣れていない人には、トラブル対応が少し大変です。PCをすでに持っていて、出張先や外出先でもゲームを遊びたい人には向いていると思います。
編集B:その通りですね。ゲーミングノートPCと比較しても、ROG Xbox Allyのほうが携帯性は高いですが、ノートのほうが安定性はあります。どちらを取るかは“使うシーン"次第でしょう。
ライター:初報をみたとき、ポータブルゲーミングPCとしてはお得に感じたものですが、SNSなどでXboxの携帯機と考えると高いという声も見ました。普段ゲーミングPCを使わない人には高く感じるのかもしれませんね。
編集A:とはいえ、「Switch」で遊んでいて「もう少し本格的なゲームを遊びたい」という層にはちょうどいいかもしれません。
編集B:ただ、ノートPCを10〜11万円で買って、周辺機器を揃えても同じくらいになるので、コスパだけで見れば悩ましいところですよね。
総評:現時点で最良のポータブルゲーミングPC
――:では最後に、ROG Xbox Ally全体の評価をまとめると?
編集B:このジャンル(ポータブルゲーミングPC)では、現時点で最良の選択肢だと思います。質感、操作性、性能、どれを取ってもバランスが良い。完成度は非常に高いです。
編集A:僕もそう感じました。14万円という価格をどう捉えるかは人それぞれですが、この性能をこのサイズに詰め込んだことを考えると、むしろ“安い"と言っていいと思います。
ライター:パソコン初心者には少し難しいですが、ガジェット好きやゲーム好きにはたまらない製品ですね。
――:ありがとうございます。皆さんの意見を総合すると、ROG Xbox Allyは「ゲーミングUMPCとしての完成度が高く、使う人を選ぶが満足度も高い」――そんな1台と言えそうです。