
東京株式市場では、この日、2025年最後の取引となる大納会を終え、日経平均株価は5万円で終えた。この1年、人工知能(AI)の発展と普及、米国の関税政策、日中関係の悪化など環境の変化があったものの、ゲーム・エンタメ関連企業のうち、時価総額が年初を上回ったのは集計対象94社中、51社だった。プラスとなった企業が多かったが、ゲームで新型ハードの発売やアニメ映画の世界的なヒットなどを考えると、全体に比べて出遅れた印象は拭えない。トランプ関税の逆風下で底堅さを示したものの、夏以降に起こったAI関連を物色する流れに乗り切れなかった。
時価総額上位を見ると、ソニーグループ<6758>をトップに、任天堂<7974>が続いたものの、ネクソン<3659>が3位に躍り出た。『メイプルストーリー』や『アラド戦記』など主力シリーズの成長が続いていることに加え、『ARC_Raiders』が大ヒットした。配当や自社株買いにも積極的で株主価値向上に取り組む姿勢が評価されたという。
年初ではコナミグループ<9766>もネクソンに時価総額は抜かれたが、こちらも47%増と大きく伸びた。バンダイナムコホールディングス<7832>を抜いて4位に順位を上げた。『eFootball』が引き続き好調に推移し、『METAL GEAR SOLID ∆: SNAKE EATER』や『SILENT HILL f』が初動で100万本を突破するなど収益に寄与した。さらに『パワフルプロ野球2024-2025』もシリーズ初の累計出荷100万本を突破した。
東宝<9602>がサンリオ<8136>を抜いて7位に順位を上げた。『劇場版「鬼滅の刃」』や実写邦画歴代1位となった『国宝』などメガヒット作品が貢献し、国内興行収入が過去最高を記録した。サンリオも時価総額を伸ばしたが、東宝は23%も伸びた。ABEMAの収益改善とゲームが好調だったサイバーエージェント<4751>もスクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>に次ぐ10位にランクアップした。

注)時価総額の単位は億円。
他方、時価総額増減率を見ると、暗号資産やAI関連事業に注力すると企業の上昇が目立った。イオレ<2334>やサイバーステップ<3810>、KLab<3656>などが該当する。もっともそういった会社は、時価総額の小さい、いわゆる小型株の占める比率が多いため、大きく上下しやすい傾向にある。短期的な収益を狙う投資家には魅力に映ったのではないか。
Link-U<4446>は、マンガアプリの開発を行っているが、海外展開で成長力を引き上げていく方針を示した。アニメ配信サービス大手のCrunchyrollやサウジアラビアのTarjama社と組むなど積極的な展開が評価されている。投資局面にあるが、業績に反映されてくるのか注目される。なたライトノベルやコミックを展開するアルファポリス<9467>やエディア<3935>は、川下であるアニメに進出するとのアナウンスを行い、時価総額も大きく伸びた。
このほか、VTuber関連では、ANYCOLOR<5032>が時価総額を82%伸ばした一方で、カバー<5253>が36.2%減らすなど対照的な状況となった。時価総額もANYCOLORの2962億円に対してカバーは990億円と差が出ている。
記事の冒頭で、全体相場に比してゲーム・エンタメ関連株は出遅れ感がでるようになったと書いたが、2025年11月頃から物色する動きが一部で見られた。ただ、AI関連の上昇局面が一服したときの対象として物色される程度で、限定的なものであった。2026年は、中国との関係悪化の影響など懸念事項はあるものの、コンテンツ産業への政策的な後押し、Nintendo Switch 2の本格的な普及など、ゲーム・エンタメ関連は、希望的観測も含めて水準是正の動きが出てくることを期待したい。投資格言には次のような言葉がある。「国策に売りなし」。

注)増減率は大発会と大納会終了時間での比較。
注)時価総額の単位は億円。