
カプコン<9697>が4月17日に発売した完全新規IP『プラグマタ(PRAGMATA)』が、発売から16日間で全世界販売本数200万本を突破した(関連記事)。既存シリーズでも苦戦することの多いコンシューマ市場において、完全新規IPがここまでのスピードで支持を広げるのは異例と言っていいだろう。
本作はTPSに“ハッキングパズル”を融合した独創的なゲーム性に加え、主人公・ヒューとアンドロイドの少女・ディアナによるバディドラマを軸に据えた作品だ。
実際にプレイして感じたのは、『プラグマタ』は単に「アクションが面白い」だけではないということ。物語と戦闘、その両輪が高いレベルで噛み合うことで、“続きが気になってやめ時を失うゲーム”になっている。
本稿では、プレイレビューを通して、本作がヒットした理由にも迫っていきたい。
■月面で出会った男と少女――『プラグマタ』は“2人で戦う”SFアクション
『プラグマタ』は、近未来の月面基地“クレイドル”を舞台にしたTPSアクションゲームだ。主人公となるのは、宇宙服に身を包んだ男・ヒュー。彼はある事故をきっかけに、月面施設で謎のアンドロイドの少女・ディアナと出会う。
月面基地ではAI「IDUS」がシステムを掌握しており、ヒューは異物として排除対象となってしまう。IDUSは、極めて合理的な判断で月面基地を管理するAIであり、何らかの異常事態が発生しているようで、ヒューのような“想定外の異物”に対しては排除行動を取る。
そんな極限状況の中、2人は協力しながら月面からの脱出を目指していくことになる。
▲月面施設を探索しながら、2人は脱出への手掛かりを探していく。管理者IDUSは事あるごとに行く手を阻んでくるが、高性能自立プラグマタであるディアナはIDUSに制御されていないという。
本作最大の特徴は、ディアナによる“ハッキング”と、ヒューによるTPSアクションを同時に成立させている点だ。敵をハッキングして弱点を露出させ、その隙に銃撃を叩き込む――という独特の戦闘システムは、従来のTPSにはないプレイ感覚を生み出している。
さらに、単なるバディアクションに留まらず、ヒューとディアナの関係性そのものがゲームの軸になっているのも特徴だ。プレイを進めるほど、プレイヤーは「この2人の旅を最後まで見届けたい」と感じるようになる。
■“アンドロイドらしさ”と“人間らしさ”が同居するディアナの魅力
本作を語る上で、まず欠かせないのがディアナの存在だ。ディアナは高度な知能を持つアンドロイドでありながら、時折見せる感情表現が非常に人間らしい。
地球の文化や記憶が保存された「アースメモリ」に対して「早く見てみたい」と興味を示す姿には、純粋な好奇心や子供らしさが感じられる。一方で、「必要なものは?」というヒューからの質問に対して「稼働に必要なのは電気くらいかなぁ」と答えるなど、ふとした瞬間には機械的な合理性ものぞかせる。
この“人間らしさ”と“アンドロイドらしさ”のアンバランスさが絶妙で、プレイを進めるほど愛着が湧いていく。
▲入手したアースメモリはシェルターでディアナにプレゼントすることができる。好奇心旺盛な一面と、時折見せる機械らしい合理性のギャップが愛おしい。
また、戦闘面でもディアナは単なる同行キャラクターではない。本作のハッキングシステムは彼女の能力によって成立しており、ヒュー1人では到底突破できない過酷な戦いを、2人で乗り越えていく構図になっている。
▲ディアナのハッキングは、戦闘だけでなくドアのロックを解除したり、施設のギミックを稼働させたり、さまざまな場面でヒューを助けてくれる。
基地ではディアナと自由に会話できる場面も用意されている。こうした何気ないやり取りによって、ディアナは単なる“戦闘用パートナー”ではなく、“一緒に旅をしている存在”として自然に愛着が湧いていく。
だからこそ、物語上だけではなく、ゲームシステムとしても“相棒感”が強い。
▲仲良くなると絵を描いてプレゼントしてくれることも。2人の思い出が形として残っていくのが嬉しい。
■子供が苦手な男が見せる、不器用な優しさ
ヒューもまた、本作の魅力を支える重要なキャラクターだ。無骨で感情表現は決して得意ではないが、だからこそディアナとの旅を通じて少しずつ見せる変化に人間味がある。
彼は当初、「子供は苦手だ」と語るものの、ディアナと行動を共にする中で、少しずつ不器用な優しさを見せていく。
ディアナを危険から遠ざけようとしたり、人間らしい感情や価値観を伝えようとしたりする姿からは、父親にも似た感情が垣間見える。特に印象的だったのは、ディアナの超人的な能力に対して、ヒューが度々驚きを見せる場面だ。
それは単に性能への驚きではなく、“ディアナを子供のように見ているからこそ”生まれる反応にも感じられた。
また、初めて強大な敵を倒した際、ヒューはディアナに「うまくいった時はこうするんだ」とハイタッチを教える。旅を続けるうちに、それは単なる仕草ではなく、危機を乗り越えたことを互いに確かめ合う“2人だけのコミュニケーション”へと変化していく。だからこそ、物語が進むにつれて自然にハイタッチを交わす姿には、2人の関係性の変化がしっかりと表れていた。
こうした小さな積み重ねが、本作のドラマ性を強く支えている。
▲危機を乗り越えるたび、自然にハイタッチを交わす姿が微笑ましい。旅を通じて、ヒューとディアナの距離感も少しずつ変化していく。
■“考え続けるTPS”を生み出した、ハッキングパズルとの相互作用
『プラグマタ』最大の独自性は、やはりTPSとパズルを融合した戦闘システムだろう。
戦闘では、ヒューによる銃撃だけでは敵に決定打を与えられない。ディアナによる“ハッキング”で敵の装甲や防御システムを解除し、弱点を露出させることで、初めて大ダメージを与えられるようになる。つまり本作では、「撃つ」だけではなく、「弱点を作る」工程そのものが戦闘に組み込まれているのだ。
ハッキング時には専用画面が表示され、一筆書きの要領でパネルを操作して緑のゴールを目指すパズルが展開される。基本的には、青色のマスを多く通るほどハッキング自体のダメージが増加し、敵の装甲解除時間も延長されるので、全てを通過できるのがベスト。しかし、必ずしも全ての青マスを通る必要はないため、戦況に応じて通るマスを見極める判断力も必要だ。
▲ヒューの攻撃を有効なものにするには、ディアナによる“ハッキング”が不可欠となる。
さらに、物語が進むと、通過することで特殊な効果が発動する黄色のマス「ハッキングノード」が登場する。ハッキングノードには、防御力を低下させるものや、ハッキング効果を複数の敵へ伝播させるものなど、様々な種類が存在する。どのノードを経由するかによって戦況が大きく変化するため、瞬時の判断も求められる。
このほか、物語が進むにつれハッキングにもさまざまなギミックが増加していき、パズルには副次的要素のみには留まらない奥深さが生まれていく。
▲特殊効果を持つ「ハッキングノード」の存在が、戦闘にさらなる奥深さを与える。
面白いのは、このパズルが“安全地帯”で行われるわけではない点だ。ハッキング中も敵は容赦なく襲いかかってくるため、プレイヤーは回避・位置取り・照準操作を行いながら、同時にパズルも処理しなければならない。
その結果、本来は思考型ゲームであるはずのパズルに、“時間切れ寸前の焦燥感”が生まれている。これは従来のTPSにも、一般的なパズルゲームにもない感覚だった。
さらに、TPS部分も単純な撃ち合いでは終わらない。敵ごとに弱点部位や攻撃モーションが異なり、どのタイミングでハッキングを通すか、どの武器を使うかが重要になる。特殊な武器には弾数制限もあるため、“強武器だけで押し切る”戦法は取りづらい。限られたリソースをどう配分するかも攻略の鍵になっている。
▲本作では、敵の攻撃を捌きながらハッキングを進める必要があるため、プレイヤーは常に複数の判断を同時に迫られる。この武器管理システムも、戦闘に独特の緊張感を与えていた。
そのリソース管理を支えているのが、ヒューの武器システムだ。ヒューは4種類の武器を持ち替えながら戦闘に臨む。
火力は低いものの唯一弾数が無限の「プライマリーユニット」を軸に、高火力の「アタックユニット」、足止めなど特殊効果を持つ「タクティカルユニット」、バリアやデコイで支援を行う「ディフェンスユニット」を状況に応じて使い分けていく。
特に「アタックユニット」「タクティカルユニット」「ディフェンスユニット」は、残弾数がゼロになるとその場で消滅してしまうため、「今使うべきか、それとも温存するべきか」という判断も重要になる。
▲フィールドに落ちている武器は種類ごとに色分けされているため、瞬時に必要な装備を判断しやすい点も親切だ。戦況が目まぐるしく変化する作品でありながら、UIやエフェクトは非常に視認性が高く、瞬時に必要な情報を判断しやすい点も快適だった。
こうした判断の積み重ねによって、『プラグマタ』の戦闘は単なるTPSではなく、“考え続けるアクション”として強い独自性を生み出していた。
そして何より秀逸なのは、ハッキングとTPSが互いを補完し合っている点だ。ハッキングで弱点を露出できる時間は限られているため、TPS側にも自然と緊張感が生まれる。逆に、敵の猛攻を捌きながらパズルを解く必要があるため、パズル側にもアクションゲーム的な焦りが生まれている。
この“相互作用”こそが、『プラグマタ』の戦闘を唯一無二の体験へと押し上げている最大の理由だろう。
■探索したくなる、“人の痕跡”に満ちた月面基地
探索面の完成度も非常に高い。月面で未知の新素材を研究しているという世界観は、それだけでSF好きの心をくすぐる。「こんな研究施設が月面に存在していたのか」と歩くだけでワクワクさせられるはずだ。
さらに本作は、そのロマンに満ちた施設群を、プレイヤー自身の足で隅々まで探索できるのが楽しい。
エリアごとにテーマ性も用意されており、暗闇の施設でライトを頼りに進んだり、月面エリアで低重力アクションを活かした移動を行ったりと、シチュエーションにも変化がある。
また、細かい場所に配置されたアイテムを発見する楽しさも大きい。施設内の至るところには、単なる強化アイテムだけでなく、月面で生活していた人々の記録も残されている。断片的なログやメッセージから当時の暮らしを想像できる作りになっており、“人が生きていた場所”として月面基地にリアリティを与えていた。
▲月面という閉鎖空間ならではの静けさや、機械音が響く音響演出も雰囲気作りに大きく貢献しており、“孤独な月面探索”としての没入感を高めていた。
さらに、マップの探索率が表示されるため、自然と100%を目指したくなる作りになっており、このあたりには『バイオハザード』シリーズなどで培われたカプコンらしい探索設計のノウハウも感じられた。
特に本作は、同社内製エンジン「RE ENGINE」によって培われた空間表現力もあり、緻密に作り込まれた施設描写や、“人がいた痕跡”を感じさせる環境表現にも強みがある。
実際、施設内に残されたログや生活感のあるオブジェクトから物語を想像させる作りには、『バイオハザード』シリーズのような環境ストーリーテリングに加え、『モンスターハンターワイルズ』にも通じる“その場所で人が暮らしていた痕跡”の描写力も感じられた。
▲施設内には、月面で暮らしていた人々の痕跡も数多く残されている。断片的なログから、彼らの生活を想像するのも面白い。
■“成長の実感”が最後まで途切れない強化システム
強化システムも、本作の没入感を支える重要な要素だ。
物語が進行するたびに新たな能力や戦術が解放されていくため、最後まで“できることが増えていく感覚”が続いていく。探索で集めた素材やアイテムにも明確な意味があり、「見つけたものをちゃんと活用できる」設計になっている点も嬉しい。
また、特殊武器には弾数制限があるため、特定武器だけに依存する戦い方になりづらく、複数武器を育てる意味もしっかり生まれている。
▲ルナフィラメントを消費して武器を強化することで、持ち込みが可能になるほかダメージや連射速度といった性能を向上させることができる。また、アタッチメントを増やせばできるアクションが増えていく。
▲「強化コンポーネント」を消費することで能力を伸ばすことができる。ヒューとディアナ双方が成長していくことで、システム面だけでなく、2人の旅路そのものにも成長が感じられるのが印象的だった。
また、本作にはトレーニングシミュレーションも用意されている。単なるチュートリアルではなく、「〇秒以内に目標地点へ到達する」「武器を駆使して敵を全滅させる」など、さまざまなミッションが用意されており、戦闘システムへの理解を深められる内容になっている。
クリア報酬として強化・育成アイテムも獲得できるため、やり込み要素としてもしっかり機能しているのが嬉しい。特に本作は、武器ごとの特性や敵の挙動を理解するほど立ち回りの幅が広がっていくゲームだからこそ、“練習することそのものが楽しい”設計になっているのが印象的だった。
単に報酬目的で挑戦するだけでなく、「もっと上手く立ち回りたい」と自然に思わせてくれる点も、本作の戦闘完成度の高さを物語っている。
さらに、育てた能力や武器を活用できる場所として用意されている高難度エリア「レッドゾーン」の存在も印象的だ。レッドゾーンは、IDUSが威嚇目的で特別なボットを配備した危険警戒区域となっており、次々と出現する敵を撃破していくことが目的となる。
クリアすることで、「ピュアルナム」や「カスタムモジュール」といった貴重な報酬も獲得できるため、育成要素とも密接に結びついている。
▲カスタムモジュールは、装備することでハッキング可能な距離を伸ばしたり、敵との距離によってダメージがアップするなど、さまざまな効果を得られる。
本作の戦闘は理解が深まるほど面白さが増していくタイプだからこそ、“自分の実力を試したい”と思わせるエンドコンテンツとの相性が非常に良い。特にトレーニングシミュレーションやレッドゾーンでは、敵の特性を見極めながら、限られた武器やハッキングをどう使うかが重要になるため、プレイヤー自身の理解度や判断力がそのまま試される感覚があった。
戦闘、探索、強化、物語が短いサイクルでテンポ良く循環していくため、「あと少しだけ進めたい」が止まらなくなる構成になっている点も、本作の中毒性を支えていた。
『プラグマタ』は、TPSとパズルを融合した独創的な戦闘システムだけでなく、ヒューとディアナの関係性を丁寧に描いた作品だ。
特にディアナは、本作を象徴する存在と言っていい。“守りたくなるかわいさ”と、“戦闘で頼れる相棒感”を同時に成立させたことで、プレイヤーは自然と彼女に感情移入していく。この「感情」と「システム」の両面でプレイヤーとの結び付きを作れたことも、本作が支持を集めた大きな理由だろう。
そして、その感情移入があるからこそ、「2人がどんな結末を迎えるのか」を最後まで見届けたくなる。
完全新規IPでありながら発売16日で200万本突破という異例のヒットを記録した背景には、この“独創的なゲーム体験”と“キャラクターへの強い愛着形成”が高いレベルで噛み合っていたことが大きいのではないだろうか。
『プラグマタ』は、単なる新規IPではなく、“新しい体験そのもの”としてプレイヤーに受け入れられた作品だった。
▲『プラグマタ』が優れていたのは、“戦闘が面白いから続けたくなる”だけではなく、“この2人の旅を見届けたいから先へ進みたくなる”感情を、ゲームシステムと物語の両面から成立させていた点にある。
なお、本作の雰囲気が気になる人は、芸人の狩野英孝さんやディアナ役の声優・東山奈央さんによるプレイ配信をチェックしてみるのもオススメだ。特に序盤の空気感や、ディアナの魅力、独特な戦闘テンポなどは、映像で見ることでより伝わりやすいだろう。
【#1】EIKOがPRAGMATAを生配信!【プラグマタ】
【生配信】東山奈央『PRAGMATA』体験版 実況プレイ!
(文 編集部:山岡広樹)
■『プラグマタ(PRAGMATA)』
©CAPCOM
会社情報
- 会社名
- 株式会社カプコン
- 設立
- 1983年6月
- 代表者
- 代表取締役会長 最高経営責任者(CEO) 辻本 憲三/代表取締役社長 最高執行責任者(COO) 辻本 春弘/代表取締役 副社長執行役員 兼 最高人事責任者(CHO) 宮崎 智史
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1696億400万円、営業利益657億7700万円、経常利益656億3500万円、最終利益484億5300万円(2025年3月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9697












