マンガのコンテンツスタジオとして、縦読みマンガ・横読みマンガの双方を手がけるSTUDIO ZOON。前編では、編集者の視点から作品づくりや組織の特徴について掘り下げた。
後編では、マンガIP事業本部 STUDIO ZOON事業責任者の新路純也氏にインタビュー。広告営業、Amebaマンガを経てSTUDIO ZOONの立ち上げに携わってきた同氏に、ビジネスプロデューサーの役割や、編集者と一体となって作品を広げていく組織体制、そして同職種で求められる人物像について聞いた。
目次
書店営業、メディアミックス、組織づくりまで。ビジネスプロデューサーの幅広い仕事
――まずは、新路さんのご経歴について教えてください。
新路氏:私の最初の配属は広告事業本部でして、そこから6年ほど広告営業として働いていました。
具体的には、広告運用に関わったり、お客様の前に立つアカウントプランナーとして業務を行ったりしていました。
その後、3年ほど前に社内制度を利用して異動しました。もともとマンガが好きだったことに加え、社内でこれからマンガ事業が盛り上がっていく部署があると聞いたことがきっかけです。
最初は、電子書籍サービス「Amebaマンガ」の部署へ異動し、そこで市場感などを学びながら、プラットフォーム側の責任者を務めました。その後、STUDIO ZOONの立ち上げのタイミングで、こちらに移ってきたという経歴になります。
――STUDIO ZOONでは、最初からビジネスプロデューサーという肩書きだったのでしょうか。
新路氏:
立ち上げ期だったので、最初は「営業なのか、何なのか」といった状態でした。ただ、今で言うビジネスプロデューサーに近い立ち位置で動いていました。
現在は、事業責任者という立場で動いています。組織全体のお話をすると、専門でビジネスプロデューサーを担っているメンバーが数名います。まだ少人数な組織なので、私も事業全体を見ながらビジネスプロデューサーとしても一緒に動いている形です。
――具体的に、STUDIO ZOONにおけるビジネスプロデューサーは、どのような役割を担っているのでしょうか。
新路氏:
少し前に、ビジネスプロデューサーのメンバー数名がインタビューを受けた記事がnoteに掲載されたのですが、その時のタイトルが「編集が作品を作る以外、すべて」でした。役割としては、その言葉がかなり近いと思っています。
大きく分けると、役割は2つあります。1つ目は、事業を前に進めるために、さまざまな試行錯誤を中心となって動かしていくことです。STUDIO ZOONはまだ立ち上げから日が浅く、市場の変化も非常に早い。だからこそ、決まったやり方だけで進めるのではなく、色々なことを試しながら形にしていく必要があります。
2つ目は、営業的な側面や、IPを作っていくうえでのメディアミックスなどを考えることです。作品を広げていくには、多くの人が関わります。その間に立つポジションとして、さまざまな領域に関わりながら動いています。
――「編集が作品を作る以外、すべて」となると、書店への営業や取次とのやり取り、作品のプロモーション戦略、メディアミックス案件の相談窓口、商品化の窓口なども含めて担当されているのでしょうか。
新路氏:
おっしゃる通りで、本当に幅広いです。まず、書店向けの営業や販促活動があります。また、立ち上げ初期は縦読みマンガを多く作っており、分業制で制作を進めていました。そのため、制作に関わっていただく作家さんだけでなく、企業さんを開拓する業務も行っていました。
国内だけでなく、韓国のスタジオさんと関わることも多く、実際に韓国へ市場分析や商談に行ったこともあります。
また、メディアミックスや、声優さんを起用したイベントの仕込みといった、外向きの動きもあります。
それとは別に「組織を作る」という内向きの動きもあります。編集者と私たちビジネスプロデューサーが、どのように作品を作っていくのか。どう情報を仕入れ、どう共有していくのか。そうした議題について会議体を設けて進行することもあります。
そのため、社外に向けた営業や展開だけでなく、社内の体制作りも含めて、内外問わず幅広く担当している職種だと思います。
――かなり幅広い領域を担当されているのですね。
新路氏:
そうですね。現在、この職域を数名で動いているので、優先順位をつけるのが大変な部分もあります。
――一方で、幅広く見られるからこその面白さもありそうです。
新路氏:出版業界には、これまでの業界を作ってきたような歴史のある企業が多くありますが、弊社にも、そういった企業から来ていただいた経験豊富な編集者が多く在籍しています。そうしたメンバーと一緒に、「新しくどう作っていくか」をゼロから考えられる機会は、作ろうと思ってもなかなか作れるものではないと思っています。
ゼロから一を作り、一から十へと広げていく。その過程に関われるのは、経験としても非常に稀有ですし、とても面白い部分ですね。
作品にも、組織づくりにも関われる。“歯車感”のない面白さ

――大手企業では、ライセンス窓口の方はその業務に専念するなど、役割がかなり細かく分かれていることも多いと思います。全体を見渡しながら関われるのは面白そうですね。ちなみに、新路さんは出来上がった作品の読み合わせなどにも携わっているのでしょうか。
新路氏:はい、携わっています。私たちの組織は積極的にフィードバックを実施することが当たり前になっており、それもあってコミュニケーションの頻度が非常に多いんです。
社内の人間が最初の読者になるケースも多いので、私たちビジネスプロデューサーも作品を読んだ上で、フラットに感想を伝えるようにしています。これは、どの作品でも意識して行っているコミュニケーションです。
私は編集経験があるわけではありません。ただ、作品を読み、市場分析も踏まえたうえで、「ここが良いですね」「ここは少し分かりづらいかもしれません」「ここをもっとピックアップした方が面白くなるのでは」といった意見を伝える立場として関わっています。
最初は、経験の長い編集者に対して「どこまで言っていいのか」と迷うこともありました。ただ、今はそういった壁もなく、思ったことを伝え合えるフィードバック文化が根付いています。
――ビジネスプロデューサー側から編集者や作家にフィードバックできるのは、非常に面白い取り組みだと思います。そうした点も含めて、STUDIO ZOONのビジネスプロデューサーだからこそできる経験は何でしょうか。
新路氏:
やはり「このタイミングだからこそできる面白さ」が一番大きいと思います。今は組織を作り上げながら、大ヒットを生むために何をすべきかを一緒に考えていくフェーズです。今後数年で組織をさらに大きくしていきたい中で、自分が作ったものがきちんと成果につながっていく。「歯車感」がまったくない状態で働けるのは、大きな魅力だと思います。
情報収集はもちろん、メディアミックスの展開先をグループ内で考え、つなげていく動きも、今後はよりダイナミックに取りやすくなるのではないかと思っています。
――大手企業では仕組みが確立されているぶん、自分が「歯車」になりやすい面もあると思います。裁量を持ちながらダイナミックに動けるのは、今のSTUDIO ZOONならではの面白さですね。
新路氏:
そうですね。メディアミックスについては、これから「そうなったらいいな」という期待も含んでいます。
ただ、まずは今のダイナミックさを楽しみながら、しっかり成果を出していける環境が、STUDIO ZOONのビジネスプロデューサーとして働く面白さなのではないかと思っています。
編集とビジネスの壁をなくし、作品をより良く届けるために

――社内でのコミュニケーションについても伺いたいです。編集者の方々、あるいは外部の作家さんとのコミュニケーションという観点で、意識されていることはありますか。
新路氏:
基本的に、作家さんと私たちビジネスプロデューサーが直接コミュニケーションを取ることはほとんどありません。担当編集者がいるので、作家さんとのやり取りは編集者が責任を持って進めてくれています。
ただ、先ほどお話ししたように、社内では「率直に話す」「フィードバックする」「コミュニケーションの数を多くする」といったことが自然に行われています。意識しているというより、今の組織の文化として根付いてきている感覚があります。
コミュニケーションの頻度はかなり多いと思いますし、編集とビジネスプロデューサーの間に壁が少ない状態で動けていると思います。
――作品を作ることと、その作品を売ることを両立させる立場でもあると思います。そのあたりのバランス感覚について、意識されている部分はありますか。
新路氏:
事業の目標にピントを合わせると、実は目指している方向はみんな同じだと思っています。
言葉を選ぶのが難しいですが、やはり全員、自分が作っているものは「売れる」と信じて動いています。それは大前提です。そのうえで、「どう売っていくか」を必死に考えるのは当然ですし、最初の読者として作品を見た時に「もっとこうできないか」と感じることがあれば、率直に話した方がいいと思っています。
それは作る側にとっても、売る側にとってもプラスになるからです。だからこそ、コミュニケーションの量はとても大事にしています。
――作る側と売る側が、同じ目標を見ながら意見を出し合うことが重要になるわけですね。
新路氏:
そうですね。結局、ビジネス側だけを考えていても駄目なんです。出版社にとっての商品は、やはり「作品」です。
作品を作る編集者や作家さんが、良いものを作れる環境にしていかなければいけません。一方で、良いものができた時に、それをしっかり売れる土壌も整えておく必要があります。
そこが連携できていないまま、「売ること」だけを考えていても仕方がありません。作ることと売ること、その両方のバランスを見ながら進めていくことが重要だと思っています。
「何でも屋さん」の立ち上げ期だからこそ、出版未経験者にもチャンス
――では採用・求人についても伺っていきたいと思います。まず、ビジネスプロデューサーという職種において、どのような人材を求めていますか。
新路氏:
まずは「変化を楽しめる人」です。不確かなことが非常に多い環境ですし、状況が変わっていくだけでなく、自分たちが引っ張って変えていかなければならない場面も多くあります。そうした変化を楽しめるといいですね。
さらに、ビジネスプロデューサーというポジションで言うと、強い意志を持って動けるかも重要です。
新しいことが次々と起き、状況が変化していく中で、ビジネスプロデューサーとして周囲を引っ張っていく役割が発生します。その際、人を巻き込むためにも、自分が何をやりたいのかを明確に周囲へ伝えられることが非常に大切です。
もちろん、業界未経験で入社される方もいると思うので、最初からすべてのスキルを持っている必要はありません。ただ、「自分は何をしたいのか」と自問自答しながら、チャレンジしていこうとする心意気を持てるかどうかは、とても大事なポイントだと考えています。
――常に変化する不確実な状況に柔軟に適応しながら、先導役として周囲を引っ張っていく意志が重要になるわけですね。ちなみに出版未経験の方でも、活躍できる余地はあるのでしょうか。
新路氏:
大いにあると思います。まさに私も含めて、現在のビジネスプロデューサーのメンバーは全員が出版未経験です。
そもそも「ビジネスプロデューサーとは何か」というところから始まっていますし、逆に言えば、今は「何でも屋さん」に近い部分もあります。
将来的には、ある程度専門職として強みを発揮できる組織になっていく方が良いとは思っています。ただ、今は立ち上げ期ならではの「大変だけれど面白い」フェーズです。全員が領域を分けすぎず、必要なことを何でもやっている状態に近いです。
ですので、今のタイミングであれば、出版業界での経験の有無や、これまで携わってきた領域に縛られる必要はありません。
先ほど挙げたように、「変化を楽しめる」「チャレンジできる」というマインドを持っている方であれば、すごく楽しめる環境だと思います。
――ビジネスプロデューサーとして活躍するために、必要なスキルやマインド、考え方はありますか。
新路氏:
私が以前、広告事業本部で営業をしていた経験から、今でも通じていると感じる部分があります。それは、外部の方々も含めて、「自分たちの仲間になってくれる人をどれだけたくさん作れるか」ということです。
そのためには、自分のやりたいことをきちんと伝えることも大切ですし、相手にメリットを提供することも必要です。そうした関係性の中で、周りを巻き込みながら、プロジェクトをしっかり前に進められるかが重要なポイントになります。そういった動きができる方は、ビジネスプロデューサーとして非常に活躍しやすいと思います。
実際に、現在メインで動いてくれているメンバーの中には、もともと営業経験がまったくないエンジニア出身のメンバーもいます。それでも、1年ほどで周りを巻き込みながら事業を推進できるようになっています。
ですので、「そういう動きをやってみたい」という意欲がある方にも、すごく合う環境だと思います。
――業界経験の有無というよりは、「周りを巻き込む力」や「やり抜く力」、そして変化を楽しめるマインドや行動特性が合えば、未経験でも十分に活躍できる余地があるということですね。
新路氏:
はい、その通りです。
「機会しかない」フェーズで、グローバルヒットを生み出す組織を作る
――働く環境面で、STUDIO ZOONならではの特徴はありますか。
新路氏:
ビジネスプロデューサーの視点からすると、「一緒に戦い方を考えられる、経験豊富な編集者がいる」ことは、非常に面白い環境だと思っています。
今の構図は面白くて、ビジネスサイドは私も含めて、編集経験どころか出版事業に関わった経験がほぼないメンバーです。逆に、編集はみんな10年以上の経験者です。ぱっと聞くと、一緒に考えたりすることが難しそうな気がしますが、忖度なくウンウンと頭を一緒になってひねっている状況です。
お互いが話す際にも、「事業としてはこういうことをやりたい」「制作側としてはこういうアプローチができる」といった話を忖度なくすることで、「では次にこういう動きができるね」と、スピーディに話が進んでいくんです。これは、かなり大きなショートカットになっていると感じています。
――編集とビジネスが近い距離で動けるからこそ、意思決定や次のアクションも早くなるわけですね。
新路氏:
そうですね。こうした密な連携ができるのは、STUDIO ZOONの大きな強みだと思っています。
――確かに、他社ではコミュニケーションの面で手探りになってしまう部分もありそうですね。
新路氏:
そうだと思います。もちろん、私たちも最初から今のようにスムーズだったわけではありません。
立ち上げ初期は、たとえば表紙を一つ作るにしても、作品をより良く届けるためのアプローチについて、編集サイドとビジネスサイドでそれぞれの専門観点から熱く議論を交わすこともありました。
ただ、そうした経験を経て、今では壁がなくなり、非常にスムーズに連携できるようになっています。
――立ち上げ期ならではの苦労を経て、今の環境があるのですね。ビジネスプロデューサーとしての成長機会やキャリアパスという観点では、どのような特徴がありますか。
新路氏:
私たちの組織の特徴として、「裁量と責任」が非常に大きい点が挙げられます。
基本的には、メンバーが「やりたい」と思うことであれば、どんどん推奨していきたいと考えています。もちろん、その目的や優先順位についてはしっかりすり合わせますが、自分のやりたいことに向き合える裁量の大きさは、とても魅力的だと思います。
キャリアパスについては、ビジネスプロデューサーというポジションが本格的に動き出してから、まだ1~2年です。まさに、これから作っていくフェーズだと考えています。
現在はこの領域を少人数で担っているため、逆に言えば「機会しかない」状態です。今後、事業が拡大していけば、国内と海外の担当を分けたり、制作サイドと販売サイド、あるいはメディアミックス専任といった形で、ある程度専門性が分かれていくはずです。
ポジションはこれから無数に生まれてくると思っています。だからこそ、そこを一緒に担ってくれてる推進力のあるメンバーに、ぜひ来ていただきたいですね。
――ちなみに、広告事業本部でのご経験は、現在どのように活きていると感じますか。エンタメ業界では、ビジネスライクな課題解決にハードルを感じている方も多い印象があります。「課題意識はあるけれど、どこから手をつけていいか分からない」という声もよく聞きます。その中で、広告事業でクライアントと向き合い、数値を追ってきた経験はどのように役立っていますか。
新路氏:
大きく2点あると思っています。1点目は、先ほどからお話ししている通り、関わる人が非常に多い中で、中心となって周りを巻き込みながら物事を進める力です。
2点目は、多くのチャンスやタスクの中で的確に優先順位をつけ、目的意識を持ってプロジェクトを推進していく力です。
広告営業の仕事では、クライアントの課題を特定し、媒体部やプランナーなど社内のメンバーをワンチームとして巻き込みながら提案し、解決していくことが大きな業務フローでした。
現在は、自分たちの事業が持つ、一つひとつの「事業課題」に対して、同じアプローチを取っています。課題を見つけ、必要な人を巻き込み、優先順位をつけながら前に進めていく。その経験は、今のビジネスプロデューサーとしての動きに、そのまま活かされていると感じます。
――広告営業としての動きが、STUDIO ZOONでの事業推進や、社内連携のハブとして活きているわけですね。非常に面白いです。では、5年、10年、15年という長期的なスパンで見たときに、STUDIO ZOONとして目指しているゴールやビジョンを教えてください。
新路氏:
現状、世の中にはコンテンツが溢れていて、ある意味では飽和状態になっている部分もあります。私たちはその中で、しっかりと「大きなヒット」を生み出していきたいと考えています。
そして、今の時代における大きなヒットとは、必然的に「グローバルヒット」を意味すると思っています。世界で通用し、世界中でヒットするような作品を作っていく組織にしていきたいです。
また、そういった、世界に届く物語を、数多く生み出していけるような、強いチームと組織を作っていくことが今後の目標です。
――ありがとうございます。それでは最後に、ビジネスプロデューサー職に興味がある方に向けて、改めてメッセージをお願いします。
新路氏:
私自身、出版・エンタメ業界に入ってみて、外から見ていた以上に変化が激しく、次々と新しいことが起きていることを実感しています。
最初は、少しトラディショナルな業界というイメージもありました。ただ実際には、さまざまな戦略を持ち、チャレンジしていかなければならないことが山ほどあります。だからこそ、今このタイミングでジョインするのは、非常に面白いと思います。この環境を楽しめる方は、ぜひ一度お話だけでも聞きに来ていただけると、きっとワクワクしてもらえるのではないかと思っています。

新路純也氏(写真右)とSTUDIO ZOON編集統括の村松充裕氏(写真左)。村松氏のインタビューはこちらをチェック
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会社情報
- 会社名
- 株式会社サイバーエージェント
- 設立
- 1998年3月
- 代表者
- 代表取締役会長 藤田 晋/代表取締役社長 山内 隆裕
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高8740億3000万円、営業利益717億0200万円、経常利益717億4300万円、最終利益316億6700万円(2025年9月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4751
