ソニーグループがアニメ事業を強化する理由とは? 「アニプレックス」×「クランチロール」で「日本でIPを生み、世界へ届ける」体制を構築

ソニーグループ<6758>は、10月6日、同社のアニメビジネスを紹介する公式ブログを公開した。

アニメ事業をけん引する中核企業として、ソニーミュージックグループ傘下のアニプレックスと、Sony Pictures Entertainment(SPE)とアニプレックスの合弁会社であるクランチロールを紹介。両社がそれぞれの強みを生かしながら、アニメを起点としたIPの創出・展開と、世界規模でのファン獲得を進めていることを明らかにした。

ソニーグループは「Creative Entertainment Vision」のもと、エンタテインメント、IP、コンテンツクリエイションなどを軸に、IP価値の最大化を目指している。アニメはその重要な成長領域の一つに位置付けられており、今回の発信からも、ソニーがアニメを単独の映像事業ではなく、ゲームや音楽、イベント、商品、海外配信などを横断するIPビジネスとして捉えていることがうかがえる。

■アニプレックスは「IPを生み、育てる」側を担う

アニプレックスは、アニメ作品の企画・製作だけでなく、ゲーム、音楽、商品、イベントなどへIPを展開する総合エンタテインメント企業である。代表的な作品として『鬼滅の刃』『ソードアート・オンライン』などを手掛けるほか、ゲームでは『Fate/Grand Order』などにも関わっている。また、劇伴やキャラクターソング、テーマソングなど、音楽領域にも事業を広げている。

その特徴を支えるのが、アニメ制作現場との近さだ。アニプレックスは2005年にアニメーション制作会社A-1 Picturesを設立。2018年にはA-1 Picturesの高円寺スタジオを新たなブランド「CloverWorks」とし、同年にCloverWorksを設立した。つまりアニプレックスは、作品の企画・製作を担うだけでなく、制作スタジオとの連携を通じて作品そのものを深く理解し、その後の事業展開まで設計する体制を構築している。

アニメ化して終わりではなく、ゲーム、舞台、ライブイベント、グッズ、パッケージ商品、海外ライセンスなどへ展開する。アニメを「IPの入口」として、その後のファンとの接点を増やしていくことが、アニプレックスの大きな強みといえる。

■クランチロールは「世界のファンへ届ける」プラットフォーム

一方のクランチロールは、アニメを世界へ届ける役割を担う。同社は2026年3月末時点で、200以上の国・地域に2100万人を超える有料会員を抱えるアニメ専門サービスを展開。アニメ配信を中心に、劇場配給、ゲーム、EC、グッズ、イベントなどにも事業領域を広げている。

クランチロールの大きな特徴は、単なる海外向け配信サービスではないことだ。17以上の言語による字幕・吹き替えなどのローカライゼーションに加え、世界各地で100を超えるイベントに関与するなど、作品を「見る」だけではなく、ファン同士がつながる環境づくりにも力を入れている。

さらにSPEが持つ映画・テレビのグローバル展開に関する知見を生かし、アニメ映画の海外配給にも取り組んでいる。『鬼滅の刃』などの劇場版作品では、アニプレックスとの連携によって海外市場への展開を進めてきた。

ソニーグループの2026年5月の説明でも、クランチロールの有料会員数が2100万人を突破したことがアニメ事業の進展として紹介されている。ソニーにとってクランチロールは、単なる配信サービスではなく、世界のアニメファンとの接点を持つ重要な事業基盤になっている。

■「作る力」と「届ける力」をグループ内で組み合わせる

今回のソニーの発信で興味深いのは、アニプレックスとクランチロールを単純に「2つのアニメ企業」として並べているわけではない点である。

両社は異なる経緯から現在の事業基盤を築いてきた。アニプレックスは日本のアニメビジネスを基盤に、企画・製作やIPプロデュースの力を磨いてきた。一方、クランチロールは2006年に米国で生まれたアニメファンコミュニティをルーツとし、海外のファンにアニメを届けることで成長してきた。2021年には、SPEとアニプレックスの合弁会社だったFunimation Global Groupによる買収が完了し、その後Funimationとの統合を経て、現在の体制となっている。

言い換えれば、アニプレックスが「IPを作り、育てる」機能を持つのに対し、クランチロールは「世界へ届け、ファンダムを形成する」機能を持つ。この2つを同じソニーグループ内で組み合わせられることが、ソニーのアニメ戦略における大きな強みになっている。

■ゲームとの融合も進む 『Ghost of Tsushima』アニメ化が象徴

そして、この構造をゲームbizの視点から見ると、特に注目したいのがゲームIPとの連携である。ソニーグループでは、PlayStationを展開するSony Interactive Entertainment(SIE)も含めたグループ横断のIP展開が進んでいる。

その象徴となるのが、SIE傘下のSucker Punch Productionsが手掛けたゲーム『Ghost of Tsushima』のアニメ化だ。同作とオンラインマルチプレイモード『Ghost of Tsushima: Legends/冥人奇譚』を原作とするアニメシリーズは、クランチロールで独占配信される予定。クランチロールとアニプレックスが共同製作し、Sony Music Entertainmentが音楽・サウンドトラックの戦略的パートナーを務め、PlayStation Productionsも参画する。

ここには、ソニーが持つエンタテインメント資産を横断する構造が見える。ゲームをSIEが生み、アニメ化ではアニプレックスが企画・製作面を担い、クランチロールが世界のアニメファンへ届ける。さらに音楽ではSony Musicが関わる。

一つのIPをゲームだけ、アニメだけで完結させるのではなく、ゲーム、アニメ、音楽、配信という異なる事業を組み合わせてIPの価値を広げるという考え方である。

■「HAYATE」設立もグローバルIP創出を意識

両社の連携は、個別作品にとどまらない。2025年には、アニプレックスとクランチロールが共同出資し、世界のファンに向けたアニメ作品の企画・プロデュースを行う新会社「HAYATE」を設立した。

アニプレックスが持つ日本での企画・製作、IPプロデュースのノウハウと、クランチロールが持つグローバルなファン基盤や海外展開の知見を組み合わせることで、最初から世界市場を意識した作品づくりを進める狙いがある。

これは、日本でヒットした作品を後から海外へ輸出するモデルから、企画・製作の段階から世界市場を視野に入れるモデルへの転換とも捉えられる。

■ソニーのアニメ戦略は「コンテンツ企業」から「IPエコシステム」へ

ソニーグループのアニメ事業を考えるうえで重要なのは、アニプレックスやクランチロール単体の業績・事業規模だけではない。

アニプレックスにはアニメ制作スタジオ、ゲーム、音楽、イベント、商品などを組み合わせる機能があり、クランチロールには世界200以上の国・地域に広がる配信基盤と2100万人超の有料会員、海外イベントなどのファン接点がある。さらにソニーグループ全体には、SPE、Sony Music、SIEなど異なるエンタテインメント領域の企業が存在する。

このため、ソニーのアニメ事業は「アニメを作って配信する」という従来型の映像ビジネスというより、IPを起点に複数の事業を連動させ、世界中のファンとの接点を増やしていくIPエコシステムとして見る方が実態に近い。

ソニーは長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」で、テクノロジーを活用してクリエイターを支援し、リアルとデジタルの双方でファンに新たな体験を届け、IP価値を最大化する方向性を掲げている。アニメは、その構想を実現するうえで重要な領域の1つとなっている。

ゲーム業界においても、ゲームIPのアニメ化や映画化、音楽展開、グッズ展開など、IPを複数のエンタテインメントへ広げる動きは加速している。その中で、「IPを作る」「ゲームなど別領域へ展開する」「世界へ届ける」「ファンを育てる」という機能をグループ内でつなげられるソニーの体制は、今後のIPビジネスを考えるうえで一つのモデルケースになりそうだ。

アニプレックスとクランチロールの連携、そしてSIEやSony Musicなどを巻き込んだグループ横断の取り組みが、今後どのような新たなIPを生み出していくのか注目される。

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ソニーグループ株式会社
https://www.sony.com/ja/

会社情報

会社名
ソニーグループ株式会社
設立
1946年5月
代表者
代表執行役社長CEO 十時 裕樹
決算期
3月
直近業績
売上高12兆4796億2000万円、営業利益1兆4475億700万円、税引前利益1兆4223億7400万円、最終利益1兆308億9300万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
6758
企業データを見る
株式会社アニプレックス
https://www.aniplex.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社アニプレックス
設立
1995年9月
代表者
代表取締役会長 岩上 敦宏/代表取締役執行役員社長 西本 修
決算期
3月
直近業績
売上高1458億3200万円、営業利益240億9800万円、経常利益283億9700万円、最終利益212億3500万円(2025年3月期)
企業データを見る
Crunchyroll(クランチロール)

会社情報

会社名
Crunchyroll(クランチロール)
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