【インタビュー】Google PlayにおけるアカBANの傾向と対策とは…AppBroadCast森山氏に聞く

アプリストアから突然、アプリだけでなく、アカウントそのものが削除されてしまう―――アプリディベロッパーにとっては目の前が真っ暗になるような事件だが、ここ最近、こうしたケースが妙に目立っている。アプリストアからアカウントがなぜ削除されるのか、そして、何らかの対策はあるのか。

今回、アプリマーケティングに関するコンサルティングサービスを提供しているAppBroadCast事業戦略室 室長の森山晃義氏にインタビューを行い、Google Playストアにおけるアカウント削除の傾向と対策について聞いてみた。森山氏は、当サイトでもGoogle Playのランキング記事を担当してもらっている。

 

アカBANは増えている?


―――: よろしくお願いいたします。最近、Google Playにおける開発者アカウントの削除が話題になっていますが、森山さんの実感としては増えてきているのでしょうか?

森山氏: 弊社で把握している限りでは、件数は目立って増えているわけではありません。アカウントの削除は、今年の夏頃に一度話題になり、その後はあまり聞かなくなりましたが、11月に入って数件、観測されるようになった程度です。

―――: なるほど。非常に目立っているように感じるのですが、件数自体はそれほど増えているわけではないんですね。

森山氏: はい。「人気の新着無料」などのランキングでアプリの順位が上がって、その段階でGoogleさんのチェックが入り、アカウントの削除が行われることが多いためだと思わます。上位のアプリが開発者アカウントごとなくなるわけですから、確かに目立ちますね。

―――: 今回のインタビューでは、アカウント削除の傾向と対策を伺いたいのですが、どういうケースで削除が行われたのか、いくつか紹介してもらえますか。

森山氏: まず、注意していただきたいのは、アカウントが削除された場合、原因を特定するのが困難である、ということです。そのため、対策も同様です。ストア運営側でも、きちんとした基準が整っていないようにも見受けられますし、問題となりそうなアプリやアカウントが削除されずに残っていることも多々あります。ですから、こうなったから必ず削除されるというわけではない、ということはご留意ください。


 

アカウント削除の事例紹介


―――: なんだかスピード違反の摘発に近いイメージを持ちました。

森山氏: そうかもしれません(笑)。まず、直近ではイグニスさんのケースがあります。同社は新作『神姫覚醒メルティメイデン』をリリースして、ブーストでランキングを上げている途中、11月26日にアカウントごと削除されました。これはリワード広告でブーストを行ったことによって、アンインストール率が上がったことが原因の一つと見ています。アンインストール率が高いとGoogleからユーザにとって価値が低いアプリ、ユーザー体験の乏しいアプリと判断されて新着から除外されるという情報があるためです。

―――: アンインストール率がどのくらいになると削除されるのでしょうか。

森山氏: それについては弊社も把握できていません。リリース直後からブーストをかけてていても新着からリジェクトされていないアプリもありますから。

―――: これだけで削除とは厳しいですね。

森山氏: イグニスさんの件についてはもうひとつ重要な情報があります。弊社で調査したところ、イグニスさんは過去にもアカウントが削除されたことがあったようです。アカウントが削除されるのは、過去にアカウントやアプリが削除されたことがある場合が多いです。Googleさんが規定しているペナルティがあると、Googleさんのチェックが特に厳しくなる傾向にあると考えています。

―――: ブースト施策だけの問題ではない、ということですね。

森山氏: はい。重要なことは、自然流入で入ったユーザーが定着してもらえるようなゲームにすること、そして、プロモーション施策上、過度にブーストに依存しないことです。最近、海外系のリワード広告でCPIの非常に低廉なサービスもありますが、離脱率の高い、いわゆる質の低いユーザーが取れてしまう可能性があります。リワード広告を利用する場合、そのサービスがどういった媒体に広告を出しているのか、チェックしておく必要があるでしょう。
 


―――: なるほど。

森山氏: あと、直近で話題になったある広告会社さんのアカウントがリジェクトされた事例もありました。ランキング上位に掲載されるなど、力のあるディベロッパーとして知られていたのですが、同社については過去に別アカウントが削除されたことがあったようで、そもそも削除対象になりやすく、また、Googleディベロッパー規約の改定で新規に追加されたPUSH通知に関連する広告箇所に抵触があった可能性がありえます。例えば、アプリを介さずにダイレクトに広告主にリンクしていたことがあった、などです。以前は規約上は問題がなかったわけですが過去にさかのぼって調査・適用された可能性があります。

―――: アプリを介さずに、というと、PUSH通知が来て、タップしたらアプリには行かず、直接、広告主のサイトに移動してしまう、ということですか。

森山氏: そうです。また、アカウントの削除とは違いますが、ポイントアプリ「こづかいゲットン」も話題になりました。これについては、もっとも大きいポイントメディアとして目立っていたことに加え、他マーケットへの誘導が理由の一つと言われています。リワードオファーウォールとして、GoolePlayストア以外のマーケット案件(Ex. auスマートパス案件など)を掲載したことが問題視されたようです。

―――: 他のマーケットですか?

森山氏: そうです。Google Play以外への誘導は原則、規約違反となります。ただし、MobageやGREEといったソーシャルゲームプラットフォームへの誘導は特に問題視されていないようにも見受けられますので、あくまで他のアプリストアへの誘導ということかもしれません。この点の解釈は難しいところです。

―――: なるほど。

森山氏: これ以外で、削除される主な理由を上げておくと、アプリ紹介文に『パズドラ』など他社アプリ名などを頻出させている場合や、アプリを出し直した場合なども規約違反とみなされることがあります。

―――: アプリの出し直しについては、頻繁に行っている大手ディベロッパーがありますが、規約上、問題にはならないのでしょうか。

森山氏: そのディベロッパーは、おそらくですが、人気の新着無料に掲載し、ブーストを行って安い単価でユーザーを獲得することが狙いと見ています。新しいアプリへの誘導も行っておりますので、規約上、問題はなさそうなのですが、個人的には少し危なくなりつつあるかもしれない、と思っています。

―――: この他にはなにかありますか?

森山氏: アカウント削除とはちょっと異なりますが、アプリアイコンや紹介文、スクリーションショットの中に不適切な表現がある場合、Googleさんによって、レーティングを全対象から「レーティング高」に切り替えられます。この場合、新着ランキングから除外されることが多いですね。不適切な表現とは、アダルトやお酒、薬物などに関する記載です。新着からの除外がプロモーション施策に与える影響は甚大です。


 

いきなりアカウント削除は行われない?


―――:  アカウントの削除ですが、一般的にどういったプロセスで行われるのでしょうか。事前の通知などはありますか?

森山氏: 弊社の把握している限りでは、いくつかのステップを経ていることがわかっています。最初はアプリのみに警告がきます。例えば、7日や30日など所定の期間内に規約違反箇所を修正しなければ、アプリをリジェクトする、といった通知です。それにはきちんと対応すれば問題はありません。そして、警告の頻度が増えてくると、アカウントにペナルティが積もってきて、やがてアカウントが削除される、とみています。

―――: サッカーのイエローカード、そして、レッドカードに至るという流れですか。どの程度になると削除になるかは不明であると。

森山氏: そうですね。その点は不明です。あと、アカウントが削除された後、新規でアカウントを作ってアプリをリリースした場合、アプリが問題のないものであったとしても再度、アカウントが削除されることがあります。Googleさんは、MACアドレスやクレジットカードなどを含む複数の方法で、ブラックリストを作成しているためだと思われます。

―――: 新着期間からの削除については、事前の通知はあるんですか?

森山氏: いえ、新着期間の新着リジェクトについては、修正依頼などはなく、急に新着から削除されます。

―――: アカウントの削除は日本法人が決めているのですか?

森山氏: 弊社で調べた限りでは、日本法人ではない、という情報を得ています。調べ方に関しては、あくまで目視で調査しているようです。

―――: 削除された場合、異議申立ては可能なのですか?

森山氏: アプリの削除に関しては、Googleさんから警告メールが来ます。ですからアプリが削除された場合でも、そのメールに規約違反ではないと主張したメールを返信して、復活した事例が何度かあると聞いています。ただし、アカウントの削除に関しては現実的には難しいかもしれません。

―――: アカウント削除を防ぐための対策としてどういったことがあるでしょうか?

森山氏: 当たり前ですが、規約を読んで把握し、Googleさんから警告が来ないようにすることが何より重要です。そして警告が来ても、誠心誠意対応することです。

―――: MobageやGREEなどでも、問題表現があっても放置しておき、プラットフォーマーから注意されて初めて直すといったケースが散見されました。注意されてから対応すれば良い、という考え方はやめた方がいい、ということですね。

森山氏: ええ。この業界ではよく見られるスタンスですが、やめたほうがいいでしょうね。


 

質の高いユーザーを獲得する流れに 読者プレゼントも


―――: 新着からの除外やアカウント削除からのリスクを避けるためのプロモーション施策はどういったものがあるでしょうか。

森山氏: プロモーションに関しては、弊社でもコンサルティングを行っておりますが、早期のアンインストール率の上昇を防ぐための対策を提案しています。例えば、リリースから1週間~10日は、DAUを積み上げるためのプロモーション施策を行って質の高いユーザーを獲得し、10日後以降にブーストをかける、といったやり方です。

―――: リリース後、すぐにブーストをやらないのですか。なるほど。

森山氏: Google Playの場合は、新着期間は1カ月限定です。その間にいかに効率的にランキングを上げてユーザーを獲得していくか、という点でApp Storeと異なっていますし、ストア側の事情や情報も把握して行う必要もあるため、難易度が高いです。アプリのストア情報に関しては、弊社は常に最新の情報を入手しておりますので、その点も考慮に入れたプロモーション施策を提案できます。もちろん、App Storeに対応したプランのご提案も可能です。

―――: しかし、今回のアカウント削除騒動は、アプリマーケティングのトレンドに与える影響は小さいと思いますが、プロモーションのやり方を考える契機になりそうですね。

森山氏: そうですね。これまではアプリプロモーションではブーストを中心に据えるディベロッパーが多かったのですが、リスクを考慮して闇雲に出すのは避ける傾向にあります。そして、現実問題として、ブーストの効果が徐々に弱ってきていますから。その一方、先程申し上げたように、継続して遊んでくれる質の高いユーザーを獲得したい、というアプリディベロッパーのニーズが強まっています。ここ最近、ゲーム媒体やレビュー媒体での記事掲載、そして事前登録などブースト以外のプロモーション施策を重視する動きが広がっていますが、その背景にはこうしたトレンドの変化があります。

―――: ありがとうございます。最後に読者プレゼントがあると聞いたのですが。

森山氏: はい。弊社で週1回有償で発行しているマーケットトレンドの調査レポートで今回のリジェクト問題について書いたレポート(12月6日発行)を無料で提供します(先着10社の法人デベロッパー様限定)。希望される場合はメールで「この記事を読んだ」といってご連絡いただければ結構です。マーケットトレンドの最新情報を集めた資料になりますので、ぜひ一読いただければと思います。




 

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