【インタビュー】サイバードが語るプロジェクト管理ツール「Save Point」の魅力―デザイン作業の効率化は、ゲーム運営にも好影響


MUGENUPが提供を行っているプロジェクト管理ツール「Save Point(以下、セーブポイント)」。このツールは、ゲーム開発では必要不可欠なデザイン制作において、管理コストを削減するために生まれたものだ。特に大規模プロジェクトとなると、外注先の制作会社や個人クリエイターなどを並行管理するコストが膨大になり、ミスや事故の温床にもつながる。「セーブポイント」ではこのようなリスクを避けられるとあって、すでにミクシィなどの企業も利用している。
 
そして、『イケメンシリーズ』などの代表作を持つサイバードも、「セーブポイント」を積極的に利用している企業のひとつだ。今回、同社でアートディレクターを務める中村氏(写真左)と、「セーブポイント」を利用している『100日間のプリンセス もうひとつのイケメン王宮』の開発・運営に携わる服部氏(写真右)に話を伺い、ツールを導入することになった背景とその効果、そして今後について聞いた。

 
セーブポイント導入の恩恵は「スピード感の向上」

   ――本日はよろしくお願いします。まずは、サイバードの作品の中でどのようにセーブポイントが使われているのかを教えてください。

中村氏:服部が担当している、『100日間のプリンセス もうひとつのイケメン王宮(以下、100日間のプリンセス)』を中心に、複数のタイトルで導入しています。今後の新作でも随時導入していきたいと考えています。
――既存タイトルだけでなく、新作でも積極的に利用していると。
 
中村氏:はい。ただ、現時点の使用頻度としては先行している『100日間のプリンセス』のほうが高いですね。
 
――分かりました。では『100日間のプリンセス』を中心にお伺いしたいのですが、利用を始めた時期はいつごろからですか?
 
服部氏:チーム内で使い始めたのは今年の9月の下旬ごろからです。 もちろん、導入へ向けた準備はそれよりも前から進めていましたが、実際に使っているのはこの2ヶ月間程度ですね。
 
中村氏:といっても、準備期間も1ヶ月半程度と、かなりスピーディに導入できたというのが率直な感想です。社内での調整は必要だったものの、MUGENUPさんは常に丁寧に対応いただきました。逆に私たちとしては、MUGENUPさんを待たせてしまったという気持ちがあるくらいです(笑)。

 
――なるほど。では、セーブポイントを導入することになった経緯を教えてください。
 
中村氏:2年ほど前から、社内のデザイナーの制作環境を整えていこうということで様々な取り組みを行っています。

作業効率向上はもちろんのこと、デザイナーが「働きやすい」会社にしていくという動きです。その中で、今年に入ってからツールを利用した制作プロセス管理をしようと提案し、さまざまなツールを検討した結果、セーブポイントを導入することになったのです。セーブポイントを導入する前も外部の制作会社やデザイナーとのやりとりはできていましたが、コスト削減や負担の軽減を考えると、セーブポイントがベストだったと思います。
 
服部氏:『100日間のプリンセス』は、サイト内クリエイティブはもちろん、アバター制作にも力を入れているので、その分作業の工数も多くなりがちです。そこでセーブポイントを導入することで作業の効率化を図り、よりクオリティに注力しようと考えています。お客様の満足度を高めるためには、アバターそのもののクオリティ面の向上も必要な要素です。ご愛用いただいているユーザーさんの期待に応えるためにもセーブポイントの力が必要でした。

 
――導入するとなると開発環境もまったく違ったものになります。そこに不安はありませんでしたか?
 
中村氏:デザインを担当しているスタッフがどう反応するかは不安でしたね。作業の効率化は売上などの数字では表しにくいところでもあるので、最初の説明は特に難しかったです。
 
服部氏:『100日間のプリンセス』のリリースは2014年の春で、セーブポイントの導入は今年の9月。つまり、リリースから1年半近く経ってからのことで、アバターなどの制作フローも確立していました。そのため窓口である社内のプランナーと外部のデザイナーさんがどうコンセンサスをとっていけばいいのかは不安でした。ですが実際に導入してみると、かなりスムーズに移行できました。特別に用意するものもそれほどなかったですし、「こんなに簡単なのか」と驚いたくらいです。

 
――スタッフからの反響はいかがですか?
 
服部氏:現在は弊社のプランナーと、外部のデザイナーさんとを繋ぐ役割としてセーブポイントを利用しています。これまではメールでのやりとりが主でしたが、いつ送ったのか、どこまで確認ができているかが分からなくなるケースがありますよね。あと、データをダウンロードする期限が切れていたりと、問題もつきまとっていました。セーブポイントだと、ツール内のメッセージ機能で細かいやりとりもできますし、流れを追うのもメールより簡単。作業の効率化ができたので評判はいいですね。
 
中村氏:今のところ、作家さんや他の協力会社さんからの反応も良いと感じています。今までのシステムを大きく変えるとなると、拒否感を示す方もいるかと思っていたのですが、スムーズに移行できている印象です。ここ最近は社内でも、主にデザイナーがデザインをする際の拠り所になるのUI・UXガイドラインを作成するなど、デザイナーの制作環境改善を進めてきました。セーブポイントの導入も環境整備の施策のひとつとして馴染んできたと感じています。

 
――外部スタッフとのコミュニケーションという意味では、文字によるコミュニケーションは重宝しそうですね。
 
服部氏:全体的に気軽になりましたね。それに外部のデザイナーさん側からしても、いちいち形式張ったメールを送らなくて済むんです。メールだとどうしても「いつもお世話になっております」といった硬い口調になりがちですが、メッセージだとそういった文面も省けます。結果的に、より親密なコミュニケーションが可能になり、お互いの考えも伝えやすくなりました。
 
加えて、弊社のプランナー陣は基本的にノートパソコンを使っていて、スペックの影響で容量の大きいデータが見づらいときがあります。そんなときもセーブポイントであれば、PSDやAiファイルでもプレビュー機能で簡単にファイルを開かなくても見ることができるんです。確認のスピードがあがって外注先さんをお待たせする時間が短くなりました。そういう意味でも、以前と比較してコミュニケーションしやすくなりましたね。

 
――スピード感の向上は、ゲームを運営していて肌で感じるものですか?
 
服部氏:そうですね。よくない事だとは思うのですが、データが重いのがわかっていると開くまで時間がかかるので、いちいち開くのって億劫だなあと思ってつい後回しにしてしまったり…。結果フィードバックをお待たせしてしまっていた事もあると思いますが、導入後はそういった時間は格段に削られたと感じています。また、弊社の場合はメールのやりとりをするスタッフとフィードバックをお送りするスタッフが分かれている時もあります。そのためメールがいつ来たのかなどの確認をプランナー間でしなくてはならない事も多かったのですが、その確認作業は見違えて減りました。
 
セーブポイントを導入したことによって、画像周りの作業が効率化されただけでなく、運営全体がスピーディになった印象ですね。

 
――確かにメールでのやりとりだと、作業に一手間が加わってしまいますからね。
 
中村氏:セーブポイントだとひとつのページの中に必要な情報がすべて入っていて、プロジェクトごとに分割して見やすくなっているのも利点です。開発を進める上で目指すところは以前と変わっていませんが、セーブポイントの力を借りて環境を整えることで、より効率良く開発に取り組めるようになりました。
 

▲発注者とクリエイターが掲示板のようにやりとりできる
 
――複数の開発ラインを同時に管理することも可能なんですね。
 
服部氏:今まではメールの件名でなんとか管理していた部分ですね(笑)。メールだと、タイトルにずれがあってフィルタしきれなかったり、うっかりゴミ箱に入れてしまったりと、目当てのメールがなかなか見つからないケースもあります。複数のラインを抱えるとその可能性はさらに高まりますが、セーブポイントの場合はラベルで管理できるので、上手く解消されています。
 
中村氏:弊社としては全タイトルへ一気に導入するのではなく、セーブポイントで何ができるのかを見極めながら、少しずつ広げていこうという考え方です。今のところ反対意見も特にないですし効率アップにつながっているので、これからは複数のラインで使うことも増えてくるかと思います。また、『100日間のプリンセス』を運営する過程で得たノウハウは他の作品にも活かせるはずですので、積極的に利用していきたいです。

 
▲複数の開発ラインをラベルで管理することができる

――まだ導入して2ヶ月程度というお話でしたが、すでにノウハウも蓄積されていると。
 
中村氏:期間は短いもののMUGENUPさんとは密にやりとりをして、良い環境を作れたと思います。現場からもネガティブな反応はないので、良い流れを作れたかなと。
 
――画像のファイル形式としては、基本的なものはすべて対応しているのですか?
 
服部氏:AiやPSD、PNGはもちろん、PowerPointやExcelにも対応しています、私たちは指示書をPowerPointで作成しており、それをデザイナーさんに送って制作していただいております。Office系のデータとデザイン系のデータが一緒に管理できるので、とても便利ですね。
 
――では、機能面で優れていると感じたところはありますか?
 
服部氏:最終的にFIXしたものをサムネイルビューに登録して、一覧で確認できる機能は助かりますね。サムネイルビューのおかげで何がどの状態でFIXしたかひと目で確認できます。

あとは、機能面ではないのですが私たちが改善を要望してMUGENUPさんに送ると、すぐに対応していただけている点ですね。機能とは少し違いますが、些細な要望であってもキャッチアップしていただけるので、どんどん使い勝手が良くなっています。

もちろん要望によっては「他のお客様のことも考えるとその要望を実装するのは難しいです。その代わりこのような機能ではどうでしょうか?」という時もあり、クリエイティブ制作全般に対応しようという考えが伝わってきます。

 
▲複数の画像を何の加工をすることもなくサムネイル形式で表示できる。

――イラストの管理という面ではいかがでしょうか?多数のイラストの中では、差分の比較を行う機会も多いかと思います。
 
服部氏:キャラクターの差分の発注の際には参考資料や、以前のイラストを送ることも多いのですが、それらを比較する機能ももちろん搭載されています。比較機能は差分のときだけでなく、細かなフィードバックを反映してもらうときにも非常に役立っています。特に修正となると、3回、4回と重ねるケースもありますからね。
 

アバターに関しても月に80点近く発注する月もあります。そんなときにも、この機能は作業の効率化ができるという意味で役立ちますね。
 

▲画像を比較する機能も搭載
 
――発表前の画像データを扱うとなると、セキュリティも気になるところです。
 
服部氏:まずは大前提としてアカウント制になっているので、アカウントを持っていない人間が閲覧できません。また、ラベル機能も存在しますので、外部のデザイナーさんは自分のラベルが付いた部屋しか見ることができないようになっています。このおかげで、公開前のデータであっても安心して送付することができています。
 
――版権物を扱う場合はさらにデリケートな問題になりますし、そのようなシステムがあると安心ですね。
 
中村氏:もちろんオリジナル物と版権物で差をつけるわけではありませんが、案件によっては版元やパブリッシャーなど、さまざまな会社さんが複雑に絡み合う場合もあります。セキュリティの安心感のほかにも、たくさんの人とのコミュニケーションが円滑に進められる点においてもセーブポイントは役立つはずです。
 

――今後セーブポイントを利用するとなると、やはり『イケメンシリーズ』が中心になるのですか?
 
中村氏:いや、そこに線引きをする気はありません。まずは『イケメンシリーズ』をベースにしようと考えてはいますが、当然どんなタイトルでも画像は必ず扱います。例えばですが、3Dグラフィックをメインに据えた作品であっても使う価値はあると考えています。

 
MUGENUPのサポートも充実、今後はさらなる発展も
 
――MUGENUPに対して要望も送っているという話でしたが、具体的にはどんな内容だったのでしょうか?
 
服部氏:デザイナーさんにフィードバックを返すとき、多いときには4、5枚のPNGファイルを同時に送るんです。しかし以前のセーブポイントですと、1つの投稿内の添付データをまとめてダウンロードする機能がなかったので、要望として送りました。いちいち1枚1枚ダウンロードして…という事が手間でした。こちらを要望としてお送りしたところ、「これは汎用的に全てのユーザーが便利になりそうですね!」と言うご返事とともに、1週間もかからない程度で反映していただけました!微細なところではありますが、この対応いただけるという姿勢が嬉しいところです。
 
中村氏:気がついたら実装されていた、というレベルの速さで、なんだかセーブポイントを共同開発している気持ちになるくらいです(笑)。この業界内ではさまざまなツールが存在しますが、レスポンスの速さでは群を抜いています。MUGENUPの担当者の方が直接弊社に来てヒアリングをしてくれたりと、サポート体制も充実しているので助かっています。

さすが国産ツールだと思いました。

 
服部氏:私はプランナーなのでプログラムについては詳しくないのですが、導入初期の段階でそういった人にもしっかりとレクチャーの時間を設けてくれました。速さだけでなく、丁寧さ、分かりやすさもありますね。
 
 
――レクチャーも受けたということは、使い始めの段階でも特に迷うことはなかったのですか?
 
服部氏:そうですね。資料をもらってすぐの段階でレクチャーをしていただいたので、1人で迷うことは一度もありませんでした。
 
中村氏:ツールそのものの良さはもちろんですけど、サポートの面も常によくしていただいています。

 
――その一方で、未だ残っている不満点、改善すべき点はありますか?
 
服部氏:これはすでにご相談している箇所ですが、ToDo管理機能で自分宛にタスク化されたときにもっと見やすくなったらいいな、とは思っています。これについても、すぐに対応いただけるのではと期待しています(笑)。
 
こちらが不満を感じる前に、MUGENUPさんは定期的にヒアリングの機会を設けてくれるんです。なので、とても要望を挙げやすいですし、親切に対応してもらっています。

 
――お話を伺う限りでは、改善されていくペースもかなり速い印象です。
 
中村氏:速くて、そして細かいです。送った要望を吟味し、汎用的な機能として実装すべきと判断されるとすぐに対応してくれます。また、私たちが要望したものでなくても、私たちが使いそうな機能がアップデートされるとまめに連絡いただけるので、新機能や変更点を徐々に使いこなせるようにしてくれます。
 
服部氏:アップデートのペースは2週間に1度とほぼ決まっていて、要望を送ったタイミングがいいと、素早く対応してくれてアップデートに間に合うんです。こういったスピード感で対応いただけるのは、なかなかないことだと思います。一番最初に提供してもらったものと比べるても、かなり使いやすさが増していると思います。

 
――将来的には、セーブポイントにどんなことを期待したいですか?
 
中村氏:僕はMUGENUPの人間ではないんですけど、これだけ優秀なツールですから、もっと多くの人、企業に利用してもらいたいですね。業界内のスタンダードになれば、その分機能も充実するはずですし、弊社とMUGENUPさんがお互い幸せになれると思います。
 
――サイバードとしてもセーブポイントはかなり使い勝手のいいツールになっているようですが、これが普及すれば、さらにより良いものへ進化していくと思います。
 
服部氏:ありがとうございます。『100日間のプリンセス』はもちろん、弊社のタイトルを遊んでいただいているお客様に喜んでいただけるような要素を今後も充実させていきますので、末長くご協力頂きたいと思っています。
 
中村氏:そうですね。先ほど、弊社では昨年頃から制作環境を整えようとさまざまな取り組みをしているとお話ししましたが、その活動を紹介するためのデザイナーブログも立ち上げています。まだまだ記事は少ないですが、いずれここでセーブポイントを紹介することもあると思います。それをきっかけにセーブポイントがより広まってくれたらいいですね。

 
――ブログ以外には、外部へ発信する取り組みを行う予定はあるのですか?
 
中村氏:弊社では社内外問わずにセミナーや勉強会は積極的に行っています。小規模なものであれば社内の会議室で、特定の知識を持つスタッフが講師を務める勉強会が月に一度のペースであります。また、弊社の1階にはイベントスペース「Theatre CYBIRD(シアターサイバード)」がありまして、そこでは外部の方も巻き込んだ大規模なセミナーを実施しています。こちらも「働きやすい」会社にしていきたいという考えが、きっかけの一つでもあります。
 
私は立場上、採用の面接に立ち会うことも多いのですが、その中で「勉強会もやっていますよね」と聞かれることがあるんですよ。これはどうやら、デザイナーブログの記事を読んで知ってくれたみたいなんです。やはり勉強会はデザイナー志望の方にとって魅力的のようで、やって無駄ではなかったなと感じています。
 
――いつかはセーブポイントに関する勉強会をする可能性も。
 
中村氏:もちろんあり得ます。服部が講師を務めてもいいですし、MUGENUPさんのスタッフに紹介してもらうというやり方もありだと思います。開発プロセスの効率化で困っている、いろいろな企業を巻き込んでも良いですね。そしてその模様をブログで紹介したりして、さらに大きなサイクルを作っていければと考えています。
 
――分かりました。では、セーブポイントと共にどのような作品を作っていきたいか、展望があれば教えてください。
 
中村氏:ちょっと壮大な話になりますけど、弊社はゲーム以外のアプリも多数制作しており、守備範囲の広い会社だと思っています。これを長所としてより活かすためにも、『イケメンシリーズ』以外にも弊社の柱となるアプリやサービスを作っていきたいです。まだまだ未来の話なので具体的なタイトル名は挙げられませんが、その達成のために間違いなくセーブポイントの力を借りる機会も間違いなくあると思います。


 
関連サイト
   

『Save Point』紹介ページ

   

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サイバード デザイナーブログ

 
株式会社サイバード
https://www.cybird.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバード
設立
1998年9月
代表者
代表取締役社長兼CEO 本島 匡
決算期
12月
直近業績
売上高60億円、経常利益1億1100万円、最終利益8900万円(2021年12月期)
企業データを見る
株式会社MUGENUP
https://mugenup.com/

会社情報

会社名
株式会社MUGENUP
設立
2011年6月
代表者
代表取締役 伊藤 勝悟
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