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【CEDEC 2018】海外委託の際に発生する問題点とその解決法…委託側の「グリー」と受諾側の「GREVO」が両社の視点から解説

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コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、8月22日~24日の期間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2018」(CEDEC 2018)を開催した。
 
本稿では、8月22日に実施された講演「ベトナムオフショアによるソーシャルゲーム開発・運用事例の紹介 〜15プロダクトを4年間運用して見えてきた利点と課題〜」についてのレポートをお届けしていく。
 
本セッションには、GREVO・CEOの山本浩樹氏、グリー・Japan Game 事業本部Managerの桝田清史氏が登壇。グリーが日本で行っていたソーシャルゲームタイトルの開発運用業務を、ベトナムへ移管するにあたり、「業務を移管する側・発注元であるグリー」と「業務を移管される側・発注先である GREVO」双方の視点から4年間で得られた知見や気づきを紹介した。現在、合計15タイトル以上の開発運用をベトナムで担っているグリーが、どのような過程を経てそこに至ったのか、ベトナム開発拠点の沿革や大まかな担当業務範囲、チーム構成、コミュニケーション問題など課題との向き合い方を解説している。
 

■海外委託を行う際に発生した問題と解決法

 
そもそもオフショア開発とは「システム開発などの業務を海外企業、または海外の現地法人などに委託すること」で、グリーでは2014年よりベトナムでオフショア開発を行っている。エンジニア不足が叫ばれる昨今、グリーではこうした取り組みより問題の解決を図っている。
 
最初に登壇した山本氏は、今回のセッションで話すことを発表。ここでは「グリーのベトナムオフショア開発事例の紹介」や「グリーがベトナムオフショア開発を推進するにあたり、直面した課題、工夫した点」について、グリー(日本)とGREVO(ベトナム)という双方の視点から話を展開するとのこと。
 

▲GREVO・CEOの山本浩樹氏。立場としては、日本から業務を移管される側となる。
 

▲グリー・Japan Game 事業本部Managerの桝田清史氏。立場としては、日本からベトナムへ業務を移管する側である。
 
続いて登壇した桝田氏は、オフショア開発と聞くと「コミュニケーションが大変そう」、「文化が異なるので教育・管理コストがかかりそう」というイメージを持たれるかもしれないが、こうした課題を解決するためにはやはり双方の利害を一致させるための努力が必要だったと話す。
 
1. グリーベトナム開発拠点の紹介
まずは桝田氏からグリーのベトナム開発拠点の沿革が紹介された。グリーのベトナムオフショア開発は先ほども紹介した通り2014年からスタートしたが、最初は2プロダクト・スタッフ8名という体制だったという。初めての海外委託ということもあり、最初は右も左も分からない状態だったが、試行錯誤を繰り返して開発を進めていくうえで、ベトナム側の開発の安定感や豊富な人材が徐々に認められるようになったとのことだ。そうして、現在では15プロダクト・スタッフ70名という規模まで拡大している。
 
 
▲プロダクト数もスタッフも人数も右肩上がりに増えている。
 

▲オフショア開発を始めた時点では「EVOLABLE ASIA」に委託していたが、グリー側の組織が拡大したこともありジョイントベンチャーという形で「GREVO」を設立。
 
また、オフショア開発では「受託型」が一般的に浸透しているが、グリーではクライアントごとにベトナム側で専属チームを立ち上げ、日本人スタッフをプロジェクトマネージャーとして派遣する「ラボ型開発」を採用している。そのため、成果物が届くまで結果が分からない受託型と異なり、進捗を常に確認できるというメリットがあると桝田氏は語った。また、チームを立ち上げているためメンバーの入れ替わりがあった際にもノウハウの蓄積が容易であることや、仕様変更にも柔軟にも対応できるという話を展開した。
 

▲日本側とベトナム側で同じチームとして一体感を出せるところも特徴的であるとのこと。
 
2.グリーラボのチーム体制
続いてはグリーラボのチーム体制や担当範囲を紹介。グリーは、1プロダクトに1チームで運営・開発を行っており、Bridge Syatem Engineer(BSE)が1名、Technical Leaderが1名、Developerが2~3名の計4~5名で構成されている。
 

▲日本側からはBSEを通してコミュニケーションを図っている。
 

▲グリーラボは、毎月決まったスケジュールで行える定常的なサービスを担っている。設計や実装、商用環境でのオペレーション、お問い合わせ対応などは全てベトナム側で完結しているとのこと。
 
3.直面した課題とそれに対する取り組み
 
●文化や知識の差①
そして、ここからはいよいよ実際に直面した課題について言及。開発時、最も苦労したのは「ソーシャルゲームとは何か」を伝えることだったと桝田氏は語る。当時、ベトナムではスマートフォンを所持しているメンバーも少なく、通信環境も良くない状態だったと振り返る。そのため、自分の端末でゲームを遊んでいる人が少なく「ガチャって何ですか?」というような質問も頻繁に飛び交っていたのだとか。しかし、現地との橋渡し役である通訳もガチャが何かを理解していないため上手く伝えられないという課題があったと話した。
 

 
こうした課題を解決するため、実際にゲームをプレイする時間を業務内に組み込んだと桝田氏は対策を明かした。これには、口で伝えるより実際に遊んでもらった方が早い、実際には理解していないのに頷かないといけないというプレッシャーから解放するという狙いもあったとのこと。この結果、実際に動かすとどうなるのかを感じてもらうことで認識の齟齬が減り、仕様の理解も早まったという。また、その際は単にプレイするだけでなく「レベルを○まで上げる」、「イベントを遊ぶ」というように目標を定めて競い合うことで、よりゲームに対する理解が深まり、その後の自発的な提案にも繋がったので有効な手段だったと桝田氏は述べた。
 


▲一度、中心に浸透させればスタッフ間で伝播していく文化が作られたという。
 
●文化や知識の差②
次に、同じ「文化や知識の差」というテーマで山本氏がベトナム側から見たケースも紹介。
 
山本氏は、これは4年前の話なので現在は文化が変わっているかもしれないと前置きしたうえで、当時、バグを見つけた際に「ちゃんとテストしたの?」と聞いたところ「それはQAチームの仕事なので分かりません」と回答されたことに衝撃を受けたという。日本では多様な領域を横断的に担当することも多いが、ベトナムのIT業界は職種ごとの役割分担が非常に強いというのだ。
 

▲ベトナムでは、自分の任された業務から逸脱することは良くないという考え方があるため、互いに求めているところに手が届かないというミスマッチが発生してしまった。
 
この件について山本氏は「どちらが良いという答えはないが、グリーの案件においてはベトナム側が日本に合わせるという形で解決を図った」と話した。その具体的な対策として、開発・実装しているだけではなく、サービスを運営することでユーザーに価値を与えているという意識改革から始めていったのだとか。その際、グリーがどれほどの規模でサービスを展開しているかや売り上げを伝えることで、より自覚が芽生えやすいような工夫もしていたとのこと。さらに、自身の担当領域を越えた動きをしたメンバーを称賛し、報酬を送るような制度も取り入れた。結果として、こうした意識改革があったからこそ、現在15プロダクトを担えるまで規模を拡大してこられたのだと山本氏は成功の要因を分析している。
 

 
●コミュニケーション
引き続き山本氏よりコミュニケーションに関する課題にどのように取り組んだかが発表された。以下は、グリーとGREVOが実際にどのような体制でコミュニケーションを行っているかについて。
 

▲先ほども話された通り、まだソーシャルゲームの文化がベトナムに根付いていなかったこともありコミュニケーション言語は日本語を選択。会話の精度を落とさないために、ベトナム側にはプロダクトごとに、日本語が分かるエンジニアとして専属BSEが1人配置されている。また、日本側にもベトナムに向き合う担当エンジニアを配置して担当者間の習熟度を上げるよう努めた。
 

▲コミュニケーションについては柔軟さを重視した体制を作っていると山本氏はコメント。
 
そんな中、挙がった課題が次のものとなる。
 

 
プロダクトの品質がBSEの能力に依存してしまうという問題。「日本語を話せる」という条件を満たす人材が貴重なため、優秀な人員を数多く確保することが難しいと山本氏は話す。そこで、BSEを社内で育てる育成カリキュラムを発足したとのこと。その結果が実り、デベロッパーとして入社して現在BSEを務めているという人材が5人いるとのこと。
 
ふたつ目は「仕様書がわかりづらい」という問題。
 

 
まずこうした問題が発生する原因について山本氏は、社内だと阿吽の呼吸で伝わっていたような事項が飛ばされて記載されているため、日本で作られる仕様書はベトナムの開発者が期待する設計書にはなっていないと分析する。
 
そこで、この課題を解決するためにベトナム側から日本に仕様書のフォーマットを提案。この件に関しては、日本側がベトナムに合わせるという形で解決を試みた。
 

▲自身が良いと思った仕様書を持ち寄るD-1グランプリという取り組みも行われている。全プロダクト横断でスタッフが投票し、結果を集計してグリーに提示している。
 
また、こうした施策により、グリー側としても単独プロダクトでは気付けなかった業務品質改善や効率化のヒントを得られるなど、グリー側にもメリットがあったという。これは、ある程度の前提条件が揃った多数のプロダクトを横並びで開発できているがゆえのメリットだと山本氏は語った。
 

▲こちらはD-1グランプリの結果から得られた良い仕様書のポイント。
 


▲画面遷移は全体のイメージを掴めるように、差分表示は変更する部分を明確にしている。特に、似ているイベントを開催する際などはどこが変わっているかをはっきりと示すことが大切であるとのこと。
 
●セキュリティ
4つ目に桝田氏が再び登壇し、セキュリティの観点からグリーの目線から見た課題点と解決策を話した。課題点は下記の通り。
 

▲公開できないツールがあることでベトナムに移管できる業務が限定的な領域に留まってしまう。また、作業が非効率化してしまうため代替手段を用意する必要があった。
 
そこで課題解決のために登場したのがJenkinsとSumologicだ。
 

 
まず桝田氏はJenkinsについて説明。前提として、グリーでは商用環境でのバッジ処理などは、エンジニアがバッチサーバにログインして手動で実行していたという。当該サーバにログインできるのは、グリー本社のエンジニアに限られていたとのこと。非エンジニアにも使える専用ツールの開発も試みられたが、これはコストが掛かりすぎるという理由から断念。ベトナムから操作できるJenkinsのWebコンソールを提供した。
 


▲これまではベトナムから連絡を受けて日本で実行していたため、定型的な業務には留まるものの進行はスムーズになった。
 

▲商用環境のオペレーションは大きな障害に繋がる可能性もあるため、限定的なオペレーションのみ実行してもらうことでセキュリティを担保している。
 
続いてはSumologicを用いた事例について。
 
こちらも、ステージング・商用環境でのエラーログ監視は、エンジニアがサーバにログインして、ログファイルを監視しており、当該サーバにログインできるのはグリー本社のエンジニアのみという前提がある。そこで、Sumologic上でステージング・商用環境のログを閲覧できるように解決を試みた。
 

▲こちらも制限はあるが、デプロイ前のテスト環境のログやイベントリリース時の本番エラーログの確認を行えるようになった。
 

▲Jenkins同様サーバにログインさせるのではなく、権限制約された画面を提供することでセキュリティを保ったまま業務範囲を広げることに成功した。
 
●教育、評価、育成
「教育、評価、育成」この課題はGREVOが抱えていたものである。グリーではラボ型開発が採用されているため、一体感が生まれているというのは冒頭にも紹介された通り。しかし、これによりスタッフはクライアント企業への帰属意識が高まる傾向にあるという。当人の所属はあくまでもEvolableAsia(現在はGREVO)であり、評価もこちらで行われるのだがその際にスタッフの納得感を得られないという問題が発生していたと山本氏は話す。
 
評価の結果、スタッフの不満が高まって退職リスクが増加することも考えられるため、ベトナム側の評価担当者と、グリーの担当者間で定期的に情報共有を行うことで対策を講じたとのこと。この評価担当者は、特定のプロダクトに所属している人員ではなく、このために複数のプロダクトを横断して管理をしているという。
 


▲相関図としては上記のような関係になる。
 
4.ベトナムオフショア開発の利点
こうした課題を克服したうえで、桝田氏はベトナムオフショア開発の利点を2つ挙げた。
 
ひとつは「定型化可能な業務の委託先としてベストである」ということ。安定したパフォーマンスを発揮してくれるため、日本で業務委託を行うのと比べてクオリティに遜色はないと桝田氏は述べた。
 

▲新規施策やプランナーが密に関わる部分については日本側で引き取った方が良いケースもあるため、これは今後の課題であるという。
 
ふたつ目は「ベトナムチームと向き合った担当エンジニアが飛躍的に成長する」ということ。
 
桝田氏の実体験からも、入社2~3年目でマネジメントを経験できたことが非常に良かったとコメント。現地には自分ひとり、日本とも離れた環境で対応を求められるため、個人の成長にも繋がっているのだと分析した。
 

▲課題が発生した際に自身で主体的に動いてPDCAを回しながら解決へ導いていくという経験が成長に活きたとのこと。
 
5.将来に向けた展望
最後に、両社の視点から将来に向けた展望が語られた。
 
まずグリーとしては、定常系業務の移管はほぼやり切ったため、日本人のエンジニアなしで新規企画を実装したり、プランナー領域を担当して業務領域の拡大や、コストパフォーマンスの最大化を実現したいと桝田氏は話す。既存事業をベトナムに任せることができれば日本側のリソースにも余裕ができ、新しい事業に集中できるようになると展望を語った。
 

 
一方、GREVOはグリーの案件を通して得たソーシャルゲームの開発工程を引き続き事業の主体に据えつつ、開発以外の部分でも運営に必要な機能をさらに拡充していきたいと話す。具体的には、プランナーやアート、深夜休日対応の体制を整えていきたいとのことだ。これについては実際に成果も出始めており、プランニングから運営まで全てを一気通貫で担当しているプロダクトも1つあるため、こうした取り組みをより増やしていきたいと展望を明かした。
 

 
また、「24時間止めることのできない」、「仕様変更が多い」など、ソーシャルゲーム開発は要求が高く困難な案件であると感じているという山本氏は、この4年間で培ったノウハウを活かして、ソーシャルゲーム以外にも活かして業務拡大が行えないかと考えているという。そして、直近で行った業務としてCEDEC 2018公式サイトの開発・運営を担ったことを明かして講演の締めとした。
 


 
(取材・文 編集部:山岡広樹)
 

CEDEC 2018

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企業情報(グリー株式会社)

会社名 グリー株式会社
URL http://www.gree.co.jp/
設立 2004年12月
代表者 田中良和
決算期 6月
直近業績 売上高779億円、営業利益94億円、経常利益103億円、最終利益47億円(2018年6月期)
上場区分 東証一部
証券コード 3632

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