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【紹介特集Vol.4】GDM ローカライズ勉強会 ~多種多様なゲームタイトルに対応する為のローカライゼーションとは?~

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ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>が運営しているオウンドメディア「GeNOM(ゲノム)」。本メディアでは、DeNAのゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”を伝えている。
 
そこで本稿では、全4回に渡ってGeNOMにて掲載されたDeNAゲームクリエイターのエピソードを紹介。DeNAのゲーム開発現場の魅力をお届けする。
 
<以下、GeNOM3月14日掲載分より>
 
毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developer’s Meeting】(以下、GDM)。
 
今回初の開催となるローカライズ勉強会では、 「多種多様なゲームタイトルに対応する為のローカライゼーションとは? 」 と題し、登壇者が考えるゲームローカライズのあるべき論と、攻めのグローバル展開に必要なローカライズ業務について、DeNAにてローカライズ業務を担当する「藤村 弘也」よりセッションが公開されました。本稿ではそのレポートをお届けします。
 
 
ほぼ満席となった会場で実施された今回の勉強会。冒頭では司会を務めるDeNAの「藤村 幹雄」より、セッション時の注意事項や、GDMに関連した告知がなされました。
 
DeNA藤村幹雄氏
 

■自分たちが取り組むローカライゼーションの本質


続いて登壇した藤村弘也から、簡単な自己紹介として、元ロックギタリストでロンドンでバンド活動をしていたり、音楽プロデューサーとして楽曲制作に携わってきた、ちょっと異色な経歴を明かされました。
 
 
セッションを始める前に、日本の会社でよく聞く「お疲れ様」という挨拶について、来場者に向けて「英語ではどのように伝えると思いますか?」との質問が投げかけられました。
 
会場には、気持ちの良い静けさがスーッと広がります。
 
実は、過去に海外スタッフとの会話のやりとりで実際に体験したことで、当時藤村はその答えとして
 
Thank you very much for attending the conference.
Thank you for coming.
 
と翻訳して答えたところ相手に、
 
「英語で疲れたって言ってないじゃないですか!? 」
 
とツッコまれたとのこと。日本ではお疲れ様という言葉は、ねぎらいと感謝をこめて使われていることが、うまく海外の人には伝わらなかったのかもしれません。
 
このような「言葉文化のズレ」をコントロールしてゲームに仕込んでいく、それが自分たちが取り組むローカライゼーションの本質だと、藤村はセッションの前段として話しました。
 
DeNA藤村弘也氏
 

■DeNAゲーム事業の特色とグループのミッション

 
現在のDeNAのゲーム事業は、タイトルのすべてがモバイル向けのゲームであり、リリース後も運営していくことを前提に開発がされています。ジャンルは多種多様で、運用のスキームも複雑になっています。
 
藤村が考えるゲームのローカライゼーションとは、ゲームの楽しさ・面白さを損なわず、作り手の演出や狙いを、言語が違う国でも現地のプレイヤーに正しく伝えることと述べています。
 
そして、ローカライズグループのミッションを、
 
攻めのグローバル展開をサポートする、強いローカライズグループ
 
と掲げました。
 
 

■強いローカライズグループに成長するための課題


先に述べたミッションを達成するためには、ローカライズの業務が体系化されている必要があり、DeNA社内での現状の問題点を挙げ、あわせて解決策を紹介しました。
 
【問題点】開発環境がローカライズ仕様になっていない

文字列のID管理されていない、テキストがプログラムに直打ち、ファイルフォーマットがまちまちになっている、などローカライズ仕様になっていないのが現状です。
 
 
 
【解決策】開発環境がローカライズ仕様になっていない

この問題に関しての解決案は「ローカライズTRCの導入」。
 
ローカライズTRC(Technical Requirements Checklist)とは、社内ルールやガイドラインとなるチェックリスト(仕様書)ツールのことで、DeNAゲーム開発における独自のローカライズ規格を策定し、このTRCを開発タイトルすべてに標準導入することを検討しています。
 


 ※TRC(Technical Requirements Checklist):
Play Stationプラットフォームでリリースする際のSIEマスター規格チェックリストのこと。
 
DeNAローカライズTRCを導入すれば、文字列のID管理や命名規則などをまとめてチェックすることが可能になり、ストレスがないローカライズフレンドリーな開発環境が整います。
 
【問題点】文字列が一元管理されていない
 
 

マスターテキストが各プロダクトごとに点在していることで、該当テキストの検索の不便さ、表記ゆれの管理、過去の翻訳との整合性が取れないなどの問題が起こっています。
 
このような状態が続くと、テキストの品質コントロールが不可能になり、業務推進がマンパワー依存になってしまいます。
 
すると、手作業によるミスの多発、バグの見逃し、余計な工数……それが重なって慢性的に残業状態になり現場スタッフは疲弊していきます。このような状態では、品質の担保もできず到底ミッションをクリアすることはできません。この課題の解決は急務だと判断できます。
 
【解決策】文字列が一元管理されていない

この問題に関しての解決案は「LIONの導入」。
 
「DeNA TechCon 2018」にて紹介された社内ローカライズ支援ツール「LION」を導入、現在開発・調整中のため、詳細は公開されませんでしたが、このツールを使うと文字列単位の管理や、翻訳業務の進捗管理、用語集などを一括管理可能になるとのこと。
 
 
 
【関連資料】世界へ向けたゲーム開発 〜ローカライズ支援ツール『LION』〜 from DeNA
※LION:DeNAにてローカライズ業務用に開発している社内ローカライズ支援ツール
 
さらに同プロジェクトを開発チーム・ローカライズチーム・翻訳会社とそれぞれ職種別に操作できるようになります。
 
上記の課題解決策で、現場作業の煩雑さに改善効果が生まれてきます。
 
ここで重要な働きをするのが、責任者として現場で業務に取り組む「ローカライズコーディネーター」の存在です。
 
ローカライズコーディネーターとは
コーディネーターとは、開発チーム内のテキストローカライズの責任者、外部翻訳会社と連携してローカライズ業務を推進するスタッフのことを指します。
 
彼らに求められることとして、ある一定レベルは必要で、それに加えてゲームというエンタメ開発に携わるからには、おもしろい発想や多彩な感性を持つ人が必要だと藤村は話しました。
 
 
 
また、過去に藤村がロックバンドでギターを担当していたときの経験で、グループマネジメントは、バンドがギターを弾いていい音を出すことに似ていると語ります。
 
ギターは頑張って弾くのではなく、ギター自身が気持ち良くなるように触れてあげなければならないとのこと。
 
なので「こんなに練習したぜ! 」と気合いを入れて頑張って弾いても、ギターはうまく鳴らず、バンド全体の音もめちゃくちゃになってしまい、音楽として成り立たなくなります。
 
ですが、各パートの楽器の音が気持ちよく共鳴しだすと、お互いの響きを活かすようになり、全体の音楽のクオリティが足し算ではなく掛け算になっていくということ、つまり「それぞれが気持ちよくパフォーマンス(仕事)ができる」ことが大切だと、バンド時代に気づいたと語っています。
 
 
 
 

■欧州・米州・中国などのリリース地域ごとにおける課題

 
ここからは、事前にフォームにて投稿された質問について、藤村からの回答が公開されました。
 
 
 
 

■体験談をもとにした文化的な違いについて

 
ここで、藤村がロンドン在住時代、ニューヨークに旅行をしたときの「言葉と文化の違い」についての体験談が語られました。
 
便器を貸してください

藤村がハンバーガーショップでオーダー待ちをしていたときのこと。アメリカ人が「バスルームを貸してください」と店員さんに頼んでいるのを聞いて、驚きました。
 
ですが、店員さんは何事もないように「そちらの奥にあるのでどうぞ」と案内をしました。
 
アメリカでは、トイレを貸してほしい時に「バスルームを使わせてください」と言うようで、日本のように「トイレを貸してください」とは言わないのです。アメリカではトイレ(Toilet)は便器そのものだけを指す様です。ちなみにイギリスでは「トイレを貸してください」が普通とのことです。
 
 
 
熱くないラーメン

異文化体験のお話。藤村がロンドンでイギリス人の友人と話題のラーメン屋に行ったとき、先に友人に運ばれてきたラーメンを、すぐに食べ始めている様子を見て、違和感を感じたと言います。
 
続いて藤村の元に運ばれてきたラーメンの器を触ってみると……なぜか人肌の温度、つまり、熱くないラーメンだったのです。
 
すぐにウェイターを呼んで抗議するも、ウェイターは真顔で「熱かったら食べられないじゃないか」と不思議そうに答えたそうです。
 
もちろん、冷めたラーメンを出されたわけではなく、人肌で食べやすくというサービス心からなのです。
 
 
 
上記の経験のような、日本では考えられない、異文化の違いが毎日のように起こったそうです。通用しないことは通用しないと、自分の習慣だけにこだわるのをやめて、まずは「異文化を面白がる」ことが大切だと藤村は話しています。
 
 
 

■現在主流になっているローカライズフローで良いのか?


標準的なワークフロー

現在のDeNAでのローカライズ業務に関する、大まかなワークフローは以下になります。
 
1.開発チームからの翻訳依頼
2.依頼とりまとめ発注
3.翻訳会社で翻訳
4.納品テキストの検品
5.ゲームへ実装
6.LQA ※言語実機テスト
7.バグ修正
8.マスターアップ
 
ローカライズTRCとLIONの運用効果が出るフェーズ

今回の課題解決として提案したローカライズTRCおよびLIONを導入すると、上記1.2.4.5.7.8について作業工数の削減が期待できます。
 
 
 
ローカライズTRCとLIONの運用効果が多くないフェーズ

逆に、上記「3.翻訳会社での翻訳」と「6.LQA」の作業については、翻訳の品質そのものを扱うフェーズになるため、ローカライズTRCおよびLIONを導入しても、「煩雑になる業務を整理する」観点としては、大きな効果は出ません。
 
改善課題についてさらに考えてみる

上記「3.翻訳会社での翻訳」と「6.LQA」について、3で翻訳作業を完成させているはずなのに、6でバグが発生します。
 
それはなぜでしょうか?
 
理由は、「3.翻訳会社での翻訳」のフェーズで、開発側から翻訳会社へ必要な情報を「すべて」提出できていないため、翻訳者がすべての仕事を明確にチェックできず、翻訳が完了した後に仕様変更が入り、再翻訳が必要になってしまうからです。
 
 
 
開発中のため、資料などが揃わずに仕様変更も仕方ないことではありますが、環境が揃わない中での完成度の高い翻訳をするのは至難の業です。
 
さらに、翻訳テキストの品質担保を「6.LQA」フェーズに全依存しているので、テスターからの修正案をコーディネーターが受付後、修正案を翻訳者に確認してからテキスト修正して実装する手間がさらにかかります。
 
 
 
ならば、翻訳者が実機でゲームプレイをしながら仕様を確認して作業できたら良いのではないでしょうか? そこで機械翻訳を導入することを考慮していきます。
 

■機械翻訳の導入で効果的にコストを減らす


広く知られているニューラルマシントランスレーション(NMT)とは、ディープラーニングと呼ばれる人工知能(AI)に自動学習させる機械翻訳のことです。この機械翻訳をどのように使用すれば、効果的に課題を解決できるのかを、フローに組み込みながら考えていきます。
 
標準フローの「3.翻訳会社で翻訳」にまず機械翻訳を導入、「6.LQA」実機テストでのフェーズで翻訳者はテスターと協力して翻訳作業を行います。ここで翻訳者は最初の翻訳になりますが、すでに機械翻訳したテキスト参照を、実機ですぐにできることが強みになります。
 
さらに、仕様もすべて確認できる状態で作業ができることもメリットに。
 
 
 
機械翻訳を入れる効果と翻訳者の作業環境

標準フローの「3.翻訳会社で翻訳」では、翻訳コストが大幅に削減され、社内の対応コストも最低限に、スケジュールの短縮も可能になります。
 
標準フローの「6.LQA ※言語実機テスト」では、LQA開始が早くなり、テスト期間を長く取ることができ、品質担保が効率的になり、バグも減っていきます。
 
すると、現場のコーディネーターの対応コストが減って、負担も少なくなっていきます。
 
 
 

■今後の課題

・機械翻訳の翻訳精度は十分か
・自動学習させるために翻訳データベースの確保はできるのか
・仕様確認のためのデバッグコマンドを実装できるか
・そもそも開発スケジュールに落とし込めるか
 
など、今後もこれらの課題について、藤村をはじめとしたローカライズグループがひとつずつ、課題に向き合って解決いくとのことです。
 
また、次回以降の勉強会などで進捗を公開していくとともに、これから一緒に議論を繰り返して、ゲーム業界におけるローカライゼーションの価値を上げていきたいと、セッションを締めくくりの言葉としました。
 
 
 

■懇親会の様子


参加人数が多かったため、急遽会場を拡大して実施された懇親会では、お寿司とピザや軽食を楽しみながら、来場者がさかんに交流しました。登壇した藤村には次々と質問が飛び交い、かなりの盛り上がりを見せていたのが印象的でした。
 
 
 

■登壇した藤村にインタビューを敢行


セッション終了後に、登壇した藤村弘也にイベントの感想や、次回以降の展望などのお話を聞くことができました。
 
 
 
――セッションを終えての感想と手応えを教えてください。
 
第一回となる今回は、あまり深く掘り下げないようなお話をしたのですが、刺さった部分はみなさん違ったみたいで良かったです。もともと自分はTech系エンジニアではないため、LIONやローカライズTRCなどツールに関しても、概要を話しただけなので、リクエストがあれば次回以降で各担当者にお願いして、さらに細かい粒度のセッションにしてもいいかなと感じました。
 
まずは、DeNAゲーム事業部が、内製でローカライゼーショングループを新設して、今後グローバルに攻めていく姿勢を伝えることを大切にしました。

 
※LION:DeNAにてローカライズ業務用に開発している社内ローカライズ支援ツール
※TRC(Technical Requirements Checklist):Play Stationプラットフォームでリリースする際のSIEマスター規格チェックリストのこと。

 
――懇親会はかなり盛り上がっていましたが、来場者さんとどのようなお話ができましたか?
 
かなり盛り上がりましたね! 特に質問が多かったのは機械翻訳の部分です。自身の会社でも試して失敗した経緯をお話ししている方もいましたし、これから導入を検討している方もいました。また、開発中のLIONの進捗についても注目されていたようです。
 
LIONに関して、基本の機能自体はどこにでもあるものなんですが、DeNA社内では、多くの運営中タイトルに対して汎用的なカスタマイズが可能になるような開発・調整を続けています。それを内製で作り上げる意味を理解してくれる方も多かったですね。
 
また、文化的な表現の違い(ラーメンのお話)に反応してくれる方もいました。国ごとの表現のズレは思っているより大きく、海外のシナリオを担当している方は「なんでこんな文章の展開になってしまうんだろう? 」と深刻に悩んでいる方もいましたね。

 
――でも、そんな異文化も「楽しむ」ことがエンタメ開発には大事な要素なんですよね。
 
そうですね。世界にはいろいろな感性を持つ人がいますので、その「違い」を楽しみながら仕事をしてもらいたいです。自分が音楽をやっていたときの経験は、今の仕事にかなり活かせていることはウソじゃないですよ。
 
――懇親会でお話ししたのはどのような業界・職種の方でしたか?
 
ゲーム業界の方はもちろん、ローカライズエンジニアや、ゲーム系の翻訳者さんが多かったですね。セッション内で「作業環境があまり良くない」といった話をしたときに「すごくよく分かる! 」と共感してくださる方もいたようです。やはり段階的に作業環境を改善することが、いい仕事をするポイントだと思います。
 
今回のセッションでも触れましたが、機械翻訳の進化によって「将来的に翻訳の仕事がなくなる」わけではありません。最終的な品質を担保できるのは翻訳者の腕にかかっていますし、ただこの先、仕事の手法が少しずつ変わっていくのかもしれませんね。
 
もちろん、スゴイ技術を持った翻訳者が120%のクオリティーで作業することは、貴重でありがたいことなのですが、どうしても属人化の問題も出てきます。それとは違う、ある程度の質を保って、もっと工数を少なく作れるような方法を模索していきたいですね。

 
 
 
――次回以降のセッションの展望はありますか?
 
今回のフィードバックの結果にもよりますが、LIONとローカライズTRCの開発進捗、機械翻訳の試用結果などをそれぞれの担当者に報告してもらえるといいかもしれませんね。数値周りはどこまで話せるかはわかりませんが……(笑)。
 
――新設のローカライズチームのメンバーとは、今回のGDM参加についてなにか話しましたか?
 
今回のセッションのリハーサルを見に来てくれていました。グループが新設したのは2018年6月で、人数も関わるタイトルも増えているので、自分の思いも含めて、これから体系的にきちんと整理していかなければ、と感じています。
 
――新設のローカライズチームのこれからの展望はありますか?
 
今回セッションで話したミッションを基礎として、グループ全体で攻めの姿勢と、強いローカライズチームを育成していくことを目指したいと思っています。
 
――ありがとうございます!本日はお疲れ様でした。
 
 
 
GeNOM(ゲノム)とは
 
DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”を伝えている。

 

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企業情報(株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA))

会社名 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
URL http://dena.jp/
設立 1999年3月
代表者 守安 功
決算期 3月
直近業績 売上収益1393億円、営業利益275億円、最終利益229億円(2018年3月期)
上場区分 東証一部
証券コード 2432

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